サカズキ中将は俺を中に招き入れると、センゴク元帥に隣り合うようにして座り、あごで俺に目の前に座るようにと指し示した。ここまで案内してくれたイイネ准将はサッと一礼すると扉の外に出て行ってしまった。
「よう来たのぅ。まぁ、まずはすわりんさい」
一言「失礼します」と断りフカフカのソファーに座ると、目の前の二人が「ほぅ」と言うのが聞こえた。もしかして十歳らしくなかったのだろうか?今さらな気もするが、少し気をつけるべきかもしれない。
「あの……中将がお呼びとのことでしたが?」
俺の言葉に中将は頷き、元帥は少し首を傾げてみせる。
「サカズキ、どういうことだ?」
どうやら元帥も知らないことらしい。元帥の言葉に中将はニヤリと笑い
「先ほど言ったじゃろう?わしが推薦したい海兵希望者がおるとのぅ」
そう告げた。その言葉に俺はやっとか、と笑みを浮かべ、センゴク元帥は信じられないとでも言うかのように中将の顔を見やった。
「サカズキ!お前はこんな子供を海にやろうと言うのか?!」
「仏のセンゴク」そんな二つ名が付くだけあって、確かに優しい人だ。サカズキ中将が推薦する人物とくれば、イイネさんのこともあってかなり有望だ。今は大海賊時代であり、戦力になるなら海賊ですら特権を与えて戦力にしようとする時代なのだ。そんな時代であっても子供は子供らしくあってほしいと、子供は戦力にしたくないと考えるセンゴク元帥は正しく「仏のセンゴク」であろうと思う。
「ワシだってのぅ、孫を何があるか分からん海に送り出したいとは思わん!じゃけぇ鍛えた!こん子が海で生きていけるようにじゃ!そして、こん子はワシの期待に応えた!正義は誰のもんでもない、抱えたもんのもんじゃ!そこに若さも老いもない!!」
ただ元帥の言葉は第三者の言葉だった。サカズキ中将はその容姿と海賊に対する過激な対応から味方からも恐れられている。だが中将は身内にはとても優しい。八歳のころに大佐にもう海に出ても大丈夫、そう言われてから二年も鍛錬を続けさせてくれるほどには。分かりづらい伝わりづらいやさしさだけど、向けられた人にはわかる不器用な優しさの持ち主なのだ。
「お前がそこまで言うのなら、私もこの子に期待したい。だが、推薦されたものには試験を課さなくてはならない。中庭に先に行っていてくれ。」
佐官以上になると、推薦権というものが与えられる。ある程度の実力を持っている者をその実力に応じて、普通よりも高い階級から始めさせるという制度だ。高い実力のものには早く出世し、海軍を引っ張って海賊を駆逐してもらいたいという海軍上層部の思惑らしい。ちなみにだが、コレを提唱したのはサカズキ中将とガープ中将の二人らしい。
つまり鍛錬中に俺に近寄ってきた奴等は、この推薦制度を利用して出世しようと考えていた奴らなわけだ。イイネ大佐に、上手くいけばサカズキ中将に推薦してもらえるかもしれないと。
センゴク元帥の言葉に頭を下げて、サカズキ中将の執務室から退室する。これから俺の相手になる人間を決めるのだろう。俺の予想では一等兵辺りから選ばれるんだろうと思う。推薦制度で一等兵以上からスタートした人間はいないからだ。
しばらくしてセンゴク元帥とサカズキ中将が中庭へと降りてきた。鍛錬中だった海兵たちが二人の姿を見て一斉に敬礼をする。センゴク元帥が苦笑いをしながら
「今回は推薦の為の試験だから中央あたりのスペースを開けておいてくれ。各自鍛錬に戻るように、解散!」
と言うと、明らかに海兵でない俺を中心に輪を作りながら、鍛錬をやめて俺のほうに注目しながらヒソヒソと会話を始めた。中将がいることからサカズキ中将の推薦であることは間違いないし、何人か俺が孫であることを知っているのかそれが伝播しているようだ。
「さて、トビラマ君だったね。今回の試験の相手は、リール一等兵に努めてもらうが異論は無いね?」
やはり一等兵だったか。異論は無いですと、俺が答えようとしたとき外野から声が聞こえてきた。
「センゴク元帥!私めに此度の試験の相手役を努めさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
どこかからしゃしゃり出て来たのは、原作でも見たことが無いホントに知らない人だった。特徴は貴族風な服を着てることだろう。名前を予測するならユウガとかミヤビとかだろうか?
「ん?君は誰だったかな?」
センゴク元帥も知らないとなると、ホントに誰なんだろう。だが本人はそれを可笑しそうに微笑むと
「元帥はご冗談もお上手ですね。私めはユウガ伍長ですわ」
誰だよ?!海兵たちも首を傾げているし、元帥も中将も意味がわからなさそうな顔をしている。ただ追求するとめんどくさそうなことだけは把握をしたのか、彼に相手役を命じた。
「私、コネを実力と勘違いしているあなたみたいな人大嫌いですの。だから手加減できないけれどごめんなさいね?」
カチンときた。コイツだけは全力で叩き潰す。いや、余裕を見せながら叩き潰す。能力は使わずに叩き潰す。そうしているのがビビッているせいと勘違いした奴は、フフッと笑いながら去っていった。元帥にも中将に聞こえないように言ってくる辺り小物臭がしたけれど、絶対にぶっ潰す。
センゴク元帥によって、その場にいた軍曹の階級の人が審判を任される。二人は審判とは逆側に陣取って、試験の評価をするつもりらしい。
軍曹は、俺と伍長の顔を見て静かに頷くと、右手をゆっくりと振り上げた。
「では、双方位置について……始め!」
そうして、素早く右手を振り下ろすのと同時に、試験が始まった。
軍曹の試験開始の合図とともに仕掛けてきたのは向こう。無手ではなくステッキを持っているが、それ以外には何かを持っている様子も無く、足が悪い様子もない。ステッキの持ち方や形状から見て、中に刀は仕掛けられていないし、銃でもない。
右斜めに開いた構えからの初動の少ない突き。みぞおちを狙ったその突きを身体を後方に逸らすことでかわし、ステッキを引っ張ることで向こうの体勢を崩そうとするが、向こうがステッキを素早く引っ込めたせいで失敗。向こうのステッキが鋼鉄製であることも確認した。ステッキというよりは長めの十手だろう。伍長はステップで始めの位置に戻る。
ステッキを地面に走らせるようにしてかけてくる伍長に対して、剃で回り込み伍長が六式に対応できないはずが無いので、そのまま背後から肺がある位置に鉄拳(大佐式体術で、鉄塊を拳だけに纏わせる技)を叩き込む。避けようとする伍長の足に鉄脚(鉄拳の足バージョン)を前方に出すようにして蹴りいれる。倒れこんだ伍長の耳元にもう一度、鉄拳を叩き込む。
伍長の顔を覗き込み、気絶していることを確認し、ステッキを三分の一ほど地中に突き入れておく。万が一にも伍長から、不意打ちをされない工夫である。
呆然としている軍曹のすねに小石を投げて正気に戻させる。軍曹は飛んできた小石に気付いてないようだったが……。
「しょ、勝者トビラマ!」
中将と元帥の顔を見る。中将は満足そうに頷きを返し、元帥は驚いたようにこちらを見ていた。まわりの海兵たちも勝つとは思っていなかったのか、静かにこちらを窺っていた。とりあえず、拳を突き上げてわかりやすい勝利宣言をすると、一気に沸き立った。
近くの海兵たちからかけられる賞賛の声に愛想よく返事をして、覚えをよくしておく。その中で俺に敵意のこもった視線を浴びせてくる奴の顔も覚えておく。そのまま、二人の下へ向かっていく。
今回は、戦闘回でした。へたくそすぎて申し訳ないです。他の作者さん方の作品を読んで勉強したいと思います。
センゴク元帥がいつ元帥になったのか作者にはよく分かりませんが、作者の中ではこの時期であると考えていますが、都合が悪くなったら変更する場合もあります。
コメントお待ちしてます。それでは
センゴク中将→センゴク元帥 に訂正