例え貴族では無くても、憐椛は幸せだった。
両親が居て、兄達が居て、夜一と浦原が会いに来てくれる、それだけで十分だった。
瀞霊廷に住む人達に比べれば貧乏でみすぼらしいかも知れない、それでも自然に囲まれながらの生活は楽しかったのだ。
だが、その幸せも憐椛の存在が知られた事で一瞬にして消え去った。
夜一は自分を責めるなと言った、でも責めずに居られようか。
自分さえ産まれて来なければ、家族は殺されず今も琉魂街で細々と幸せに暮らしていたに違いない。
そんなマイナス思考にどっぷりと浸かってしまった憐椛の体は目覚める事を拒絶し始め、家族が居た頃の幸せな思い出ばかりを夢で見ていた。
そんな時だった、前に一度聞いた事のある声が憐椛を現実へと引き戻した。
『・・・・・主様。』
声に反応して瞼を開くと、そこは一度来た事のあるアノ不思議な空間。
そして、目の前には目を疑いたくなる程の薄着の女性が立っていた。
この空間には季節というものが存在しないのか、女性は水色の羽衣を着てはいるが透けている・・・・・全身が透けている・・・・・。
とは言っても、大事な部分はしっかり着用している模様。
髪は一纏めにした状態で横に流し、頭や耳などには色々な装飾が施されている。
この世界にしか通用しないようなド派手且つエロのコラボレーション。
こんな人が普通に琉魂街や瀞霊廷を歩こうものなら、仕事にならないだろうし色んな意味で夢に出て来る事間違いなし。
『主様、お久しゅうございます。以前にもお声を掛けさせて頂きました。
そう言いながら天后は後ろに広がる水の壁?を見るよう、しなやかな手つきで促してきた。
憐椛は促されるままに一歩踏み出し、水壁の方に視線を送ると突然、水壁がカーテンの様に左右にゆらりと開いて沢山のド派手な人達が色んなポーズで立っているのが目に入る。
『あちらにおりますのが私と同じ十二天将でございます。そして、中央におりますのが
天后に紹介された中央に立つ一際煌びやかな女性が憐椛に近づいてくる。
『お初にお目に掛かります、主様。
貴人と名乗った女性は天后とは対照的で、白く長い絹らしき生地で仕立てた着物でところどころ金糸で刺繍がされ、頭には黄金であろう大きな冠?の様な物を被り、金のかんざしを横から刺し、耳には何かの花を象った金のピアスをしている。
要するに派手ではあるが露出度の少ない神らしい?品のある?装いだった。
それから、貴人の自己紹介を皮切りに、他の十二天将達も我先にと憐椛に挨拶を始め、覚えきれるか不安になったのは内緒。
十二天将達の名前は次の通りだ。
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長い紹介も終わり頭の中を整理していると、全員が憐椛の目の前で突然跪き、こうべを垂れ始めた。
キョトンっとしていると、主神である貴人が全員を代表して最後の挨拶を始めた。
『これより我々十二天将は、憐椛様を主とし、今後いかなる場合においても盾となり武器となり技となりて常に寄り添って参ります。』
憐椛よりも遥かに長い時を生きてきたであろう十二天将が、今まさに憐椛を主と認め、跪き、こうべを垂れる・・・。
こんな場面、誰が想像出来ただろう。
中には感涙なのか目頭を押さえながら憐椛を見つめる者まで居た。
恐らく初代のご当主が亡くなって以降、仕える者に巡り会えず待ち続けたに違いない。
憐椛は自然と涙が零れ、十二天将全員の顔を見渡して笑顔で『ありがとう!よろしくお願いします!』と答えると全員がおおいに喜び活気に溢れた。