#コンパス=くぎり   作:ボイドさん

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ここまで逃げてきたのはいいものの、だ。

  これからどうしよう……

  あの子は今もあの黒い影と戦ってる。あそこに戻った方がいいのか? いやダメだ、戻っちゃいけない。

 仮に戻ったとして、返り討ちに合うだけだ。それにあの子にはチェーンソーがあったし。それなりに戦えるだろう。

 そういえばあの子って名前なんていうんだろう。聞いてなかったな。今度あった時に聞こうかな。

  そんなことを考えながら歩いていると、いきなり目の前にありえないものが飛び込んできた。

 

「……なんじゃこりゃぁぁぁあああ!!! 」

 

  それは、現代の技術では作ることができないはずの空を浮遊する乗り物や、空中投影された月への旅行の広告、人が入った瞬間にどこかへ消えてしまうドアなど、近未来の世界がそこにはあった。

 ほんのさっきまで俺の知ってる街ではなかったけど普通の街の風景だったのが……急に次元をまたいでしまったかのようにガラリと街並みが変わった。

 

「なんてったってこんなビルやら何やらが……え、なんで!? 」

 

  俺は反射的に、思ったことをそのまま口に出してしまうほどに、その光景に驚いていた。

  ただ一つだけ許せなかったのは、子供たちが遊んでいるゲームが3Dのものしかなかったことだ。許せない。だっておかしいだろ!?  あの楽しくてカッコよくて面白いレトロゲームが一つもないなんて!!

  なんで誰もわかってくれないんだよ!?

 

だけどそんな俺の趣味趣向しゅみしゅこうなんてものはこの際どうでもいい。

だって近未来。見れば近未来。そりゃ近未来。次元が次元だ。遊ぶゲームだって違うだろう。しょうがない……いやでもやっぱり許せない。

 

  俺はゲームのことは忘れて、完全にその光景に見とれていた。あ、ロボットもいる。いろんな色のロボットがいるなー。

 ボーイッシュなロボットもいれば、ロボットのカップル、人外のロボットまでいる。なんでこんなにロボットがいるんだろう。

 

  あれ、なんかあのロボット、すごい速度で突っ込んでくるな……あのロボット可愛いな……でもなんでツインテールなんだ……?  あと…緑に光ってる……?

 

いや待て。めっちゃ突っ込んでくる。多分ここにいたら俺あいつに轢き殺される。やばいやばいやばいやば逃げる!! 

俺は力いっぱい横に走って避けた。

 

ギュィィィン!!!

 

  ロボットは軌道を変え、俺に向かって突っ込んできた。

 

ー「空間転移装置、起動シマス」ー

 

  空間転移装置?  なんだそれ。ああこれ死んだわ。たぶん天国に空間転移されるんだろうなぁ。うぅ…気が遠く……

 

  あれ、ならない……?

 

「アナタ、ダイジョウブデスカ? 」

「……へ? 」

 

  つい気の抜けた声が出てしまった。

  どうやらその空間転移装置とやらで助かったらしい。

 

「アナタ、モウ少シデシャドウニヤラレテマシタヨ。コレガ証拠映像デス」

 

  近未来お得意の空中投影で映されたのは、俺に向かって走ってくるあの黒い影だった。

 

「お前が……黒い影から助けてくれたのか……? 」

「ハイ、ソウデスヨ♪ ワタシタチハソノ黒イ影ノコトヲ『シャドウ』ト呼ンデイマス」

「シャドウ……あいつはシャドウっていうのか……そういや、おまえの名前は?  俺はアタリだ」

「ワタシノ名前ハ、ボイドールデス」

「そっか、ありがとなボイドール! シャドウか……今度から気をつけるぜ! 」

 

  ロボットにも名前ってあったのか。近未来は違うなー。さすが近未来。そこは近未来。されど近未来。

 

「チナミニ、シャドウ二モ様々ナ種類ガアリマス。人型ノモノ、地ヲ駆ケルモノ、空ヲ飛ブモノ……ソレゾレガ違ッタ生態ヲシテイテ、違ッタ戦闘方法ヲ用イマス」

 

  なんか、動物の狩りみたいだな。あれなんていうんだっけ……食物連鎖?  だっけ?

 

「そうなのか、シャドウがこの世界にはたくさんいるのか……そういえば!! 大事なことを聞くのを忘れてた。この世界って……どこなんだ?」

「コノ世界ハ、世界ノ『コンパス』ト呼バレルクギリガナクナッテシマッタ世界デス。コンパスガナクナッテカラ、コノ世界ハ混沌ト化シテシマイマシタ」

「そうだったのか……」

 

  いきなりどこかわからない世界にいたのも、街にいきなり近未来の世界が出てきたのも、コンパスと呼ばれる世界の区切りがなくなってしまったから。

確かに納得がいく。

 

「……チョット待ッテクダサイ」

「……ん?  どうした?  言いたいことがあるならなんなりと言ってくれ」

「アナタ、ヒーローノ素質ガアリマス」

「え、俺にヒーローの素質がある? こんなダメ人間に?  ないよ、絶対ない」

 

  そうだよ。俺にヒーローの素質なんてあるわけがない。だって家で起きてゲームして食ってゲームして寝ての生活だぞ!?

 

「イヤ、ワタシノヒーローサーチニ狂イハアリマセン」

「ヒーローサーチ?」

 

なんだそのヒーロー探しだす機械みたいな名前。

 

「ハイ、ヒーローサーチトハ、ヒーローノ素質ガアルヒトヲ探シダス機械デス」

 

いや、当たってたのかよ!?

 てことは、俺ってほんとにヒーローなの!? しかもヒーローってたくさんいるのか!?

 

「あ、そうなんだ……俺が……俺なんかがヒーロー……」

「ソシテ、アナタニハコノ世界ニ何人カイルヒーローヲ探シ、コノ混沌ノ世界ノ修正ニ協力シテモライマス。マズハワタシト一緒ニコノ世界ノドコカニイルヒーローヲ探シマショウ」

 

 

「……えぇぇぇぇぇ!? 」

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