転生者を更正する警察集団   作:ガンダムラザーニャ

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鮮血の狩人とクレーンドリル(後編)

遡ること数十分前のこと。

 

「管理局とIS学園に同時に襲撃だなんて…。

相手は何を考えてるだろ?」

 

「ぐずっ…、すんすん…。

そんなの、分からないよ…」

 

「かこ、泣きすぎだよ。

ほら、ティッシュ貸すから」

 

管理局に急いで向かっている途中、アストルフォは今回の襲撃について考えようとして、かこは泣いていた。

 

「ありがと、アストルフォちゃん…」

 

「…良いよ、そんなことは。

多分、さっきの桜ちゃんのことで泣いてたんだよね?」

 

「…うん。

あの子みたいな転生者を、私たちが今まで更生してきたって思うと、悲しくなって…」

 

「…」

 

アストルフォはそれを聞いて黙る。

 

別にそこには動揺はなかった。

 

だけど、多少の戸惑いはあるものの、落ち着いて話を聞く姿勢でいた。

 

「…かこ、ボクの話を聞いて?」

 

「…?」

 

アストルフォはかこの身長に合わせるように身を屈める。

 

「ボクはね、報告でしか聞いたことはないけど、君は前ににゃんこ大戦争の特典を持つ転生者を更生したんだよね?」

 

「うん…」

 

「君は、あの特典の暴走を止めたうえ、その子があの世界に来たばかりで、身内も行く当てもなかったから、更生したんだよね?」

 

「それが、どうしたの…?」

 

かこは目を赤くしながら聞いた。

 

「…君は、その選択を後悔してるのかい?」

 

「え…?」

 

アストルフォの言葉に、かこは呆然とする。

 

「…ボクもパトレンジャーだから、目の前にいる人たちを助けたくて、ずっと転生者を更生してきたんだ。

でも、君はあの子を助けたくて、来世で幸せになって欲しかったから、更生したんだろ?」

 

「…」

 

アストルフォの言葉に、かこは黙る。

 

アストルフォの言うとおり、かこはかつて綾野理恵という転生者を助けたうえで更生した。

 

そこには貶めようとした気持ちはない。

 

ただ、転生して間もなく暴走してしまったことを受けて、誰にも頼ることができず、一人で泣いていた彼女に、幸せになって欲しかったから、それだけだった。

 

自分も転生して、その先で幸せになったのだから。

 

「君のその時の気持ちは、嘘だったのかい?」

 

「っ!?

そんなことないもんっ!!」

 

アストルフォの試すような言葉に、かこは半ば怒鳴るように反射的に言い返した。

 

転生した先で幸せになったことも、彼女の幸せを願った気持ちは、まぎれもない本当だった。

 

それを聞いたアストルフォは、少しホッとしたようにほほ笑んだ。

 

「…それで良いと思うよ。

いつまでも泣いていたら、それこそ君らしくないもん」

 

「え…?」

 

「さ、こうしている間にも管理局が危ない。

もうすぐ着くころだから、しっかりついて来て!」

 

「待ってアストルフォちゃん!」

 

「…?」

 

何かを隠すように急ごうとするアストルフォにかこが呼び止める。

 

「どうして、私にそんなこと言ってくれるの…?

アストルフォちゃんだって、辛いでしょう?」

 

「…辛いさ、ボクも。

あの子のような転生者がいるってことと、自分たちパトレンジャーのやってることは本当に正しいのかって、今もそう言う考えが頭の中で渦巻いてる」

 

かこに背を向けながら、腕で顔を拭いながら言う。

 

制服の裾は、よく見ると濡れていた。

 

「でも、今うじうじしていたら助けれる人達を助けることができない…!

そんなの、ボクは嫌だ!

だから今だけは辛くでも前に進まないといけないんだ!」

 

「アストルフォちゃん…」

 

かこはそれを聞いて、自分たちが改めてこんなことをしている場合じゃないと思った。

 

こんなところで立ち止まっていたら、管理局の被害が広がる。

 

あそこにいるティアナやなのは、機動六課のメンバーや他の魔導士たちが危ない。

 

「うん、そうだよね。

行かなきゃダメなんだよね…」

 

「うん、行こう!

…!?」

 

二人が自分たちのやるべきことを見つけて、再び管理局に向かおうとした途端、目の前に時空の歪みが発生する。

 

その歪みが、二人を吸い込もうとする。

 

「これは…、まずい!」

 

「うぅ!!」

 

二人はその力に吸い込まれないよう耐えるが足が離れて、とうとうその歪みの中に入ってしまった。

 

「きゃあああっ!!」

 

「うわあああ!!!」

 

 

 

空間の歪みに吸い込まれたかことアストルフォは、別の世界へと放り出された。

 

「きゃっ!?」

 

「いたた!」

 

二人は歪みから解放されて、地面に叩きつけられた。

 

「痛いなぁ、もう。

…ここは?」

 

「アストルフォちゃん、あれを見て!」

 

「え?

って、うわっ!?」

 

かこが指を指した先を見たアストルフォが驚く。

 

その先は、真っ赤な粒子が吹き荒れるIS学園のアリーナの前だった。

 

「ここって、隊長と亀山さんが行った先の…」

 

「何か嫌な予感がする。

アストルフォちゃん、急いでバン隊長たちと合流しよう!」

 

「うん、任せて!」

 

二人はそう言ってアリーナの中へと入っていった。

 

 

 

「あれはバン隊長と亀山さん!?」

 

アリーナの中へと入った二人が目にしたのは1号とパトレンXが一緒に武器を構えて何かを話をしているところに、赤黒い粒子を撒き散らしている男が斬りかかろうとしている場面だった。

 

「まずい、早く止めないと…!」

 

「でもどうやって」

 

「ボクは足が早いから、これで足止めはできるはずだ…!」

 

そう言って、アストルフォは馬上槍を構えて、すごい勢いで走った。

 

「死にやがれ!」

 

「させないよ、トラップオブアルガリア!!」

 

アストルフォは光輝く馬上槍で穿つ。

 

その瞬間、男の足が止まりその場で崩れた。

 

「待ってよアストルフォちゃん!」

 

かこはアストルフォを追うように走ってきた。

 

そして現在に至る。

 

「かこ、アストルフォ!?

お前ら、管理局に向かったんじゃ…!」

 

「それが、ボクにもわからなくて…」

 

「でも、向かってる途中で次元が歪んで、その中に入ってしまって、気が付いたらここに来てたんです…!」

 

「まさか、多次元融合の影響か…!?」

 

「だとしたら、早くこいつを更正して行かないと!」

 

「ねぇ隊長」

 

アストルフォが1号の肩をツンツンする。

 

「…?」

 

「しばらく見てなかったのに、明るくなってきたね!」

 

「おいおい、俺今マスクで顔見えないはずだぞ?」

 

「でも、以前と比べると、だいぶ明るくなりましたよ?」

 

「そ、そうか?

そうなんだな…」

 

それを二人に言われて心当たりのある1号。

 

そして、真剣な眼差して、二人を見ながら体が男の方へと向ける。

 

「かこ、アストルフォ…。

俺は戦うぞ。

一人の人間として、転生者として、パトレン1号として…!

だから、一緒に戦ってくれ!」

 

「…わかりました」

 

「うん、了解だよ!」

 

それを聞いた二人は1号とパトレンXの隣に立ち、VSチェンジャーとトリガーマシンを取り出した。

 

「「警察チェンジ!!」」

 

『2号 3号!

パトライズ!

警察チェンジ!

パトレンジャー!!』

 

「パトレン1号!」

 

「パトレン2号!」

 

「パトレン3号!」

 

「パトレンX!」

 

「「「「警察戦隊 パトレンジャー!!」」」」

 

「転生者を更生する者として、実力を行使する!!」

 

「更生だぁ?

やれるもんならやってみろ三下ぁ!!」

 

脚の自由が戻り、さらに粒子を撒き散らしながら男は大剣を構える。

 

「よし!

皆、散開して相手を攪乱してくれ!」

 

「「「了解!!」」」

 

パトレンXの指示を聞いてバラバラに動く。

 

「おいおい!

そんなんで俺を攪乱できてるつもりかよ!?

行け、ファングぅ!!」

 

男はファングを展開して四人に攻撃を仕掛けようとする。

 

四人は避けながらファングを撃っていく。

 

「くそっ!

うねうね動きやがって…!

…!?」

 

撃っていた1号は悪態を突く。

 

その時に自分の持つVSチェンジャーが光り出し、何かが飛び出した。

 

「あれは、あの時と同じ…!」

 

2号は以前病室にいたときと同じ現象が起こったことを思い出す。

 

1号はその何かを手に取った。

 

それは中にドリルの入った黄色のクレーン車のトリガーマシンだった。

 

「これは、やるしかない!」

 

『クレーン!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

1号は即座にそのトリガーマシン取り付け発動する。

 

その瞬間、クレーン車が右腕を覆う武器となった。

 

「バイカーとは違う?

けど、行くぜ!!」

 

1号は勢いよく右腕を振るうとクレーンのアームが伸びて次々とファングを絡め取り、地面に叩きつけた。

 

「なんだよあれ…!」

 

「すっごーい、アームが伸びた!」

 

「あれだけあったファングが一瞬で…!」

 

「うおっ!?

こいつはすげぇ!」

 

「てめぇ、俺のファングを…!

トランザム!」

 

「させるかよ!」

 

男の装甲がさらに赤く染まろうとした直前、パトレンXは懐に入り胸部と脚部の太陽炉をXロッドソードで切り裂き、機能不全を起こす。

 

「がっ!?

てめぇ、よくも!!」

 

「当たるか!」

 

男は大剣を振り回すもパトレンXはジャンプして、その上で男の背中を踏み台にして飛び越える。

 

「これでとどめだ!

かこ、アストルフォ、これを使え!」

 

1号はすぐにスペースパトレン1号タイムモードに変身し、2号にバイカーを、3号にクレーンを渡した。

 

3号は先ほどの1号のやり方を見て覚えたのかすぐに右腕に装着した。

 

「そうだな!

早く終わらせて、管理局に向かわないとな!!」

 

パトレンXはXロッドソードを構えながら言った。

 

1号は二丁のアサルトベクターを連結させて、2号はトリガーマシンバイカーをvsチェンジャーに装着して、3号は右腕を持ち上げて狙いを定めドリルをアームに乗せる。

 

『バイカー!

パトライズ!

警察ブースト!!』

 

『一手 二手 三手 十手!

一騎当千!!

イチゲキエックスストライク!!』

 

四人はエネルギーを溜める。

 

「とどめを刺されるのはてめぇらだ!

覚悟しろ、ごみクズが!!」

 

男はそれを見て対抗しようと全身に火花を散らしながら両腕のケーブルを胸部に繋げ、背部のキャノン砲を展開する。

 

「いや、とどめを刺されるのはてめぇだ!!

くらえ、スペーススナイプバーニング!!」

 

「バイク撃退砲!!」

 

「ストロング撲滅突破!!」

 

「エクセレントエックス!!」

 

四人の必殺技が一つになるように寄り添いながら発射され、アルケーは赤黒を通り越してどす黒い極太ビームを撃ちだした。

 

二つの攻撃が衝突するがそれも一瞬のうち。

 

すぐにパトレンジャーの攻撃がアルケーの攻撃を押しのけ、体を貫いた。

 

「ぐぅああああああ!

馬鹿な、この俺が、こんなところで!!

こんなごみ共にぃぃぃぃぃいいいいいいっっっっ!!!!!」

 

男は勢いよく壁に激突して装甲もバラバラに破壊された。

 

その時に、男が持っていたISのコアとその待機状態の物が散らばった。

 

「…やったな」

 

「はい、そうですね」

 

「えへへ、ボクも初めて使ったけど、これすごかったよ!」

 

「さて、早く更生して、管理局に向かおう!」

 

「それもそうですね」

 

そう言って1号は手錠を取り出して男の下へと近付いた。

 

だが、その時に男に異変が起こった。

 

「うぐっ、何だ、これっ!

うっ、がぁあああああああああっ!!」

 

男がうめき声を上げた瞬間、体から先ほどの装甲のロボットのオーラが噴き出し、空間に次元の穴を開けて飛んで行った。

 

「空間に穴がっ!?」

 

「まさか、特典が暴走を!?」

 

1号は男を更生するが、空間の穴が閉じない。

 

むしろ地響きが起きている。

 

「あの特典を追えば…!

かこ、アストルフォ、亀山さん!

行くぞ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

四人は男の暴走した特典を追うために次元の穴を通った。

 

「…何だよこれ…!!」

 

1号たちが見た先は、同じく次元に穴が開いて地響きが起きている時空管理局だった。

 

しかも、どういうわけなのか倒れている襲撃者とルパンレンジャーがいた。

 

 


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