憐椛が最初の瞬閧を発動させてから更に2ヶ月近くが経ち、威力も夜一に劣らない物になって来た頃、夜一と浦原から話しがあると言われ小屋で3人向かい合って座っている。
「話しとは何でしょうか?」
そう憐椛から問いかけなければ、いつまで経っても始まる気配が無かった。
それ程、重苦しい空気が流れ沈黙が続いていたのだ。
「実はの、お主を瀞霊廷に連れて行く事になった。随分前から儂と喜助がお主を囲っておった事を総隊長を含め数人の隊長達は気付いておったらしいんじゃが、お主の家族の命を奪った負い目もあって四十六室には報告をせず黙って見守っておったらしい。」
夜一の口から放たれた言葉は余りに衝撃が強すぎて脳内の処理が追いつかない憐椛は何も言えずにいた。
ただ、目を見開き夜一と浦原の顔を交互に見るめる事しか出来ない。
「ですがぁ。今、奇妙な事件が起きていましてぇ。私達隊長格は万一に備えて待機しなくてはならないんです。場合によっては隊長自ら隊士を引き連れて出動しなければなりません。」
「そうなると、儂も喜助もお主の為に時間を裂いて、ここへ来るのが難しくなるんじゃ。」
二人の言いたい事も瀞霊廷の人達の考えている事も大体の予想はついた。
だが、憐椛にとって瀞霊廷の人達は家族の仇とも言える。
そんな所でお世話になるくらいなら一人でココで住み続ける方がよっぽどマシだと考えた。
「大体、言いたい事は解りました。私の身を案じて言ってくれているんですよね?でも、大丈夫です。私一人でも何とか生きていけますので心配しないで下さい。落ち着いたら会いに来てくれればそれで・・・。」
憐椛の言葉に夜一と浦原の顔は一層苦渋に満ちた顔になる。
「それが、そうもイカンのじゃ・・・・・。スマン」
最後の『スマン』という言葉は、辛うじて耳に届く程度の小さな声で呟かれ二人は立ち上がった。
すると、修練場の入口辺りから沢山の人の気配がした。
『ハッ!』となって、二人の顔を見ると憐椛と目を合わせるのが気まずいのかチラッと見ただけで目を逸らされた。
「琴吹憐椛殿ですね。我々と一緒に来て頂きます。」
有無を言わさぬ高圧的な物言いで憐椛の居る小屋を囲む死神達。
そんな緊張感漂う場面を一気に崩す呑気な声が後方から聞こえて来た。
「あらぁ~。君が憐椛ちゃん?可愛いねぇ~。悪いんだけど、オジサン達と一緒に来て貰えるかなぁ?」
死神達の間から現れた死覇装の上に白い羽織、その上に更にピンクの花柄というド派手な着物を肩に掛けたオジサン死神が軽い口調で憐椛に話しかけてきた。
「嫌と言ったら?」
家族を奪った憎い死神達を睨みながらスキの無い動きで後ずさる憐椛。
「そう言われるとオジサン困っちゃうなぁ~」
『デヘデヘ』とでも言い出しそうな、だらしのない顔で頭を掻きながら少しずつ憐椛に近づいて来る。
「京楽。怪しいオジサンにしか見えないぞ。」
そう言いながら次に現れたのは、死覇装に白い羽織を纏った長い銀髪の落ち着きのある死神。
「君が琴吹憐椛君だね。ある事情から君を保護する事になったんだ。悪いようにはしないから一緒に来てくれないかな?」
憐椛は二人の霊圧を感じ、自分では勝てる相手ではない事を悟っていた。
そして、夜一と浦原の顔を見ると『下手な事はするな』っと、言いたげに眉間に皺を寄せながら心配そうに憐椛を見つめる。
それを見て憐椛は諦めた。
一気に体の緊張を解き大人しく頷く。
「ありがとう。僕の名前は
「浮竹、怪しいオジサンは無いでしょぉ~」
「彼女の目には十分怪しく映っていたと思うぞ。それじゃ、行こうか。」
憐椛はすかさず夜一と浦原のもとへ行き、これまで散々お世話になったお礼の気持ちを込めて深々とお辞儀をした。
数秒間お辞儀をした後、憐椛は夜一と浦原の顔を見る事無く浮竹と京楽に挟まれ、瀞霊廷へと歩き出した。