教壇の影から現れたギャングラーの暗殺部隊の一人、ペニーワイズ。
そしてそれに対峙するパトレン3号と一夏たち。
「…戦う前に、一つ聞いても良いかい?」
「あぁ良いぞ、手向けの言葉として答えてやる…」
ペニーワイズはニタリと笑みを浮かべながら答える。
「何故彼を狙ったんだい?
しかも他の子から待機状態の専用機を取り上げさせるなんて」
「おいおい、専用機を取り上げたのはそいつの勝手だぜ?
俺はただ、そいつの愚かさを見て面白そうだったから、絶望させるために狙ったのさ。
えーと、何だっけ、俺は良い姉さんを持ったよとか俺が皆を守る、的な?
一人じゃ何もできない癖にな!」
「くっ、こいつ…!」
「待って!
…つまり君は、暴走させたうえで絶望させて自滅させようとしたってことかな?」
「あぁそうさ、今の時代、様々なところで多次元融合が起こってるから、並行世界でのそいつの様を見せてもらったよ。
守る守るとか言っておきながら平気な顔を女心を踏みにじるド低能だってことがな!!」
それと同時に、ペニーワイズは天井にめがけて数本のナイフを投げつけて照明を破壊し、教室は暗くなる。
女子たちの悲鳴が上がり、3号たちは警戒する。
それを嘲るように笑いながらペニーワイズは影の中に消えていった。
「あいつ、何を仕掛けるつもりだ!」
「皆気を付けて、何をされるかわからないから専用機を持ってる子は、すぐに展開して戦えない子を守って!
…織斑先生も、それで良いですよね!?」
「…こうなってしまったら仕方ない。
私が責任を持つ!」
千冬から許可をもらい、一夏を含む女子たちは専用機を展開し、戦えない女子たちを守るように身を寄せる。
『一か所に固まっただけじゃないのか?
こんな薄暗闇の中、そんなことをしようとただぶち殺されることしかおすすめはできないなぁ』
「くっ、一体どこから…!」
3号は暗くなった教室に目を凝らしながらパトメガボーを構える。
『イヒヒ、どこ見ているんだよこっちだ!』
すると、ペニーワイズは青いISを展開した金髪の少女の目の前に現れ、口から矢を吐き出すように出して、少女を突き刺そうとする。
「なっ!?
くっ!」
「セシリア!!」
「大丈夫ですわ、スターライトで防ぎましたので!」
薄暗闇の中よく見えないがよく見るとセシリアと呼ばれた少女の持つ狙撃銃に矢で刺されたような穴が空いているのが見えた。
だが、それで安心するのはまだ早かった、3号はその狙撃銃を見たときに違和感を覚えたのだから。
「ねぇセシリアって言ったかな、今すぐその狙撃銃を放した方が良いよ」
「な、何でですの!?
なぜそのような言葉に従わなければ…!?」
「君には見えないのか!?
その狙撃銃から、矢がいっぱい生えてきてるんだ!!」
「え…?」
セシリアは恐る恐る自分の狙撃銃を見る、そこにはひび割れながら内部から矢が伸びるように生えてきている狙撃銃があった。
「きゃああああ!?」
セシリアは思わずその狙撃銃を投げつけると一気に矢がさらに生え始めて爆散した。
「な、何ですの、これは…!」
「わからない、でもあの矢の攻撃に喰らうのはまずい!」
セシリアたちは、狙撃銃が爆散した様を見て戦慄を覚える。
『OH…そこで言っちゃうのは卑怯じゃないかなパトレンジャー…。
せっかく目の前で人が死ぬか、病院送りになるほどの大けがするというショーを披露できたというのに…』
おどけながらも、心底残念そうにするペニーワイズ。
「あの矢は、まさか…」
3号は警戒を強めながら先ほどの一夏の肩から出た矢じりの煙と先ほどセシリアの狙撃銃が爆散したことについて考えていた。
「…君の持ってるその矢ってまさか、刺した対象を内側から破壊する能力か暴走させる能力があるだろ!」
『んん?
流石はパトレンジャー、よく気づいたな。
あぁその通りだとも、俺の持つ矢は元々はスタンド能力を発現させるやつだったが、確実に殺せるように今言ったことができるように改造したやつだ!』
それと同時に影から矢が伸びてきて3号はそれを間一髪で避ける。
矢は空を穿つとそのまま影の中へと隠れて、今度は3号の目の前にペニーワイズが現れ牙を向きながら襲いかかろうと影から這い出て、3号の腕を掴もうとする。
「くっ!」
3号はすかさず、後ろに飛び、教室の外に出る。
日光が降り注ぐ、廊下へと。
すると、ペニーワイズの体は影に出る直前にピタリと止まり、そのまま沈んでいった。
「…え?」
追い付かれるのではと思った3号は呆然とするが、今のことと照明を破壊したことで、あることを思い付いた。
「…まさかっ!」
だがそれと同時に、今の教室の現状がどれほど危険かを理解してしまった。
「皆急いで教室から出てっ!
その薄暗闇の場所は危険だ!」
「なっ、お前は何を言っているんだ!?」
「さっきあいつが照明を破壊したのは、教室内を自らの狩場にするためなんだ!
だから暗くすることで自分の影に入れる範囲を広げてるんだ!」
「ということは、相手は影の中を移動しているのか!?
おい貴様ら、急いでISを解除して、専用機を持っていないやつと一緒に廊下に出ろ!」
『はっ!
今更種が分かっても遅いんだよノロマが!!』
「いやああああっ!!」
3号の注意もむなしく、一人の生徒の足を掴んだペニーワイズ。
そのまま口から矢を出して、生徒を突き刺そうとする。
「やめろぉっ!!」
「ぐほぁっ!?」
3号が再び教室に入りパトメガボーでペニーワイズの頭部を叩き付け、そのまま影の中に沈める。
「大丈夫!?」
「は、はい…!」
生徒を千冬に預けて、3号はどうしようかを考える。
まず、専用機を持ってる生徒のそばなら安全かと考えたが、こんな室内だと狭くて行動が狭まってしまう。
かといって、彼女たちを廊下に連れ出そうとしてもその隙にさっきのように誰かが狙われてしまう。
そう考えた3号は教室の窓を見ると、あることを思いついた。
「…!
なら、あいつの特典を利用するしかない!」
「おい待てよ!
こんな暗いところで走ったら…」
3号は、床を蹴るように走り、窓に向かって走る。
その間にも影から矢が一本ずつ3号の動きを捕らえるように飛び出していく。
だが、3号はそれを躱していき、窓側の壁にたどり着いた。
その瞬間、3号の頭めがけて、矢が飛び出した。
3号は反射的に横にずれるように避け、壁に突き刺さりそのまま元の影の中に戻った。
「ひゃはっははは!!」
「あぐっ!」
矢が戻ると同時に影からペニーワイズが飛び出して、そのまま3号の両腕を掴み壁に叩き付ける。
「さぁて、これからお前の顔を抉って、そこから内臓を引きずり出して殺してやる…!」
「…あぁ、そうだね。
確かに、このままだとボクは君に殺されるかもしれないね。
でも、その前に君がやられることになるけど」
「なんだ寝言か?
だったら、今すぐ頸動脈を切って即死することをおすすめするよ」
「いいや、違うね。
君は絶対にやられる、ボクの隣の壁に矢を突き刺した時点でね」
「…は?」
「信じられないなら見てみなよ。
壁がどうなっているのかを…!!」
「…まさか!?」
3号の言葉に焦りだしたペニーワイズは壁を見ると、矢で突き刺した壁の内側から矢が生え始めて、ひびが入っている。
そして次々と生えてくる矢に耐えきれなくて壁に徐々に穴が空き始めて、そこから光が漏れ始める。
「さっきボクが窓側の壁に向かって走ったのは、君に矢を使わせるためだったのさ。
その、アンリミテッドロストワークスとか晴れの炎みたいな能力を持つ矢をね!」
「お前、まさか…!」
程なくして、壁に大きな穴が空き、そこから漏れ出した日の光が二人を覆い始める。
光を浴びた途端、ペニーワイズの体が燃え始めた。
「がぁあああああああ!!!??
パトレンジャー、貴様ぁあああああ!!!?」
「…やっぱりだね。
君の特典はその矢の他にも、自らをジョジョのブラックサバスのようにさせる特典だね。
さっき君が日の光が出てる廊下に出なかったのは、出れなかったからだ、こんな風に体が焼けるからね!」
「がぁあああ!!?
は、早く、影の、中にぃ…!」
「させないよ!
君を絶対に逃がすわけにはいかない!」
3号は自分も燃えてしまうことを気にせずにペニーワイズを羽交い絞めにし、ペニーワイズの体が日の光の当たるように向ける。
ペニーワイズの体が燃えていき、なのもかもが黒焦げになっていく。
「が、ぁああ…」
燃え尽きたペニーワイズはそのまま力尽きて倒れる。
所々ピクピクと動いてるので生きているようだった。
「な、なんとか倒せた…うぐっ!」
「お、おい!
大丈夫か!?」
3号は羽交い絞めにしたときに腕と胸に軽い火傷して、そのまま膝をつき、一夏がISを解除して駆けつけようとする。
「…うん、何とか。
あとは、こいつを…!?」
3号が一夏の方に向いてそう言った瞬間、正面からさっきを感じた。
振り返ると黒焦げになっているペニーワイズが半身だけを起こして口からボロボロで折れかけてる矢を出して、一夏に目掛けて突き刺そうと口から伸ばす。
「え…?」
「危ないっ!!」
3号は一夏を突き飛ばし、背中から胸にかけて貫通するように矢が刺さった。
「ぐっ、うぅぅぅっ!!」
想像を絶する痛みに3号は悶絶する。
しかし、そのまま体を回転して矢をへし折り、ペニーワイズに目掛け手錠を投げつけ首にはめる。
「うぐっ、鼬の最後っ屁のつもりが…!
だがまぁいいさ…。
今の一撃に、内部から破壊する力はないが、トラウマを暴走させることはできる…。
…刺してる間に過去を見せてもらったが、お前の闇は深いぞ…、パトレンジャー…!」
その言葉を最後に、ペニーワイズは光の粒子となって消え、3号に刺さった矢は消えた。
しかし、矢がなくなったが、3号の中で体の痛みよりも強い何かが沸き起こりそうになっていた。
「うっ、ぐっ、あ…っ!」
「…お、おい、大丈夫なのか!?」
一夏の声にも反応できない、むしろ聞こえない。
3号の中で、何かがよみがえる。
自分が住んでいた屋敷、いつも微笑まし気に笑っている両親、いつも優しく励ましてくれる執事の爺や。
様子が変わってしまった爺やに、両親の薬と水、毒を盛られて死んだ両親、奪われた財産、爺やに成り代わっていた誰か。
そして、
「あぁ…、あぁああ…!
うわあああああああああああっ!!!!!」
3号は頭を押さえて涙を流してのたうち回る。
それと同時に変身が解除される。
「おい、しっかりしてくれ!」
「下がれ織斑!
おい、誰か彼を保健室に連れて行ってくれ!
私は彼の所属先に連絡する…!」
千冬は生徒たちに頼んでタンカーを用意してもらい、バンたちパトレンジャーに連絡を入れる。
その間にアストルフォは涙を流してうずくまっている。
「ごめんなさい…ごめんなさい…!
父さん…母さん…爺や…」
アストルフォの悲痛な声をあげながら頭を押さえてそのまま気を失った。
それからしばらくして、桜と桜の両親を保護し終えたバンたちの耳にアストルフォが倒れたという情報が届いたのだった。