ハリー・ポッターとスリザリンの代理人   作:Farben.AG

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フリーヒェンバッハ教授:さて、ここ2日間にわたる記録発表でありますが、今日において通算3日目に入ってきました。この記録は極めて重要なものであるとはいくら言葉を尽くしても足りません。
当発表におけましてはこの部分に焦点を当てて、このホグワーツにおける「儀式」の前半部の記録において、「彼」がいかなる人物であったのかを、再調査することといたしました。
この記録の発見は歴史に重要な解釈を持たせることになるでしょう。つまり、1992年以前から「彼」には(こうしたこと)が起きているという、幕あけの一端なのです。
では、発表に移ります。


3. 組み分け 前編

 森番に私たちは先導される形で、四人ずつボートへと乗った。あたりにもそのような集団が作られ、カンテラがボートにのせられている。ボートにはコンパートメントのメンバーのまま乗り込んだ。ボートの一行は静かな湖を進んでいった。私たちはどのように寮分けつまりは組分けを行うのかという話題でやや盛り上がりを見せた。ダフネは両親の意向もあって安全だとしられているスリザリンを望み、ロングボトム自身はハッフルパフを望んでいた。一方でグレンジャーはなるようになるとして、完全な託宣に任せるとしていた。私もそのようにすることとした。ペーパーテストなのか、面接か、はたまた、えげつない行為による入学なのか、城のつくころには大半がその話題で持ちきりであった。いずれにしても、私としては隣の人物が述べている『痛々しい』入学方法には疑問を呈するものの、さりとてあり得ないわけではない。不安は残るが将来の芽を摘み取るはずはない。そう信じていると、森番の野太い声から、女性の声に切り替わった。顔を上げて見れば、背の高い女性が私たちを見つめている。剃刀のように切り立った外見からは油断のなさを感じる。

 そういえば、森番はどこへ行ったのか……。頭をずっと下げ物思いにふけっていた私は見ていなかったが、どうやら途中から彼女が先導するようになったらしい。聞くところによれば、彼女の名前はミネルバ・マクゴナガル。グリフィンドールの寮監だという。石畳を私たちは黙って歩いていく。行く手にはここから分岐する巨大な扉と小さな扉に分かれていた。ふと、顔を上げると、ラテン語で

 “眠るドラゴンをくすぐるべからず”

 と銘打たれている。イタリアを旅行した時に見たロダンの彫刻「地獄の門」を思わせる彫刻もあった。あの文句は

 

 Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate. “この門をくぐるもの、汝らは一切の望みを捨てよ”

 

 であり、組み分けに臨む私たちにとっては多分この言葉がふさわしい。

 扉が開けられ、私たちはその場所に入っていった。マクゴナガル教授はホグワーツ入学の祝辞と組分けについて話した。

 

「まずはホグワーツ入学おめでとうございます。まもなく、新入生歓迎が始まります。しかしながらその前に皆様の入る寮を決める必要があります。組分けの儀です。この儀式はとても重要なもので、皆様が在学中の際に寮生があなた方の家族のようなものと、なりえるからです。寮は四つ存在します。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。いずれの寮も輝かしい歴史を誇るものであり、数多くの優秀な人材をこれまで世に送り出してきました。さて、在学時には皆様の善い行いはすべてが寮の得点となります。逆の時は寮の減点となります。学年末時には最高得点を出した寮に寮杯が与えられます。今後いかなる寮に入るといたしましても、皆様一人一人の入られる寮が家族であり、誇りを抱くことのできるものを切に望みます。それでは静かにお待ちください」

 

 彼女が出ていくとまたもや組分けの話となった。私のほうはあまり気に留めていなかったので、黙って待っていた。ダフネもグレンジャーも、ロングボトムも同じであった。それどころか、グレンジャーのほうはどこから取り出したかすでに「呪文学」とか書かれた教科書を一心に読んでいた。恐るべき向学精神である。すごいなと感嘆しつつ、私も本を読む。しばらくすると、マグゴナガル教授は再び私たちの前に姿を現し、玄関ホールへと私たちを連れて行き、そこから大広間へと入場した。何百人もの学生たちがテーブルに座っている。ネクタイ、ローブの色が違うのを見るに、おそらくは寮ごとのテーブルに分けられている―― その中を私たちは歩いた。緊張のせいでネクタイを思わず締める。私たちは大広間の前に集まった。教授は四本足のスツールを置き、さらにくたびれたとんがり帽子を置いた。極めて年季の入ったものらしく、つぎはぎが目立ち、ボロボロで汚らしい。まさか、あれをかぶるのか?ノミは繁殖しているかもしれないだろう。まずいのではないか?そう思っていると、突然、歌が帽子から響いてきた。帽子が歌っている。大勢の生徒がそれにくぎ付けになった。

 帽子は四つの寮の特徴を示す歌を歌った。

 

 私はきれいじゃないけれど

 人は見かけによらぬもの

 

 私をしのぐ賢い帽子

 あるなら私は身を引こう

 山高帽子は真っ黒だ

 シルクハットはすらりと高い

 私はホグワーツ組分け帽子

 私は彼らの上をいく

 君の頭に隠れたものを

 組分け帽子はお見通し

 かぶれば君に教えよう

 君が行くべき寮の名を

 

 グリフィンドールに行くならば

 勇気ある者住まう寮

 勇猛果敢な騎士道で

 他とは違うグリフィンドール

 

 ハッフルパフに行くならば

 君は正しく忠実で

 忍耐強く真実で

 苦労を苦労と思わない

 

 古き賢きレイブンクロー

 君に意欲があるならば

 機知と学びの友人を

 ここで必ず得るだろう

 

(しかし、歌自体はスリザリンのころに来るとやや怪しいテンポとなった。歌が、古典的英語に変わったのだ。ところが奇妙なことに、周りにはこう聞こえていた)

 

(まずは、周りに聞こえていたほう)

 

 スリザリンではもしかして

 君はまことの友を得る

 どんな手段を使っても

 目的遂げる狡猾さ

 

(私に聞こえていたほう)

 さりとて

 スリザリンではよりて

 ()()あらまほしき友を得ることなろう

 いかなるつてを経ても、

 ()は包むことなき(ざい)によりて

 本意を得うることになろうぞ。

 

 ((ye)――なぜ単数なのだろう?)

 

 かぶってごらん!恐れずに!

 興奮せずに、お任せを!

 君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

 だって私は考える帽子!

 

 歌が終わると拍手が鳴り響いた。帽子たちはそれぞれの寮に対して一礼をする。隣では、汽車で出会った眼鏡の子がスリザリンは嫌だと、譫言のように繰り返している。私は心ここにあらずといった形で突っ立っていた。

 

「それでは、ABCの順番に名簿を読み上げていきます」

 

 マグゴナガル教授が名簿を読み上げる。どことなくその姿は厳正な宣教師、例えばベネディクトゥス会の修道僧(緑色のローブも相まって)を彷彿とさせるものであった。

 

「アボット・ハンナ」

 

 最初の人物が呼ばれた、金髪を三つ編みにした少女が登壇し不安そうに、帽子を頭にのせる。緊張と恥ずかしさによるものか顔は真っ赤であった。やや沈黙があたりを包み込む。

 

「ハッフルパフ!」

 

 ハッフルパフの席から一斉に歓声と拍手が響き渡り、アボットは席に、微笑みを浮かべながら、今度は自信と期待を持ち(ややおびえもあるが)座った。

 

 3H heißt, Hana heißt Hufflepuff. 「ハンナはつまりはハッフルパフ生である」

 

 苦しい冗談あるいは言葉遊びが思い浮かぶ。Aから始まるとすれば私はかなり後だな。そう思って眼鏡をふいていると、後ろでは赤毛の少年(これも汽車で出会った一人) がしきりにスリザリンの悪口をその少年に吹き込んでいる。彼の名前を聞いて驚いた。ハリー、ハリー・ポッターというそうだ。あの伝説的な人物か。彼の話についてはドイツ国内でも話題となっていた。

 もっとも、偉大なるスター、われらがポッターとの皮肉な声も聞こえないわけではなかったが。そうこう思っているうちにコンパートメントの一人である人物の名前が呼ばれる。

 

「グリーングラス・ダフネ」

 

 ダフネの番か。私は彼女に幸運を祈る旨の言葉を送り、彼女を見つめた。帽子は思案していたが、ついにスリザリンに組分けするという結果となった。後でなぜ30秒(暇だったので、私は各員の時間を時計で測っていた)要したかと聞いたところ、ハッフルパフかスリザリン下で学ぶのかでひと悶着あったとのことである。そうこう思案していると、次はグレンジャー。これはやや1分くらいを要してグリフィンドールへ。レイブンクローかグリフィンドールの二択になったとのことである。

 やがて順番はPの順になった。Oの相当するポッターの名前が呼ばれた、周知のことであるがこれにはだいぶ時間がかかった。だいぶ何事かを話し合ったのちに、グリフィンドールへ組分けされた。

 しばらくを経て、uでは最後となるウムラウトの私の名前が呼ばれた。

 

「フォン・ピュックラー=ブルクハウス。アドルフ」

 

 私はおっかなびっくりで壇上に登った、さてはて、どうなるのか、ポッターをとったことで歓喜に包まれる周りの声を後目に帽子をかぶってみる。すると周りの歓声は一気にやんだ。皆口をつぐんだのか?そう思ってみてみると、どうも違うようだ、周りの喜びや歓声を上げる口は黙ってはいなかった。つまり帽子とのみ語らう時間が私には与えられたのであろう。

 帽子のほうが話し始めた。

 

「おや、君はドイツからはるばる来たというわけか!君の曽祖父がここに来たことを今でも覚えているよ」

 

「それは初耳ですね」

 

 本当の話だ。曾祖父はイギリスへ行ったことがあるとは言ったが、学んだというのはまるでもって知らない。なぜ、マインツではなくイギリスで学んだのだろうか?

 

「君の曾祖父はグリフィンドールに行ったな。さて君がどうなるのかは楽しみだ」

 

 さっそく当たり前の質問を投げかけてみる。

 

「では私はいずこへ行くべきか?」

 

 しばらく帽子は考えていたようだったが、彼はどうも困った様子であった。

 

「君は非常に知識への興味がある、しかし、一方でその知識を満たすためならばいかなる手段もいとわない。かつそれを避けうる能力もある。この器量の良さはどちらかといえばスリザリンだが、強大な知恵を使いこなし、強大な能力のみを欲すのはレイブンクローだ。君はおそらくこの選択で後悔しないのを引くべきだな。いずれにしても君が行くべきはレイブンクローあるいはスリザリンとなろう。さて、そこで聞きたい、君は何を求める?知識のみか。知識のみの山をただ一人で登ることを望むのかい?それともよき友による知識の共有とさらなる飛躍を欲すかな?」

 

「質問が。スリザリンの求めるものとは何なのですか?」

 

 帽子はああ、なるほどといった反応をした。よく聞かれる質問なのだろう。

 

「スリザリンは去年にはおらぬ蛇語、機転に富み、断固たる決意を持ち、目的を達するのであればやや規則を破る傾向にある。君の場合は断固たる決意と起点に富むところだな。ルールはどうかわからないが」

 

「よく闇の魔法使いが出ると聞きますが」

 

 それは有名な話だ。先ほどの赤毛の少年がしきりに話していたことだ。悪名高いのだろうか。

 それにしても、あの少年はなぜスリザリンが嫌いなのだろう?あそこまで異常に嫌うほどだ。彼は何かスリザリンとよからぬことでもあったのだろうか?そう思っていると、帽子は答える。

 

「それは、スリザリンへ行くものたちはその多くが、“目的を達するため”であったり“断固たる決意のもと”であったりするため、それらの目的を達する過程で生まれるのだ。だから、彼らは後悔しない選択を彼らなりのやり方で選び取り、そして歩んだのだ。だからこう思ってほしい。いかにそしりを受けようとも、片時も自分の意思を曲げずに冷静に対処して、栄光を見つけうるのがこの寮なのだ。その後どう言われようともかたく歩みだすことをスリザリンは求めているのだ」

 

 かたく歩みだし、後悔をしない。私にできるだろうか?

 

「レイブンクローは?」

 

「簡単だ。君の重きの置く、知性、機知を重視する。知識のみが支配する世界といっても過言ではないな。それ故に、偉大な学者が多く出る。そして、君の場合は極めて知性に重きを置き、やはり機知にも富んではいる」

 

 そこでレイブンクローの席を見る。洗練されている人物が大勢いる。

 

「では、お話にはなかったハッフルパフはいかがです?」

 

「ハッフルパフはまさに君の性格そのものだ。苦労を苦労と思わず、優しい気持ちをもって常に周りに接しようと試みる。忍耐強く、我慢と努力に次ぐ努力によって君は歩いていくという姿勢だね。なによりも、真実を重んじ、礼儀正しく、思いやり、仲良くしようとするのは君の心の姿そのものだ」

 

 そこで、ハッフルパフを見る。長身のハンサムで優しそうな青年と目が合う(あれがハッフルパフの紅一点。セドリック・ディゴリーだった)。会釈をする。彼も返す。

 

「では、グリフィンドールは?」

 

 帽子は少しばかり笑った様子を見せた。

 

「残念だが、君にはまるで向いていない寮だ。いろいろと英雄が生まれる。だが、君はその手段もしくはその心向きは完全にこの寮の気質に合わない。なによりも、君の似合う世界というのは知識とそれに共感する友そして、勇気ではなく、地道な努力だ。さて、何度も言うが後悔しない選択をしてほしい。そうだな、君たちの言葉でこういうべきなのかもしれないな。Willst du Freunde oder Wissen?《君は友を欲するのかい、それとも知識を欲するのかな?》」

これは極めて難しい。いずれも重要ではないか。腕組をして帽子の話を聞く。

 

「さあ決めたまえ。私には決めることはできない。君が行きたいところを決めなさい」

 

 ここで私は回りの席上を見回した。どの寮に捨てがたい魅力があるのが見て取れた。だいぶ経っているのかもしれない。視線が私に集まっている。あたりはすっかり私の組分けに集中している。さて、すぐに決めねば、祖母のよく言っていた、知識を使う能力は常に知識に勝る。(Können geht immer vor Wissen) というのが焦点ということなのかもしれない……どちらにすべきか。極めて難しい問いともいえる。知識。それは重要だ。けれども、知識をもって歩むには友人とともに歩むべきなのかもしれない。小学校の頃も考えてみれば本を読んでは友人とそのことを話し合うことで、共有することで常に歩んでいた。ただの知識ではおそらくは今の自分はない。けれども……思わず腕を組んで考え込む。帽子はここでひらめいたらしい。いたずらっぽい声でもう一つの問いを投げかけた。

 

「問題は、君が“本当の友”を求めるのか、どうかということだよ」

 

 ならば。寮をもう一度ゆっくりと見まわす。グリフィンドールの席上をグレンジャーと目が合う。彼女とは気が合いそうだ。だが、周りはどうなのだろう。勇敢さはないし、日和見だから向いていないのかもしれない。レイブンクローを見る。単純に私がどのような存在なのかを試す目がたくさん見える。あそこならば知識を満たすことができるのはこの帽子が言うように確実だ。しかし、孤立する恐れもあるし、そもそも友人が表面的なものになってしまうかもしれない。ハッフルパフの席には優しい顔と私に興味のあるといった顔が見える。あそこに行けば、安らぎを得ることもできるのかもしれない。スリザリンの席上。抜け目のない顔が私を見つめている。そこで、偶然にも、ダフネと目が合う。答えは決まった。

 

「友を選びましょう。われらの言葉の通りに、各人には各人のものを与えよ(Jedem das Seine)

 

 

 時計を見ると14分経っていた。ポッターが7分だったことを考えるのであれば、道理で視線が集中するはずである。

 

「よろしい。では、その下にて永久に栄えるがよい。畏き蛇は君を歓迎することであろう」

 

 その瞬間、周りの音が聞こえ始めた。

 

「スリザリン!」

 

 帽子はその中で、高らかに私の行くべき寮を宣言した。

 皆が見守る中、私は階段を下りて、スリザリンの席上へ私は向かう。ハッフルパフとスリザリン席から一斉に拍手が起きる。反応に困ったレイブンクローとグリフィンドール席ではどう受け取っていいものか迷う反応であったがしばらくして、拍手が起きた。

 緑の旗が舞うスリザリンの席上では、拍手をする学生たちとともに、比較的年上の眼鏡をかけた人物が私を見て、にこやかにほほ笑んで立っていた。

 

 




Jedem das Seine はドイツ国内ではよく使われていたことわざで、すでにフォン・ピュックラーが述べている通りですが、《各人には各人のものを》という意味で、ラテン語に由来する由緒あることわざで、ドイツ帝国では黒鷲勲章にも刻まれるほど権威のあることわざでした。しかし、大ドイツ国の時代にナチス・ドイツにおいて強制収容所のスローガンとして《各人には各人のものを》と銘打たれたため、今では悪名高きことわざです。それでも、よくドイツの友人は使うそうですが。
なお、ドイツ語に関しましては高校生が辞書を引いて書いたやつですので間違えていたら、遠慮なくご指摘ください。
感想などをもらえますと、嬉しい限りです。
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