束が情報収集してから、あることがわかった。
上層部に一人、奇妙な来歴を持つ男が。
数週間前に下級の職員として管理局に入ったが、その仕事はとても優秀でわずか一週間で上層部の職員として昇格したと。
そして、管理局に入る以前の来歴が、一切ないことがわかった。
右京たちが管理局に行く前、束は右京たちに、この男について要注意するように忠告した。
右京にあるものを渡して。
そして翌日、右京からの連絡もあり、上層部は日々の協力に感謝を込めてと、食事を誘った。
右京とバンは、これに出席した。
「いやぁ、機動六課のメンバーからも、あなたがたの活躍を聞いていましたよ。
高町に渡すように言ったロストロギアも、お役に立てて光栄ですなぁ!」
「あぁ、それはどうも…」
「これはこれは。
スバルさんも、後に行動を共にしたなのはさんたちも、転生者の更正に貢献して下さってるので、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです」
右京達を出迎えたのは、上層部の職員と思われる数人の男。
その中には、束が警告した男がいた。
管理局にあるテラスで、食事をすることになった。
右京と職員の一人は、協力関係について互いを称賛し、バンは当たり障りのないように返事をしていた。
そして、右京はそれまでの話を切り、別の話をしようとする。
「そう言えば、実はパトロールしている時に、このようなものを見つけたですが、これはご存知ないですか?」
右京はそう言って、懐から特殊な球体を取り出した。
それを見た職員たちは少しだけ眉を顰めるがすぐに戻した。
「…それは、ISのコアではないかね?」
「ISの、コア?」
「確か、ある世界で女性にしか使えない、というバカげたパワードスーツを動かすためのコア、だな」
すると、例の男はそう言った。
他の職員も、それを聞いてざわつく。
「おや、やはりそうなのですか…。
…確か、これは開発者の手によってブラックボックスになっていましたよね?
ならば、これはロストロギアの可能性も考えられますね」
それを聞いて、またも職員たちを眉を顰める。
「ロストロギア?
それが、ですか?」
「まあまあ、これはあくまでも可能性の話、じゃないですか?
何でしたら、これについて私たちの方で調べましょうか?」
職員の一人は疑問に思うも、例の男が積極的に話を進めようとする。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ、そうお気になさらず。
ささ、それを私が預かりましょう」
そう言って、男は右京の元へと歩みより、ISコアに手を伸ばそうとした。
その時に、右京は微笑みながら、こう言った。
「預けて、その上で調べてもらえるとは、本当にありがとうございます。
ですが、やはりあなただったんですね」
「え?」
「動くなっ!!」
右京の言葉の意味がわからず、男は疑問の声を上げようとするが、バンがVSチェンジャーで男の頭部を捉える。
「き、君!
何をしているのかね!?」
「いくら協力関係とはいえ、こんなこと許されるものではないぞ!」
「あ?
んなもん決まってんだろ?
こいつが、あんたらをけしかけて、なのはにISのコアを回収させようとした張本人だからだ」
バンは睨みながら言う。
男は少し冷や汗をかく。
「私が、高町にISのコアを回収するよう命じた?
なんの根拠があると言うのです?」
「おや、貴方が先ほど言ったではありませんか?
これが
「そ、それが何か?」
「僕は確かに、これをあなたがたにお見せしましたが、僕は一度も、これをISのコアとは言ってはいませんよ?」
「っ!?」
男は動揺してしまう。
それに構わず、右京は他の職員を見ながら言葉を続ける。
「他の職員の方々は、ISについては知っていても、直接拝見するのは初めてなので、これが何なのかわからなかったようです。
ですが、あなたはこれを見て、ISのコアだと言った。
それは、なぜでしょうか?」
「そ、それは…、詳しく調べたら、それがあって…」
「本当にそうでしょうか?」
そう言って、右京は管理局の資料を取り出した。
その中には、ロストロギアの反応の記録もあった。
「僕のところにも、優秀な協力者がいましてね。
それで調べてもらったのですが、どうも管理局には、ISに関する資料はほとんどないにも等しかった。
それどころか、コアのことも、一つも書いていなかったのです。
ましてや、ISのコアがロストロギアというわけではなかったようです」
その資料を見た職員たちは驚愕する。
右京はさらに言葉を続ける。
「…思えば、あなたの経歴も奇妙でしたねぇ。
なぜ管理局に入る前の経歴が一切ないのでしょう?
それに、なぜISのコアのことを知っているのですか?」
「…」
男は下を向いて何も言えなかった。
「最後に、一つ確認させてもらってもよろしいですか?」
右京は男の目を見て、人差し指を立てる。
「あなたの目のそれは、お金のマークが入っていますねぇ。
それに…、転生者用の探知機に、あなたから微弱ながら反応があります。
それについて、何か心当たりはありますか?」
「…っ!」
「「「っ!?」」」
男は歯噛みし、職員たちは男を見て驚く。
「その反応を見るからに、皆さんは彼が何者だったのかは、わからなかったようですね。
…さて、あなたはこれに何か間違いはありますか?」
「…」
男は下を向きながら、ゆっくりと口角を上げた。
それに対して、職員たちは次々に言葉を発した。
「君、どういうことかね!
ISはロストロギアでは無かったのか!?」
「まさか、最初から私たちを騙していたのか!」
「我々に渡された資料と、彼らが持ってきた資料と、まったく一致していないではないか!」
「そもそも、転生者だったとは、どういうことだ!」
職員の言葉に、男は笑う。
「…フフフ。
全く、これだから堪の良いゴミどもは…。
しかし、良いのか?
貴様らがこれを持ってきたという事は、高町は自らの任務を放棄したという事なんだぞ?」
男は笑いながら、懐からスイッチを取り出した。
「高町も随分と外道だ。
仲間よりも、自分の命を優先するんだからな?」
「それは、本当にそうでしょうかね?」
「ふん、ほざいてろ!!」
男はそう言って、スイッチを押した。
そして、狂ったように笑った。
「クッフフフフフフフ…、ハァハハッハハッ!
ざまあみろざまあみろ!
たった今あいつらは死んだんだ、お前らが俺の計画を邪魔したのだからな!
何が警察、何がパトレンジャーか!
全てお前らも、高町も悪いんだ!
素直にそのコアを渡していればこうならなかったんだからな!」
そんな男の様子を見て、右京はきょとんとしている。
「おや、そんなにこれが欲しかったのですか?
ならば、あげましょうか」
「あぁそうだ!
さっさとよこせ!!」
男は右京からコアを奪い取る。
コアを手に取った男は恍惚な笑みを浮かべる。
「おぉ…これがISのコアか…。
高町には全部回収するよう言ったが、これをすぐに解析して量産すれば早い…。
その前に、お前らを全員殺してな!!」
男はそう言うと、全身が青いロボットへと変わり、両手には二連奏のガトリングを持っていた。
「あれは、ヘビーアームズ改か!」
「えぇ、もちろん解析してもらっても、良いですよ。
それが本物なら、ですが」
「はっ?」
右京の言葉にヘビーアームズ改は呆ける。
それを気にせず、右京は続ける。
「それに、貴方がそのスイッチを押して、彼女たちを殺したように思ったのでしょうが、果たしてそうなんですかねぇ?」
「はっ!
何を言っているんだか…!?」
ヘビーアームズ改は、右京が気でも狂ったのかと思った瞬間、バンと右京の後ろ、つまりテラスの扉に誰かがいるのが見えた。
そこには、かこ、アストルフォ、なのは、そしてアストルフォが召喚したヒポグリフがいた。
フェイトやスバルたち機動六課のメンバーを担いで。
「馬鹿な!
なぜ、あのセキュリティの独房から!?」
『それは私がハッキングしたからだよ、このごみ野郎』
天井に映像が映し出されて、束の姿が現れた。
『お前がなっちゃん使って、私の大切なISを奪おうとしたの、調べさせてもらったよ。
何で、入って数週間のボンクラが一週間で上層部に入れたのかもね』
そう言って、束は様々なデータを提示した。
そこには、様々な職員を惨殺してその手柄を横取りしたことや職員の弱味を握って利用し、様々な事件を引き起こさせて自分で処理していたことなどが記されていた極秘のデータがあった。
『…これらを黙認してるそいつらもそうだけど、ずいぶんと下衆いことしてるねぇ?
これを世間に公開すれば、君の立場も危うくなるよ?
今から君がやろうとすることも含めてね』
束の言葉が終わると同時にヘビーアームズ改は映像に向かってガトリングをぶっぱなす。
「だったら、今すぐこいつら全員殺して、お前も殺してから、そのデータを消してやるよ!」
そう言うと、今度はバンたちに銃口を向ける。
それに合わせるようにバンは右京を後ろに下げる。
そして、スバルたちをなのはとヒポグリフに預けたかことアストルフォはバンの隣に並び、トリガーマシンとVSチェンジャーを構える。
なのはは、右京とヒポグリフ、そして職員を連れて、その場を後にした。
「お前が何でISのコアに拘ってるかは知らねぇが、それでも俺は、なのはを泣かせようとしたあんたを許さねぇ!」
「「「警察チェンジ!!」」」
『1号!
2号!
3号!
パトライズ!
警察チェンジ!
パトレンジャー!!』
「パトレン1号!」
「パトレン2号!」
「パトレン3号!」
「「「警察戦隊、パトレンジャー!!」」」
「それじゃあ、実力を行使させてもらうぜ!!」
「やれるものならやってみろ!!」
ヘビーアームズ改は、両手のガトリングを三人に目掛けて乱射する。
すると、1号はテーブルを盾に利用して攻撃を防ぐ。
だが、テーブルは無残にも粉々になってしまった。
「…こいつはとんでもねぇな。
流石は、歩く火薬庫を特典にしてるだけあるぜ」
1号は粉々になったテーブルを見て若干引きつらせる。
「まだまだ、終わらねぇぞ!
ぐふっ!?」
ヘビーアームズ改が再びガトリングを構えようとすると、1号が足元にVSチェンジャーを撃って、態勢を崩した。
「あいにく、ずっとてめえのターンじゃあねんだよ!
行くぞ!!」
「「了解!!」」
パトレンジャー三人はVSチェンジャーとパトメガボーを構え、ヘビーアームズ改へと走り出す。
「これなら、どうだ!」
ヘビーアームズ改は胸部や肩部の装甲からミサイルやバルカンで迎え撃とうとする。
「させないよ!」
「ええい!!」
だがそれよりも早く、3号が懐に入りパトメガボーで右肩部を貫きミサイルを破壊した。
それに続いて、2号がVSチェンジャーで左肩部と胸部を撃ち、ミサイルとバルカンを破壊した。
それにより、ヘビーアームズ改はそれらの誘爆を食らう。
「ぐっ!
畜生!」
ヘビーアームズ改は両手に残ったガトリングを構えようとする。
「ふっ!」
だが、1号はそれらを弾き飛ばし、パトメガボーでヘビーアームズ改の顔面を殴り飛ばした。
「ぐはっ!!」
ヘビーアームズ改は壁に打ち付けられ、三人は、前と左右からVSチェンジャーを構える。
「もう、ここまでだな」
「ふっ、そいつはどうかな?」
「何!」
ヘビーアームズ改は懐から、映像が出る端末を取り出した。
そこには、独房に入れられているはやての姿があった。
「なっ!」
「まさか、他にも独房が!?」
「何で!?
この人、監視の状態じゃあ…」
三人は驚いてしまった。
そんな三人の様子を見て愉快そうに、ヘビーアームズ改は笑う。
「フフフ…。
八神はお前たちに情報を流したから、独房に入れたんだよ。
俺の身に何かあったら、独房が爆発するよう仕掛けてなぁ!!」
「「「っ!?」」」
ヘビーアームズ改の言葉に、三人は驚いてしまった。
だが、それでもヘビーアームズ改は言葉を続ける。
「ハッキングなんぞに期待するなよ。
こいつの独房にはどんなハッキングも受け付けないようにしてるからな。
何なら、その引き金を引いてみろ。
それと同時にこいつも死ぬけどな!」
ヘビーアームズ改は最後の足掻きと言わんばかりに叫ぶように言う。
「ちっ!
どんだけ計算高いんだよてめぇは!!」
1号はVSチェンジャーを構えながら歯噛みをする。
その時だった。
「へぇ?
誰が死ぬんだって?」
三人の後ろから声が聞こえた。
振り替えると、そこにははやてを担いだ束がいた。
「いやぁ大変だったよ。
本部からハッキングしようにもやりにくかったから、ここに来て直接ハッキングする羽目になったんだからさ。
…それで、お前の言いたいことはそれだけなの?
じゃあ束さんこれで失礼するねぇ」
束の言葉に、ヘビーアームズ改は青ざめてしまうが、怒りに体を震え上がらせる。
「このアマぁ!!」
ヘビーアームズ改は、勢いよく立ち上がりその場から離れようとする束に目掛けて走り出そうとした。
だが、1号はそれを見逃さなかった。
「やらせるかよ!」
『ダメ、絶対斬り!!』
瞬時にパトメガボーにエネルギーをまとわせ、今しがた1号の横を通り過ぎようとしたヘビーアームズ改の腹部に勢いよく叩きつけた。
「ぐぅあああああっ!?」
ヘビーアームズ改はまたもや壁に叩きつけられ、今度こそ元の姿に戻った。
「任務、完了だな」
「そうですね…。
あの、更正する前に、なぜISのコアを奪おうとしたのか聞きませんか?」
「そうだな♪」
2号の言葉に、1号はそれもそうだなと言った様子で男の前に屈み込む。
男はぼろぼろながらも、まだ言葉を話せるようだった。
「おい、手錠嵌める前に聞きてぇけどよ…。
何でISのコア奪おうとしたんだ?
それも、なのはを脅してまでよぉ」
「なぜ、かって?
そんなもん決まってんだろ…?」
1号の言葉に、男は息を絶え絶えになりながらも話そうとする。
「金だよ金!
金に決まってんだろ…!
ISのコアを世界中に売り捌いて、それで金を手にするためなんだよ…!
あのお方に、献上するためのな!!」」
「…そうかよ」
1号は男の言葉に心底呆れ、手錠を嵌めた。
「これで勝ったと思うなよ…。
あのお方が、必ずやお前たちに天罰を与えるのだからな!!」
男は愉快に笑いながら、消えていった。
「あのお方…。
誰のことなんだ?」
とある世界のビル。
部屋の中で、男はため息をついた。
「…あーあぁ…。
役立たずが、ヘマしやがって。
これであいつを動かすのに使った金はぱーだ。
くそっ…!」
男は怒りをぶつけるように机を殴る。
そうして、少し冷静になって、あることを考えた。
「そう言えば、消える直前にあいつの記憶の中にいた、あの緑色の女。
確かに、パトレン2号、だったか…。
あのガキ、部下使って殺してやったのに、何でいたんだ?」