一体どうなってるんだ?
明らかに俺の部屋じゃないよな……あと俺縛られてるし。
まず自分を落ち着かせるために昨日したことを思い出してみよう。
俺、十文字アタリは昨日の朝9時に起きてレトロゲームをしていた。
朝ごはん? そんなものは食べない。夏休み初日だったからか両親はいなかった。ご飯なんて用意されてなかったし作る気もなかったので、ずっとゲームをしていた。
やっていたゲームはレトロゲームの中でも最高のタイトル、駆け出し勇者だ。
この作品を語ろうとするとストーリから裏技から何から何まで、日が暮れるまで話しちまうから、また後で話そう。
えーっとそれから……スコアアタックで疲れて風呂に入って上がって。
寝る準備をしてお気に入りのヘッドホンでレトロゲームのミュージックを聞きながらそのままベットにインしただろ。
うん、いたって普通の生活だ。他の人が見たらダメ人間って思うだろうけど。うん。
やっぱり俺は間違ったことなんて一つもしてない! それなのにこの状況だ!
神様、俺が一体何をしたって言うんだ!?
「ねえさっきからなんでめをつぶってるのギャリギャリされるのがこわいからなのそれともうれしいからめをつぶってるのかなどっちでもいいけどはやくギャリギャリしてほしいんだよねわかる」
俺が必死に現実逃避をしている中、紫色の髮にメガネを掛けた女の子が早口で喋る。
「ちょっちょ待てって!! 部屋に勝手に入ったのは悪かったと思うけどさ、流石にこれはやり過ぎじゃないか!? ギャリギャリって言う言葉初めて聞いたけどさ!? 目の前にチェーンソウあるってことはこれから俺は斬られるってことなんだよな!?」
恐怖心から昨日のことを思い出す余裕もない。というかもう思い出す意味ないか……
「そうだよあなたはいまここでわたしにギャリギャリされちゃうの♪ わたしねこのごろだれかにずっとつけられてすとれすがたまってるのでもわたしにつきまとってるひとギャリギャリしてもぜんぜんきもちよくない……だからあなたでギャリギャリしてもいいんでしょわかる」
女の子はそう言いながら大型の二枚刃チェーンソウをギュインギュインと動かした。
見ているだけでおぞましい。寒気がする。
「いやいやいくらストレスが溜まってるからって人斬っちゃダメだろ!! そのチェーンソウで斬られたら痛いじゃすまねぇよ!! いくらダメ人間の俺だってこんな何処か分からない場所で死にたくねぇ!!」
「ここがどこかはわたしにもわからないたまたまじぶんのへやからそとにでたらまったくちがうせかいだったからこわくてへやにとじこもってるの……でも…かべからあいつらが……ああああああああ!!」
チェーンソウを力なく落として頭を抱えて倒れこむ。一体この子に何が起こっているんだ?
俺を殺そうとしている人だとしても、少し気になる。
体は逃げたいって言ってるけど。
「なあ、お前に付きまとってくる誰かって一体なんなんだ? チェーンソウで切っても斬りごたえがない、って言ってたよな?ってことは実態がないってことなのか?」
「はなしをするあいてもいなかったからこたえてあげる。わたしにつきまとってくるくろいかげがてきかはわからないけどわたしをおそってくるからたぶんてき、てきはやだからギャリギャリするの」
俺の質問が悪かったのかは分からないが、現時点では俺はこの子とまともに会話できでいない気がする。
「なるほど、その黒い影っていうのが襲って来て怖いから俺を斬る。……まてまて理不尽じゃないか!?」
少しでも心を開いてくれるよう笑いながら言ってみる。ほんとはこんな状況で笑ってられるほどずぶとくないんだよな、俺。
「おとながすとれすでたばこをすうのとおなじでわたしもすとれすがたまってるからきもちよくなるためにギャリギャリするのなにかおかしい?」
可愛らしい顔で首を傾げながら見つめてくるのが俺には恐ろしくて仕方がない。
このままだとマジでやばい!!
「おいおい、それはないだろ。お前にとっては得かもしれないけど俺にとっては損でしかないだろ!?快楽のために殺される?そんなの夢でもごめんだぜ!!」
ほんとに夢でもやめてほしいぜ。
……それだよ!! 夢だ夢!! 朝起きたら誰かの部屋にいて殺されそうになっていて、しかも目の前にいる子はおかしなことを言っている……
こんなシチュエーション、絶対夢だッ!!
『ぐうぅぅぅ…』
この夢という最後の希望を見つけた俺に、腹が鳴るという悲報が流れる。
あれ?夢の中なのに俺お腹空いてるんだな……うん、そうだと思いたい。
でも昨日は朝から飯を食べてない……つまり三食抜かしてるんだよな。あまりにもリアルすぎる。
「あなたおなかすいてるの? でもいまからわたしにギャリギャリされてうれしくなるからおなかがすいてることなんてわすれちゃうよね! ほらチェーンソウもはやくきらせてっていってるよ」
そしてまたチェーンソウを手に取り悲劇の音色を響かせる。チェーンソウの刃はもう俺の体の近くだ。
「おい……まじかよ……!!」
「ほらあなたもうれしくてないっちゃってるよはやくしてほしいんでしょわかってる」
もしかしなくてもこの子ってサイコパス……? いやもっと早く気づけよ、俺……!!
全力で目を閉じ、体を石のように固くし、歯を食いしばったその時、チェーンソウが止まった。
「またあなたなの!? わたしのたのしみもじゃまするなんて……ゆるさない!!」
あなたと言う言葉を聞いて俺は目を開ける。
目を開けた先にいたのは女の子と真っ黒い影。
影だということは確かなのだが、なんの影なのかは分からない。でも頭のような出っ張りに赤い目があるのが分かる。
多分それが恐ろしさを引き立てているのだろう。
黒い影は女の子をしばらく見ると急に俺の方に目線を変え、瞬間移動かと思うほどすばやく俺の目の前に飛び込んで来た。
「もしかしてあなたのねらいはこのこ?だとしたらぜったいにわたさない……!! もしもっていったらいやっていうほどギャリギャリしてあげる……!!」
女の子はそう言うと俺に巻いていた包帯を素早く巻き取り、俺に向かって叫んだ。
「扉を開けて逃げてぇ!!」
いや普通に喋れるのかよ!!
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