「この近くだな!?
あいつら、持ちこたえてくれよ!!」
バンはかこから送られた座標と、転生者の情報を頼りに街に向かっていた。
すると、街の広場から爆発音が聞こえ見るとそこで2号と3号とスバルが戦っているのが見えた。
相手はカエルのようなギョロ目だが手には特殊な形のステッキが握られていて、周りに戦闘員らしき集団がギョロ目を囲んでいた。
「あいつが転生者か!」
バンはVSチェンジャーでパトレン1号に変身して2号たちの下へと走った。
「おい、お前ら大丈夫か!?」
「バン隊長、すみません、手こずってしまって」
「んなことは良いんだよ!
それよりも大丈夫か!?」
2号が、転生者を相手に手こずったことを謝罪するも1号はそれを否定した。
「いやぁ、実に見物だねぇ。
ボロボロになった女を男が助けに入るなんて名シーンはさ」
「あ!?」
ギョロ目の転生者はまるで小ばかにした口調で拍手しながら笑う。
「お前、まさかだと思うが、その姿はデカレンジャーのアリエナイザーの特典か?」
「はーい、その通りでちゅよぉ、よくできましたぁ!
この姿はアリエナイザーの一人だったクウォータ星人のダゴネールの特典なのさ!
ま、そこからさらに微改造してもらってるけどねぇ」
「微改造だぁ?」
「おっと、ここから先は低脳な君たちにはわからないよねぇ?
そんな感じなんで、皆そいつを始末してくれる?」
ダゴネールがそう言うと、戦闘員が前に出て1号たちに襲い掛かった。
「ちっ!
お前らいけるか!?
行くぞ!」
「「「了解!」」」
1号は2号たちに言うと、四人で戦闘員を迎え撃つ。
1号はパトメガボーで敵を殴るか蹴り飛ばすといった攻撃を。
2号は避けながらVSチェンジャーで撃つ攻撃を。
3号はVSチェンジャーで撃ちながらパトメガボーで足を引っかける攻撃を。
そしてスバルはローラースケートで翻弄しつつガントレットを纏った右腕で殴り飛ばす。
「クソっ、数が多いじゃねぇか!」
「ねぇ隊長、長官から言ってたパトメガボーの新機能使わない!?」
「そうだな。
かこ、アストルフォは俺のそばに来い!
スバルは後ろに下がれ!」
「「了解!」」
「でもバンさん、なぜ私が後ろに!?」
1号の指示に納得がいかなかったのか、慌てながらスバルは質問する。
「悪いな、今からやることは下手すりゃ前に出てるお前さえも巻き込む可能性があるんでな!」
「え?
は、はい、わかりました!!」
パトメガボーを見せながら説明したことで納得したのかスバルは返事をしながら素早く後ろに下がる。
「よーし、お前ら準備は良いな?
こいつの新機能を使うぜ!」
「「了解!!」
スバルが後ろに下がるのを確認した1号は戦闘員が一斉に来るのを見計らって三人同時にパトメガボーのグリップを押す。
『『『そこの君、止まりなさい!』』』
すると、警察でよくあるセリフと音声が流れ、戦闘員は一斉に動きを止めた。
『『『全員、整列!
前、ならえ!』』』
再びグリップを押すと、今度は3列に並びその場で動きを止める。
そして、パトメガボーをエネルギーの籠ったロッドモードに変え、三人はそれぞれの列に沿って殴り進めていく。
『『『ダメ、ゼッタイ斬り!!!』』』
最後の列まで殴ったと同時に、戦闘員は全員を爆散する。
「これが、長官の言ってた新機能…」
「すごいよ、あの大群を倒しちゃったよ!」
「へっ、こんな機能つけられちゃ長官を悪くいえねぇな」
「す、すごい…!」
三人はパトメガボーの新機能に驚き、スバルを感心を覚える。
「ギャアー、ボクチンの戦闘員がぁ!?」
「じゃあ、後はお前だけだな♪
おらぁ!!」
戦闘員を全員倒され嘆くダゴネールに、1号がパトメガボーで殴ろうと飛び掛かった。
だが、ダゴネールにパトメガボーを当てる瞬間、ダゴネールの目の前で1号はパトメガボーを止めてしまう。
「なっ!?」
1号は思わず目を見開いた。
なぜなら、目の前に更正したはずのドリィの転生者の幻覚がいたのだから。
『私はこの世界に居てはいけないの?』
『どうして、この世界じゃあダメなの?』
『私は友達や家族と一緒にいたかったのに』
『また私を更正するの?』
『別の世界に行っても幸せになるわけないのに』
ドリィの転生者の幻覚は悲しげな顔で続けざまに呟き続ける。
「ぐ、ぐううぅ!!」
「バンさん?」
「隊長!?」
「バン隊長!?」
苦しみながら頭を抱え1号は膝をついてしまう。
「な、なんだかよくわかんないけどボクチンは失礼するよぉ!!」
「あ、待て!」
ダゴネールはチャンスと見たのか街中へと飛んで姿を消した。
その間にも1号は苦しみ続ける。
「ぐっ!?
や、めろ!
やめろってんだろ!
俺はお前を貶めるために更正したんじゃねんだよ!!」
『私は幸せになれなかった』
『いじめも受けた』
『友達にも、家族にも裏切られた』
『知らない人に監禁されて襲われた』
『家族から捌け口として暴力を振るわれた』
『結局、私は幸せにはなれなかった』
『あなたのせいで』
『あなたのせいで』
『あなたのせいで』
『あなたのせいで』
『あなたのせいで』
1号は抗おうにも幻覚からの声は鳴り響く。
『こんなことなら…』
「やめろ!
それ以上、言うな…!」
鳴り響く声に制止をかけようとするも幻覚は悲しみと憎しみが入り交じった顔で叫んだ。
『こんなことなら、あの怪盗に盗んで貰えれば良かったっ!!』
「…!」
その言葉をとどめに、1号は頭を抱えていた手をだらんと力なく垂らす。
「あ、ああああああああ、あああああ、ああああああああああああっ!!!」
1号は垂らした手を地面に叩きつけ街の広場で獣が吠えるように叫んだ。
「バン隊長、しっかりしてください!!」
「隊長!
お願いだから正気に戻ってよ!」
「バンさん…!」
2号、3号、スバルは変身を解除し1号に必死に呼び掛けるも叫びのをやめない。
いや、やめられないのだ。
1号は自分達パトレンジャーのやって来た更正が、幻覚とはいえ更正した転生者から恨み言のように罵られ否定されたのだから。
「俺は、俺は…!」
1号の姿は、まるで1号の心情を表すかのように変身が解除される。
「バン隊長、お願いですから、正気に戻ってよぉ…」
かこは涙を流しながら必死でバンに呼び掛ける。
アストルフォとスバルは、その光景に胸を痛めながら見ているしかなかった。
「少し、良いかな?」
ふと、バンたちの前に男の声が聞こえバン以外の三人は目の前の男を見る。
「誰なんだいキミは?」
「俺はドギー・クルーガーだ。
地球署の署長だ」
「ドギー・クルーガーってあの!」
「ボクたちの先輩に当たる人じゃないか!
何で!?」
「この人がドギー・クルーガー…!
デカレンジャーの」
「驚くのも無理はないと思うが今はバンくんに用があるんだ。
少し、道を開けてくれないか」
三人は驚きを隠せないが、ドギーは迷わずバンの方へと歩みを進める。
「やぁ、先ほどぶりだねバンくん。
とは言っても、今はまともに聞ける状態ではないらしいが」
ドギーはバンの視線に合わせるように膝をつきバンの肩を叩く。
「良いかいバンくん?
君は確かにパトレンジャーとして大勢の転生者を更正してきた。
その転生者たちは別の世界で普通の人間になって生きているのは間違いない。
その中には、転生者のときの世界に家族や友達もいた輩もいたかもしれない、君たちの更正でその人たちとの生活を奪ったのかもしれない」
「ちょっと、いくらなんでも言い過ぎだよっ!!」
アストルフォが制止しようとするもドギーは喋る。
「だがそれでも、転生者を更正したことで、多くの人が、世界が救われたんじゃないのかっ!?」
ドギーの口調が穏やかなものから渇を入れるかのように変わった。
バンはドギーの言葉にビクッと反応する。
「君は何のためにパトレンジャーをやって来たのかは私は知らない。
だが、今目の前で転生者によって苦しめられている人がいるだろ!
君が、その人たちを見捨ててどうする気だっ!?」
「…ねぇよ」
「む?」
「んなこと言われてもわかんねぇよ!!
今までずっと転生者と戦って更正して、そんな事を繰り返しやって来たんだ!
なのに、さっきからドリィの転生者の声が聞こえてくるんだよ、こんなことなら怪盗に盗まれれば良かったって!!!
何でなんだよ!
何で俺達がそこまで言われなきゃいけねぇんだよ!?
だったら俺達が戦うなって言いてぇのかよ!!」
「バン隊長、やっぱりドリィの件のこと、引き摺ってたんですね…」
バンがドリィの転生者のことを後悔していることを確信したかこは申し訳なさそうに顔を下に向ける。
他の二人も同様だった。
だが、ドギーだけは顔を背けず、バンを見つめる。
「…君は、君たちは今まで更正した転生者のその後を見たことはあるかね?
そんな事を言った確証はあるのかね?」
「そんなの、知らねぇよ。
けど、頭の中であの転生者が出て来て囁くんだよ!」
「そうか。
…ならば、この戦いは俺が引き受けよう」
「は?」
「今の君では、到底転生者の相手はできないだろう。
ならば、俺がやつと戦うと言ったのだ」
「ふざけんなよ、相手は転生者なんだぞ!
あんたにあいつを更正できんのかよ!?」
「なに、更生できなくても無力化に追い込んでみせるさ」
「ちょっと待ってよ!
だったらボクも行く!」
「わ、私も行きます!」
「アストルフォ、スバル!?」
ドギーに同行しようとするアストルフォとスバルに驚くバン。
「ごめん隊長、だけどボクは転生者のせいで誰かが傷つくのは嫌なんだ。
だから、ボクが行って更正してくるからここで待ってて」
「バンさん、私からもお願いします!」
「君たちも来るというのか?」
「勘違いしないでよ。
ボクはただパトレンジャーの一人としての役目を果たさないといけないから行くだけだよ」
「私も、パトレンジャーみたいに更正する力がなくても、協力者としてバンさんたちの力になりたいから戦うんです」
「なるほどなるほど、君は行かないのか?」
「わ、私は、ここに残ります…。
バン隊長をここに置いていくのは嫌ですから」
かこはバンの背中を擦りながら悲しげに言った。
ドギーはその様子を見て無理に行くことはできないと判断し転生者が逃げた方向に向いて足を進める。
「そうか、では行くぞ」
ドギーの言葉に返事はしないものの、二人もドギーについていく。
「バン隊長…」
かこは三人を見送った後、ドギーの言葉を聞いて葛藤しているバンをただ見ていることしかできなかった。