また初代当主のような力を受け継ぐ者が産まれれば上級貴族として崇めて来た分、瀞霊廷を守ろうと大義を尽くすだろうと期待した。
でも、初代当主の力を受け継ぐ者が産まれて来ず、期待を裏切った琴吹家は瀞霊廷から見限られたという事だ。
「そして瀞霊廷を追い出した後に、力を受け継いでいるかも知れない女児・・・つまり私が産まれてきた事で色々と状況が変わったという事ですか?」
夜一も浦原も憐椛は感が鋭く賢い子だという事は知っていたが、自分の置かれている状況を冷静に分析している裏に隠された悲しみを思うといたたまれない気分でいた。
「憐椛。今回の件は儂にも責任がある。あの無料券を渡さなければ・・・・・」
悔しくて堪らない夜一は、憐椛の手を握り目に涙を溜めながら見つめて来る。
家族を失った悲しみを怒りに変え、夜一に八つ当たりをしようと思えば出来たかも知れない。
誰かを悪者にして悲劇のヒロインになってしまえば気が楽になるのかも知れない。
でも、それは所詮単なる八つ当たりに過ぎず、状況が変わる訳ではないのだ。
夜一と浦原は琴吹家にとっては恩人であり、憐椛にとっては師匠でもある。
これまでに返しきれない程の恩を受けてきた上に、今回の件に関しては夜一も浦原も悪くはない。
その事を一番よく知っているのも憐椛だ。
「いえ。夜一さんは悪くないです。もちろん喜助さんも。私の存在がバレるのも時間の問題だったと思います。ただ、私が納得いかないのは何故家族が殺されなければいけなかったのか・・・っていう点なんです。」
「それはの。瀞霊廷を追放になる時に、『もし、今後力を受け継ぐ女児が産まれた場合、直ちに報告せよ。』と言われておったんじゃが、お主の両親はそれをせなんだ。それを謀反とみなし、今回に至ったんじゃ。」
追放するだけしといて、今後産まれてきたら知らせろとか虫の良い話だと憐椛は思った。
どうせ冠位は戻さないが女児だけを瀞霊廷に連れて行き自分達の都合の良いように育て上げるつもりだったのだろう。
以前、修行後に夜一と浦原が話していた内容もそのような感じだった。
プライドの高い四十六室や四大貴族達が、一度冠位を剥奪して瀞霊廷を追放した者達を再び呼び戻すような事はしないだろうと・・・。
ならば、女児だけを連れて帰り、誰かの養女にしてしまえば良いと考えていたに違いない。
考えれば考える程怒りが込み上げてくる。
「お主は儂に問うたの、なぜ自分だけを連れて来たのか・・・と。それは、お主の家族と約束しておったからじゃ。もしもの事があった場合は憐椛だけでも護って欲しいとの。」
「憐椛さんは産まれて来た時から大きな物を背負ってしまっていますぅ。ただ女の子として産まれて来ただけなのに・・・。その上、初代当主と同じ力を持ってしまった・・・・・。ご両親は心を痛めておいででした。この子には普通の生活を送らせてあげる事は出来ないだろう・・・と。」
両親の心の痛みなど知りもせず、自分はなんて能天気に過ごしていたんだろう。
あの日、修行後の夜一と浦原の話しを聞いていたなら、どうしてもっと警戒して行動しなかったのだろう。
憐椛の脳裏に浮かぶのは、後悔の念。
結局、家族を死に至らしめたのは自分なのでは無いかと思い始めた。
「憐椛?自分を責めるでないぞ。お主の両親もいつまでも隠し通せるものではないという事は解っておったんじゃ。その上で、お主を手放す事はせなんだ。命ある限り、少しでもお主と一緒に過ごす事を選んだんじゃ。」
憐椛の目からは止めど無く涙が溢れ、家族の自分に対する愛情をしっかりと感じ取っていた。
「うぅ・・・っ・・・ぅ」
話しを聞く前は何があっても泣かないでいようと決めていた憐椛だったが、家族のそこはかとない愛情に触れ、とうとう泣き崩れてしまった。
「今は泣きたいだけ泣け。」
明日からは、いつもの私に戻ろう。
いつまでも泣いていては夜一さんと喜助さんを心配させるだけだ、私は護ってくれたこの命の重みを感じながら家族の分まで生きる。
そして、いずれ時が来れば瀞霊廷に復讐をする。
そう強く決意した憐椛だった。