「…」
「かこ、アストルフォの様子はどうだ?」
「はい、傷は早い段階から治せましたが、未だ意識が戻ってません。
…おそらく、先ほど聞いた矢の影響ではないかと」
「…そうか」
バンとかこはアストルフォが倒れたと聞き、IS学園の保健室に来ていた。
亀山は千冬から今回の状況についての説明を聞きに行っている。
かこは特典の力で傷を治せはしたが、情報で聞いたペニーワイズの矢の影響でトラウマが暴走したことが原因でまだ目を覚まさない。
「…ところで、そっちは見舞いか?
織斑先生の弟さん」
「…」
バンはそう言って振り返ると保健室の入り口付近の椅子に座っている一夏がいた。
バンたちが駆けつけてアストルフォが運ばれたときに互いに自己紹介を済ませてある。
「なぁ…。
確かそいつ、アストルフォって言うんだよな?
ちゃんと、目を覚ます、のか?」
「…さぁな、その辺りはまだ俺たちにもわからねぇ。
一応体の傷は治ったけど、トラウマが蘇って倒れたって話だからな…」
「…ごめん、俺のせいで、お前たちの仲間がこんな目にあって」
一夏は先の件で後ろめたさと罪悪感から、目を伏せながらそうつぶやいた。
自分が油断してISを解除した状態で近づいたから、敵がまだ動ける状態だということに気が付かなかったから。
「アストルフォは別にお前のせいでこんな目にあったとは思ってもねぇと思うぞ?」
「え?」
「アストルフォはな、お前たちを転生者から守りたくてこんな目にあったんだ。
…仮にお前以外の奴に攻撃を仕掛けようとしたとしても、こいつは絶対そうしただろうさ」
バンは眠っているアストルフォの頭を一撫でして、一夏に近づき視線を合わせるように目を合わせる。
その目には怒りとか憎しみといった感情はなかった。
「…そりゃあ、俺たちだってこいつがこんなことになったのは嫌な気分だ。
実際前に無茶したことが原因で死にかけたことがあったからな。
それで二度と無茶な真似はしないって約束もしたしな」
「…」
「でも今回は身を挺してお前のことを守ったんだ。
お前に対して怒ってないとか責めてないとか言ったら嘘になっちまうが、それでもアストルフォが助けた命なんだ。
だから、俺たちはお前のことを責める気はないし、悪く言うつもりもない。
そもそも俺たちはこれでも警察だからな」
「…でも、俺は」
バンの言葉を聞いても項垂れてしまう一夏、それを見かねたバンは一夏の手を引っ張りアストルフォの前に座らせる。
「…バン隊長?」
「お、おい!
何を…」
「決まってるだろ、そんなに自分が許せないなら、目が覚めるまでアストルフォの手を握ってろ」
「い、良いのかよ、それだけで…」
「良いも何も、今俺たちにできるのは、それだけなんだよ。
それに、俺たちも、少しばかり用事ができたんでな」
「え?」
「あの、バン隊長、それってどういう…!?」
状況が呑み込めないかこがバンに聞こうとするが、バンが手に持っていた探知機で全てを察した。
この学校に、それもこの近くに転生者がいるということを。
「…わかりました、そういうことでしたら私も行きます!
…一夏さんはここで、アストルフォちゃんと一緒にいてください」
「お、おい!
さっきから何を言って…!」
「…近くに転生者が現れました。
この近くにいるのはわかってますが、敵かどうかもわかりません。
それに、この近くで戦闘が開始したら、無事じゃすみません。
ですので、あなたは万が一のことがあったら、アストルフォちゃんを連れて逃げてください」
「…!
あ、あぁ…」
「一夏、悪いがアストルフォのことは任せるぜ。
…行くぞかこ」
「了解!」
二人は保健室の外へと出て、一夏と意識のないアストルフォだけが残された。
「アストルフォ、俺は…!」
一夏は、アストルフォの手を強く握って目が覚めることを願った。
その時、一夏は気づいていなかったが、アストルフォの握られていない手は、僅かながら指がピクッと動いていた。
「…」
「…」
バンとかこは近くで発生した転生者の反応を探るため学園の廊下を歩いていた。
「あの、バン隊長」
「…どうしたんだよ」
「アストルフォちゃんのことなんですけど、大丈夫でしょうか?
…正直、私には、わかりません」
「それだったら、俺にもわからねぇな。
けど、あいつがトラウマで我を忘れて早まったことしねぇよう祈るしかねぇよ。
それに、今は一夏の奴がいるし、大丈夫だと良いがな」
「あら、織斑君って保健室にいるのかしら?」
「「っ!?」」
二人は声がする方向に振り向くと、金髪の長い髪をした少女がいた。
「…何なんだ、お前?
その制服、見る限りじゃあここの生徒だよな?」
「…一夏さんに、何か用があるんですか?」
「別にぃ、ただ彼とお話がしたいのよ。
それじゃあねぇ♪」
「まぁ待てよ」
「…!」
バンは自分に背中を向ける少女の頭にVSチェンジャーを向ける。
「…あら、警察の方が、そんな真似をしても大丈夫なのかしら?」
「あぁ、確かにいけねぇ真似だな、俺だってやばいと思ってる。
けど、そうすんなり保健室に行くんならよぉ、その殺気、ちゃんと隠しておいた方が良いぜ、転生者さんよぉ?」
「…っ!?」
少女が振り返ると、バンはVSチェンジャーを向けてる他にも、探知機で自分のことを察知していることに気が付いた。
かこはVSチェンジャーとトリガーマシンを構えている。
「…まさか、すぐにバレるなんて、思いもしなかった、なっ!!」
「うおっ!?」
少女は右腕にISを展開してバンを凪ぎ払おうとするが、反射的に避けられる。
「…あなたは、何が目的ですか?
それほどの殺気出しておいて、一夏さんに何をするつもりですか!?」
「だから、お話がしたいって言ってるだろ?
別れの言葉とか遺言を聞くためになっ!」
そういうと同時に、少女はISを本格的に展開する。
その見た目は灰を被さったような黒で、両肩には犬頭があって炎を吹き出していた。
「…!
お前、何者だ。
何で一夏を狙ってるんだ!」
「あら?
警察だって言うなら、少しはこの世界の知識もあるだろ?
それでオレが何者かをな!」
「…まさか、ダリル・ケイシーだってのか?
でも何でお前から転生者の反応があるんだよ!」
「別に珍しいことでもないだろ?
転生するだからオリジナルな存在になるのと同じように、本来の歴史の人物になっているってのも不思議じゃない。
つまり、オレはダリルであってダリルじゃない、そんなところだ。
それに、オレは亡国企業に所属してると同時に、ギャングラー暗殺部隊に入ってるんだぜ」
「なっ!?」
「…っ!?」
金髪の少女、ダリルの言葉を聞いて二人は驚く。
ダリル・ケイシーという存在のことは、学園の生徒であると同時に亡国企業のメンバーであるのはわかっていた。
しかし、目の前にいるこの少女がダリル・ケイシーという存在の皮を被ったギャングラーの暗殺者だということには驚いてしまう。
驚いている二人をよそに、ダリルはため息交じりでしゃべる。
「はぁ、全くこの世界って異常よねぇ。
絶対天敵とかいう化け物が出てくるし、この間の金丈のくそ野郎が仕向けてきたやつの襲撃で生徒も教師もトラウマ植え付けられて、おかげで予定通りとはいかなくなってきたのよねぇ」
「…どういうことだ?」
「この学校はしばらくしたら修学旅行があったんだよ。
けど、さっきの二つの件で台無し。
オレは亡国企業の一員として
「ですが、あなたがダリルさんに転生しても、別の人生を歩むこともできたのではないんですか?」
「良いでしょ別に?
オレとしては織斑くんがこの世界の主人公だから、彼を殺して幹部になってやる。
そしてその後で天災の妹の篠ノ之さんを拉致して天災との交渉材料として使わせ、それで私がISを独占するって話、実に素晴らしいだろ?」
「…そうかよ、俺たちは転生者でも、なにもしていないとかここの生徒とかだったらできれば戦いたくはなかったが、どうやらお前は違うみたいだな」
「「警察チェンジ!!」」
『1号 2号!
パトライズ!
警察チェンジ!
パトレンジャー!!』
「すみませんが、彼のところには行かせません!」
バンとかこはパトレン1号と2号に変身し、VSチェンジャーを構える。
「そう、じゃあ先に、てめぇらが死ねっ!!」
ダリルは両肩の犬頭から炎を吹き出し、1号たちに襲い掛かる。
「うおっ!?」
「うぅっ!!」
二人はとっさに避けてVSチェンジャーで応戦する。
「フフッ、無駄だ!」
ダリルは避けずに手を翳すと、VSチェンジャーのエネルギー弾を指で挟んで止めた。
「なっ!?」
「た、弾が、止まった?」
「フフッ!」
エネルギー弾はダリルの手の指の中で形を変えて、そのまま向きを変えて打ち出した。
「うぉっ、おらぁっ!」
1号がパトメガボーで構えて弾き返す、弾き返したそれは、よく見ると小さな針になっていた。
「弾の形が…!」
「まさか、お前の特典ってのは!」
「そうよ、オレの特典は炎とかプラズマとかでも、そんな形を持たない物質を武器に変化することができるやつだ。
オレも最初は驚いたけど、せっかくもらった力なんだから、使わないともったいないじゃない?」
「くっ!」
「それに、この力ってやり方次第では、こんなこともできるんだぜ!」
ダリルは炎を吹き出すと、その炎を手で掴み、弓と矢に変えていく。
「…、おいおい冗談だろ!」
「さて、尻尾を振って逃げてもらおうじゃねぇか、パトレンジャーさん」
ダリルの炎の矢が発射され、二人は避けていく。
しかし、射抜かれた場所から炎が噴き出していた。
「…やべぇ、このままだと学校で火事が起きちまう!
かこ、外に出るぞ!」
「了解!」
「逃がすわけないだろ!」
二人は窓から学校の外に出て、ダリルは炎を斧に変化させて投げつけながら壁を突き破って追跡する。
しかも、二人を追いかけてるとはいえ外に出ようとも周りに斧や槍、矢を投げつけて周りを火の海に変えてしまう。
「クソ、あいつ無茶苦茶だ!
炙り出すにしても、これは異常だぞ!?」
「このままじゃあ、息ができなくなってしまいます…!」
「当然だろ?
オレ、生前は放火魔だったんだから」
「なっ!?」
「オレはよ、幼いころから、炎で何かが燃やされるの見ると、とっても興奮するんだよ。
初めて人を燃やした時だって、興奮のあまり体の中でうずいたんだ…!」
炎の中、ダリルは荒い息遣いで生前のことを話をしているのを聞いた二人は、ダリルの異常性にぞっとする。
そんな時に誰かの声が聞こえた。
「ダリル、どこっスか!?
さっき近くでダリルの姿がみえたっスけど」
「だ、誰だ…?」
1号は燃え盛る炎の中、燃えていないところを見ると、黒髪に三つ編みと眼鏡をかけた少女が焦った様子で近づいてきた。
「フォルテ…」
「ダリル…!
これは、一体どういうことっスか!?
何で、学園の外とか廊下の一部が燃えてるっスか!?」
「…」
「どうして、ISを展開してるんスか?
…何とか言って欲しいっスよ!!」
「おい、やめろ!
今のそいつに近づくな!」
「…あぁもう、めんどくせえな」
掴みかかるフォルテにダリルはため息を漏らす。
瞬間、フォルテと呼ばれた少女の体は右腰から左肩にかけて大きく切り裂かれた。
「え…?」
「なっ!?」
「っ!」
ほんの一瞬の出来事だったため、理解するのに時間が少しかかったが、1号と2号の二人はようやく理解した。
ダリルが、フォルテの体を刀に変化させた炎で切り裂いたのだと。
フォルテは口から血を吹き出し、そのまま仰向けになって倒れる。
「前からしつこいんだよスッスッスッってよぉ~。
何でオレがあんたみたいなブスのために止めなきゃ行けないんだよぉ」
「だ、ダリル…?
どう、して…?
私たち、恋人、じゃあ…!?」
血に沈んで倒れているフォルテの顔を踏みつけるダリル。
そこには侮蔑と嘲笑を含んだ顔で睨みつけてる、ダリルの目があった。
「あぁ、あれのこと?
あれはただの演技だ、え・ん・ぎ、わかったかなぁこのくそ女!
そもそも途中で絶対天敵とか転生者の襲撃があった時点で、お前は用済みなんだよメス犬が!」
「そ、そんな…うぐぁ!」
ダリルはさらにフォルテの顔を踏みつけ、その衝撃でかけていた眼鏡が割れてしまう。
フォルテはあまりの突然の出来事と、ダリルからの罵声に涙を流す。
「クソ、お前が話しかけてきたせいであいつらを見失ったじゃねぇか!
どう責任取ってくれんだ、えぇ!?
変形するまで踏みつぶして、蹴り殺すぞコラ!」
「そ、そんな…、やめてほしい、っス…!
私は、ダリルの…ダリルのために、綺麗に…してきたん…スよ…っ!」
「知るかボケ!
てめぇはどんなにおしゃれしてても似合わねぇんだよブス女が!
悲劇のヒロインぶってんじゃねぇよ!」
「あいつ…!」
「もう、やめてくださいっ!!」
「…!」
2号が炎の中から現れ、ダリルの足にしがみつく。
「何で、何であなたは、こんなことが平気でできるんですか!?
あなたにとっては嘘かもしれませんが、それでもこの人は、あなたのことを愛してくれてるんですよ!?」
「そんなの、決まってるだろ?
こうやって痛め付けるのが楽しいからなんだよ!
特に、こんな絶望した顔でぐちゃぐちゃにするのがよ!
そこに、愛するとか愛さないとか関係ねぇんだよ!」
「きゃっ!!」
2号は、しがみついた足を振り回されたことにより吹き飛ばされ、ダリルはそれを一瞥するとフォルテを焼こうと犬頭を向ける。
「やらせるかよっ!!」
「うわっ!?」
1号はトリガーマシンクレーンでダリルを引っ張り距離を放した。
「…てめぇ、自分が何してるのか、わかってるのか?」
「はっ、だったらどうしたんだよ!」
「てめぇ…!」
1号は歯噛みするも、その様子を見て楽しそうに炎を吹き出しながら攻撃するダリル。
右腕のクレーンで応戦しながら、1号は通信機を取り出し、何かを呟いた。
「うっ、くぅっ!」
2号は吹き飛ばされて、腕に怪我を負いながらも倒れているフォルテの元にたどり着き、怪我を治そうとする。
「…もういいんスよ」
「え?」
2号の手を、フォルテは突き放した。
その目は絶望したように死んでる目だった。
「もう…そんなこと、しなくても、いいんスよ…。
私が、ブスで、おしゃれとか、似合わないって、わかってるんスから…」
「そ、そんなこと、ありませんよ…。
だから、早く怪我を…」
「もうどうだって良いっスよ!!
そんなことなんかっ!!」
「っ!?」
フォルテは天に叫ぶように言った。
好きだった人から、実は演技だったとか、色々と罵倒を浴びたことによる絶望が木霊する。
「もういい…もう、いい…!
どうせ私なんか、女の子しか愛せない、クズなんスから…!」
「…それでも」
2号は強くフォルテの手を握る。
「それでも、あなたがあの人を愛していたということは、本当なんじゃないですか!?」
「…!」
「確かにあなたは女の子しか愛せないかもしれません。
ですが、あの人にとっては演技でも、あなたにとっては本当の恋だったんじゃないんですか!?」
「それは…」
「ならば、あなたにとっての
だから、あなたは生きてくださいっ!」
「あ…」
フォルテは2号の言葉を聞いて涙を流した。
それは悲しみの涙ではなかった。
「私の、思い出の中に…?」
「はい、もしあなたがここで死んでしまったら、思い出の中にいるダリルさんも死んでしまい、思い出も何もかもが消えていきます。
あなたは、それでいいんですか?」
「…違う、違うっス…!
私の中のダリルを、死なせたくないっス…!」
フォルテは嗚咽交じりに、生きたいと願う。
「…そうです。
あなたは、生きていて、良いんですよ。
…!」
思い止まったフォルテを見て安堵した2号はトリガーマシンレスキューを取り出そうとしたときに、VSチェンジャーが光を発した。
「オラッ!」
「ぐぅおっ!?」
1号はダリルの攻撃を防いでいるが、完全に押されてる状態だった。
おそらく次の一撃をもらうと、身が持たない。
パトメガボーで受け止めることも可能だが、相手が常に炎を使ってるため、どれだけ持つかはわからない。
「オラオラ、そろそろギブアップか!?」
「…いや、まだだぜ…!」
「往生際が悪いな、とっととくたばって燃やされろよ!!
…!?」
炎の刀を振り下ろされる直前、1号の目の前で動きが止まった。
「なっ、動けない…!
動けないだけじゃない、システムまでダウンしてやがる…!」
やがてダリルのISは解除されて、元のチョーカーに戻ってしまう。
「くそっ、何でだ!?
あと一歩でこいつを仕留めれたってのによ…!」
『ハロハロー、みぃんなのアイドルぅ~、束さんだよブイブイ!』
「っ!?
こ、この声は…!」
「…ふぅ、本当にヤバかったぜ、束さんよぉ…!」
狼狽えてるダリルをよそに、1号は通信機を取り出した。
『いやぁ、まさか転生者がISを使ってるなんて思わなくてさ…。
だけど、すぐに調べて使えなくさせたよ』
「て、てめぇは、篠ノ之束…!」
通信機から聞こえた声に歯噛みをするダリル。
先程1号が通信機を取り出して呟いたのは、束に連絡してダリルのISを停止させることだったのだ。
『やぁ、クソ転生者。
今回は良い度胸してるんじゃない?
まさか、いっくんを殺そうとしたり、箒ちゃんで使って私と交渉しようとしてるみたいだし?
ま、バッくんから聞いたのもそうだけど経緯を調べたんだけどさ』
「…!」
ダリルはそれを聞いて、敗北が決定したと思った。
目の前にいる1号がいつの間にか束に連絡し、なおかつ自分の目的を調べあげたのだから。
『じゃ、束さんはここまでやったんだから、あとは任せるね、バッくん♪』
その言葉と同時に通信が切れて、束の間の静寂があった。
「…あの、腐れ脳みそがぁああああああっ!!!!」
ダリルはその静寂を破り、近くで燃えていた炎に手を伸ばそうとする。
しかし、その寸前で雨が降り、炎が一瞬のうちに消されてしまった。
「クソ、なんでこんなときに雨が…!」
辺りを見渡すと、先程自分で吹き飛ばした2号が、片腕に消火器のようなポンプを装備し、もう片腕で傷を直したフォルテを担いでいた。
フォルテの目には、先程のような絶望はなく、決意と覚悟で満ち溢れていた。
「フォルテ…!
な、なぉフォルテ、助けてくれよ!
オレ、こいつに殺され…」
「あなたはもう、ダリルじゃないっス。
もうこれ以上、私とダリルの思い出を汚さないで欲しいっス…!」
「…!」
ダリルは手のひらを返したように先程痛めつけたフォルテに助けを求めるが、フォルテに拒絶されてしまう。
拒絶されたダリルは頭の中で何かが切れ、獣のように吠えながら周りの水を弾丸に変えようとする。
「悪いが、これはお前の結末だ。
この吐き気を催すような転生者が」
1号はダリルの手を掴み、暴れるダリルに手錠を嵌める。
その瞬間に、ダリルは光の粒子となり先程の叫び声がまるで嘘だったかのように消えて、その場から消えていった。
残されたのは、ダリルが使っていたISの待機状態であるチョーカーだけだった。
フォルテの怪我は、特典とレスキューで治したので数日もすれば傷跡も残さないほどのものになった。
バンはダリルの件でフォルテに謝罪するが、ダリルは自分の思い出の中に生きてるから良いと言った。
「…胸糞悪い事件だったな」
「はい、フォルテさんは謝らなくて良いと言いましたが、やはりあぁいう身内や恋人の目の前で更正するのは、ここに堪えますね…」
「ちっ、織斑先生とか他の教師たちに何て言えば…!」
バンたちはこの件のことをどうするかを考えながら廊下を歩いていると、目の前で一夏が走ってきた。
「お、おい!
バン、かこ…!」
「い、一夏さん!
ど、どうしたんですか?」
「というかお前、何で保健室から出てんだよ?」
「そ、それが…!」
一夏の言った言葉に、バンたちは突っ切るかのように走った。
アストルフォが目を覚ました瞬間、悲痛な叫びをあげながら自分を突き飛ばし、そのままどこかに走っていったといった言葉を聞いて。