『邪魔だぁっ!』
IS【甲龍】を身にまとった鈴をジュア=ムが駆る【ラフトクランズ】は左マニピュレータのクローで弾き飛ばす。
パワーでは第3世代機の中でも上位に位置する甲龍を一方的に押し切ってだ。
『きゃぁっ!』
『鈴さんっ!』
弾き飛ばされた鈴は従士相手に優位に立ちまわっていたセシリアが受け止めた。
そのすきを狙ってドナ・リュンピーを駆る従士が2人に接近し、2人の注意はそちらに逸れた。
(ラースエイレムは起動したはずっ、なのになんでフー=ルー様が押されてんだよっ!?)
瞬間移動したかのように消えたラフトクランズ・ファウネアとグランティード。
センサーがとらえるとファウネアのエネルギーが大きく消費されており、2機の場所も数瞬前から大幅に離れている。
ラースエイレムは確かに起動したはず。
そして先ほどまではフー=ルーが優位であったはずなのに、今は逆転しグランティードを駆る少年が彼女を押さえていた。
(あのガキはナニモンだっ!?アル=ヴァン様は玉座機は皇家の血筋かシューンの人間しか動かせないはずって仰られてたが……っ!?)
その疑問に飲まれかけたジュア=ムであったが、下方から迫る機体の反応が思考を切り替えさせた。
『うぉぉぉぉぉっ!!』
高速で接近する白式。
振り上げられた光の剣【零落白夜】
『ちっ!』
舌打ちしつつ、迫る白式にオルゴンソードライフルを向ける。
白式の速度は確かに早い。だがあまりにも真っすぐすぎた。
『甘いんだよっ!』
『ぐぁっ!』
高出力のオルゴンビームが放たれ、白式に直撃した。
エネルギーを大幅に消費する零落白夜と今の被弾、すでに白式のエネルギーは5割を割っている。
弾き飛ばされた白式を見て、ジュア=ムの目が見開かれた。
そして憎しみの籠った目で白式を穿つように睨む。
『てっ、てめぇ……その顔、機体、織斑一夏だなぁっ!?』
オルゴンソードライフルをソードモードで展開し、翔ける。
その速度はラフトクランズの残像が見えるほどの速度だ。
咄嗟に零落白夜を解除した、雪片で受け止めるがとても受けきれるものではなかった。
『うわぁっ!?』
たまらず弾き飛ばされ、地面にたたき落された。
『ぐっ、くそ……っ!』
立ち上がろうとした一夏であったが、突っ込んできたラフトクランズの脚部に蹴り飛ばされ、その後押し倒された。
『まさか会えるとはなぁ、織斑一夏、織斑千冬の弟さんよぉ……?』
機体の出力差からか、押し返そうとしても逆に押し返される。
ニタリと笑うジュア=ムに一夏はうすら寒いものを感じたが、歯を食いしばって耐え叫んだ。
『何なんだよ、お前っ、いやお前らはっ!なんで学園を襲うんだよっ!』
『俺は、ジュア=ム・ダルービ。俺たちの目的は玉座機の奪還とこの学園の殲滅でなぁ……それにしてもまさかテメェにこんな早く会えるとは思わなかったぜ、織斑一夏』
『おっ、俺はお前達なんか……っ!』
『そりゃそうだよな。でもこっちはテメェの姉貴と篠ノ之束にはだいぶ世話になったんだよ……白騎士事件でなぁ』
左のクローに翡翠の粒子が集い、オルゴンクローが形成される。
そしてそれで白式を抑え込んだ。
シールドエネルギーが急激に減少し、装甲も軋む音が増える。
『白騎士事件って、それに千冬姉と束さんが何の関係が……っ!』
『……どうやら白騎士事件について何も聞かされてねぇんだな』
オルゴンクローで拘束されているため身動きができない。
唯一の武装である雪片も手放してしまい、離れた地面に突き刺さっていた。
少しため息をついたジュア=ムが口を開く。
『なら教えてやるよ。白騎士事件、あれはテメェの大好きな織斑千冬とISの開発者である篠ノ之束が起こしたマッチポンプなんだよ』
『っ!?』
『クラックしたミサイルを日本に向けて放ち、それを【白騎士】を使って織斑千冬が迎撃して死傷者なしでISの有用性をアピール。見事に次世代の兵器として世界中に知れ渡ったってのが真相なんだよ』
白式を抑え込んでいる翡翠色の大爪に力がこもる。
装甲が砕け、より強く抑えられ一夏の顔に苦痛の色が浮かぶ。
『千冬姉がそんな……でっ、でもあの事件、死傷者は出なかったって……っ!』
『確かに死傷者は出なかった。だけどな、それは地球人だけだったんだよ……っ!』
『ちっ、地球人って……くぅっ!』
声色に怒気が籠っていき、それに比例してオルゴンクローが白式を破砕していく。
『白騎士事件なんて起こらなきゃ、もっと早く民間人は【冬眠】から目覚めてたんだ……っ!それを……それを織斑千冬と篠ノ之束の2人が台無しにしたんだよっ!騎士機のデータを流用して作り出した白騎士で地球のパワーバランスを変えちまったからなぁっ!』
白式のシールドエネルギーはすでに枯渇寸前にまで減らされている。
これ以上は危険な状態だ。
『テメェの姉貴が俺の弟を……アドゥ=ムを殺したんだよ!白騎士事件を起こしたテメェの姉貴がなぁっ!!』
『ぐっ、あぁ……っ!?』
一夏を救おうとセシリアや鈴が向かうが、従士達が邪魔をして思うようにならない。
生徒の避難を終えた簪のベルゼバインも、ライフルで狙撃しようとしているが射線が通らない。
『だから織斑千冬と篠ノ之束は絶対に許さねぇっ!あの女も同じ目にあってみればいいっ!死ねよやぁぁぁぁっ!!』
最大出力で白式を握り握りつぶそうとしたラフトクランズ。
だが、そのクローは破砕され、オルゴンの爪は一夏には届かなかった。
飛来したブレードがオルゴンの爪を破砕したのだ。
投擲したのは量産型のISである【打鉄】を身にまとった千冬であった。
瞬時加速で接近しつつ、もう1振りのブレードを上段で振り下ろした。
それをクローシールドでジュア=ムは受け止める。
『一夏には手を出させないっ!』
『っ!!テメェだっ、テメェが一番許せねぇんだよぉっ!マテリアライゼーションッ!』
打鉄のブレードを出力差で弾き飛ばしたラフトクランズの左マニピュレータに再度粒子が収束して結晶化していく。
翠水晶の巨大な爪となったマニピュレータで千冬を狙う。
一瞬の拮抗の後根元からブレードが折れ、オルゴンクローの爪撃が打鉄のマニピュレータを弾き飛ばした。
『なっ、何っ!?』
『模造品の模造品ごときが、騎士機に敵うわけねぇだろうがぁっ!』
そのまま、蹴りを叩き込んで弾き飛ばす。
『かっ!?』
機体の性能差が隔絶しているため、たまらず弾き飛ばされた打鉄の背後に、文字通り【転移】したジュア=ムのラフトクランズ。
『千冬姉っ!』
『死ねぇぇっ!』
立ち上がった一夏の声も空しく、最大出力のオルゴンクローが振り下ろされる。
その瞬間、ラフトクランズのセンサーが上空に現れたエネルギーを感知した。
『オルゴン・ブラスターっ!』
『っ!?』
降り注ぐ極太のオルゴンビーム。
咄嗟にオルゴンクローで受け止めるが、あまりの威力に美しい結晶の爪は耐えきれずにひび割れていく。
そして、耐えきれなくなったとき、残りのビームはラフトクランズに直撃した。
『ぐぁぁっ!?』
装甲の一部が破砕し宙を舞う。
だがすぐさまAMBACで体勢を立て直す。
自機を狙ってきたのは、上空でフー=ルーを相手にしていた玉座機【グランティード】
アリーナ外壁に叩きつけられたフー=ルーはとどめの一撃を回避した後、再度射撃戦に移行していたのだ。
その隙を狙い、こちらを攻撃してきたのだろう。
とても素人ができる行動ではない。
『ジュア=ム、損傷は?』
『……問題ありません、まだいけますっ』
彼女のラフトクランズ・ファウネアも自身のラフトクランズと同じく、損傷している。
だが、まだエネルギーは十分残っている。
しかし、ジュア=ムの返答を聞いたフー=ルーの決断は速かった。
『……ジュア=ム、ここは撤退するわよ』
『っ、何故ですかっ、フー=ルー様っ!?』
『ラースエイレムを無効化する装置を相手は持っている。しかもその装置はグランティードに備え付けられている。従士達は全滅し、転送済みで数で負けている。この情報を持ち帰り、次で取り戻す。それが最善よ』
冷静に周囲を見回すと、学園側の機体にも被害が出ているが従士達の姿は見られない。
すでに転送され帰還しているのだろう。
このまま戦った場合、撃墜もしくはラフトクランズの鹵獲まであり得る。
それは避けなければならない。
『っ……承知しましたっ!』
後一撃で千冬と一夏を仕留めることができるところまで追い詰めたジュア=ムは、歯を食いしばってその決定に了承の意を返す。
それと同時に、ラフトクランズ2機の周囲に光が溢れる。
その光は撃墜された従士達が消えた時にあふれた光と同一の様に見える。
『逃げる気かっ!』
『えぇ。まさかエ=セルダ様の記憶を受け継いでいるとは思わなかったわ。次は必ず、それまでグランティードはアナタに預けておきますわ、少年』
フー=ルーの姿がその言葉の後に消える。
『織斑千冬っ!次は、次は必ず俺が殺すっ!テメェが罪から逃げようとしても必ずなぁっ!』
そう叫んだジュア=ムも続いて消える。
センサーには敵の反応はない、それを確認した統夜が呟く。
『ラフトクランズの転移機能を使った撤退……フー=ルーめ、相変わらず鮮やかだな』
『あのー、統夜……さん?』
思わず敬語で年下の統夜に話しかけた刀奈。
それを見て統夜は一瞬呆けたような顔になった。
『……あっ、あれ?』
呆けたのは一瞬、そのあとは困惑が彼を襲った。
先程まで戦っていた記憶はある。
しかしその時の自分は、まるで自分が自分ではないように感じた。
『おっ、俺はいったい……何を……?』
『とっ、統夜君、戻ったのね?』
『あぁ……刀奈姉ちゃん。終わったんだよね?』
『えぇ。どうやらそのようね』
機体と同化している刀奈はグランティードのセンサーをフルに使い探知する。
だが周囲に鉄器の反応はやはりなかった。
『……俺は、あの時、なんで……』
先程までの自分の行動、敵機と搭乗者の名が自然と浮かんできた。
その理由はわからない。
だがなぜか確信があった、先程までの自分はまるで父親【セルドア・紫雲】のようであったと。
『……統夜君、一旦ピットに戻りましょう、まずは休まないと』
『……うん。分かった』
素直に従う。
今は何も考えたくないと、統夜は思った。
『……どうやら助かったようだな』
「……千冬姉」
打鉄を纏った千冬が倒れている一夏の下に降り立つ。
すでに白式のエネルギーは切れている。
『怪我はないか、一夏?』
「あっ、うん……なぁ、千冬姉」
立ち上がった一夏を抱えて飛翔していく千冬に、彼が尋ねる。
「あの赤い機体に乗っていた男がさ……言ってたんだ。千冬姉と束さんが白騎士事件を起こしたんだって。そのせいでアイツの弟が……死んだって」
『っ……!』
息をのむ千冬、それを見逃すほど抜けてはいない。
「話してくれよ、俺達家族だろ」
『……わかった、だが、少しだけ待ってくれ。必ず話す……頼む』
そう弱々しくだが一夏に告げる千冬。
それに一夏はうなずいて答えた。
――――――――――――――
時間は前後して―――
太平洋 とある海域
軍艦の残骸が、炎上しながら沈んでいく。
海面に流れ出たオイルに引火し、炎が燃え上がる。
辺りには救命ボートが見える。
それを見下すように眺めるのは灰色の騎士機【ラフトクランズ・アウルン】は構えていたオルゴンソードライフルを格納し、ディスプレイを開く。
映し出されるのはグ=ランドンだ。
『こちら、アル=ヴァン・ランクス。軍用IS【
『よくやった。一度帰還して補給を受けろ』
『承知しました』
簡潔な報告の後に通信が切れる。
自身が壊滅させた艦隊とIS【
(……搭乗者は脱出したか。しかし、私はこれでいいのか……)
師である【エ=セルダ・シューン】と皇女であるシャナ=ミアが進めていた同化計画はもはや意味をなさないものになってしまった。
地球侵攻作戦が開始されてしまったからだ。
アル=ヴァンとて誇り高き騎士の1人、幾星霜耐え忍んできた民たちのために戦うのは本懐だ。
故に任務は忠実にこなした。
しかし、地球に歩み寄ることすらせずに戦火を開いたグ=ランドンに何の疑問も持たないというのは嘘になる。
(……地球人に歩み寄ることは不可能ではない。現に私も……)
同化計画とは違うが、アル=ヴァンも地球の施設には潜入していた過去がある。
そしてそこでの出会いと想いは彼にとってもかえ難いものになっていた。
脳裏に浮かんだ長髪の女性、大切な女性を思い出しながらアル=ヴァンの姿が消えていく。
「……カリン」
そうアル=ヴァンは呟いた。
紫雲統夜 レベル12→14
精神コマンド
必中
不屈
加速←NEW
???
???
更識簪 レベル10→14
精神コマンド
集中
努力
直感←NEW
???
???
更識刀奈 レベル15→16
精神コマンド
直感
集中
信頼←NEW
???
???
統夜君性格変貌時はイングの激昂モードみたいな感じで能力UP+地形特性全部Sみたいに
超絶強化されてます。
次回予告
第6話「抗えぬ姫君」
『セルドアの仇、取らせてもらうぞっ!カロ=ランっ!』