バンはIS学園の人工島の端で、なのはの話を聞いた。
なのはは戦意喪失し、変身解除し、近くにあった木にもたれ掛かり、膝を抱えて座っていた。
バンも変身解除し、なのはの隣で胡座をかいて、なのはの話を聞いた。
「つまり、お前ははやてから、上層部からその指令が下ったことを聞いて、後で上層部に反対の抗議をした結果、フェイトや機動六課のあいつらが独房に入れられて、言うことを聞くしかなかったってことか?」
「うん…。
ごめんなさい。
フェイトちゃんや皆を守りたかったから、こうするしか、できなかったの…」
なのはの話を聞いたバンは、少し考え込む。
「そうか…。
けどな、お前はまず、謝る相手が違うぞ?」
「え…?」
バンの言葉を聞いて、なのはは顔を上げる。
「確かに、お前は協力関係にある俺達に迷惑をかけた。
だけど、それ以前にお前はまず、誰に謝るべきだと思うんだ?」
「IS学園の、先生?」
「そうだ。
不安なら、俺も一緒に謝るからよ」
「そ、そんな、バンさんまで謝りに行かなくても!」
「確かにそうだが、もっと早くお前を止めてやれなかった俺にも責任がある。
もっと早くに止めてれば、お前が先生に手を上げないで済んだかもしれないのによ」
「バンさん…」
すると、バンの通信機から音が鳴った。
「長官から?
悪い、少し待ってくれ」
バンはそう言って、通信機の使う。
「長官、俺です。
バンです、応答をお願いします」
『バン君ですか。
そちらの状況はどうなっていますか?』
「かことアストルフォはIS学園に残ってます。
そして、俺はIS学園の人工島の端でなのはと一緒にいます。
…なんでも、スバルたちや友人のフェイトが上層部に人質に取られているらしいのですが…」
『やはり、そうでしたか…。
実は先ほど、僕の方でも、コアの回収の件で、時空管理局に掛け合ってみたのですよ』
「長官自身が、ですか?」
『えぇ。
ですが、時空管理局の上層部は、それについては指令を出した記憶がないと一点張りで…。
その事は、余程隠しておきたいのでしょうねぇ』
「それは…、確かに。
異世界の、ロストロギアかもわからない、謎のコアを回収するから、極秘扱いにする、みたいな?」
『半分当たりですね。
ですが、そのコアを全て回収するために、優秀な役員に部下や友人を独房に入れてまで言うこと聞かせたと世間に知られる訳にはいかない、ということもあると思いますよ』
「確かに、そんな事を公表したら、ミッドチルダでの管理局の評判も、悪くなりますからね…」
これが俗に言う、情報統制ってやつかと、バンは歯噛みをする。
『あぁ、そうでした。
もうひとつ、おかしなことがありましてねぇ』
「おかしなこと、ですか?」
バンとなのはは眉を潜める。
『えぇ。
あれから一向に話が進まなかったので、暫く調べてからかけ直そうと、電話を切ったのですが…。
その直後に、何やら焦った様子でしたが、管理局から電話が入ったのです」
「?」
「あの、その相手は、まさか…」
なのはがバンの通信機に近寄り、右京に聞く。
『そのまさかでした。
八神はやてさんだったんです。
彼女もこの件に関わる者として、上層部から監視を受けていたのですが、運良く監視の目を欺いて連絡できたとのことでした』
「そんな、はやてちゃんが監視を受けていたなんて…!」
『そして、彼女から、先程バンくんが言ったことを聞いたのです。
スバルさん達やフェイトさんが独房に入れられ、なのはさんが指令に背けば、彼女たちを処刑されると、ね』
「それで、長官は、なのはが一人で回収しに来たことを聞いて、やはりって言ったんですね…」
『そうです。
…それと、これははやてさんから聞いたのですが、その時の上層部の様子がおかしかったそうなんですが、なのはさんは、ご存知ないですか?』
「え?
えぇと、確か…!?」
なのはは何かを思い出したように、目を開いた。
「確か、上層部の役員の一人の目が一瞬だけ、お金のような紋章が浮かび上がるのが見えたような…」
『なるほど、それで合点がいきましたよ』
「どういうことですか?」
バンが右京に聞く。
『まだ、推測の域ですが、上層部は転生者の特典によって操られている可能性があります』
「「っ!?」」
バンとなのはが驚いた。
『ですが、いくら操られているとはいえ、相手は、時空管理局の上層部です。
これを叩くには、我々も作戦を考えなくてはなりません。
バンくん、かこちゃんとアストルフォくんと合流して、僕の下に来て下さい』
「了解!」
「あの、少し良いですか?」
なのははおどおどしながら、右京に聞こうとする。
罪悪感があるのか、体が震えているのが見える。
「その中には、私も、含まれますか?
また、バンさんたちと一緒に、戦っても、良いんですか…?」
『えぇ、含まれます。
それに、君達は、互いに協力し、結束すれば、この先の困難を乗り越えられると、僕は信じてます。
だから、僕たちに、再び力を貸しては貰えませんか?』
「…」
なのはは堪えるように、唇を噛んで、下を向く。
すると、バンがなのはの肩を叩く。
「なのは、一緒に行こうぜ…。
そして、あいつらを助けて、上層部を操ってる転生者を更正して、皆で笑い会おうじゃねぇか…!」
「…!
はい…っ!」
『うん、それでは、僕は長官室で待ってます。
そちらでの用が済み次第、来て下さい』
答えを聞いて、納得した右京は通信を切る。
なのはは溢れそうになった涙を拭いて、立ち上がった。
「よし、その意気だ!
さっさとかことアストルフォと合流しようぜ!」
「えぇ、行きましょう、バンさん!」
バンとなのは、かことアストルフォがいるIS学園へと向かった。
だがこの時、学園に宇宙からの、人類の天敵が近づいていることに、バンたちは気づいていなかった。