高層ビルの中で長官室に向かう途中、バンはかことアストルフォになのはの事情を伝えた。
「そんな、スバルさんたちが人質に取られていたなんて…!」
「それに、フェイトって人も…。
でも、今って大丈夫なの?
長官も、この事知ってるんでしょ?」
アストルフォはなのはに質問した。
確かに、なのははスバルたち機動六課のメンバーも、フェイトも独房に入れられて、人質に取られてる状態だ。
だからなのはは、ISのコアを回収するためにIS学園にやってきた。
だが、その事はバンに止められ、右京にも知られた。
なら、その人質はどうなるのか?
その時に、なのは返事をしようと口を開いた。
「…一応、私の報告次第になってます。
それに、スバルたちを処刑するにしても、予めその通告はするはずだから…」
「ってことは、まだ様子見の段階ってことか…。
でも、油断はできないのは確かだよね」
アストルフォは難しい顔をする。
「まぁな、だから今のうちに考える必要があるんだよ。
…そろそろ、長官室だな」
バンたちは長官室の前に着いた。
バンは扉をノックする。
「長官、パトレンジャー及び高町なのは四名です。
入ってもよろしいですか?」
『えぇ、入ってください。
…ですが、今君たちに会いたいと、一人客人が来ていますので、入ったらその人にも、挨拶を』
「こんな時に客が?
…失礼します」
バンたちは長官室に入った。
中では、右京がいつものように椅子に座っていた。
そして、右京が使っている机の端に誰かが腰かけているのが見えた。
「「「っ!?」」」
「?」
なのは以外の3人はその人物を見て驚いた。
その人物は女性だった。
紫色の髪に紫のドレス、そして何より目を引いたのは、機械のウサミミ。
なのは以外は一度会ったことのある人物だった。
そして、その女性はバンたちを見ると、元気よくこう言った。
「ハロハロー、皆のアイドルぅ♪
束さんだよ♪」
それを聞いた瞬間、バンたちは頭を押さえた。
「おいおい、マジかよこの人…」
「あの、バンさん…。
束さんってその…」
「あぁ、篠ノ之束だ。
織斑先生の友人で、ISの開発者だ…」
バンからそう聞いて、なのはは青ざめてしまう。
なのはが奪おうとしたISの開発者が、目の前にいるのだから。
「いやぁ、ここに来るの結構大変だったんだよねぇ。
だって、時空とか世界を超えるんだから、君たちの反応を探知するも大変だったんだよ。
下手すれば恐竜時代とかに飛んでたかもだからねぇ♪」
客人用のテーブルの椅子に座って、そんなに苦労してない様子で、束は菓子を頬張る。
「ちょっとあんた、どんだけお菓子を食べる気よ!」
霞は束の食欲にあきれながら、菓子を提供する。
右京を含むバンたちは束の前に座って、その様子を見ていた。
「なあ、束さん。
あんた、何しに来たんだ?
…まぁ、心当たりはあるけどよ」
「おっと、そうだったね」
束は菓子を持つ手を止めて、なのはを見た。
それに対して、なのはは暗い顔をした。
「で、でもよ束さん!
なのはのことは止めたから…」
「バンさん」
バンがなのはを庇おうとしたときに、なのはが遮った。
「大丈夫です。
…この先は、私に任せてください」
暗い顔をしながらも、決意を秘めた目でなのははバンに言った。
そして、なのはは束と向き合い、頭を下げた。
「今回は、ISのコアを回収しようとしたこと、その際に友人である織斑さんを脅そうとしたことについて、誠に申し訳ありませんでした」
「…」
束は真剣な表情で、なのはを見つめた。
「なのはって言ったかな。
束さんは、あっちの世界で君がやったことは観測機で見てたよ。
ちょうど、今君が言ったようなことをね」
「…」
なのはは束の話を黙って聞いている。
「最初こそは、ちーちゃんに脅そうとしたのは生意気だなって思ったし、ISのコアをそっちの言葉でいうロストロギアだっけ?
そんなわけわからないの事のために奪おうとしたときは、本気でスクラップにしてやろうかって思った。
たかが小娘の分際が、束さんの作ったコアを奪おうだなんて、思い上がりも甚だしいもん」
「…」
「だけど、理由を聞いて、気が変わったんだ」
「…?」
なのはは束の言葉の意味が分からず、思わず顔を上げた。
「身内が人質に取られて、それでやるしかなかったんだよね?
それも、最初こそは抗議した後で。
…私は、抗議はしてないけど、似たような経験があったから。
らしくもないよね、束さんが、他人にここまで共感するなんてね」
そう言って、束は力なく、椅子にもたれ掛かった。
「それに、君はばっくんたちとも協力関係にあるってこともあるから、君をスクラップにするのは諦めるよ。
…それでさ、改めて聞かせてもらえないかな?」
「な、何ですか?」
改まった様子で、束はなのはに聞く。
「今はこうして、ばっくんたちと一緒に、管理局をどうするか考えるためにここに来たけど、君は、どうしたいの?
君は、自分の意思で、友達を助けたいの?」
「それは…」
なのははしばらく黙りこんだ。
確かに、なのははバンの言葉でフェイトやスバルたちを助けたいと思った。
だけど、自分の中に、わずかに不安があった。
自分が上層部に抗議したせいで、フェイトたちは捕まった。
そんな自分に、彼女たちを助ける資格も、会わせる顔があるのかと。
だが、なのはの中で、決心がついた。
「…私は、助けたい」
なのはは、しっかりと束の顔を見る。
「バンさんたちに頼るだけでじゃない。
ちゃんと、自分の意思で、フェイトちゃんもスバルたちを助けたいですっ!!」
その言葉を聞いた束は満面の笑みを浮かべた。
「オッケー♪
それじゃあ、束さんも、作戦会議に参加させてもらうよ♪」
「え?
あんたも、参加するのか!?
というか、さっき言ってたばっくんって俺のことか!?」
「もっちろん参加させてもらうよ!
あぁ、ちなみになんだけど…。
ばっくんはバンくんのこと。
かっちゃんはかこちゃんのこと。
あっきゅんはアストルフォくんのことだよ♪」
「いつの間に、私たちのあだ名を…」
「ボクたち、そんなに仲良くなったのかな?」
「あだ名のはことは良いだろ。
でも、あんたも加わるなら、色々と考えることはできるんだろうな」
「任せてよ、ブイブイ♪
うっくんもそれで良いよね?」
束はそう言って、右京の方へと向いた。
「うっくんとは…。
これはこれは、一時はどうなるかと思いましたが、あなたが自らこの件に関わろうとは、思いませんでしたよ」
右京は苦笑する。
「良いでしょう。
では、束さんも含めて、今後をどうするのかを考えましょうか。
バンくんたちも、それでよろしいですか?」
右京の言葉を聞いて、バンたちも頷いた。
「わかりました。
それでは、話し合いましょう。
僕たちが、上層部にいる転生者を更正するためにも、フェイトさんたちを助けるためにも」
その言葉と共に、会議が始まった。