時を経て再び   作:鞠藻

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第八章 新しい力

 翌日から浦原の宣言通り、修行の内容が変更され基本から鍛え直す事となった。

 

《斬》《拳》《走》《鬼》を徹底的に鍛え上げ、1年後には夜一と浦原二人を同時に相手出来るようになっていた。

 

二人同時に相手をして勝てた事は無いものの、何とか相討ちまでなら5割の確率でいけるようにはなった。

 

 

「いやぁ~、随分腕を上げましたねぇ~。ゼェゼェ」

 

 

「そうじゃな。隊長クラスにも引けを取らんかも知れんのぉ~。」

 

 

浦原は息も絶え絶えで肩で息をしながら憐椛の上達振りを褒め、夜一はあれだけ動いても息一つ切らす事なく褒めた。

 

 

「よし。そろそろアレを教えても問題ないじゃろう。」

 

 

「アレ?」

 

 

含みのある夜一の物言いに首を傾げる憐椛にニヤリと笑って見せ、一気に霊圧を上昇させる。

 

そして、数メートル先にある修行中に出来た岩の塊に向けてジャンプをした夜一の上着が背中から破れ、霊圧がピリピリと雷の如く弾け出す。

 

 

瞬閧(しゅんこう)!!」

 

 

憐椛は目を疑った。

 

大人のクマ2匹分はあった大きな岩の塊が見事に砕け散ったのだ。

 

 

「どうじゃぁ。凄いじゃろう」

 

 

言葉を失った憐椛は、夜一の言葉にコクコクと頷き返す事しか出来なかった。

 

 

「この技はのぅ。《瞬閧(しゅんこう)》と言うて、本来ならば隠密機動総司令官に継承される技じゃ。憐椛、これからお主にはこの技を習得して貰う。」

 

 

夜一の言葉に『はい』っと言いかけて『え?』となった憐椛は、

 

 

「は・・・へっ?」

 

 

思わず変な声が出た。

 

 

「はっはっは。いきなりで驚いたか。まぁ仕方あるまい。じゃが心配せずとも()い、今のお主の力であれば習得も容易いじゃろう。」

 

 

確かに、夜一と浦原のお陰で随分体力も付き、技も磨けたと自分でも思う。

 

だが、先程の技は瞬時に霊圧を高め一気に発動させているように見えた。

 

もし失敗でもすれば、物体を粉々にする前に自分が粉々になる恐れがあるのではないだろうか。

 

しかも、隠密機動総司令官だけに継承される技を全く関係のない自分が習得しても良いものだろうか。

 

 

「夜一さぁん、大丈夫なんスかぁ?憐椛さんは隠密機動総司令官でもなければ死神でも無いんスよぉ~」

 

 

浦原も憐椛と同じ考えだったようで、夜一にその旨確認をしている。

 

 

「憐椛はこれから自分の身を自分で護って行かねばならん。そもそも憐椛の修行には、この技を習得させる事を大前提に行って来たんじゃ。憐椛ならば悪用する事も無いじゃろうし習得しても問題ないと判断した」

 

 

「なるほどぉ~。では、憐椛さん頑張ってぇ」

 

 

何ともあっさりと納得してしまった浦原は、『続きをどうぞ』と言わんばかりに、憐椛を夜一の方に押しやった。

 

 

()いか、憐椛。これは白打と鬼道を練り合わせた技じゃ、お主は既に白打も鬼道も申し分ない。今なら出来るハズじゃ。ただ、発動と同時に両肩と背の布が弾け飛ぶもんじゃから、今後の修行にはコレを着用するんじゃ。」

 

 

渡されたのは背中が大きく開いたトップス、夜一の着ている死覇装に似せてあるのが特徴だ。

 

 

「それに合わせて、こんな物も用意してみたがどうじゃ?儂がいつも作らせておる仕立て屋で、お主のを特別に作って貰ったんじゃ。」

 

 

トップスは夜一の死覇装に似せてあるが、パンツはあちこちにポケットが付いていて太めだが、裾に行くにつれ細くなっている。

 

そして、極めつけは夜一がいつも着ている裾が短い橙色の上着。

 

成長期の憐椛でも長く着られるように少し大きめに出来ていた。

 

 

「どうじゃ?気に入ったか?」

 

 

いつも、夜一と浦原が着る物を用意してくれていたが、大体が誰かのお古といった着物だった。

 

憐椛としては古着でも着られればそれで良かった。

 

でも今回は特別に憐椛用に作って貰ったとあって、いつも以上に嬉しい。

 

 

「ありがとうございます!大切にします。」

 

 

そう言って、大切そうに貰った服を抱きしめた。

 

 

「今から瞬閧の特訓をする。すぐに着替えて来い。」

 

 

「はい!」

 

 

貰った服を大切そうに抱え、満面の笑顔で着替えに行く憐椛。

 

その後ろ姿を眺めながら夜一と浦原は『嬉しそうに・・・』と呟き、顔を見合わせ笑い合った。

 

 

 

瞬閧の特訓はなかなか難しく、高密度の鬼道を背中と両肩に纏わせるのに四苦八苦する憐椛。

 

 

「憐椛、力み過ぎじゃ。()いか、イメージじゃ。鬼道と白打を練って、それを肩から羽織るイメージをするんじゃ。」

 

 

言われた通りのイメージを頭の中で思い浮かべる。

 

すると、何か生暖かい物が段々と熱を帯び始め、背中辺りを中心にピリピリとしたものが縦横無尽に走り出した。

 

 

「そうじゃ!もう少しじゃ。後はその肩や背中に纏った物を手や足に移動させて・・・・・・今じゃ!あの岩を打て!」

 

 

「瞬閧!」

 

 

夜一の指し示す岩目掛けて飛び上がり、言葉と同時に術を発動させた憐椛は見事岩を砕いてみせた。

 

 

「わぁお!」

 

 

「よくやった!」

 

 

憐椛はその場に座り込み、呆然と自分の砕いた岩があった場所を眺めている。

 

夜一の砕いた岩よりも一回り小さい岩ではあったものの、その威力の凄さを身を持って思い知らされた。

 

《瞬閧》の特訓を開始して2時間余り、呆気無く習得した憐椛だった。

 

 

「これは驚きましたねぇ~。まさかこんなに簡単に習得しちゃうとわぁ。さすがですぅ~、憐椛さん。」

 

 

「これまでの修行の成果じゃ。これを習得したとなれば、おのずと霊圧を抑えたり引き出したりと出来るようになるじゃろう。」

 

 

「なるほどぉ~。その為に瞬閧を習得させたんですねぇ。」

 

 

「そうじゃ、霊圧のコントロールをするには、この技が一番じゃからのぅ。・・・・・憐椛?どうしたんじゃ?」

 

 

尚も、その場に座り込み動こうとしない憐椛を不思議に思い、顔を覗き込みながら問いかける夜一。

 

 

すると・・・・・「zzzZZZ」

 

 

座ったまま寝ていた。

 

 

結局、その日の特訓は終了。

 

 

 

 眠ってしまった憐椛を小屋に運び、布団に寝かせた夜一と浦原は修練場の露天風呂で混浴した。

 

 

ただし、夜一は黒猫の姿で。

 

 

「ところで、夜一さん。憐椛さんにアレを急ぎ習得させたのには別の理由もあるんでしょ?」

 

 

優雅に湯船で泳いでいた黒猫夜一はピクリとし、泳ぐのを辞めた。

 

 

「やはり気付いておったか。」

 

 

「当然っスよぉ。何年の付き合いだと思ってんスかぁ~。」

 

 

夜一と浦原の付き合いは随分長い。

 

 

さすがに隠し通せるものではなかったと苦笑いを浮かべる夜一。

 

 

「最近、おかしな事件が増えたじゃろ?」

 

 

「魂魄消失事件ですか?」

 

 

「そうじゃ。どうも気になってのぅ・・・・・憐椛には、何かあった時の為に儂らが駆け付けるまで耐え凌ぐだけの力は付けておいて欲しかったんじゃ。」

 

 

「今の憐椛さんなら、私らが駆け付ける前に倒しちゃってそうっスけどねぇ~」

 

 

「そうじゃな。そうであって欲しいものじゃ。」

 

 

 

 

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