世界の父 作:Drac
錬金術
そうやって悲観しながらもなにか方法はないかと日々を過ごしていた。
そんなある日俺はとある場所に向かっていた。そこは
「すみませーん。アルダートさんに呼ばれてきました。」
ここには受付もある。今回の僕のように度々来客があるからだそうだ。受付の人に案内してもらい僕を読んだ人のいる部屋へと向かった。錬金術は工房とは違って複数の班を作ってその中で研究をしている。アルダートはそんな中で働く徒人で僕の兄貴分とも言える存在だ。
「あれ?レンくん?どうした...ああそういうこと。アル兄が喜々としてなんか書いてたわ。」
「あ、レナ。はい、そういうことです。」
「あ!そうだ久しぶりに会ったんだしアル兄が来るまでお話しない?」
「いいですよ。」
案内された部屋部屋で彼を待っていると不意に後ろから声をかけられた。言い忘れていたが、僕の名前はローレンス、みんなからはレンと呼ばれている。そして僕に声をかけてきたのはイレーナという女性でみんなからはレナと呼ばれている。今しがたアルダートを兄と呼んだが兄弟ではない。それどころか彼女はアルヴであり親戚というわけでもない。僕と彼女、そしてアルダートは同じ地区で生まれ育ったいわゆる幼馴染というやつである。アルダートは当時からリーダーシップがあり、みんなから兄や兄貴などと呼ばれていた。その経験が生かされたのかはわからないが彼は今副班長として仕事をしている。そして彼女はなんの偶然かまだ見習いではあるがアルダートと同じ班で働いている。
レナと昔話や近況を話し合っていると突然頭の上に重いものが乗っかった。見上げるとそこにいたのは予想通り僕のことを呼んだアルダートだった。
「よぉ。俺を放っておいて彼女と互いの想いでも語り合ってたのか?」
「「ち!違いますよ!」」
「の割には息ぴったりだな。」
「だ、第一僕達は付き合ってもいませんし...それよりアルダートさん用件はなんですか?」
「ああ寂しいなー。昔は兄さん兄さんって後ろをついてきて可愛かったのに」
「茶化さないでください!」
やっとこさ来たと思ったら僕達をからかうアルダートに少々苛立ちながらも話を進めようとするが彼はそれを許さない。僕の耳元に口を近づけてレナに聞こえないようにつぶやく。
「いいのかぁ?そんな態度とって。お前がレナのことを昔から好きなのは知ってんだぞ?」
「んなっ!?」
「お前ほかの女だと反応しないくせにレナが関わった時だけ雰囲気が違うからバレバレ」
「あ、アル兄うるさい!」
彼の言葉に翻弄されっぱなしになっている時に助け舟が来た。
「こら。そんなにいじめちゃダメでしょうが。二人共初なんだから。」
「へいへいすんませんでしたー」
アル兄の頭にチョップをいれて助けてくれた人はウルミナという徒人の女性でみんなからはミーナと呼ばれている。彼女も僕達と幼馴染で正義感が強く、幼い頃から度々暴走するアル兄を止めていた。そして彼女はその正義感から騎士―魔法が解明されたことで女性も戦うことができるようになったと女性騎士になる人も少なくない―として働いている。
彼女が来たことで1度場が落ち着き、テーブルを囲むように各々が座り直す。
「レンくんだけじゃなくてミーナさんも呼んでいたんですね」
「ああそうだ。今日はレンたちに見てもらいたいやつがあってな。」
アル兄はそういうと鞄から白い一束の何かを取り出した。
「これだ。最近俺たちの班が開発したもので
それは真っ白で糸というよりふつなと言った方がいいほど太いものだった。僕はそれを手に取ってどんなものかを確かめる。そうしているとアル兄の説明が続く。
「これはある魔法で伸縮するんだ。」
「伸縮?」
「あっ。俺がやろうと思ってたが丁度いい。レナお前がやれ。」
「え?私ですか?まあいいですけど」
アルダートに促されレナは結晶糸を手に取り何らかの魔法を発動した。しばらくは何も起こらなかったがよく見てみるといつの間にか結晶糸が半分ほどの長さに縮んでいた。その様子を見て僕はなにか引っかかるものを感じた。それが何か考えているとミーナさんがアル兄に質問をした。
「で?こんなものを私たちに見せてなんのつもり?」
「それはだな。...特に意味は無い。」
「はぁ?」
今まで妙にシリアスな感じで話を進めていたアル兄のおどけたような言葉にミーナさんは素っ頓狂な声を上げた。
「前、レンになにか自分で動くもの作れないかって聞かれたんでな、作ってみた。」
「で、作ったはいいけど使い道が思いつかないから私たちに考えろと?」
「そゆこと。レン的には回転するほうがよかったみたいだけどな。」
「ごめんねレンくん。私たちにはこれが限界みたい。」
「いや。いや!これすごいよ!ありがとう!」
3人は今まで黙り込んでいたのに急に興奮した声を上げだした僕を驚いた目で見る。おそらく自分の要望したものと違って落ち込んでいるのだと思ったのだろう。
「二人とも、これどれだけ用意できる?」
「え?それを一束として1ダースくらいなら」
「それの半分でいいからくれない!?できれば今すぐ!」
「あ、ああわかった。おいレナ用意しに行くぞ」
「あ、はい!」
僕の言葉に慌てて用意してくれるふたり。なぜ今まで回転ばかりに視点を向けていたのか。結晶糸のおかげで僕には新しい道を見出していた。