不良となったあの人の真意   作:初羅 柊羽

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2話「空の下で馬鹿話を」

_______________「また煙草ですか?」

 

 

最近聞き慣れた声がかかる。

 

柵に寄っ掛かって空を見てた私はゆっくり顔だけを後ろに向ける。

 

 

「違う。今日は飴……」

 

 

ダルいと思いながら、舐めていた棒つきキャンディーをこれ見よがしに見せる。

 

すると目の前の客は目を見開いて驚く。

 

…………そんなに煙草吸ってるつもりはないんだけど…

 

 

「……先輩って飴とか食べるんですね。意外です。

いつも煙草を吸ってるイメージがありました……」

 

「…………結構飴食べたりしてるつもりなんだけど…」

 

 

ちょっとした反抗にジトーッとした目線を向けてやる。

 

そんな目線を受けて、不本意だと言いたげな顔をしてる。

 

 

「いやだって、あたしまだ煙草吸ってるところしか見たことなかったんで…」

 

「………ふーん。そうだっけ?」

 

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。

 

 

「今日は屋上に何しに来たんだ… ?」

 

「……作曲です。ついさっき良いメロディーが思いついたんで、今の内に作曲を進めようと思って……」

 

 

サラリとそう答えて、作曲の紙をふらりとこちらに示した。

 

 

「………授業をサボってまで…?」

 

「……………先輩もそうでしょう?」

 

「…まぁね」

 

 

そう言うと、目の前のやつはその辺に座ってギターを取り出した。

 

私はそれをスルーするかのようにまた景色を見始めた。

 

 

「………先輩は何で授業サボったんですか?」

 

 

ふと話しかけられる。

 

何で授業をサボったか……ね。

 

 

「別に……ダルいから…」

 

「…そうですか………」

 

 

興味なさそうに答えると、目の前のやつはギターを弾き始めた。

 

さっきの質問は何だったのやら……

 

 

「………先輩は何でそんなに悪やってるんですか?」

 

「……………悪やってる…?」

 

「不良のことです。何でヤンキーみたいなことやってるんですか?」

 

 

…………悪やってるってそういうことか。

 

それで何で悪やってるのか……

 

………………それはまぁ…

 

 

「…綺麗事が嫌いだから………

 真面目に何かやるのも馬鹿らしいだろ…」

 

「…ふーん。いつからですか?」

 

 

…………何で今日はこんなに聞いてくるんだ…?

 

こいつ、いつもこんなに聞いてきたっけ?

 

いや、ない。

 

いつもはもっと沈黙してるはず。

 

なんでだ……?

 

…………まぁ、いいか。

 

適当に答えてやろう。

 

 

「中1の時から徐々に………」

 

「………ヤンキー歴は5年ですか…」

 

 

……………だからなんだよ…

 

っていうか、ヤンキー歴ってそんな言い方初めて聞いたんだが…

 

いや、それよりもこの質問達はこいつの気まぐれか……?

 

別に嫌なわけじゃないけど……

 

 

 

「………先輩って格好チャラいけど、その辺のチンピラみたいなことはしないですよね……」

 

 

…………そこまで腐ってねぇよ。

 

あれは悪でいる自分に溺れてるやつだろ……

 

私は違う…

 

自分でやるべきことだと思ってることを貫くために、こうして悪をやってるんだ。

 

その辺のやつらと一緒にされては困る。

 

 

「…………かつあげとかしたこと無いですよね…?」

 

「……………それが…?」

 

「いえ、別になんともないですけど…」

 

 

そんなクズいこと誰がやるかよ。

 

金のない雑魚がすることじゃねぇか。

 

私はそんな雑魚野郎と同類にはなりたくないんで……

 

 

「…………先輩って、酒と煙草と喧嘩、授業のサボりぐらいしか、不良らしいことしてないですよね……」

 

「……………充分だろ…」

 

 

………煙草や酒なんて特に法律違反だ。

 

充分、悪だろ。

 

 

「…………喧嘩だって調子乗ってる不良としかやらないですし…」

 

「………」

 

 

…………こいつは何が言いたい。

 

そんな結論をつけて何を言おうとしているんだ…

 

意味が分からないこの行動に自然と眉間に皺が寄っていくのが自分でわかった。

 

 

「先輩って悪い人じゃないですよね。先輩は優しいと思います……」

 

「はぁ?何を言ってるんだ。

 どう見ても優しいわけないだろ。

 優しかったら、煙草だって酒だって喧嘩だってしてない。

 授業をサボったりもしない」

 

 

…………優しかったら人を傷つけることなんてしてない…

 

……………迷惑をかけることもしてない…

 

 

「………そうですか。まぁ先輩がそう思ってるんだったら、それで良いですけど…でもあたしは優しいと思いますよ…」

 

「………………そうか」

 

 

そう言うと、またやつはギターを弾き始めた。

 

私はそれを一瞥すると、飴をガリッと噛み砕く。

 

……………甘いな…

 

まるで目の前のやつみたいだ……

 

私を優しいなんて甘すぎる評価を下す、目の前のやつにこの飴の味が似ている気がした。

 

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