IS学園の屋上、アストルフォは柵にもたれ掛かり蹲っていた。
「うぅ、ぐすっ…!」
蹲っているため顔は隠れているが、泣いていた。
今のアストルフォの中にあるのは、生前のトラウマと自分の罪に対する罪悪感。
それゆえ、いつもの明るさはどこにもなかった。
「アストルフォっ!!」
「…!」
声が聞こえてので、顔を上げて屋上の入り口を見ると、バンとかこ、そして一夏の姿があった。
「アストルフォ、お前…」
「アストルフォちゃん…」
「…!」
三人はアストルフォの顔を見て驚く、一夏はあまり知らないが普段のアストルフォからは考えられないほど憔悴しきっており、目は闇に覆われたように光がなく死んでいた。
「…こんなところにいたのかよ。
お前、もう動いても…」
「来ないでっ!!」
「あ、アストルフォちゃん?」
バンたちが近付こうとした途端、アストルフォが怯えるように後ずさりしながら拒んだ。
「お願いだから、来ないで…!
ボクには、生きる資格なんてないんだから…!」
「生きる資格?
アストルフォ、お前一体何の話を!」
「わかったんだよ。
ボクがどうして、君たちに止められるような無茶をするのかっていう理由が」
「…!」
「…当初のボクには自覚はなかったし、目の前で転生者に襲われている人を助けたいとか、そんな感じで思ってたけど、実際は違ったんだ。
そんなのはただの建前でしかなかったんだ、人の命とかそんなのはどうでも良かったんだよ…」
「…アストルフォ、お前まさか」
アストルフォが言おうとしていることに何か察しがついたバン。
そしてアストルフォは自嘲気味になりながら体を起こして、叫んだ。
「ボクは、本当は死にたかったんだよ!
だから、そこにいる彼を助けたのだって、今までの無茶だって、自分で自殺する勇気がなかったからわざとそうしただけなんだよ!」
「アストルフォちゃん、どうしてそんな…!」
「そんなの、決まってるじゃないか。
ボクが
「「「っ!!?」」」
アストルフォの、慟哭にも似た嘆きが、屋上に響いた。
「…今でも思うんだ。
あの時、見逃してなかったらあんなことにはならなかったんだって。
けど今更そんなことを思っても遅いんだよ…、実際に目の前で両親が死んだところを見たんだから!
だから、こんなボクには生きてる資格なんてないんだ…!」
3人が驚いていることをよそに、アストルフォは柵を乗り越えて屋上から飛び降りようとする。
ふと我に返ったバンとかこはアストルフォの元へと駆け寄ろうと走り出した。
「やめろ、アストルフォ!!」
「お願いだから、そんなことをしないでっ!!」
「…こんなボクのことを、止めようとしてくれるなんて、本当に優しいね二人とも。
でもごめんね、ボクにはもう、耐えきれないんだ…!」
二人の姿を見たアストルフォは、悲し気に笑い、すぐに屋上から身を投げ出した。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「いやぁああああああああっ!!!!!!」
バンは身を投げ出したアストルフォに手を伸ばし必死で手を掴もうとし、かこはアストルフォが飛び降りる様を見たくないと目を塞ぐ。
「やらせるかっ!!
来い、白式!!」
そんな中、一夏も身を投げ出し、それと同時に右腕の腕輪を見せるように叫び、ISを展開する。
そして地面に落ちようとするアストルフォの手を掴もうと手を伸ばした。
その瞬間だった。
学園の地面が歪み、空間に穴が空いて、アストルフォと一夏を飲み込もうとしていた。
「あの穴は…!」
「まさか、空間の歪みが!?」
「これは、あの時に…!」
「え…!?
うわああああ!?」
「アストルフォ、一夏!!」
アストルフォと一夏は、その空間の穴の中へと落ちていき、その直後に消えてしまった。
バンは冷や汗をかき、かこは思い出したように少しだけ焦りを感じていた。
「おいかこ、今のって」
「…前に私とアストルフォちゃんがここに来た時に吸い込まれた空間の歪みです。
おそらく、二人は別の場所に飛ばされてしまったのではと」
「そうか…。
でも、少なくとも二人は無事なんだよな?」
「飛ばされた先にもよりますが、少なくともその可能性はあります」
「わかった。
じゃあ俺はさっきのことも含めて亀山さんたちに説明してくるから、かこは霞に連絡して二人を探してくれ。
難しいならなのはたちにも協力を仰いでくれ。
俺も終わったらすぐに向かうから」
「わかりました。
ですが、先ほどのことはどのように説明するつもり、ですか?」
かこの言葉を聞いて、バンは通信機を取り出した。
その通信先の名前に束の名前があった。
「…一応、あの人も当事者だからな。
束さんでだめなら、フォルテにも同行してもらうさ」
「…そうですか。
あの、バン隊長…」
「あ?」
「あまり、無理はしないでくださいね?
私も、アストルフォちゃんのこと、わかってるようでわかっていませんでしたから」
「…そうだな、サンキューかこ。
じゃあ、俺はもう行くぜ」
「はい…」
こうして二人は別々に行動することとなった。
かこは霞に連絡してアストルフォの反応を探しに、バンは情報整理と束に説明の補助の依頼を行っていた。
ただ、二人の頭の中では、アストルフォに対する理解の足りなさと後悔が渦巻いていた。
「すまねぇ、アストルフォ…!」
「ごめんね、アストルフォちゃん…」
「うぅ…」
そのころ、アストルフォは空間の穴の中に落ちた後、ある建物の中の床の上で倒れこんでいた。
頭を強く打ったのか、あまり思考がまとまらず、頭から血が流れて片目の視界が赤く染まっていた。
目を動かすと、一夏が自分の体を揺すっているのが見えた。
泣きそうになりながら自分に呼びかけてるようだが、何を言ってるのかさっぱりわからなかった。
ただ、はっきりとわかることがあった。
自分はもうすぐ死ぬのかもしれないということ。
血は止まったかはわからないが、意識が落ちそうだった。
そうか、もう自分は死んでしまうのか。
これで、両親と爺やの元へと行ける。
そう思っていた時に、一夏とは別の誰かがやってきた。
一夏は警戒するが、それを退けて自分に手を向けた。
その瞬間、アストルフォの意識がそこで落ちた。