「あぁ、マジでどうすんだよぉ…」
バンは項垂れながらつぶやいた。
前回の怪盗との闘いで、バンの特典の一つと、ロストロギアを奪われた。
バンの手元にはVSチェンジャーと三つのトリガーマシンがある。
そのうち二つはあまり試したことがない。
「とりあえずは、この二つをまともに使えるようにしねぇと」
頭を掻きながら、バンはシミュレーションルームへと向かおうとした。
「バンさん!」
「なのはか?」
なのはが手にケースを持って歩いてきた。
「そのケースは何だよ?」
「実は管理局の方で、バンさんの特典を補えるようにと、これを渡そうと」
なのはがケースの中から、バイク型の機械を取り出した。
「これ、トリガーマシンじゃねえか!
なんで管理局がこんなものを」
「それはですね」
なのははバンに説明する。
それは管理局で管理していたロストロギアの一つだと。
形状がトリガーマシンのそれに酷似していること。
VSチェンジャーに対応していると考えた上で、管理局はバンに渡すことを決めたと。
「…わかった、ありがとな♪
わざわざ渡しに来てくれてよ」
「どういたしまして」
二人がそう言った途端、霞から通信が入る。
『バン、緊急事態よ。
今街で、動物とか恐竜が暴れてるの。
おそらく、転生者が絡んでるから、なのはと一緒にこれの調査と解決に向かいなさい!』
「動物と恐竜だぁ!?
どうなってんだよ!」
「わかりませんが、とにかく行きましょう!」
二人は街へと飛び出した。
街へと飛び出した時、現状は異常だった。
ティラノザウルス、ライオン、ゾウ、オオカミなど、大量の様々な動物や恐竜が人の住宅街に、家に入り込んでは、人を襲う。
スーパーなど、商品が置いている場所に突っ込み、ありったけの食材を貪りつくす。
警察が動いているが、拳銃で撃とうとも、別の動物が飛び出し、襲い掛かる。
そんな現状を、二人は目の当たりにした。
「おいおい、動物が人間に反乱か!?」
「とりあえず、あの動物たちを押さえましょう!!」
「ケーサツチェンジ!」
「レイジングハート、セットアップ!」
『1号!
パトライズ!
ケーサツチェンジ!
パトレンジャー!!』
バンはパトレン1号に変身し、なのはは白い修道服にも似た鎧を身に纏う。
「バンさん!
私は空中から動物たちを押さえつつ、転生者の反応を探ります!」
「あぁ、俺は地上から押さえていけばいいんだな!」
そう言って、なのはは足元から羽の光を出して、空を飛ぶ。
1号はパトメガボーとVSチェンジャーを構え、動物たちの群れに目掛け走り出した。
「おらぁ!」
「はぁ!」
1号はVSチェンジャーで牽制しながらパトメガボーで気絶させる。
なのはは拘束魔法で動物たちを縛り無力化する。
「他は、いるのか!?」
1号は周りを見回す。
すると、家屋から悲鳴が聞こえた。
「そこか!」
二人は家屋の中へと走り出した。
そこでは主人らしき男がワニに足を噛まれそうにしながら、ワニの頭を踏むつけようと抵抗していた。
その後ろで、妻らしき女性が、物陰に隠れていた。
「あなた、やっぱり逃げましょ!」
「俺のことは良い!
お前は早く逃げろっ!」
「でもそんな事したら!」
「だったら、そこからの先は、俺達が引き受けるぜ」
1号がVSチェンジャーでワニの胴体を撃ち、主人と距離を離す。
「さぁ、皆さんは私の後ろに!
レストリクトロック!」
なのはが夫婦の前にたち、杖を構える。
すると、ワニは顎と前脚と後ろ脚を光の輪で拘束される。
そして、1号がそれでも暴れるワニの胴体を取り押さえ、持ち上げた。
「ふぅ、やっと大人しくなったか」
「あの、君達は?」
ワニを持ち上げ外に連れだそうとする1号たちに主人が声をかける。
1号は、仮面越しに主人と妻を見つめて言う。
「…俺達は、警察だ。
ちょっと、特殊だけどな」
「それでは、失礼します」
1号たちはそう言って家を出た。
「さて、こいつらはこれで全部だな
なのは、この動物たちって転生特典か?」
「はい、そうみたいですね。
その大元の反応は…、あちらですね!」
なのはが指を指した場所は山の中にある古い屋敷だった。
「あそこだな!」
「はい、ですので、しっかり捕まって下さい!」
「え?
って、うお!?」
なのはが1号の腕を掴み、屋敷に向かって飛んだ。
「んもぉー、何でよ!
あなたたちは、私の忠実な動物なんでしょ!
何でやられてんのよぉー!」
屋敷の中に中で、一人の女性は子供のように喚いていた。
彼女を見つめている動物や恐竜は、どうしたら良いのかわからず、あたふたする。
「動くな!」
「…!」
女性がぶつぶつ言っていると、1号がVSチェンジャーを、なのはが杖を構え部屋に入ってきた。
「誰よ貴方たち!」
「俺達は警察だ。
街に放った動物たち、あいつらはお前の特典だな!」
「ふふん、そうよ。
私の特典は、私の忠実な動物を生み出す能力よ!
ここにいる恐竜も動物もすべて、私の僕なの!」
「その動物や恐竜を放って、一体どれだけ被害が出たと思ってるのっ!」
なのはの問いに、女性は不思議そうに首を傾げた。
「え?
何で動物がおもちゃと戯れるのにそんな事言われないといけないの?」
「おもちゃ!?
人をおもちゃって、あなたは!」
「よせなのは!
…どうあっても、お前はこういうことをやめねんだな?」
「当然よ、楽しいもん!
さあ、私の僕たち、やってしまいなさい!」
女性の号令で、動物や恐竜が動く。
「しょうがねぇ、行くぞ、なのは!」
「…はい!」
1号となのはは二手に分かれ、次々と現れる動物や恐竜の猛攻を躱しながら撃ち抜いていく。
「邪魔をしないで!」
「どけぇ!!」
二人は次々と倒していくが、それでも猛攻は収まらない。
「このままじゃ…。
クリスタルケージ!!」
なのはは宙に飛び、杖を振るうと動物や恐竜の足元から巨大な魔法陣が現れ、光の結界を張る。
「バンさん、あれを!」
「あれ?
このバイクか!」
『バイカー!
パトライズ!
ケーサツブースト!』
「くらえ、バイカー撃退砲!」
1号はバイクをVSチェンジャーに取り付け、結界の中にいる動物や恐竜に目掛けて、強力な前輪型のエネルギーを撃ちこみ、爆散させる。
「そんな…!
私の僕が…!?」
女性は狼狽えるも、体を光の輪で縛り付けられる。
なのはは悲しい表情で指先に魔力を込める。
「あなた、少し頭を冷やそうか?」
「避けろ、なのは!」
「え?」
反応が遅れたなのはに、狼が飛びつこうとする。
噛みつく寸前に1号がなのはを押して、自らの体を狼に噛みつかれる。
「ぐっ、うぅ!!」
「バンさん!?」
「は、はは…、やっぱりそうなんだ。
最後に勝つのは、私の僕な!?」
女性が言いかけた途端、1号が女性の頬を叩いた。
「な、んで?」
女性はいきなりのことにふるふると目に涙を溜めながら1号に顔を向ける。
1号は胴体に噛みついた狼を気絶させて、放してから息を荒くしながら女性に向く。
「てめぇ、この期に及んでまだわかんねえのかよ?
自分がやってきたことをよ!」
「ひっ!」
1号が女性の胸倉を掴む。
「さっき殴られたとき、なんて思ったんだ?
痛かったんじゃないのかよ!
お前の召喚した動物とか恐竜に襲われた人もな、みんな痛いって思ったんだぞ!?」
1号は女性に倒れた動物たちを見せる。
「こいつらだって、俺らにやられて痛いって、思ったんだろうな。
こんなことになっても、お前は何にも思わねえのかよ!」
「…もん」
「あ?」
「知らないもん、そんな事なんて!
痛いとか、苦しいとか、そんなのよくわからないよぉ!」
女性は子供のように泣きじゃくる。
「でも、神様は教えてくれたもん!
こうやって人を傷つけて、苦しめることはとても楽しいよって!」
「…」
「それで、この立派なレディの体ももらって、存分に楽しみなさいって!
神様は言ったもん!
なのに、今更痛いとかそんなこと、わからないよぉ!」
1号は、仮面の下で歯噛みした。
「…今更泣いても、中には一生傷が残るやつだっているんだ。
お前は、もう一度子供に戻って、命は、痛みは何かを学びな」
女性の手に手錠を嵌め、光の粒子へと変える。
それと同時に、1号は変身を解除した。
「バンさん!
大丈夫ですか!?」
「あぁ、なんとかな。
けど、少し肩を貸してくれ…。
かこにこの傷を治してもらわねぇとな…」
血が滲む腹部を押さえながら、バンはなのはに担いでもらい、屋敷を後にした。