久しぶりの更新で申し訳ないです!
あれから俺への海兵の方々からの対応が変わった。なんというか、一気に冷たくなった。それまでは、弟に対するような優しさみたいなものがあったのだが、今はもう化け物に対するソレだ。サカズキ大将への恐怖とも別なのだから笑える。この掌の変わりようには、確かに苛立ちを感じるが、力を持っているが四歳程度のガキだ。確かにいつ暴発するか分からない能力者ってのは、核兵器のスイッチを持たせた赤ん坊に等しい。使い古された例えではあるが、真実である。
今の俺は、護送室と呼ばれる部屋に入れられ、日がな一日をそこで過ごしている。時たま見つかる海賊は、あれ以降俺以外の海兵が対処しているらしい。絶対的な正義を掲げるサカズキ中将の船と言えど、こないだの俺のやり方は流石に忌避されるものらしい。
あぁ、そうそう。いつの間にか通り名まで付けてくださったらしい。その名も「赤鬼」。将来「赤戌」と呼ばれるサカズキ大将、いや中将の孫であり、海賊に対するやりすぎなまでのこないだの行動によってこの船の海兵がそう呼んでいる。イイネ大佐は苦笑しながら教えてくれた。
ずっとサカズキ大将だと思っていたのだが、実際にはまだサカズキ中将であるらしい。つまり、原作よりも前であるわけで、道理で漫画やアニメで見るよりも若いわけである。
「ふぅ。」
暇をもてあましている俺に、イイネ大佐は自分が航海中に読むために持ってきた本を貸してくれた。貸してくれた本は、「人の上に立つ」「リーダーの素質」など……。イイネ大佐が実は野心家であることを知るきっかけとなった。
ちなみにだが、あれからサカズキ中将とは話していない。この護送室の窓から海賊の発見を伝える声と同時に、マグマの塊が降っているのが見えるので、たいへん元気なことだけは分かっている。まったく姿も顔も見ないので、何を思っているのか知ることが出来ないのが不安を掻き立てる。何しろ、まだ一ヶ月も一緒に過ごしていないのだ。サカズキ中将の性格を漫画の中でしか知らない俺にとって、彼がどんな判断を俺に下すのかわからない。もしかしたら、俺を殺すコトだってありうるのだ。
これからまだ二週間ほど船旅が待っているらしいが、この護送室暮らしには飽きたのでどうにかしてほしい。いっそのこと、反乱でも起こしてやろうか?前回こそボロ負けだったが、海上にいて海水を扱える今、能力者であるサカズキ中将も敵ではないわけだし。試しに……
「ぃやぁっー!トビラマ君!って何してるのかね?!」
ちょうど海水で刀を作っていると、タイミング悪くサカズキ大将のもう一人の副官であるログ准将が入ってきた……。
とりあえず微笑んでみる。
スチャ。
失敗である。微笑んだ瞬間に厳しい顔をして、サーベルを抜かれた。何故だ……。
「あはは、冗談ですよ。それで何かご用件ですか?」
サーベルは抜いたままこちらを睨みつけ、なにか逡巡しているようだったが、一度深呼吸をして口を開いた。
「ハァ、まぁいい。サカズキ中将がお呼びだ。場所は分かっているな?」
「お呼び、ですか?あぁ、はい、大丈夫ですよ」
行動を起こそうとしたときに呼ぶなんて、さすがは大将、運もいいようだ。もしかしたら見聞色の覇気でも使っていたのかもしれないが……。ログ准将も見聞色の覇気を使えるのかもしれない。それならばさっき、微笑んだだけで刀を抜かれたのも分かる。
前回とは違い、中将の部屋の前に着いてすぐに扉を開ける。中では、少し驚いた顔のサカズキ中将がいた。前回のように少し間を置いてから開けると思っていたのかもしれない。そのせいか少し腰が浮き上がっている。
「さきほど、ログ准将が来て、サカズキ中将がお呼びとのことでしたが?」
「あぁ、あんたの能力の修行でもしようかゆぅて思うてな。」
それはありがたい。護送室でも独自の修行はしていたが、やはり狭いし我流では分からないことも多い。最近は特に暇していたし、これからの予定が修行の二文字で埋まるとしても、すごく嬉しい。
……と思っていたよ、修行が始まるまではね。能力の開発とは言ったが、まずは体力をつけなければと思ったらしく、腕立て二百・腹筋二百・背筋三百・片手腕立て各百回・倒立五秒二十回・船の雑巾がけ五往復(中将の乗っている船であるから、かなり広い。そこを全力で駆け巡らされるのである。)
疲れて倒れれば、身体のどこかの部位を踏み抜かれ「やらんか!!」と怒鳴られる。自然系の悪魔の実なんかを食べたことを後悔したが、食べていなければ今頃車椅子生活である。いくら、攻撃を受け流すとはいえ。心に与えられるダメージは甚大だ。
出会ってしまったのが、運の尽きだったのである。出会いさえしなければ、俺はもっと普通に生きられたはずなのだ。手足を踏み抜かれることのない普通の生活が。あれ?それって普通の生活なのかな?普通の条件すら曖昧になってきたこの頃、心の汗が止まりません!
結局残りの二週間は、この特訓だけで過ごすことになった。一日ごとに1.25倍されていったので、最終的には腕立て三千五百回・腹筋三千五百回・背筋五千百五十回・片手腕立て各千七百五十回・倒立五秒三百五十回である。
恐怖である。恐怖政治なるものをこの身で直に体験することになるとは、思ってもみなかった。だけど、さすがは空気とプロテインをイコールで結べる世界。ムキムキではないが、幼児にしては筋肉があり、俊敏に動くことのできる身体になった。しかも、昨日は辛かった回数が次の日には、余裕とまではいかないまでも頑張れば出来る回数になっているから、驚きだ。今までは重くて振ることすらできなかったあの刀も、今では普通に振ることができる。
「徹底的な正義」を掲げるあの人ではあるが、それは強者にしか許されない戯言だ。弱者に言はなく、強者の言はそれだけで真実に匹敵する。「絶対的な正義」それを実現するため、強者である為に修行をしっかり行っていることに驚き、素直に尊敬した。あの人は、俺に与えた以上の筋トレをし、海兵たちとの組み手も行っていた。俺が隣でヒーヒー言っているうちにだ。
まぁ、そんな辛くて苦しくてくじけそうな地獄のような二週間を過ごしてきたわけだが、ソレもこれも今日で終わりだ。そう、ついたのだ!三大勢力の一角である海軍の本拠地である海軍本部マリンフォードに!
さてと、サカズキ中将からもマリンフォードをぐるりと回って来い!と言われたことだし、今日一日を使い切るつもりで、ゆっくりまわろう。原作ではあまりしっかり概要が出てきてなかったのでかなり楽しみだ。海兵が住む町なのだから、市場やら娯楽やらのある区画もあるはずなのだ。そうでもなければ、海兵たちの士気を保つことも出来なくなるわけだから。
「トビラマ!!何をチンタラ歩いとるんじゃ!ぐるりと走るにきまっとろうがぁ!」
自然と心の汗が流れ出る。マリンフォードって確か島なはず。しかも海軍の本部が置かれるような所だから、そこそこどころかかなり広い島であるわけだ。それを、走る?しかも、四歳児が?「死んでまうわ!ドアホォ!!!」これを本人の目の前で言うことが出来たらどれだけいいことか。反論しようとした途端、あのやくざのような形相で睨まれたこの身体は、俺の意志など関係ないとばかりに一目散に駆け出した。
今の俺の目標はただ一つ。サカズキ中将の下へ日が暮れる前に辿り着くことだ!!
前話と比べると短いですが、たぶんだいたいがコレぐらいの長さになるかなと思います。