世界の父   作:Drac

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とある少年

 昔も昔、西方歴の名もない頃の話、ある男の子は白色の糸の束と使い物にならなくなって捨てられたのであろう金属片の塊で遊んで(実験して)いた。その隣には前に遊んだであろう、半ばで折れた木が乱雑に置かれていた。子供のすることだと誰もが放っていたが、気味が悪いというのだろうか、今では折れて原形を保てていないそれは、まるで巨大な人の腕のような形をしていたのだ。

 そして今男の子が遊んでいるそれもおかしなことがあった。前記のように今彼の目の前にあるのは金属片の「塊」なのだ。そこには先程あげた白い糸以外は何もついていない。金属同士をくっつけるには強力な接着剤や融点の低い金属で接着したり強い圧力などが必要だが、この場には熱も圧力も出せるものはない。それは魔法であっても不可能なことだ。

 そうこの世界には魔法が存在する。それは特定の記号の組み合わせで示され、脳内にあるとされる仮想演算領域―魔導演算領域(マギウスサーキット)―で処理・発動する。個人など及ばないほどの力を有するがそれでも金属を砕くことは出来れどくっつけるほどの力は出せず、できたとしても人の及ばない制御能力がなければ不可能だ。

 さらには徒人やドワーフは体内に触媒結晶が存在しない。魔法は触媒となる結晶がなければどれだけ演算しようと発動しない。それゆえ魔法を使うためには杖などで外部に触媒を用意しなければならない。しかし彼はそんなものは持っていない。それどころか彼は普通の人にはない特徴があった。他二つの種族には見られない長い耳があった。彼はに種族とは異なり体内に触媒を持つアルヴだったのだ。

 そんな彼でもそんな魔法は使えない。それでも金属片は1つ...いや2つ(・・)の塊となっている。理由は意外と単純で複数の金属片を一つの存在と定義して硬化させる―彼は便宜上硬化魔法と呼んでいる―強化系の魔法を使用しているのだ。それは本来一つでないものを無理やり固定しているため決して効率的ではないが鍛冶ができず、大人達には理解されない彼には最善の方法であったといえよう。

 なぜ彼がこんなことをしているのか、それを説明するためには少し時間を遡らなければならない。

 彼が生まれたのは今から10年ほど前になる。

 

 

 僕はどうなったんだろう。

 まどろむ意識の中僕は必死に思い出した。僕はさっき車にはねられた。でもそこからの記憶が無い。目を開けると母親らしき人が見えたがおかしなことがあった。耳が異様に長かったのだ。

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