転生者を更正する警察集団   作:ガンダムラザーニャ

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氷を放つ辰と金色の警察

「これは、少し不味いですねぇ」

 

右京は現在のパトレンジャーと機動六課の位置を見て、難しい顔をしながらそう言った。

 

「やっぱり、かこのこと?」

 

その様子を見ていた霞が右京に聞く。

 

「えぇ。

彼女は今、とてもではありませんが、戦える状態ではないですからね。

…これを見てくれますか?」

 

「…?

え?

何で!?」

 

右京から見せられた映像を見て、霞は驚く。

 

現在、かこだけがいる交番の前に、転生者と思われる男が降り立ったからだ。

 

しかも、背中には何かが詰まっていると思われる巨大なカプセルが背負われているのだ。

 

「…恐らく、反応を見る限りでは、あの管理局にいた転生者と一部同じようですねぇ。

目的は、その報復ではないかと」

 

「何を悠長にそんなこと言ってるのよ!

このままじゃあかこが…!?」

 

突然、机の電話がなった。

 

右京は受話器を取り、応答する。

 

「もしもし、パトレンジャー本部です。

どのようなご用件で…!」

 

右京は受話器越しに聞こえた声に目を見開いた。

 

「…なるほど、それが君のところに来たということは、今回君も一緒に行動を共にするということなんですねぇ。

わかりました。

では、そのようにお願いします」

 

右京は受話器を下ろした後、すぐにバンに連絡しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

右京から連絡が来る前、ティアナは交番を出てすぐに、バンたちが戦っている転生者の反応がある場所の近くで合流した。

 

「バンさんたちは、この近く、見たいですね」

 

「うん。

情報によると、その転生者は火炎放射器を使って攻撃してるみたいなの」

 

「それに、バンさんたちも苦戦するほどの転生者みたいなんだ!

早く行こう!」

 

なのはたちは互いにうなづいた後、バンたちがいる廃工場へと入ってきた。

 

すると、廃工場の中は燃え盛る炎に呑み込まれようとしていた。

 

その中で、バンたちが変身した1号と3号が炎をかわしながらvsチェンジャーで応戦しているのが見えた。

 

1号たちの先に、笑いながら火炎放射器から炎を吹き出している男が見えた。

 

「バンさんたちが!?」

 

「何なのよ、あの男…!?」

 

「とにかく、援護に向かわないと!」

 

「うん!

一緒に行こ、フリード!!」

 

「…皆、あの人は私が押さえるから、二人の援護に向かって!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

なのはたちは一斉に飛び、男に接近する。

 

「レストロアクロック!」

 

なのはは杖を向けて、男の体を光の輪で縛り付ける。

 

「うおっ!?

何だよ、これ!」

 

男は体を縛られ、火炎放射器が使えなくなった。

 

「はあぁ!」

 

「たぁ!!」

 

そして、スバルとエリオが左右から接近して攻撃を仕掛けようとする。

 

「はっ!

甘いんだよ!!」

 

男は二人の攻撃を転がるようにかわし、自由である足を回転して、蹴り飛ばした。

 

「うぁ!」

 

「ぐっ!」

 

「エリオ君、スバルさん!

…お願い、フリード!」

 

巨大化したフリードリヒに乗って、キャロは男に攻撃を仕掛けようとする。

 

「…おっと。

随分とでけぇドラゴン、だなっ!」

 

男はフリードリヒの頭部にぶつかる直前、ジャンプして避ける。

 

そして、フリードリヒの背中に乗っているキャロの体を蹴りつけた。

 

「きゃっ!」

 

キャロを蹴り飛ばした男は器用に手を使い、フリードリヒの背中に火炎放射器を突き付け、炎を吹き出した。

 

フリードリヒは背中を焼かれる痛みに悶え、地面に倒れ小さくなる。

 

「フリード!!」

 

「こいつ…!!」

 

ティアナはすかさず、二丁拳銃で男を撃とうとする。

 

すると、男は良いこと思いついたと言わんばかりに笑みを浮かべ、その場にとどまる。

 

そして、ティアナが撃った魔弾を自らを縛っている光の輪に当て、破壊した。

 

「なっ!?」

 

ティアナはそれを見て驚くが、その隙に男が自由になった腕で、火炎放射器をティアナに向け、炎を吹き出した。

 

「ティアナ!」

 

ティアナに当たる直前、なのはが素早くティアナを抱き寄せ、回避する。

 

「へぇ、援護に来たみたいな感じでも、あんまり大したことねぇんだな」

 

男は見下すかのように、なのはたちにそう言った。

 

さらに、男はティアナを見ながらあることを言った。

 

「…そこのツインテのガキが来たってことは、今頃あのガキは一人ってことだよなぁ?」

 

「…どう言うことよ」

 

男の言葉に、ティアナは眉をひそめる。

 

「さっき兄貴から連絡があってな。

お前が交番から出ていくところを見たってな。

ってことは、あのガキもうじき死ぬんじゃねぇのか!?」」

 

「っ!?

お前、いやお前らまさか!!」

 

その言葉を聞いて、1号は確信と同時に怒りが混み上がってきた。

 

この男がなぜ、自分達の前に現れたのかを。

 

「そうなんだよ。

俺は、ただの陽動だぁ…。

本命である、あのかこっていうガキは、兄貴が向かって、粉々にしに行ったんだよ」

 

男は高らかに笑う。

 

「てめぇ、何でそこまでかこを狙うんだよっ!!」

 

1号は声を荒げる。

 

だが、男はそれに対して暢気に答えた。

 

「そんなもん決まってんだろ?

俺はあいつを殺したんだが、転生したってんで俺達兄弟のどちらかが殺せばボーナスくれてやるって話なんだよ」

 

1号たちは男の言った言葉に歯を食い縛る。

 

すると、1号の通信機が鳴った。

 

「っ!」

 

「余所見たぁ、随分と余裕だなぁ!!」

 

男は、1号たちに目掛けて炎を吹き出す。

 

1号たちはバラバラに避けながら物陰に隠れる。

 

「はっ!

今度はかくれんぼか?

じゃあ、どこから燃やしてやろうかなぁ?」

 

その様を見た男はゲラゲラ笑いながら品選びするかのように見つめていた。

 

その隙に、1号は通信機を取り出す。

 

「長官!

バンです。

今現在、転生者と応戦中です!」

 

『やはりそうでしたか。

それで、その最中に交番に近づいて来てるのはわかりますね?』

 

「はい。

だから、あいつの攻撃の隙をついて俺かなのはたちに向かってもらおうと…」

 

『いえ、それには及びません。

ちょうど、かこちゃんのところに一人だけ救援に向かっている人がいるのです。

…僕の懐かしい知り合い、ですが』

 

「知り合い、ですか?

わかりました。

ですが、念のため何人かそちらに向かわせるようにします!」

 

1号は通信を切り、男の方に目を向ける。

 

「さて、この状況どうしたもんかな?

…?」

 

状況を打開しようと考えた矢先、男の様子が変になっていた。

 

「…?

あ?

金づるのガキが逃げ出した!?

ちっ、わかったよ。

戻ればいいんだろ!!」

 

男は苛立ちを覚えながらその場を後にした。

 

「…何だったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

一方、ティアナがバンたちの援護に向かってから、かこは交番の書斎で一人ベッドの上で俯いていた。

 

「…はぁ」

 

かこはため息をついた。

 

自身の不甲斐なさに。

 

本来なら、パトレンジャーの一員として、バンたちと一緒に戦いたいのに、今の自分にはそれが出来ない。

 

トラウマの恐怖が、それを拒んでいるから。

 

そんな時に、交番のチャイムがなった。

 

「…?

こんな時に、お客さん…?」

 

かこは足をふらつかせながら寝間着の上から制服の上着を羽織り、交番に出る。

 

「はぁい…。

あの、どちら様です…か…?」

 

かこは交番の入り口にいた人物を見て固まった。

 

目の前にいた人物は蛇のような目付きのしていて、防寒具の服を来た男だった。

 

しかも、背中には巨体なカプセルのような機材が背負われていて、ホースが繋がっていた。

 

「あ、あなたは…!」

 

かこは震えていた。

 

だが、男はそれを見て愉快に笑いながら、ホースを構えて言った。

 

「よぉ。

両親を目の前で処刑して以来だったな?」

 

その瞬間、交番は凍てつくほどの冷気に襲われた。

 

それを突き破るように、かこは外へと走る。

 

「はぁっ、はぁっ!!」

 

体から汗が吹き出る。

 

冷や汗だ。

 

あの男の顔を見た瞬間、かつてのトラウマが、より鮮明に思い出したからだ。

 

あの男が、両親を殺したのだから。

 

それも氷漬けにして粉々にして。

 

「うっ!」

 

走っている最中、かこは吐き気を催し、手で口を押さえる。

 

すると、目の前に男が降り立った。

 

「おいおい。

まさかもうギブアップってか?」

 

「…っ!!」

 

男はカプセルのホースをかこに向けて何かを射出した。

 

「ひっ!」

 

かこは怯えながら横に倒れるように避ける。

 

すると、かこがつい先ほどまでいた場所が氷に覆われた。

 

「…!

警察チェンジ!」

 

『2号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

かこはせめての抵抗と言わんばかりに2号に変身、応戦しようとする。

 

だが、いつもの調子もでないこともあり、攻撃をかわされてしまう。

 

「ほらほらぁ!

動きが止まってんじゃねぇかよ!」

 

ついには、2号は杖を使って男の足元から光線を出そうとするも、宙に浮かんでそれを避ける。

 

「おらっ!」

 

「きゃあっ!!」

 

宙に浮かびながら男は2号を思い切り蹴り飛ばした。

 

「う、うぅ…!

こ、このままじゃあ…」

 

壁に激突した2号はフラフラした手つきで、VSチェンジャーを操作する。

 

『2号!

位置について、ヨーイ!

走れ 走れ 走れ!

出動!

百・発・百・中!!』

 

2号はトリガーマシンを巨大化させて、街の外へと向かおうとする。

 

男はトリガーマシンの後を追うために、空を素早く飛んだ。

 

「はぁ、はぁ…!!

早く、どうにかしないと…!」

 

2号は焦りながらトリガーマシンを走らせる。

 

すると、いきなりトリガーマシンが大きく揺れた。

 

「あぁあ!!」

 

2号はレバーを握っていたため、座席から離れることはなかった。

 

そして、トリガーマシンの被害状況を見ると、タイヤの一部が凍ってしまい、スリップしてしまったのが分かった。

 

『はぁい♪』

 

「っ!!?」

 

男の声が聞こえ、2号はびくっと体を震わせる。

 

『ほら、さっさと出て来いよ。

じゃないと、こうしてやるぜぇ!?』

 

すると、外から何やら強烈な空気がぶつかる音が聞こえた。

 

それは冷気をトリガーマシンの外からぶつけているのだ。

 

だが、2号は座席から一歩も動かずじっとしていた。

 

「大丈夫…大丈夫だから…!

ここにいれば…、大丈夫だから…!?」

 

2号は自分に言い聞かせるようにつぶやくがあることに気づいた。

 

「この中に閉じこもってたら俺様の攻撃も通らないって算段か?

だが、浴びせ続けたらどうなるんだろうな?」

 

男は笑いながら、トリガーマシンに冷気を浴びせ続ける。

 

すると、中では強烈な冷気が入り込み、2号はそれに逃れるように冷気が漂っていないスペースへと移動し、そのままうずくまる。

 

いくら外が頑丈になっていても、強烈な冷気を浴びせ続けたら中の気温が急激に下がる。

 

例え体が氷のように粉々にならなくても、凍えさせることはできる。

 

恐怖と寒気、この二つが2号を襲い掛かっている。

 

「はあぁああああ……っ!

どうしよう…どうしよう…!!」

 

2号は自らの体を抱きしめ、泣きすすりながら震えていた。

 

『おっ、泣いてんのか?

だが、お前らの仲間なんて来ねえし、誰も助けになんか来ねえよ!

あぁそうだ。

どうせここで死ぬんだから、冥土の土産に名乗ってやるよ!

辰の戦士、遊ぶ金欲しさに殺す 断罪兄弟 兄!!』

 

男がそう名乗っているうちにもトリガーマシンの中に冷気が入り込み気温が徐々に下がっていく。

 

「た、助けて…。

バン隊長、アストルフォちゃん…!

ティアナさん、皆ぁ…!」

 

2号は震える手で通信機で1号たちに伝えようとする。

 

「ぐぉっ!」

 

直後、男は何かに攻撃されたかのようにうめき声を上げながらその場から離れた。

 

「…え?」

 

何が起こったのか、わからなかった。

 

『おい、ケガはないかい!?』

 

ふと、外から先ほどの男とは別の声が聞こえた。

 

1号でも3号でもない。

 

少しだけ、トリガーマシンのハッチを開ける。

 

「っ!

あ、あなたは一体…!」

 

ハッチを開けた先には、パトレンジャーと似た装飾をした金色のコートを纏った男がいた。

 

どこか威厳を感じるような雰囲気を2号は感じていた。

 

「よかった…。

無事みたいだったんだな!」

 

そんな威厳のある雰囲気とは別に、本気で無事を喜んでいた。

 

すると、先ほどの男がホースを金色の男に向けていた。

 

「てめぇ、何者だ!

よくも邪魔しやがったな!!」

 

「…パトレンX!

パトレンジャーの助っ人だ!」

 

パトレンXと名乗った金色の男は十手を男に向けてそう言った。

 

「上等だ!

だったら今すぐてめぇを粉々にしてやるよ!!」

 

男はパトレンXに冷気をぶつけようとする。

 

だが、それをパトレンXはジャンプしてそれをかわし、十手でホースを絡ませる。

 

そしてそのまま男の胴体を勢いよく殴りつけた。

 

「ぐほあっ!?」

 

男は衝撃に耐えられず吹き飛ばされる。

 

パトレンXは続けざまに機関車のような銃を取り出し、男が背負っているカプセルに数発大きな風穴を空ける。

 

「なっ!?

くそっ!!」

 

男は体に冷気が寄り付かないように、カプセルを投げ捨てる。

 

「こうなったら!

…!」

 

「?」

 

男が懐から何かを取り出そうとしたときに手が止まった。

 

すると、男は苛立った表情になった。

 

「くそっ!

あのガキを逃がすって何してんだよ!

…次あったら真っ先にお前を殺してやるよ…!」

 

男はパトレンXにそう言うと勢いよく空を飛び、どこかへと消えていった。

 

「…ふぅ!

あ、そうだ!」

 

パトレンXは2号のトリガーマシンに戻る。

 

「おい、嬢ちゃん大丈夫か!?」

 

「は、はい…。

なん…とか…」

 

2号は変身解除と同時に気を失った。

 

 

 

 


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