ハリー・ポッターとスリザリンの代理人 作:Farben.AG
エレイン・モア教授: さて、「夜」は象徴的な世界です。その闇に人は常に敬意をもって接し、恐れも持って接しました。
『今ハ死ハ眠リトナレリ』
この三人の「夜」を語るに際しまして重大なファクターとなるのは「本」の存在です。読書とは、一つの良き世界を見つけ、その世界を泳ぎつらい、現実から合法的に逃げる手段なのです。
さあ、スライドとともに世界へと歩み寄りましょう。私たちもまた「手記」を旅する旅人なのですから。それでは、幕が下りるころ、またお会いしましょう。
〈拍手〉 照明が落ちる。
ドラコ・マルフォイの手記
古い物語は実に多くの物事を伝えてくれるといったのは誰だったのだろうか。祖父の言葉だったのだろうか。うまくは思い出せない。でも、祖父アブラクサスの書庫については今でも覚えている。
奇妙なことだ。彼は僕が3歳のころに亡くなったというのに。妙に鮮明な記憶がある。
祖父の部屋は常に本に囲まれていた。純血主義ではあったけれども、彼を囲んでいた本はマグルの本が大半だった。父上と母上には秘密の書庫だとは彼の口癖だった。書庫への行き方は僕しか知らない。彼が死んだとき、鍵と書庫への行きかたについて記された地図を受け取った。
封筒には『ドラコ・マルフォイにのみこの封の開封を許す』と記されていた。
両親は約束を守ってくれた。7歳のころ、その封筒を受け取り、地図を頼りにして屋敷の中にある彼の秘密の部屋へと入った。幼いころから漠然とだが小さいころから記憶していた通りの場所だった。書庫にはたくさんの本が入っていたがその大半は魔法界の本ではなくマグルの作家の本が多かったことを覚えている。
まだ小さい子どもだったけれども不思議な光景だった。
生粋の純血主義者だったはずの祖父はマグルの本を異常なまでに愛していた。それはこの書庫が饒舌に物語る通りだ。祖母の写真と祖父の写真が書庫の光の差し込む場所に見えている。写真には公園をゆったりと歩いている二人の姿があった。
意外な面があるとは思った。
純血主義を掲げる父上は僕にとって英雄だった。母上も高貴な血筋とその優しさゆえに僕の本当の味方の一人だった。マルフォイ家は名家だということも誇りだった。
けれども、世の中のマルフォイ家のへ風当たりは強かった。子ども心に理解していた。純血主義の尖峰たるマルフォイ家はそういった非難にさらされざるを得ないということを。
常に非難にさらされていた。どうも息が詰まる。「茶会」もそうだった。マルフォイ家の財力のほうにしか目のない人々のほうが圧倒的に多かった。
苦しい時、つらい時が訪れる。
そんな時は、この書庫に逃げ込む。本の世界。秘密の部屋。子どもたちは秘密が好きだ。僕もその一人。ちょっとした秘密の王国の王様のような気分なのだ
そうやって書架の本の世界へと旅をするのは、別荘で過ごすことよりも、はるかに素晴らしいことだった。本の世界は自由だった。「血」など関係もなかったし、そもそも、僕が『ドラコ・マルフォイ』である必要などはなかった。
この日誌を書くにあたって僕は一つのことを心掛けている。なるべくありのままでいることだ。秘密もなるべく書くようにしている。打ち明けるならば、一番好きな話は吟遊詩人ビートルの『豊かな幸運の泉』だ。あれほど心の安らぐ物語はそうはない。父上や母上はとてもお怒りになられるだろうが、それでも声を大きくして言いたいものだ。
あのゆったりとして平和な世界は憧れなのだ。と
さて、今僕は1年生としてここホグワーツにいる。まじめな話でハリー・ポッターとは友人になりたいとは思っている。だが、することなすことすべてが裏目に出る。原因はわかっている。僕が高慢な性格なのだ。自覚するくらいのエゴの強さというべきか。人を必ず下に見て話してしまうのだ。マダム・マルキンの店でもコンパートメントでも。組み分けの後も。
なぜ、こう接してしまうのだろうか。思い出してみる。そうか、今まで本当に自分を見てくれた人、叱ってくれた人はあまりにも少ないのだ。裏を返せば、僕は甘やかされすぎたともいえるだろう。そして、それを当然のように受け入れてしまったのだ。なんとばかげたことだろうか。
そして僕はいかに孤独なのか。本当の意味で孤独だと思った。本当の自分を見てくれる人はほんの僅かとは。両親、数少ない本当の心を知る友人たちだけ。
うれしいことがある。最近そうした数少ない友人になりうるとはいかずとも良薬になってくれる人に会えたことだ。アドルフだ。アドルフ・フォン・ピュックラー=ブルクハウス。彼はしっかりとしている。ドイツ人でありながら僕がコンパートメントでポッターたちともめているときも臆することなく自分の意見を通した。何か間違えていることがあれば必ず助けに、助言を与えてくれた。本当の自分を見てくれているのかはわからない。けれども、助言をくれる人ではある。そしていさめてくれる人だ。これは僕にとってとても大切なこと。きっと僕は無意識のうちにこうしたことに気が付いていた。彼が僕にとって良い人物であるということを。だからなのだろう、組み分け帽子が彼を選び出したとき僕はどことなく安心した。
部屋が同じになった時も親しく接した。飾らずに。すべては意識せずにやってのけていた。きっと心を彼に許し始めていたからだろう。
それにしても、ピュックラー、ピュックラー=ブルクハウス家……どこかで見た気がする。
そうだ。祖父の書庫にあった『ヨーロッパ純血貴族一覧』に書かれていたはずだ。あいまいな記憶を頼りにして、初めての授業があった月曜日の夜は図書館行ってその本を探した。
古めかしい黒革にフラクトゥールで打たれた本は「歴史」の項目の場所に、鎮座していた。
僕はその本をとってページをめくる。いろいろな家柄がある。
アーレント家、ブラクトゥス家、カリアヌス家、ディゲニクス家、エーベルハルト家、フィッシャー家、ゴーント=フォルトゥス家、ホーエンローエ家、インツァロッツォ……やがて指はP列へとページを繰り出す。ピュクレティクス家そして、その隣に、あった。
ページには少しばかりの彼の家の歴史が書かれていた。
ピュックラー=ブルクハウス(イン・ハルツ、イン・バイエルン)家
ドイツの魔法貴族の一つ。純血の名家の一つである。ドイツにおいては上位貴族に位置付けられる。ドイツ・オランダ魔法界に君臨する屈指の名家であるホーエンローエ家と血縁関係にある。
血筋ではおそらく最も古い家柄の一つ。前20年にパンノニアにおいて魔法行政官にザイウス・ピュクリウスがピュクリウス氏族として登場している。
5世紀ごろにはピピンの家臣としてスロベニア出身のレヴェンナトゥス・ウィッテギリウス・ピュクリウスが文献に登場している。その後はしばらく不明のままであったが8世紀に再び魔法貴族として登場する。当時は定住せずに各地を放浪している記録がある。
一族がハルツに拠点を持つようになったのは、9世紀の神聖ローマ帝国時代にアヴァール族を魔術によっての撃退した勲功を祝して、皇帝からピュックラーの名前を与えられ、4代目のティベリウス・フォン・ピュックラーがその後も勝利に貢献したことから、教会よりハルツ山地を領土として得たのが始まりである。それとともにブルクグラーフ〈城伯〉に封じられた。その後激動の時代を経るに従っていき一族はハルツ山地を拠点とするもの、バイエルンを中心とするものに分岐した。13世紀初頭、魔法貴族のブルクハウス家と結婚し、ピュックラー=ブルクハウス家となる。
マインツ選帝侯に仕えたハインリヒ・フォン・ピュックラーもこの血筋である。魔法貴族においては今日純血を比較的保っているもっとも古い氏族であり、ホーエンローエ家とも婚姻関係を結びホーエンローエ=ピュックラー家が存在している。ピュックラー=ムスカウ家は侯爵の称号をプロイセン王国から獲得しており、現在一族自体はマグルにおいても侯爵家として理解されている。
『世界魔法貴族の興亡』にはこうもある。
14世紀末にスクイブが生まれたのをきっかけに、魔法を使うピュックラー=ブルクハウス・イン・ハルツ家とそうではないピュックラー=ムスカウ家に分岐した。ピュックラー=ブルクハウス・イン・ハルツ家の一族は独特な一族であり、学者と官僚の家系である。学問の世界にはマグル、魔法界を問わず多数の言語及び学問に秀でたものを魔法界に輩出している。官界には外交官、内務官僚を送り出している(詳細はプロイセン王国の官僚一覧・付録F223を参照)
家紋 王冠を被った七つの頭を持つ蛇
モットー Gott war das Wort. Vnd jn jm war das Leben 〈言葉は神にして、言葉の中に命あり〉
前世紀はさておいても5世紀にはその素地は間違いなく存在していた。とすれば大体7世紀のころには一族は存在していたのだ。ピュックラー=ブルクハウス家は違いなく純血の一族なのだ。混じりけのない。それどころか” 純血思想” の観点に立つのであれば、自然の貴族であるともいえる。ホグワーツなどできる前から存在する名家の生まれだったのだ。もし、友人として紹介するとき両親はきっと難色を示すことはないだろう。
そして思う。彼ならば、閉塞感に包まれた純血思想にさいなまれる魔法貴族を一新しうるかもしれないと(同じことはダフネも考えていたが)僕は考えた。変わった考えを持つ純血の貴族。悪くない。
そして、明日から本当に友人としてと接しようと。そう思って僕は眠りにつく。
しかし、翌朝(常にアドルフがそうしているように)寝床はもぬけの殻になり、書類カバン、ローブ等の学芸品一式が消えている。どうも彼と会うのは容易なことではない。ここはひとつ、ダフネに話を聞いてみよう。そう思う中、取り巻きが来るのを待っていつも通り寮を出る。
そして、もう一度彼のことを考えてみる。そういえば、家柄に関係なく、本当の僕を見ているのは彼ぐらいのものではないのか?
そうかもしれない。彼は期待できる。
その後の飛行訓練で僕はバカなことをやらかした。ロングボトムの思い出し玉をバカにしてしまったのだ。そして、ポッターと小競り合いになりポッターは連れていかれた。
夕食のころ監督生たちはアドルフのことをほめた。つくづく、うらやましいと思う。
さて、僕は僕なりに自分にけじめをつけなければ。ポッターたちをバカなことに引き込んだことだ。夕食のころ、僕は彼のいる場所に行く。そして決闘を申し込む。この決闘でわざと負けて彼が機嫌を治すかどうかはわからないが、負けなければ僕なりに示しがつかない。嫌味な奴は嫌味な奴なりに報復を受けるべきとは、あの書庫にあった三文小説にも書いてあった。
介添人にはダフネ・グリーングラスを指名した。彼女は面食らった様子だったがすぐに引き受けてくれた。幼いころから僕を僕として、見てくれているから彼女はすぐに理解してくれた。
彼女を巻き込んでしまって申し訳なく思う。本当に頭が上がらない。ありがとうダフネ。
明日からはやり直すことにしよう。そう思いながら彼に決闘を受けるかどうかを尋ねる。彼は面食らいつつも了承した。介添人にはロナルド・ウィーズリーを指名してしまったが、仕方あるまい。ポッターにとって最も頼りになるのは彼なのだから。
さて、決闘場所はトロフィー室に決めた。時刻は図書館の閉まる10時もしくは11時にすることを決めた。
「なるべく早く来ることを祈っているよ。ポッター」
十分に小悪党のようにふるまって決闘に来るようにあおる。僕は言うべきことを言ってから自分の席へと戻っていく。ダフネも一緒だ。「決闘だなんて……」そう呟いていた。本当に済まない。振り返ると栗毛の少女が二人に言い寄っているのが見えた。
8時から10時までの間は図書室で与えられた課題にダフネと一緒に取り組んだ。それと、彼女にしか見せたことのない好きな本について見せることも。たわいもない話をして、課題を片付け、時間を過ごし、10時30分ごろ、トロフィー室へ行く。
「本当に決闘をするんだね」
「当たり前だろ。そうしないと収まりがつかない」
「昔からそういったところは妙にまじめだね」
「そうじゃないと純血貴族としての矜持が成り立たない」
そういいつつ階段を上っていく。階段は移動したり消えたりするので逐一覚えておく必要がある。決闘がもしも11時以降ならば、4階のトロフィー室に通じるこの階段は消えるので終了するころは反対側を通る必要があると思いながらトロフィー室に到着する。
これから12時まではフリントの言葉が正しいならばフィルチは来ない。
ほどなくしてポッターたちもやってくる。栗毛の少女も一緒だ。
「ああ、ポッター。来てくれたのか。実にうれしいよ。ところで、もう一人のほうは?」
ポッターはあいまいな顔をしながらハーマイオニー・グレンジャーだと答える。
「言っておきますけども、私は決闘なんて反対ですからね!」
強気に彼女はそういってのけた。無視を決め込むことにしよう。関わったらまずい相手だ。
「決闘のやり方はわかるかい?まず、お辞儀をする。それから互いに三歩、後ろへと歩いていく。十分に距離を取ったら、三つ数えて始める」
ポッターはうなずいた。始めることにしよう。礼をしてから距離をとる。ダフネがカウントする。
「一、ニ、三――」
「タラント・アレグラ!」
僕は決めていた通り呪文を唱えずに、食らった。よし、これで十分だろう。僕は人形のようになって踊りまわった。目が回る。ところがとんでもないことになった。
「ハリー、もう一つ呪文をかけちまえよ」
ウィーズリー。なんてことを言うんだ。案の定、ポッターは僕に呪文をかける。しかも凍結呪文。さすがにまずい。杖をふるった。
「ステューピファイ!」
青と赤の呪文は互いにぶつかり合い相殺されたかに……見えた。弾き合った呪文は右側のトロフィーの飾られた棚にぶつかった。ぶつかった棚は見事に壊れ、下の棚へと連鎖的に落ちていく。パキンと何かがひび割れた音がする。
「ハリー、ロン、マルフォイ!左によって!」
呆然としていると、グレンジャーの声が聞こえる。左に走り寄るまでに棚はぎりぎりと音を立て限界になっていた。そして退避するころには棚は見事に崩れ落ちた。ガラスの割れる耳障りな音とともに棚は崩れ去り僕たちの本の数フィート先でガラスの粉と割れたトロフィーをぶちまけた。
立て続けに起きていることに収拾がつかないで、唖然としているとダフネが叫んだ。
「フィルチが来る!」
「フィルチが来る!」
一難去ってまた一難。ピーブズがやったのか!という大声が響き渡り足音が聞こえる。足音は徐々に大きさを増していく。
「トロフィー室だな!待っていろ!」
「うわ、どうする?」
早速パニックになる僕たち。フィルチが来ればとんでもないことになるのは目に見えていた。彼は先輩たちにいわく頭のねじが極めて悪いほうにずれているのだ。その極め付けが罰則だ。
「どっちに行く?」
「こっちだ!」
無我夢中で鎧の飾られている部屋を走り抜ける。鞄をもっている僕たちは最後尾になるがとにかく必死で逃げた。逃げている間は一刻も早くトロフィー室から抜け出すことだけだった。走る、走る。あらゆるものが反転している廊下、抜け道を抜けた先にある円卓を囲む教室、タペストリーの裂けたところにある抜け道を通って、見覚えのある教室を走り抜けてようやく息をついた。
「……巻いたか?」
そう僕は息をつきながら椅子に座り込む。
「フィルチは―― 巻いたと思うよ」
「すぐに、もど、るべきだよ」
そうダフネが言う。同じことはグレンジャーも言った。彼女たちの言うとおりだ。
「マルフォイ、まさか君はフィルチに告げぐ――」「バカなことを言うな。僕がそんなことをするわけないだろう」
自分まで危険にさらしてのメリットは僕にはない。必死に無実をアピール。
「よし、行こう」
ところが、物事というのはうまくは進まない。ドアノブが音を立てる。
「やあ、一年生諸君」
「うわあ」
僕は思わずそう呟いた。
「真夜中にフラフラしているのかなあ?いけないね。一年の皆様。捕まらないと」
へらへらとしながらそういってのける。
「黙れ、ピーブズ……ああ、違う。あのミスター、お願いだから、僕たち退学になっちゃう」
たぶん父上も許さないので僕も加勢する。
「黙っていてくれたら君のいたずらがしやすい場所を教えることにするよ。だからお願いだ」
「おや、でもなあ」
「どいてくれよ」
とウィーズリーが怒鳴ってピーブズを払いのけようとする。これがとんでもない間違いだった。
「生徒がベッドから抜け出した!ここだ!「妖精の魔法」の教室の廊下にいるぞ!」
「言わんこっちゃない!」
「ピーブズをたきつけてどうするんだ!」
「そんなこと知らなかったよ!」
「こっち!」
そういってグレンジャーがピーブズの下を走り抜ける。あ、ゴーストだから通っていけるのか。どこか冷静にそう思いながらひんやりとする感触を潜り抜けて走り出す。
ところが突き当りにぶつかってしまう。突き当りには施錠された扉があり、抜けようにも抜けられない。通路からはフィルチの怒りの声が刻々と近づいてくる。一巻の終わり(言い過ぎだと思う)という声が聞こえる中ダフネが錠前を見つける。杖を取り出してたたいて呪文を唱える。
「アロホモラ」
ガチャンと音がして鍵が開く。
「そうか。昨日やったぞ。その呪文」
どうでもいいことを僕が口走る。
「早く入って!」
僕たち5人は折り重なるようにして倒れこむ。扉は再び閉まりピーブズとフィルチのやり取りが聞こえた。相変わらずむかつく口調でピーブズはフィルチをバカにした後しばらく、彼の悪態が聞こえた後、足音が遠ざかっていく。
このドアにカギがかかっていると奴さんは思っているんだ。もう大丈夫だ」
「でもなんでこの扉は鍵がかけられているのだろう。
そうウィーズリーがつぶやいた。あ、ポッターだったのかもしれない。でもそれはどうでもいいことだった。
「これがいるからじゃあないのかね」
そう僕はポッターとウィーズリーの肩をたたいた。既にそれを見つけたダフネとグレンジャーは凍り付いている。
二人は振り返って同じく凍り付く人の仲間入りを果たす。僕が指さす方向には頭が三つの巨大な犬、黄色く、血走った目が合計で六つにらみつけていたのだった。そして縄のようなよだれを出していた。
しばらく(たぶんほんの数秒だったと思う)にらみ合った。このケルベロスのような犬は“僕たち”という全くのイレギュラーを前にして突然のこと(たぶん寝起き)をたたき起こされたせいで混乱している。だから僕たちは生きているんだ。と理解した。
さて、ここで考えよう。フィルチにとっちめられるか、犬にかみ砕かれるか。唸り声が明らかに時間はない。唸り声から見るにもうこの怪物は混乱を抜けだしている。
フィルチのほうがいいに決まっている。そう思いすぐに扉を開けた。
反対方向に僕たちは倒れこむ。そして迅速に扉を閉める。
「なんであんなものがこの学校にいるんだ?」
混乱から先に脱したポッターがそう尋ねてくる。“知らない”と応答する。とにかくひとまずは――
「逃げるぞ!」
この一言に尽きる。僕たちは地下牢へ、ポッターたちはグリフィンドールの塔へそれぞれ駆け出していく。
時刻は11時20分。逃げる途中でカドガン卿に絡まれる。
「何故今ここを走っているのか!少年よ、少女よ、今の時間は恐るべきものが走り回るときなるぞ!ここは……」
「黙れ!」
そう叫びつつ地下牢に到着し合言葉を言って入っていく。見るとアドルフ。セオドール、ベアトリーチェが唖然とした様子で僕らを見ていた。彼らはどうしたという言葉をかけてくれたが、それどころではない僕はあまりのことに腰を抜かしてソファーに倒れこんだ。ダフネは黙ったまま女子寮へ向かった。それぞれが混乱している。
僕とダフネはあの怪物と決闘のもろもろの惨事で。
そしてアドルフたちは僕たちが消えたことに関して、いきなり現れたことについて混乱している。
「ありえない、ありえない、あんなバカげたものがいるなんて」
ひとまず僕は自分のことで手いっぱいになっている。なるべく平静を保つため、いつも通りの作業に移る。そうしないとパニックを起こしそうになるからだ。シャワーを浴びて寝間着をつけ歯を磨き、レポートをカバンに入れ、僕は寝る準備をする。セオドールが心配そうに見る中、明かりを消して僕は暗闇へと入っていく。
昨日の夜と合わせて今週の夜は本当にいろいろあった。
僕の印象的な二つの夜はこうして終わりを迎える。
エレイン・モア: 本日の発表は長くなりましたが、皆様がこのラテン語の詩句を覚えて下さればこれほど幸いなことはないでしょう。「本」とは助けに他ならないのです。さて、最後に、私たちはこう結ぼうではありませんか。偉大なる模倣者。トマス・ア・ケンピスの言葉に従いて。
In omnibus requiem quaesivi, et nusquam inveni nisi in angulo cum libro
〈あらゆるもののうちに私は安らぎを求めたが、どこにも見いだせなかった。 ただ、片隅で書物と共にいる時を除いては〉
〈喝采と拍手〉
原作との変更点では、すでにお気づきのことと思われますが比較的登場人物たちが素直になっているということです。