______________時は過ぎて今は放課後。
タバコがきれた私は面倒だと思いながら、タバコの調達に向かうことにした。
いつもならもう少し屋上でだらけているのだが、タバコがなければ仕方がない。
私は屋上から1階まで続く階段を下りていった。
無気力に階段を1段1段下りていくと、徐々に周りの人数が増えていくのが見てとれた。
下校をしようとしてる生徒たちから突き刺さる視線。
こそこそとした話し声。
その全てを無視するように歩く。
なにせ、一々気にしてたらストレスが爆発してやってられないからな。
まぁでも、何も気にせず…っというのはもちろん無理な話で、多少イラッとはするのは流石に避けられない…
____________ドンッ!!
「っ!」
「きゃっ!」
急に衝撃が走り、体が仰け反る。
突然のことに多少の混乱はしながらも足元を見下ろす。
すると、一人の少女が尻餅をついていた。
「…………悪い。大丈夫か…?」
そう声をかけて手を差し伸べる。
………………もう少し前方に気を付けてれば良かったな…
「あっ、はい。すいません」
目の前の少女は私の手を掴み、立ち上がる。
…………見た感じ、問題無さそうだな…
私は立ち上がった少女を見て、そう判断した。
少女の手を離すと、周りがざわざわとし始める。
………………原因なんか分かってた…
それでもイラつくものはイラついた。
「チッ!!」
思わず、大きな舌打ちがこぼれてしまう。
目の前の少女はビクッと少し驚いてしまったようで肩を少し震わせた。
周りは水を打ったようにシーンっと静まり返る。
「………………気を付けろよ…
でなきゃ、次は怪我をすることになる…」
「は、はい…」
その返事を聞いた私はそのまま歩みを進めて、少女の横を通りすぎた。
また階段を下りていく。
_________「よりによって来栖さんとぶつかるなんて…」
_________「可哀相。絶対目つけられるよね…」
_________「あの子も馬鹿だよね。来栖さんなんかとぶつかるなんて…」
_________「あの子抜けてそうな感じするし」
_________「これからの学校生活はずっと来栖さんに虐められちゃうんだろうな。本当に可哀相…」
_______________思い出すだけで苛立ちが走る。
……………勝手に決めつけやがって…
誰のことを言ってるだなんて、そんな馬鹿みたいなことは言いもしないし、考えもしない。
ただ、気にくわない………
もう一度大きな舌打ちをし、私は階段を荒々しく下りていった。
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_____________忘れ物っ!忘れ物っ!
幼馴染み達との帰りの途中、明日までに提出しなければならない書類を教室に忘れたことに気づき、慌てて私は戻ってきた。
校門の辺りで気づけたおかげで、こうしてすぐに戻ってこれたのは良かった。
そう思いながら、少々キツイ階段をかけ上がっていく。
っはぁ。っはぁ。
あともう少しで教室につくはず…
息を若干弾ませながら、階段を攻略していく。
それにしても放課後にしては廊下が静かというかしらけてるというか……
みんな息を潜めてるような感じで話し声もひそひそとしている。
何かあったのかな?
______________ドンッ!!
「っ!」
「きゃっ!」
いきなりの弾けるような衝撃により、私は尻餅をついてしまった。
いたたたた…
どうやら私は誰かとぶつかってしまったらしい。
あちゃ~。運が悪いな~、私。
幼馴染みを待たせているのに、こうして事故っちゃうなんて…
っはぁ~。
うつむき気味にため息をはく。
「…………悪い。大丈夫か…?」
そう言った目の前の人物から手が差し伸べられる。
優しげな手と冷たげな声の中にある温かいトーンにドキッとし、思わず上を見上げる。
すると端正な顔立ちが目に入り、先程とは比べ物にならないほどドキッ!っとしてしまった。
思わず見惚れてしまう。
さらさらと靡く黒色の髪に絶対零度の冷たさを持っているように見えて奥底は温かい青色の瞳。
その他にピアスがあったり、制服を着崩してたりなんかしてたけど、そんなことが気にならないほど見惚れてしまうような端正な顔立ち。
ボーッと見つめていると首が密かに傾き、分かりづらいながらも表情も不思議そうなものへと変化していた。
近くにいなければ分からないであろう変化。
本人すら気づいていないような小さく密かに変化する感情。
そんな変化1つにキュンッとしながらも、ハッとする。
せ、せっかく手を差し伸べてくれたのに、む、無駄にするのはさすがに失礼だよねっ!
慌てて手を掴み立ち上がって、謝罪を伝えた。
そして謝罪をしながらも、目の前の人の少しひんやりと冷えた手のひらにまたドキドキしてしまう。
なんでこんなにも鼓動がうるさいんだろう。
ドキドキ、ドキドキと。
いつもより激しく大きい胸の音に目の前の人に気づかれてしまうのでは…っと危機のようなものを覚える。
こんな風に考え事をしていると、はらりと優しく手がほどかれた。
急に手の感触がなくなってしまい、ちょっと切ない気持ちが心に宿った。
若干落ち込んでしまう。
「チッ!!」
っ!?!?
いきなりの舌打ちにビックリしていると、目の前の人の鋭い視線は周りの人に向いていた。
何事かと思い、周りを見わたすとシーンっと静まり返っており、先程までひそひそとしていた話し声すらもなくなっていた。
首をかしげていると、目の前の人の視線がこちらに向く。
でもその視線は先程よりも優しくなっており、ビックリさせてしまったことを詫びているような視線だった。
他の人はもちろん本人も感情を出しているということに気付いていないであろう。
近くでこうして対面としなければ分からないような感じで、瞳の奥の感情が伝わってくる。
目の前の人の分かりづらい小さな感情の隆起。
そんな感情表現に愛しくなる。
きっとこの人は怖いと思われてしまうだけで、内心はとても優しさに溢れているのだろう。
「………………気を付けろよ…
でなきゃ、次は怪我をすることになる…」
「は、はい…」
反射的に返事をしてしまうと、目の前の人は歩き去ってしまった。
『次は怪我をすることになる…』 か。
他の人からしたら、この言葉は次ぶつかってきたらぶっ飛ばすからなみたいな言葉に聞こえたであろう。
でも私からしたら、この言葉は次にまたこんな風に事故を起こしたら怪我をしない保証なんてない。階段にでも落ちたら怪我をしてしまうだろうっという気遣いと心配の言葉に聞こえた。
そして断定系なのも、絶対に気を付けろという念押しなのであろう。
自然と頬が緩んでいく。
周りは知らないあの人の優しさを私は知っている。
そんな優越感のようなものを感じてしまう。
ピロリン。
ん?
携帯から通知音が鳴る。
携帯の電源を入れ、通知の方を見ると1つのメッセージが届いていた。
どうやら幼馴染みからのもののようでポチッとメッセージを開く。
なになに…?
『ひーちゃん、まだ~?』
あっ…
やばいっ!!早く取りに行かないとっ!
慌てて『ごめん、すぐ戻るから』からという主旨を込めたメッセージを返し、廊下だということを忘れ、また階段を駆け上り始めた。