イイネ大佐の熱血本性バレ事件からだいたい六年が経ち、俺は中将に呼び出された。だがその前に、この六年間を振り返ろうと思う。といっても、ほぼ修行の日々で代わり映えのしない内容なんだが……。
朝起きると、何故か寮の室内で微笑んで待っている大佐に連れられて、朝食前筋トレが始まる。といっても、ただがむしゃらに何の考えもなく筋トレをさせていたわけではなかった。腕立て一つをとっても正しい形で最適な角度や、伏せる時間があるらしい。熱血な大佐は俺が間違えれば、一から始めさせるという中々のスパルタだった。ただし、続けて三回間違えると立たされて大佐との組み手が始まる。もちろん、抵抗する間もなく地に沈められる。ただ筋トレ中だろうと、組み手中だろうと朝食の時間となれば寮の食堂に連れて行かれ、山盛りの朝食と格闘することになる。どんなに吐きそうになっても、大佐によって無理やり飲み込まされる。曰く、「子供なんだからどんな状態でもご飯は食べなくてはだめ!食べることも強くなる修行のうち。海兵になるんだったら嵐の中でも平然とご飯は食べられなきゃいけないんだ」らしい。海兵さんマジパナイ。
朝食を食べ終わると消化する間もなく、ランニングが始まる。ランニングは大佐がベルを鳴らすまで走り続けなきゃいけない。終わる目安のないランニングってのがあんなにも辛いなんて思っても見なかった。手を抜いて走れば大佐が後ろから逆立ちで追いかけてくる。普通に怖かった。遠めにこちらを窺っていた海兵さんが一気に視線を逸らすくらいには……。
たまに大佐が自分の鍛錬に集中しすぎてベルを鳴らし忘れることもあるが、だいたいは昼食までには終わる。昼食も朝食と同じ状態である。
昼食を食べ終われば、日替わりで拳の素振りと刀の素振りを行うのだが、大佐はあまり刀に興味がないらしく刀の指南はだいぶいい加減で、昨日と今日で言ってることががらりと変わるなんて事もよくあった。そんな事情もあって、剣術に関してはほぼ独学の我流になってしまった。その分、大佐式体術はかなり上達した。覇気を身体に纏って行う縛術や寝技なんて海軍の指南書にも乗ってないのでしっかり教わった。ただまだ覇気は扱えないので形だけだが。覇気について大佐曰く、きっかけさえつかめれば簡単に扱えるほどの才が俺にはあるらしい。
言われていた通り、色々な武器を教わったのだが火器類だけが壊滅的だった。というのも、俺のバシャバシャの実が原因なのか、火薬が湿気てしまって大砲も鉄砲もポシュッという情けない音を出して、使えなくなってしまうのだ。そんな訳で早々に火器類を使うことは諦めてしまったが、長柄の武器だとか短刀の扱いだとかは、海軍の軍営図書館で指南書を見つけては勉強して、ある程度までは扱えるようにした。といっても、有名な型を覚えて独学で素振りをするだけなので実戦ではとても使えたもんじゃないが……。
大佐式体術に夢中で存在を忘れていたのが六式。鉄塊や指銃、嵐脚、月歩などは大佐式体術に昇華したものがあったので、あまり熱心に修練しなかったが剃と紙絵は俺の戦闘スタイルには欠かせないのでしっかりみっちり叩き込んでもらった。大佐曰く、今の俺は二式使いらしい。
俺の戦闘スタイルは素早さ重視である。剣術は居合を得意としていて、柔の剣よりの疾風の剣とミホークさんに判断された。刀が使えなくなれば、すぐさま大佐式体術に移行し、剃で死角に回り込んでから攻撃っていうのが多い。相手が距離をとれば投げナイフで牽制する。後になって気付いたのだが、大佐といる時はほぼ能力を使わないせいで、自分が能力者であることを忘れ、能力なしの戦闘スタイルを作ってしまっていたのである。だから、能力を使うのは大規模戦のときだけと制限することにした。その方が情報を集める敵が相手になっても油断を誘うことが出来ると考えたのだ。というか、自分が自然系の能力者であるとしっかり覚えてれば、紙絵を開発することもしなかっただろう。
こんだけ俺の六年の思い出には大佐が登場してくるわけだが、実際のところ大佐はサカズキ中将の腹心であるので月に一週間か二週間かしかおらず、中将たちが出航している間は一人での自習になっていた。大佐が出航していなくなると、中将と顔見知りになりたい人、噂だけで中将を不当に貶めようとする人が近づいてくるは本当にうっとおしかった。大佐が帰ってくるとすぐに散らばっていくところなんかが特に……。
そしてこの六年の間に、色々な人と仲良くなった。ガープ中将やクザン少将、王下七武海のミホークさんなどが特に仲良くなった人である。ガープさんなんかはしっかり海兵を目指している俺をもう一人の孫として可愛がると勝手に決めたらしく、会えばお菓子やぬいぐるみなどをもらう代わりにかなり厳しい訓練を受けさせられたりした。クザン少将は、考え方こそ合わないのだが、友達としての相性はかなり良くて、クザン少将の仕事が無い日や抜け出してきた日は娯楽施設や喫茶店、甘味屋などに一緒に行ったりしている。子供のいない海軍施設のせいで友達のいない俺にとって初めてといっていい友達だ。少し年が離れてはいるが……。ミホークさんは、剣術と人生の先生といったところだろうか?ミホークさんがボソッとつぶやく一言は結構深い言葉が多いのだ。剣術においては俺の才能を伸ばして自分が負けてしまうほど強くしてから戦う為なのだという。俺は太刀筋から見て剛剣は合わないらしいので、柔の剣と疾風の剣を学ぶといい、と柔の剣と疾風の剣を指南してもらう機会を何度かもらう事が出来た。とはいっても、本質が自由人なミホークさんはフラッといなくなってフラッと帰ってくるので、かなり不定期だった。
とまぁ、俺自身のこの六年はこんなもんでいいだろうと思う。また機会があれば話すことにしよう。
イイネ大佐は、無能力者でありながら去年、准将へと昇進を果たした。ただ事務能力や指揮能力に難があるらしく、サカズキ中将の船でしっかり勉強中とのことだ。最近では武装色の覇気にも扱いなれてきていて、見聞色の覇気の修行に入りだしたらしい。今まで何度か第六感的なものでピンチを乗り越えてきていたから、見聞色の覇気はすぐつかめると思う。そう言っていた。来年になると、シャボンディ諸島での一ヶ月間の駐在任務があるからそれまでには見聞色の覇気をある程度扱えるようにしておきたいのだという。
サカズキ中将はあいも変わらず、海賊狩りに精を出している。普通の中将の二、三倍は海にいるらしい。それだけのことをしながらも他の中将よりもしっかり事務処理、書類提出をするし、部下に混じっての鍛錬も部下の何倍もこなしているのだから素直に尊敬してしまう。そう思う人はかなり多いようで、サカズキ中将の派閥は他の派閥と比べてもかなり大きく、次期大将候補筆頭らしい。
三回のノックをして、扉の前で待つ。色々思い出しているうちにサカズキ中将の執務室に着いていた。サカズキ中将に呼ばれて、サカズキ中将の執務室に入るのは初めてだと気付いて、どうしても緊張してしまう。何かあったのだろうか?思いつくのは大将昇進くらいだが、イイネ大佐の顔が普段となんら変わりが無いからそれは無いだろう。一体なんなのだろうか……?
「おう、ようきたのう。奥に入りぃ」
扉が静かに開いて、サカズキ中将が出てきた。そのまま奥に通されるとそこには、サカズキ中将に隣り合うように座るセンゴク元帥がいた……。
えー、話の途中でも書きましたが、何か番外編で希望があればコメントお願いします。作者の筆が乗れば、掲載されることもありますので 笑
今回は過去の振り返りだけで話が終わってしまいました。ホントはこんなはずじゃあなかったんですけどね……。
次回はもう少し、ぐんぐん進められたらなと思います。