転生者を更正する警察集団   作:ガンダムラザーニャ

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アストルフォの罪

「はっ…、痛っ!

ここは…」

 

アストルフォは意識を取り戻し、頭を押さえた。

 

頭には、何か包帯らしきものが巻かれているようだった。

 

体を起こして自分がどこにいるかを見渡していた。

 

どうやらどこかの屋敷の寝室のようで、アストルフォはその大きなベッドで寝かされていた。

 

しかし、自分がいる部屋と横になっていたベッドにどこか違和感を覚えていた。

 

「…この部屋に、このベッド…。

どこか、懐かしい感じがする。

でも、ここはどこなんだ…?

…っ!

そういえば、彼は!」

 

アストルフォは一緒に落ちてきた一夏の存在を思い出して、周りを見渡すと部屋の椅子で寝ているのが見えた。

 

「よ、良かった、彼は無事だったんだ」

 

アストルフォは一夏の無事を確認して安堵する。

 

しかし、ここでアストルフォは頭の中で疑問を抱く。

 

ここがどこかということもそうだが、なぜ彼の無事に安心しているのか?

 

死にたがりの自分にとって、他人なんてどうでも良いはずなのに。

 

でも、本当にそれだけなのだろうか?

 

自分は本当に、心の底から人のことなんかどうでも良かったのか?

 

今でも死にたいって思ってるのに。

 

「…なんだよ、何なんだよ…っ!

もうっ!!」

 

頭の中で様々なことが思い浮かべて、もはや自分でも何がしたいのかわからない自分に苛立ちを覚えて、アストルフォは枕を思いっきり叩き付ける。

 

「はぁはぁ…っ!」

 

「気が付いたみたいだな」

 

「っ!?」

 

部屋のドアから一人の男が入ってきた。

 

その男は手にいくつかの野菜を持っていて、銀色の制服らしきものを着ていた。

 

「…君は、誰なんだい?」

 

「おいおい、助けてやったのにその言い方はないだろ?

なぁ、後輩のパトレンジャーよ」

 

「っ!?

な、なんでそれを…!

…まさか!」

 

アストルフォはすかさず自分の太ももを見ると、VSチェンジャーがあった。

 

男はその様子を見てため息を漏らしながら、近くにあった椅子をベッドの隣に持ってきて座り、アストルフォを見る。

 

「そう警戒するなよ。

俺様はお前たちの敵じゃない。

…そうだ、良かったらこの野菜食うか?」

 

「いらないよ。

…それで、君は誰なのさ」

 

「そういえばそうだったな。

俺様の名は高丘映士、ボウケンシルバーって言えばわかるか?」

 

「ボウケン…?

まさか、ボクたちの先輩にあたるボウケンジャーの…!」

 

「そういうことだ。

それにしても、危なかったな。

さっき俺様が助けに来なかったらお前本気で死んでいたぞ?」

 

「…っ!

余計なお世話だよ、それよりもここはどこなのさ」

 

まるで自分が死ぬことを心配されてるような言い方に腹が立ったのか、アストルフォはそっぽを向くような態度で質問する。

 

「随分とご機嫌斜めなんだな。

まぁいい、俺様もできる限りだが質問には答えてやるよ」

 

そう言って映士はわかる範囲でと釘を刺して説明した。

 

結論から言うと、ここはプレシャスと呼ばれる物質で構成された特異点ではないかということ。

 

この屋敷から外には出れるが、庭の外に出ることはできない、というかその先がないということ。

 

自分は先日突然この特異点に飛ばされて帰れなくなり、この屋敷や庭で危険や帰れる方法を探したこと。

 

結局のところ、この特異点は危険な世界ではないが、問題のプレシャスらしきものは見つかったものの触れずに困っているのだということ。

 

「…ふぅん」

 

アストルフォはあまり興味なさげに返事した。

 

別にアストルフォはこの場所に関心がないわけではない。

 

それに、意識を取り戻してからいくらか頭が冷えたのか、少しだけプレシャスという言葉に引っ掛かりを感じていた。

 

この特異点を作ったプレシャスと、暴走時に世界を歪ませるロストロギアが似ているのではと。

 

「…まさか、ね」

 

それからアストルフォは自ら思考を停止して、天井を眺める。

 

どうせバンたちにはあんなことを言ったし、今更どの面下げて会いに行けというのだと。

 

「それで、俺様から質問するぞ?」

 

「…何さ」

 

「お前のその目は、何だ?」

 

「言ってる意味がわからないね。

ボクの目を抉り取りたいとでも言うのかい?

だとしたら悪趣味だね」

 

「そうじゃない、俺様が聞いてるのは、お前の何かを諦めたような目は何だって聞いてるんだ!」

 

「…!」

 

映士に自分の心を見透かされたような言い方に驚くアストルフォ。

 

「だから何だって言うんだよ。

君には関係ないだろ、放っておいてよ」

 

「…じゃあもっとわかりやすく言うぞ?

お前、死にたいのか?

少なくとも俺様にはそうは見えるが…!」

 

映士が言い終わる直前に、アストルフォは枕を投げつける。

 

「…言葉の意味がわからなかったのかな?

放っておいてよって、言ってるんだ。

…そもそも、何で君はそこまでボクのことを聞きたがるんだい?」

 

「関係ないことはないだろっ!?」

 

「…っ!

君は…」

 

「おっ、目を覚ましたのか」

 

いつの間に話を聞いていたのか、椅子に座って寝ていたはずの一夏が身を乗り出して聞きに来たのだ。

 

「なぁ、お前ってアストルフォって言うんだよな?

…俺を助けるまでのお前の目はそんなものじゃなかったんだ。

…良かったら、俺にも教えてくれよ」

 

「…君にはさっき言ったけど、ボクは親を見殺しにした。

だから死にたいんだよ」

 

「けど、だからって死んでいい理由になんか…」

 

「君に、ボクの何がわかるって言うんだっ!!」

 

「っ!?」

 

アストルフォは一夏の胸倉を掴み睨みるける、その目はどうしようもないほどの怒りに満ちていた。

 

だがそれは一夏に対してではなく、自分自身に対するものだった。

 

「…お前、過去に何があったんだ?」

 

映士はアストルフォの態度が気がかりになり、質問した。

 

「放っておいて、言ってるのに…。

…もういいよ、そんなにしつこく言うのなら言えばいいんだよね言えば!?」

 

アストルフォは一夏を放して、半分自棄になりながら話した。

 

自分は貴族の末裔の出身で、両親と執事一人と四人暮らしだったこと。

 

ある時、いつも励ましてくれる執事が急に寡黙になり、鼻歌交じりでこなしていた家事などの作業を淡々とやっていることに気付いた。

 

しかし、両親や自分への気配りなどを見て、ただの気のせいだと思い、二度と執事を疑おうとは思わなかった。

 

そんな日々が続いたある時に、両親が風邪をひいてしまい執事が、屋敷にあった風邪薬と水を持っていくところを目撃した。

 

両親の寝室から出た執事が自分を見た瞬間に、普段からでは想像もできないような邪悪な笑みを浮かべて、それと同時に寝室から両親の悲痛な叫び声が聞こえた。

 

まさかと思い、アストルフォは寝室に行くと、苦しみ悶えて死んだ両親がいたのだ。

 

それで全てを察したアストルフォは執事に問い詰めようとするがすでに遅く、執事が弁護士を呼んで財産を奪い取った。

 

あまりにもひどい現実に弁護士が帰るまでその場に座り込んだアストルフォは、弁護士が帰った後で執事を避難しようとするが、その執事が本物の執事ではないことを知ってしまう。

 

そして自分は執事に化けた誰かの仲間の二人に捕まり当時着ていたお気に入りだった服を引き裂かれて、男の体である自分の体を穢された。

 

一日かけて両親の死体の目の前で凌辱の限りを受けたアストルフォは悟ったのだ。

 

自分があの時気のせいだと思い執事に化けた誰かのことを追及できなかったせいで、両親が死んで財産も奪われたのだと。

 

もしあの時見逃してなかったら、執事の無念だけでも晴らせたのではと。

 

そう思っただけでも悔しかった、自分が凌辱を受けていることがどうでもよくなるほどに。

 

もはやまともに歩けなくなったアストルフォは、体を引き摺って両親の死体に縋り付いて泣きながらひたすら謝った。

 

その後で仲間の一人に刺殺された。

 

それが、アストルフォの過去だった。

 

「「…っ!」」

 

その話を聞いて二人は吐き気を催し、それと同時に激しい怒りを覚えた。

 

そいつはアストルフォの家族を殺して財産を奪ったことに飽き足らず、アストルフォにそんなひどいことをして殺したことを。

 

だが、そう思ってると、アストルフォは震える自らの体を抱きしめ泣いていた。

 

「…これで分かっただろ?

全部、ボクが悪いんだ、ボクが見逃したから。

あいつを見抜けなかったから、あんなことになったんだよ。

だから、ボクには生きてる資格なんてない、転生するべきじゃなかったんだっ!!

ボクなんか、あのまま死んでれば良かったんだっ!!」

 

「アストルフォっ!!」

 

「っ!?」

 

「お前、本当にそれでいいのかよ!?

お前が死んだら、お前の仲間のバンとかこは喜ぶのか!?」

 

「あの二人は関係ないだろっ!?

それにあの二人は、ボクと違ってあっという間だったんだ。

けどボクには止められるだけの猶予があったのに、何もできなかった!

だから…!」

 

「そんなの答えになってないだろ!

…俺だって、お前みたいなことはなかったけど、俺が弱かったせいで誘拐されて千冬姉の名前を汚した!

だから、お前の気持ちも、少しはわかるんだよ…。

自分のせいで大切な人が大変な目にあったことを」

 

「い、一夏…」

 

一夏は泣いているアストルフォの肩を掴んで言った。

 

一夏はアストルフォの過去を聞いて、どこか自分と重ねていた。

 

だから、アストルフォのことが放っておけなかったのだ。

 

「…お前を見てると、俺様の親友を思い出すな」

 

「え?」

 

「そいつも、今のお前みたいに自分のせいで仲間を死なせたって思ってたことがあるんだ。

まぁ、そいつの場合、自分の身を挺してまで仲間を守ろうとしたけどな」

 

「え、映士さん…」

 

「けどな、同時にお前に対して腹が立った。

過去にそんなことがあったからって死にたいなんて、そんなの間違ってる」

 

「そ、そんなの…!?」

 

「だったらなんでお前みたいな死にたがりがパトレンジャーやってるんだよ!

何のために人を守ってるんだよ!

それを矛盾って言うんだぜ?」

 

「そ、それは…」

 

映士はアストルフォの胸倉を掴み 責する。

 

だが、今のアストルフォには何でパトレンジャーとして戦っているのか、わからなかったのだ。

 

そもそも、本当に死にたかっただけなのか?

 

「…そういえば、お前らと話をしてて、一つ思い出した。

アストルフォ、って言ったかお前。

この屋敷の地下で見つけたプレシャスらしき物の声が、お前を連れてこいって言ってたんだ。

ついて来い」

 

映士はアストルフォを放すとそのままドアへと向かう。

 

「え、プレシャスが?

何でボクを…!?」

 

「知るか、ただお前を連れてこいって言ってたんだ。

俺様が案内してやるから、あとはそいつと話をして、頭を冷やすんだな」

 

「ま、待ってくれ!

俺も一緒に行かせてくれ!」

 

「…良いのか?

お前は単に巻き込まれたようなものだろ?」

 

「そりゃそうだけど、それでもアストルフォを放っておけない!

正直、今の俺にアストルフォを守れるかの自身はない、でも…!」

 

「…良いだろう。

ただし、足を引っ張るのだけはやめてくれよ?」

 

「あぁ、望むところだ!」

 

「ねぇ一夏、無理しなくていいんだよ?

よく見たら足が震えてるよ」

 

「だ、大丈夫だって!

それより、何で俺の名前知ってるんだよ!?」

 

「君が自分で千冬姉とか言ってただろ?

自分で言ってたこと忘れないでよこの馬鹿」

 

「俺は馬鹿じゃない!」

 

「おいお前ら、いい加減行くぞ?」

 

「う、うん…」

 

「あぁ!」

 

暗い表情になりながらも先ほどのプレシャスらしき物の声に違和感を覚えながら、こうなったら行くしかないと思いアストルフォは映士についていく。

 

一夏も同様に、アストルフォのことが放っておけなくて、ついていくことにした。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、特異点の別の場所では。

 

「おい、あの男の娘がここに来てるんだってよ…。

こんな訳の分からない世界にな…」

 

「あぁ、上手くことが運べば、またあいつの体を味わい尽くしてやる…!」

 

「だがあいつはパトレンジャーだ。

何かあったら俺が殺す、あの時のようにな」

 

アストルフォたちに気付かれないような場所から見ていた三人は、武器やデバイスを触りながら様子を見ていた。

 

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