まず、憐椛は琉魂街と瀞霊廷との違いに正直驚いた。
話しには聞いていたが、これほどまで違いがあるとは思ってもみなかった。
琉魂街の道という道は土を固めたもの、建物は木造でどこか古めかしさを感じる。
瀞霊廷の道はしっかり舗装されタイル張り、建物は木造でも壁も屋根もしっかりとした作りで煌びやか。
(これが格差という物なのか・・・・・。)そう思わずには居られなかった。
かつて琴吹家も瀞霊廷に住居を構え貴族として何不自由無い暮らしをしていたと聞いている。
いわば、両親の故郷でもあり仇でもある瀞霊廷。
見る物全てが憎くてたまらないという目で憐椛は睨みつけていた。
瀞霊廷の人達の勝手で貴族に仕立て上げられ、期待を裏切ったと追い出される、そんな勝手が許される上層部の人達が憎い。
「どうしちゃったのぉ~?そんな怖い顔しちゃってぇ。」
憐椛の変化にいち早く気が付いた京楽が気遣うが正直迷惑以外の何物でもない。
何も答えず、ただ前だけを睨みつけながら歩く憐椛。
「大丈夫だよ。怖い所じゃないから。」
京楽と同じように心配しながらも的外れな慰めをしてくる浮竹も華麗に無視。
どこかの建物内に入り更に突き進むと、大きな扉の前で一旦立ち止まった。
この中で何が待ち受けていようとも憎しみに駆られた今の憐椛には怖いものなど無い。
「少し、ココで待っていて貰えるかな?名前を呼ばれたら入って来るんだ、イイね?」
浮竹の言葉に目も合わせず、顔も上げずに頷くだけの憐椛。
浮竹も京楽も夜一も浦原も心配そうに憐椛を見つつ部屋の中へと入っていった。
どのくらい待っただろう?今の憐椛には時間の経過すら感じない。
やがて、中から『入れ』という声が聞こえて来た。
だが、憐椛は動かなかった。
しばらくすると、夜一と浦原が扉を開き憐椛を迎えに来た。
「どうしたんじゃ。」
「憐椛さん?」
扉の前に立ち尽くし、下ろされた両手は強く握り締められているらしく小さな拳から出血していた。
「落ち着くんじゃ。この手をほどけ、憐椛!」
何時もなら、夜一と浦原の言葉には素直に従うハズの憐椛が何を言っても従おうとしない。
「憐椛さん、お願いですから力を抜いてください。」
憐椛の異変に気が付いた優しそうな女性死神が駆け寄り憐椛の額に手をかざすと、夜一に寄りかかるように倒れ込み眠ってしまった。
「隊首会はまた改めて・・・という事で宜しいですか?総隊長。」
憐椛を眠らせた優しそうな女性死神はそう言いながら脈を測ったり、掌の傷の程度を確認している。
「うむ。仕方あるまい。隊首会はまた後日とする。その娘を四番隊舎へ連れて行くのじゃ。」
総隊長と呼ばれた長い白髪の髭を蓄えた貫禄ある死神は指示を飛ばす。
夜一はすぐさま憐椛を抱き抱え女性死神と浦原3人で四番隊舎へと憐椛を連れて行った。
「あの子、瀞霊廷に入った途端に表情や雰囲気が変わっちゃったんだよねぇ~」
???:「どう変わったんや?」
長いストレートの金髪の死神は運ばれて行く憐椛を遠くに見ながら京楽に質問した。
「うぅ~ん・・・瀞霊廷に入るまでは無口ではあったけど、穏やかだったんだよねぇ~。瀞霊廷に入った途端に纏う空気が変わったっていうのかなぁ?恨み?憎しみ?そんな雰囲気だったよぉ」
「ほぉーかぁ。あの子にとって俺ら死神は家族の仇でしか無いんやろうなぁ」
「自分の置かれている状況も、これまでの経緯も全て知っているって事になるなぁ。」
「これは、ちょっと厄介だねぇ~」
「後で夜一に確認を取っておいた方が良さそうだな。」
憐椛が四番隊舎に運ばれてから翌日の事、寝かせたベッドの上に憐椛の姿は無かった。
瀞霊廷から外に出た形跡は無く、かと言って気配や霊圧も一切感じられない中、各隊で大捜索が開始された。
一番隊舎では隊長達が集められ緊急隊首会の真っ只中。
「昨日の状態から見ても、そう遠くへは行っていないでしょう。」
「四楓院夜一、浦原喜助、娘の行き先に心当たりはあるかの?」
「あればとっくに儂が探しに行っておる。」
憐椛が居なくなり心配で仕方がない夜一は、すぐにでも自ら探しに行きたいというのに、招集された事にイライラとしながら答える。
「琉魂街ならまだしも、瀞霊廷では解りません」
夜一と同様、すぐにでも憐椛を探しに行きたいと思いつつも行き先が解らず途方に暮れる浦原。
「夜一。あの子は全部知っているのか?自分の境遇というか・・・その・・・」
「なんじゃ?歯切れが悪いのぅ。全部知っておるわ。何しろ家族が襲われる所を遠くの崖の上から見ておったんじゃからの。」
「なるほどねぇ~。それじゃぁ~尚更、僕達死神が嫌われちゃっても仕方ないねぇ~」
トンッ!
突然の音に振り向くと、総隊長が持っている杖の先で床を叩いていた。
総隊長:「呑気な事を言うておる場合じゃないわ。あの娘が琴吹家の娘と知られれば、その力を利用しようと捕える輩も出て来るじゃろう。早急に見つけ出し保護するのじゃ。」
総隊長のその言葉と同時に各隊長はシュッ!と居なくなった。
「やれやれ、先が思いやられるわい。」