長官室で合流したバン、かこ、アストルフォ、右京、亀山の五人は、エリスの下に向かい、話を聞くことになった。
しかし、エリスの顔はいつになく暗かった。
「エリスさん、今回はどのようなご用件でしょうか。
…少なくとも、僕たちが今調べている金丈コーポレーションのことではないみたいですが」
「…」
「…その様子だと、あなたにも関わりのあることのようですねぇ」
「…はい、察していただき、ありがとうございます」
「あの…、それで、話って、何なんスか?」
事情を知らない亀山が質問した。
「「「…」」」
バンたちも、亀山と同じだった。
自分たちをパトレンジャーに任命した女神が暗い表情になるのに、気になって仕方なかったのだ。
「…これを見てください」
エリスは書物から一枚の紙を取り出し、映像化させる。
映し出されたのは、四本足の間にデビルガンダムの上半身がぶら下がった怪物が街へと向かうところだった。
「こいつは…!」
バンは思わず驚く。
「あなたたちパトレンジャーがかつて倒したデビルガンダムのコピー体です。
どこかで作られたみたいですが。
それと、この反応と波長をを見てください」
「…おやおや、これは」
デビルガンダムのデータを見せて、全員が驚きを隠せなかった。
「な、何ですかこれ…。
私達とほぼ同じじゃないですか!」
「はい、そうです。
それに、詳しく調べると、パトレンジャーの攻撃も解析しているみたいなので、通じるかどうかも…。
ですので、私はこの個体をデビルがンダムPと名付けることにしました」
「P…、パトレンジャーってことですか。
でも、どうしてこれとボク達の反応と波長と同じ上に、ボクたちの攻撃も…」
「…詳しくはわかりませんが、何者かが対パトレンジャー用に開発したのではと、考えられます。
しかも、ある程度、構造を見たのですが、今まで更生してきた、または特典を奪われた転生者の怨念が、あれを形作っているみたいです。
それに、あれは今一般人を巻き込みながら、何も悪さをしていない転生者を狙っています」
「え、転生者を標的に!?
でも、悪さとかしてるわけじゃあ…」
「それはわかってます…!
…ですけど、あれの言葉を聞いてください」
そう言って、エリスはデビルがンダムPからの音声を拾い上げる。
『転生者ナゾ人ノ心ヲ失ッタ存在ダ!
友情?
家族?
人生?
転生者二ソノ様ナ物ナアルベキデハナイ!
我々ノ邪魔ヲスルルパンレンジャー、女神エリスノ権限二オイテ実力ヲ行使スル!』
その言葉を発しながら、デビルガンダムPは街へと進撃しようとする。
これを見た全員が暗い表情となった。
デビルがンダムPの言っているそれは、パトレンジャーとエリスの方針などを極端にさせたものだからだ。
すると、バンが口を開いた。
「…エリス様、長官。
俺は、今この瞬間でも、あいつの言ってることは信じられませんよ」
「バン様?」
「バンくん、それはどういう事でしょうか」
「…俺たちパトレンジャーは、悪事を働くか特典が暴走した転生者を更生するために戦ってきたんです。
…そして俺自身が、そいつらのことは忘れないようにしてきました。
けど、あいつの言葉を聞いてると、俺たちのやってきたことについて、また疑問に持って仕方ないんです」
「と言いますと?」
「俺たちがやってるのは、転生者の更生であって、今こいつがやってるような転生者の虐殺ではないんです。
だから、俺は言ってることを信じられないし、認めたくないんです。
まるで、自分たちのやり方を根底から質悪くさせたようなの見てると、自分たちのやってきたことを疑いたくなるんです。
だから、すぐに俺たちを向かわせてください!」
「…わかりました。
くれぐれも、気を付けてください」
「了解!
かこ、アストルフォ、行くぞ!」
バンは二人を連れて、エリスの部屋を後にした。
残ったのは右京、亀山、エリスの三人だった。
すると、右京はエリスに言った。
「…あなたは、後悔しているんじゃないのですか?」
「え…?」
「あなたは、更正の名の下に、転生者から特典と記憶を奪い、別の世界へと送るパトレンジャーの力を、彼らに与えたことですよ。
そして、彼らもまた、後悔しているでしょうねぇ。
自分たちの更正のツケを、このような形で払わされることになるのですから」
「右京さん、さっきから何を言ってるんですか?」
言葉の意味がわからず、亀山が右京に聞こうとするが、それでも右京は言う。
「その顔を見れば、わかりますよ。
あなたは、人としての心を失った転生者をどうにかしたいがために僕を探し、VSチェンジャーとXチェンジャーを託した。
それは、僕たちなら、転生者をどうにかできると、信じていたからではありませんか?」
「…」
「誤解を招くようでしたら、これだけは言わせてもらいますが、僕はあなたを責めているわけではありません。
もしそのようなことがあるのなら、、誘いを受けた時にしていました。
それに、バンくんも先ほど言っていたではないですか。
自分たちは転生者の更正しているのであって、転生者の虐殺ではないと」
「そ、それはそうですけど…」
右京の言葉に、エリスはふるふると震えながら顔を背ける。
「しかしながら、あなたは後悔しているのでしょう。
こんなはずじゃなかったと、ね。
だから、今もそんなに怯えているのではないのですか?」
「…」
「…いい加減にしなさいっ!
いつまであなたは、自分の正義に後悔をしているのですか!」
「…っ!」
右京は怒りの声をあげながらエリスに言った。
エリスはその声にビクッとなり、今にも泣き出しそうな子供のような顔になる。
「確かに、あなたの後悔もわかります。
しかし、いくら後悔したところで、彼らはこれからも、パトレンジャーとして、在り続けなければならないのでしょう。
しかし、今それを否定しようというのなら、それは彼らに対する侮辱です。
だから、もしそれでも後悔するのなら、僕たち皆で、それを話し合おうではないですか。
何がいけなかったのかを、自分たちの為すべきことを」
「…」
「…亀山くん、今の戦いが終わったら、バンくんたちを迎えに行ってあげてください。
彼らも、疲れているでしょうから」
「え?
は、はい、了解です!」
亀山はエリスの部屋を後にした。
「…さて、僕の方から色々と言いましたが、あなたからは、何か言いたいことがあるんじゃないですか?」
「…はい」
そう言って、エリスは椅子から立ち上がり、右京の前に来て、顔を下げる。
「ごめんなさい、自分のやって来たことを否定しようとして。
私は、あなたの言うとおり、後悔していたんです。
あなたのことを、彼らのことを」
「やはり、そうでしたか。
…こちらも、色々と言って申し訳ありませんでした。
あなたは、転生者をどうにかしたいとわかっていながらも、ご無礼を言ったことを」
「…そうですね。
でも、こう言うのって、互いの責任を貫くべきなんですよね」
エリスは少し悲しげな顔で、右京を見ながら言う。
「えぇ」
そう言って、右京はデビルガンダムPの映像を見る。
「責任を貫くのは言うほど簡単ではありませんが、本当の意味での更正ともなると、難しいですよねぇ…」
右京もまた、どこか悲しげで、難しい顔をしながら呟いた。
「おいおい、あれは何なんだ!?」
急いで街に着いた1号たちは、驚いた。
「あれは、怪盗と一緒にいたシンフォギアの人たちじゃないですか!?」
「でも、向こうはあのデビルガンダムのユニットと戦ってて、ボクたちに気づいてないよ!?」
「知るかよ!
とにかく、俺たちは本体を叩くぞ!」
「「了解!!」」
そう言って三人は急いでデビルガンダムPの下へと走った。
「周りを囲んで撃て!」
三人は周囲を囲みながら一斉射撃をするが、傷つくどころか動きが止まる様子がなかった。
「こいつ、やっぱり俺たちの攻撃が効いてないのか!?」
「そんな…!」
「一体どうすれば…!」
「…!
お前ら下がってろ!
宇宙チェンジ!!」
『スペーススクワッド!
パトライズ!
宇宙チェンジ!
スペースパトレンジャー!!』
『キュウレンモード!』
「おりゃあぁ!!」
1号は即座にスペースパトレン1号に変身し、キュウレンモードに切り替え、高速で移動しながら両手のキューアックスで切りつける。
だが、それでも傷付かなかった。
すると、デビルガンダムPの数本の触手が1号の周囲を囲み、一斉に殴り、地面に叩き付けた。
その衝撃で普通の状態に戻ってしまった。
「バン隊長!」
「隊長!」
「くそぉ…!
これで効かないなんて…!
…!
あれは…!」
『グッドストライカー、ぶらっと参上!
今回は、怪盗に…!』
「グッドストライカー!
今は俺たちに力を貸せ!」
『おいおい、お前らの攻撃は効かないだろ!?
あぁ~、乱暴につかむなぁ!』
上空から飛んできたグッドストライカーを1号は掴み取り、VSチェンジャーに取り付ける。
『グッドストライカー!
突撃ヨーイ!
1号 2号 3号!
一致団結!!』
三人は合体し、パトレンU号に変身し、デビルガンダムPに攻撃を避けながらパトメガボーで殴りつけようとする。
「おらぁ!」
「えぇい!」
「とりゃ!」
デビルガンダムPの攻撃を避けながらひたすらパトメガボーで殴りつけるも、その体にはヒビどころか傷一つつかなかった。
「くそっ!
お前なんかに、この街を破壊させねぇ!
エリス様の名前を、語らせるわけにはいかねぇんだよ!!
…ぐぅっ!」
攻撃をしていくうちに、U号の脳内に、負の感情が流れ込み、腕が止まってしまう。
『エリス様ノ名ノ下二、実力ヲ行使スル!』
『ぐあっ!!』
パトレンU号は攻撃をくらい、建物の壁に激突する。
「これでも勝てないなんて…」
「やっぱり、ボクたちじゃあ…」
「くっ…」
U号の中にいる2号と3号は先ほどの攻撃で、まともに戦える状態ではなく、当然本体である1号も立つのがやっとの状態だった。
フラフラと立ち上がる間に次の攻撃が来る。
避けられない、とU号は覚悟した。
「させるかよ!!」
すると、デビルガンダムPとU号の間に何者かが飛び込み、デビルガンダムPの攻撃を切り裂いた。
そこには、忍者の姿をした赤いルパンレンジャーがいた。
「怪盗!」
「レッド!」
「遅かったな」
「悪い、少し手間取っていた」
周りにいたルパンレンジャーにそう言うと、周りを見て、U号の前に背中を向けた。
「どけ、お前の手はもう借りない」
「てめえじゃあ、あいつには勝てないよ」
「何だと!」
「あいつはデビルガンダムP、対お前達用に開発された機体だ」
「なんで、それを知っている。
まさか、お前が」
「あいつを作った奴と戦ったからだよ。
あっちには俺達の対策されていたデビルガンダムRってのがいたけど、まぁ倒せたがな」
「っ!」
U号はあっさりとそう言った赤いルパンレンジャーに驚く。
「そういえば、その恰好はなんデスか?」
「カラクリニンジャ、ダイノホープと同じく装着できるダイヤルファイターだ」
「なっ、なんだと!
どういう事だ」
「いや、だから俺に力を貸してくれている先輩達だよ」
「なんだと」
U号は赤いルパンレンジャーに、他の特殊な武器を持っていたことに驚く。
それも、パトレンジャーのスペーススクワッドと同様に、ルパンレンジャーのダイノホープの他にも、戦隊の力を組み合わせたものだということに。
「という事で、さっさと下がれ。
お前達では勝てないからな」
「そう言って、下がれるか!!」
U号は赤いルパンレンジャーに詰め寄ろうとすると、グッドストライカーがVSチェンジャーから外れて前に出た。
それと同時に解除され、2号と3号が1号の隣で倒れる。
「なっ!?
グットストライカー、なんのつもりだ!!」
「いやぁ、華麗な活躍をした怪盗にグッと来たから、あっちに行くだけだよ。
それに今のてめぇ達じゃあ、勝てないのは事実だろ?」
「そんな訳ないだろ、奴らだって倒せた。
ならば俺達だって…」
「悪いが、お前達に構っている暇はない!
行くぜ、グットストライカー!!」
「OK、さぁ盛り上がってきたぜ!!」
そう言って、赤いルパンレンジャーはグッドストライカーを使って走り出し、赤と銀のシンフォギアの少女と合体する。
「俺たちのような合体じゃないだとっ!?」
合体したルパンレンジャーはハンドガンを召喚しデビルガンダムPに向けて撃つが、あまり攻撃を効いていない様子で、胸に光を集めて光線を出そうとした。
「っ!
まずい!」
1号は、倒れた二人の上を覆う形で伏せるが、ルパンレンジャーが召喚した剣でデビルガンダムPの胸を貫き、阻止した。
すると、それと同時に、デビルガンダムPの体から先ほどシンフォギアの少女たちが戦っていた飛行ユニットを飛ばした。
だが、ルパンレンジャーは青とピンクのシンフォギアの少女と入れ替わりで合体し、今度はバイクを召喚し、飛行ユニットを破壊しながらデビルガンダムPがいる上空へと飛んだ。
「変わった…!」
1号は先ほどからの戦いを見て、驚いていた。
自分たちがやっている合体は、パトレンジャーにしかできないことなのに、ルパンレンジャーはそれをやってのけているからだ。
ましてや、シンフォギアの少女たちと合体するするのが、とんでもないと思ったのだ。
だが、そんなことを考えている間にも、とどめと言わんばかりに、ルパンレンジャーは黄金と緑のシンフォギアの少女と入れ替わりで合体し、拳に腰にあった鎌を纏わせ巨大化させて、差ライン炎を纏い体を回転させて、勢いよく殴りつけて撃破した。
そして、戦いが終わり、ルパンレンジャーが地面に降り立ち、1号を見る。
「お前達は自分の罪を数えた事があるのか?」
「…なんで、いきなりそんな事を聞く」
「デビルガンダムはな、俺達が人生を狂わせた転生者の怨念とお前達によって人生を奪われた恨みからできた存在なんだよ」
「そんなの、分かっている!!
だからこそ俺達のような犠牲者を出さない為には」
「笑わせるぜ、まったく」
「なんだと!!」
「まさか世界中の人間が同じような考えだと思っているのか!!」
「なに」
「てめぇらが転生して幸せかもしれない。
だけど他の奴らからしたら、会えるかどうか分からない大切な人との繋がりを無理矢理奪う行為だ」
「そんなの分からないだろう!」
「あぁ、それが幸せかどうか分からないかもしれないがな、記憶を持ったまま転生したお前達に記憶を奪われた奴らの気持ちなんて分かるかよ」
ルパンレンジャーがそう言って、飛行機を召喚し、その場を去った。
「…」
残されたのは、1号たちだけだった。
1号は変身を解除し、いつの間にか同じく変身解除していた二人を担ぎ上げようとする。
だが、ふと自分の手が震えていることに、バンは気付いた。
「…そんなの、お前らだって、同じじゃねぇのかよ。
特典を奪われた奴らの中には、普通に生きてるやつもいれば、犯罪を犯す奴もいるのに…。
何で、俺たちがそんなに言われないといけないんだよっ!!」
バンは地面を何度も殴りつける。
「くそぉっ!!!」
拳に血が滲み、痛みが走る。
それでも、地面を殴ろうとする。
すると、倒れているかことアストルフォが腕を掴んだ。
「…お前ら」
「バン隊長…、駄目ですよ、自棄になっちゃ…。
私たちも、右京長官も、亀山さんも、エリス様もいるんですから…」
「…ボクたちは、仲間なんだから、一人で、背負い込まなくても、良いんだ。
自分たちの為すべきこと…、皆で探そ…?」
「…っ!!
…お前らっ!」
バンは嗚咽交じりで二人を抱きしめる。
それは、亀山の迎えが来るまで続いた。