「…」
亀山とバンとかこが 桜たちを家に送っている間、アストルフォはエリスとの話を終えて、交番でただ一人で髪の手入れをしながら先ほどのことを考えていた。
「はぁ…」
エリスの言い分もわかる、無茶はいけないことなのだから。
それに、前にバンたちからもう無茶なことはしないって約束したのだから。
だから、予め保険として特典の調整したり、方法自体が自分は無傷ではすまないことであればちゃんとバンたちに伝えて了承を得たりした。
転生者と戦うのに、自分は死ぬつもりはないのだから。
なのに、どうして時々自分の命を投げ打ってまで人を助けようとするのだろう?
「ボク、生前じゃあこんなことする奴じゃなかったのにな…。
…!」
すると、交番のパソコンに束からのメールが届いたので、開いて読むことにした。
『先ほどからいっくんの様子がおかしい。
箒ちゃんや他の女の専用機を取り上げようとしててちーちゃんも困ってるみたい。
どういうわけか自作した探知機でいっくんから転生者のくそ野郎の反応がちょぴっとだけあるから、すぐに来て!』
「え!?
いっくんってあの世界の主人公だよね、なんでそんなことが…!
いや、まさか…」
アストルフォの中で昨夜のことが過り、すぐさま髪を三つ編みに結び直して出動した。
アストルフォはIS学園に着いてからすぐに教室へと向かうと、一夏が他の女子からISの待機状態であろうアクセサリーを取り上げて、千冬が注意して止めに入っている姿があった。
しかもよく見ると、一夏の目に光が灯っていない状態で微かにだが転生者の反応がある。
また言動も正気ではない様子だった。
「こらそこの君、彼女たちが嫌がっているじゃないか!」
アストルフォはこれ以上騒ぎが続くといけないと考えて教室に入って止めに入る。
「…!
君は…!」
「何するんだよ、放せよ!?
お、お前は…!」
「だ、誰ですの!?」
千冬や一夏はアストルフォの顔やvsチェンジャーを見て動きを止めて、他の女子たちはいきなり制服を着ていない部外者を見て動揺する。
確かにいきなり部外者が入ってきたらそんな状況になってしまうが、今はそれどころではない。
アストルフォはそう考えて一夏の方へと向く。
「…見た感じだと、君は彼女たちからそれを取り上げているように見えたけど、一体どういうつもりなんだい?」
「…お、お前には関係ないだろ!
俺はただ皆を守るために、みんなが戦わないように専用機を取り上げてるだけなんだよ!」
「織斑、いい加減にしろっ!!」
「千冬姉は黙っててくれよぉ!!
俺が、俺が皆を守るんだよ!!」
「い、一夏…」
一夏は千冬を突き放し喚き散らす。
それを見た女子たちは恐怖していた。
「やめなよ、君は一旦落ち着けよ!」
「うるせぇんだよ!!」
「ぐっ!」
アストルフォは一夏を止めに入ろうとするが頭を思い切り殴られてしまう。
「…っ!
あまり気が進まないけど、こうなったら!」
「ぐっ!
は、放せぇ!!」
このままでは埒が明かないと思ったアストルフォは暴れる一夏の手を捻って押さえつけ、手に持っていたアクセサリーを落とさせる。
「聞きたいけど、なんでこんなことをしたの?
このアクセサリーを取り上げることが守ることと繋がるみたいなことを言ってるけど」
「そ、そうだよ!
あいつらは専用機があるから戦えるんだよ、それって転生者っていう連中とか、絶対天敵がいる線上に向かうってことで危険って思うだろ!?
けど俺は違う、俺は千冬姉の弟だから、あいつらがいなくても戦えるんだ、俺一人で十分なんだ!」
「…それを証明するために、彼女たちから専用機のアクセサリーを取り上げようとしたのかい?」
「そうだって言ってるだろ!
俺は千冬姉の弟だから、俺が皆を守らなきゃいけないんだ!!」
「…」
一夏の言葉を聞いて、アストルフォは取り押さえた状態で考えた。
先ほどから一夏は守るとか自分は千冬の弟だからと言っているが、何でここまでのことをするのか。
しかも転生者の反応を踏まえて考えると、一夏は何者かに何かをされてこんなことをしているのではと。
そう考えたアストルフォは、一夏に言い聞かせるように言った。
「ボクは、君が誰かを守ろうとする意志はとても素敵だと思うよ?」
「…え?」
「君は多分、前の転生者の襲撃の件で皆の表情が暗くなるのを見て、何もできない自分が嫌だったんだろ?
それはボクだって嫌だよ、すっごく嫌だ」
「…!」
「けど、君はこんなことしなくても、君はちゃんと誰かを守ってきたじゃないか!
ボクの隊長から聞いたよ、あの時クラスメートの子を連れてアリーナから脱出したって!」
「そ、それは…」
「確かに君は隊長に言われて脱出したかもしれない、でも君は実際にその子を守っただろ?
なら、それでいいじゃないか!」
アストルフォの言葉に動揺を隠せない一夏。
それでもアストルフォは言葉を紡ぐ、彼に言ってあげなくちゃいけないことを。
「君と、君のクラスメートたちはどんな関係はよく知らない!
でもこの先一人で戦うにしても無理がある、絶対にどこかで綻びが生まれる!」
「けど、俺は、千冬姉の弟だから…!」
「確かにそうかもしれないけど、君は彼女の弟であって、彼女自身じゃないだろ!
君は、君のお姉さんと同じぐらいに強いのかい、経験はあるのかい?」
「…」
それが遠回しに自分が弱いと捉えてしまったのか、一夏は悔しそうに顔を俯く。
「ねぇ、ボクの顔をよく見て、ボクの話を聞いて?」
「…?」
抵抗する力が弱まった一夏の体を自分の方へと向けさせて、目をしっかりと合わせる。
その目はどこか怯えているようにも見えた。
「君は、今は弱くても良いんだよ。
お姉さんはお姉さん、君は君なんだから。
それに君は一人じゃない、お姉さんも、クラスメートの子もいる、皆がいる」
「あ…」
一夏は教室を見ると、そこには自分のことを心配そうに見ているクラスメートたちと千冬がいた。
「…絶対に君が一人で背負わなければいけないなんて、彼女たちは望んでいないと思う。
だから、これから皆と力を合わせていけばいいんじゃないかな?」
「や、やっていいのか、そんなことを、俺が?
俺は、千冬姉に憧れて、千冬姉の名前と皆を守りたいのに…」
「あぁ、してもいいさ。
大事なのは、今を大事にして、いつかその憧れを枯らさないで目標に達することと、自分たちが力を合わせれてこの先のどんな困難な試練でも立ち向かえると、思うことさ」
アストルフォは、一夏の考えに沿ったことに対する言い分と右京からよく言われている言葉を言った。
それを聞いて、一夏の目に光が戻り涙が溢れ、そのまま壁にもたれ掛かり顔を隠す。
「ごめん、皆…!
ごめん、千冬姉ぇ…!」
「うん、よく言えたね。
君はまだ学生なんだから、皆に頼って、皆から頼られて、お互いを助け合えばいいんだ」
「…あぁ!」
「…?」
それと同時に、一夏の肩から靄が現れ、矢じりのような形になったと思ったら消えていった。
「今のは…」
「一夏!」
「一夏さん!」
「一夏…!
良かったな…!」
アストルフォはさっきの矢じりの靄について考えようとしたら女子たちが一夏のもとに駆け寄り、千冬は涙を指で拭いている。
「…どうやら、彼はこれで一件落着、かな?」
正直どうなるのかとひやひやしていたアストルフォ、先ほど言っていた言葉のほとんどは、前回の襲撃のことと錯乱した一夏が言っていた言い分から予想を立てていたに過ぎない。
というか、ほとんど初対面の相手にここまで言って変わらなかったらどうしようかって内心思っていたのだ。
『はぁい、調子いい一夏?』
『っ!?』
そんな時に、教室に誰かの声が聞こえた。
「こ、この声は!?」
「ねぇ君、この声を聴いたことあるのかい!?」
「あぁ、俺に、矢を突き刺した奴の声だ!」
「っ!?」
一夏の言葉に、アストルフォは驚く。
それと同時に、転生者の反応が出てきたのだ。
『OH その様子だとおすすめがまともに発動する前に拒否してしまったようだね…。
せっかく、矢を突き刺して君の誰かを守るという意思を暴走させたのに…、残念だな。
後しばらくすれば君を内側から矢を突き刺して自爆させるところだったのにね』
「…君が彼を暴走させたってことだよね?
どこにいるっていうのさ、出てきなよ!」
『そう急かすんじゃあない、今出るんだからさ』
そう言って声の主は、教壇の影から這い出るように現れた。
その正体は、赤い髪にメイクで顔を白く塗ったピエロだった。
「はぁい、初めましてパトレンジャー。
俺の名前はペニーワイズ、ギャングラーの暗殺部隊の一人さ」
「…警察チェンジ」
アストルフォはペニーワイズの姿を見て、戦闘態勢としてパトレン3号に変身しパトメガボーを構える。