ハリー・ポッターとスリザリンの代理人   作:Farben.AG

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ピークソート教授:これまで、長らくにわたりまして、イギリスにおけるホグワーツの主たる生徒の名前、性別、性格は知られておりましたが、それは1991年代の記録のものが大半です。といいますのも英雄殿はどこへいっても偉大。つまりは追っかけがつくものなのです。
〈笑い〉
それ故、ここから話します記録は、様々なスリザリンという記録の少なかった大勢の学生たちの人となりを分析するに至る貴重なものと言えます。この「手記」が見つかったことによりまして研究はまた一歩進むことに成功したといえるでしょう。


4. 組み分け 後編

「ようこそ、アドルフ・フォン・ピュックラー。歓迎する」

 監督生とされる人物が私に握手を求める。私は握手を返す。監督生はフリードリヒ・フェルプスと名乗った。チェコ出身の魔法貴族だそうである。そして、握手が終わると彼は私に手招きをした。神妙な顔つきをしている。

 

「ところで、フォン・ピュックラー。一つ助言がある」

 

 どういうことだろうか?そう思って、眼鏡をかけ薄いグレーの眼をした彼を見つめる。彼は口を開いてオーストリア・ドイツ語で話しかけてきた。思わず私は目を白黒させた。

 

「 Könntest du die Sprache verstehen? Gut. So musst du im Haus Slytherin sagen, meine Familie ist Rein Blut. Alles klar? 〈この言葉はわかるな?よろしい。この寮では家柄は純血といえよ。いいな?〉」

 

 一体どういうことか?ますます疑問が浮かぶ私を残して、フェルプスは笑いながら何かしらの冗談を英語で話して、周りを沸かせた。席上につくと、やはり外国からの人物は珍しいのだろう、大勢の者がわっと私に話しかけてきた。ところが、よく聞いていると。

 

「それで君はどこの家出身なの?純血?」

 

 という文章に集約されてしまう。フェルプスの注意どおりである。すぐにそれらは家柄もしくは純血に関するものがほとんどであったので、私はそれらにおざなりに答えて、あしらった。どうもドイツとは勝手が違うなと、汽車の中で痛感したとおりだ。しかし、家柄あってのスリザリンか……知識と能力、人の良さが先だと思うのは気のせいだろうか?スリザリンはそれを第一にするはずなのだ。家柄は、血筋はそのあとだと思うのだが。一方で喜ばしいこともあった。

 

「アドルフ。スリザリンへようこそ!」

 

 そう言ってダフネが笑いながら、何か小包を渡してくれる。私は礼を言って受け取った。マルフォイも笑みを浮かべている。私はもう一度、彼と握手をした。今度は好意を伴って。いずれにしても、ダフネと一緒になれたことはうれしい。彼女と話していると、後ろから声が聞こえてきたので振り返った。マルフォイがすまなそうな顔をしていた。どうしたのかと聞くと。

 

「あの汽車の一件はすまなかった。どうか水に流してほしい。帽子に君は選ばれたなら、君は確かにスリザリンだ。これからスリザリンで仲良くやっていこう」

 

 と彼は答えた。この話し方から本心から話しているな。ならば、こちらはそれを慮らねばならない。貴族以前に人として。

 

「いえ、お気になさらずに。こちらこそ言いすぎました」

 

 謝罪するのであれば、一回で十分だ。それに、こうして、すぐに謝罪する点からも彼はやはり素直な心持の人物だと評価できる。過ぎ去ったことはすぐに忘れるべきだ。

 

 その間も組み分けは続いていく。興味深いのはP列以降、誰も組み分けに時間を要していないのだ。とんとん拍子に進んでいく。帽子をかぶったらものの数秒かかかっても10~20秒程度で終わる。しばらくして、組分けは最後の一人ブレーズ・ザビニが、われらがスリザリン寮に組み分けされたのを最後として、終了した。

 

「諸君、お待ちかねの宴会だ。アドルフ。彼が校長のアルバス・ダンブルドアだ。しっかりと覚えておきなさい」

 

 続いて、校長だとされるダンブルドアが式の音頭を取って、豪華な料理が並べられた。その壮観な様子に息をのまずにはいられない。趣向を凝らした料理たち。それとおそらくは口をさっぱりさせるためであろうハッカキャンディ。

 

 一斉に食事が始まった。フェルプスは私に教職員の説明をしてくれた。好々爺ともいえ、優しそうな顔をした小柄な教授がレイブンクローの寮監にして呪文学についての指導教員フィリウス・フリットウィック。薬草学の教授であり、芯はしっかりとしているが身なりには気をあまり使わないことが多いポモーナ・スプラウト女史。おどおどとしており、ターバンをつけ不安定そうな闇の魔術に対する防衛学の教授、クィリナス・クィレル。組み分けの儀を執り行ったはきはきとしており、厳しそうな印象のある変身術教授ミネルバ・マクゴナガル女史。森番、もとい魔法生物については博識であり、人柄はいいというルビウス・ハグリッド。そして、陰険そうな顔つきで常に用心した様子でもあり、かつどことなく悲しさをたたえている、我らがスリザリンの寮監にして魔法薬学教授セブルス・スネイプ。

 

「彼は常に厳しく周りに接している。だが、それは仕方のないことでもあるな」

 とフェルプスは話す。

 

「なぜです?」

 と私。

 

「これからすぐに薬の調合に入ると思うが、毎年のように、授業の最初から病室送りが出る。それも極めて重篤な連中がな。単純な工程にも悪魔は潜むのだ。用心しろよ。それと、もしもそんな感じでとんでもないけがや病気になっても一発で治してくれる素晴らしい校医がいる。見えるかね?あの優しそうな人物がマダム・ポンフリーだ。何かいえないようなけがをしても、彼女なら助けてくれるよ。では、食べるとしよう。グレープジュース、飲むかね?」

 

 大勢の者たちが料理に集中し舌鼓を打つ中、私は自分の右隣りにグレープジュースの入ったグラスを置き、目の前の料理を眺めて、レアのビーフステーキにするか、シカ肉のローストにするか迷って、結局両方を適度に取り、マッシュポテト、インゲンのソテーを盛り付けて、ゆっくりと食べ周りを見回した。

 

 それぞれの寮の一年生たちのネクタイの色、各寮の紋章が入っており、すでに異なっている。ここで私は自分の制服を改めて見た。ローブには濃く深い緑色が刺繍され、ネクタイは黒から緑色、銀色に変わっている。組分けとともに制服のデザインも異なるようだ。先輩方は私がゆっくりと食べるのを見ながら質問してくる。

 

 どこから来たのか?ドイツ語を教えてくれないか?といったごく簡単な会話から、この学校の教師陣営をいかにからかって適当にあしらい、うまく御せるようになるかという小心者の私にはとても不可能な(きわめてスリザリン的な考えともいえるが)話をしてくれた。フェルプスは私に対して寮杯を獲得するために頑張ってくれと訓示したのちに、テスト方法などを教えてくれた。上級生たちも一斉に教えてくれる。

 

「大方君の血筋に、その学力であるならば君は極めて強い。だから頑張ってくれたまえ。わからないことはすぐに教えよう。君はここの家族なのだから」

 

 そう言って挨拶をする、ジョゼフ・フレンチ3年生。

 

「血筋以前に何か質問はあるかい?」

 

 その隣、6年生のポール・マクヴェイ(背が低くて優しそう)。

 矢継ぎ早に勉強について教えてくれる。それに相談にも乗ってくれるという。

なるほど、ゲマインシャフト的な寮だ。ところで後ろからも、別の席からも視線が私にほぼポッターと同じくらいに集中するのだが、私はひょっとしてだいぶ注目されているのか?にらみを利かせて、後ろを見るとその視線はやむ。一体誰だ?

 

 目の前に座っているマルフォイは「血みどろ男爵」に絡まれているようで、もともと青白い顔がより一層、青ざめている。一方でその先の目線に目をやるとポッターがうれしそうな顔で、マルフォイのことを見つめている。

私は彼らの様子を見た後、飲み物の類を見てみる。かぼちゃジュース、オレンジジュース等の一般的な飲み物から、貴重なブラッドオレンジジュース、紅茶(いろいろな種類があった)、そして、コーヒー。カップをとってもらいコーヒーを注いで飲む。期待とは大外れで酸味が多く、あまりうまくはない。やはり、ドイツのほうが上か。これに対して、食事のほうはロンドンでとっていたものとは、比べ物にならないほどいい味であった。

一番の傑作はカモ肉のローストで、下手をするとこれはフランス料理界隈での一流レストランすらも顔負けではないか?というほどのものだ。それ以外にも、凝った味付けの物がたくさんあった。私は、こうしたものをある程度食べ、ブラッドオレンジジュースの入ったグラスをとってもらいそれを飲み、静かに周りの喧騒に身を任せ、すっかりくつろいでいた(要するに、ゲミュートリヒという状態だ)。それにしても、このような時がずっと続けばいいのにと、考える私はなんと堕落的なことか。

 そうしていると、「血みどろ男爵」がマルフォイと話すのをやめて、私のほうに来た。フェルプスがそれに気づいた様子だが、ほっておかれた。

 

「少年よ。お初にお目にかかる。名前は何という?」

 

 ゾッとする外見だが、ひどい人物(ゴースト?)ではないと見た。

 

「アドルフ・フォン・ピュックラー=ブルクハウスと申します。血みどろ男爵殿」

 

 名前を私は名乗った。すると男爵は納得のいった顔で、どこか懐かしむ顔をした。

 

「ピュックラー=ブルクハウスか。君の曽祖父を覚えているぞ。コンラートを」

 

 帽子も彼も私の曽祖父を口にする。

 

「あー、どのような人だったのです?」

 

 なるべく彼の情報はほしい。私の知らない曽祖父を彼は知っているのだから。

 

「一言でいえば君にそっくりだ。その油断のなさそうな青い目とかがね。彼が私の寮に選ばれなかったのは痛恨の極みだ。非常に頭のいい人物だった。彼は元気にしているか?」

 

 それほど私の曽祖父は私に似ていたのだろうか。男爵は嬉しそうに話すが、残念なニュースを私は彼に伝えねばならない。

 

「残念なことに、3年前に老衰で死にました」

 

 男爵は憐れむような様子で私を見て、謝った。私は気にしないという旨を伝え、スリザリン寮の特色などを彼に聞いた。彼は快くそのことについて答えてくれた。その後、何かしらのいやなこと(ゴースト絡みで)があれば早急に自分を呼びつけるようにと私に言い、彼はどこかへ去っていった。

 ちなみ、ゴースト絡みの事件はまだ先の話だ。だが、ひとたび、ことが起これば、きわめてフライヘール〈男爵〉・血みどろは役立つゴーストであった。それは認めよう。

 

 大体1時間くらいたったころ時計を見るとすでにいい時間になっていた。周りも食べ飽きたものやもうおしゃべりにもつかれたものが大勢いる。そんなときであった。校長は立ちあがり、学校の諸注意を述べてくれた。簡単な注意、哀れなフィルチ用務員の一種の嘆き。

 そして興味深い、生徒たちの生命上の危険性についての注意。曰く4階の右の廊下に入ると極めて痛い死に方をするので、入ってはならないとのことである。そんな危険な場所が世界で最も安全な学校とされる場所にあるのは、なんというべきか非常に面白い矛盾を感じた。いっぽうの監督生たちは怪訝な顔であった。(どうやらそういったことは事前に理由が伝えられるとのことである。どうも今回は勝手が違うようだ)

 

 半ば伝説的なハリー・ポッターの入学、そして象徴的な時間のかかった組み分けといい、本当に予想することのできない“私たち”の学期が幕を開けることになったことを改めて考えてみると。まことに、象徴的なことともいえなくはない。

 それはさておき、私は食事に専念することとした。ローストを食べ終えると、別の皿から蛸のマリネ、パスタ料理を盛り付けて、もう一度食べながら周りを見ていた。うん、おいしい。

 本当のイタリア料理だな。そんな声が聞こえるので右端を見ると一人の少年が満足そうに同じものを、カプレーゼを食べながら、隣にいる少女に話していた。少年のほうはウンベルト・ティッロというらしい。少女のほうはベアトリーチェ・ティッロ。いずれもイタリアのミラノ出身の兄妹とのことである。見るに、兄のほうが、物腰が落ち着いている様子で。対して、妹がしきりに周りに話しかけていた。すぐに、料理について語らせるのであれば、兄妹とも恐ろしく饒舌だと理解した。二人は周りが英語で話すのをどこの風とばかりにイタリア語で話していた。英語に対抗するかのようにイタリア語の巻き舌音が聞こえるのは見ていて面白いが。周りの学生たちはこの兄妹から自然と席を空けていた。

 

 先輩方の一人、マルガリータ・パルマが私にポルチーニのリゾットをすすめる。私はありがたく受け取って食べる。繊細な味わいだった。隣にいるアレクサンダー・モーリッツは生ガキを進める。フランスで会った友人。ボーバトンのルイーザのことを思い出しながら、食中毒におびえつつこれも食べる。新鮮で身は大ぶりだった。まあ、中ることはあるまい。あれを食べろ、これを飲め、そんなふうに無理強いされるのは周りもそうなのだろうか……?そう思ってみてみると料理の無理強いはここだけのようである。やがて、デザートが出される。

 

 キイチゴのシャーベットとグレープフルーツのタルトを食べ、周りを観察した。

 マルフォイの取り巻きクラッブとゴイルは、マルフォイが礼節を守って食事を穏やかに取るのとは対照的に、マナーもへったくれもなく、恐るべき食欲で、先ほどから一度も食べるスピードが落ちていない。恐怖すら感じる食べっぷりである。あたかも、立ちふさがる食べ物を片っ端から口に収めていた。うーん動物的なあの食べ方はessenというよりもfressen(貪り食うという意味で、口語的には豚のように)だなあ。

 

 一方の5年生。監督生のフェルプスは時折うなずきつつも、ジェスチャーを交えつつ何かを話していた。(アフリカおよびドイツにおける魔法の特殊な呪文の分布だったと思う)。ダフネはパンジー・パーキンソン、ミリセント・ブルストロードと一緒に紅茶を飲みながら結婚相手について話し合っていた。ダフネは一歩身を引いて話を聞くのに対して、パーキンソンとブルストロードはずっと『聖28族の~と結婚し……』(まあ、お察しのことではあろうが玉の輿というものであります)。手堅い成功を得ようといったことを話している。

 フェルプスは例外的に誰とも話していたが、5年生はOWLについて基本的に話していた(したがって4年生とは別の巨大な壁を構築しており我々が会話に入ることもなかったし、向こうも会話には混ざろうとはしなかった)。4年生と3年生は仲良く話しており、2年生たちは私たちに積極的に話をしてくれたり、相談に乗ってくれてくれたりした。

 一方、私はそんなこととは無縁で、というのもフェルプスをはじめ5年生が席隣りだからだが、学問についての話し合いがなされていた。例えば、5年生で眼鏡をかけ細身の人物は女子方と盛んに、“~の公式に当てはめて、ワインを水に変えるべきか、それとも教科書通りに理論上の呪文によるべきか”がしきりに討論されていた。どうも話をまとめてみると、理論上うまくいくもののほうが加点対象になるそうで、きわめて真剣に議論されていた。

 そうかと思えば、料理のことしか話さないイタリア組。結婚相手について(私はあきれていた)話し続ける聖28族の少女たち(なお、ダフネはすでに離脱し、ウィルヘルミーナに対していくつかの教科についての質問をしていた)。

 

 取り巻きと自慢話に興じるマルフォイ。しかし、彼もまた、やがて時間がたつにつれて、同じ反応しか繰り返さない二人組を置いて5年生らしき人物と寮杯獲得と教科についての諸注意を相談しあっていた。根はまじめだな。

 

 かたや、ずっと黙っているセオドール・ノット。あたりをしきりに見回すザビニ(女子を物色しているとのことだった)。なかなかの混沌である。見れば、レイブンクローもグリフィンドールも似たことになっている。唯一規律を保つはハッフルパフ。長身で優しそうな青年がゆっくりと何かをしゃべっている。それに対して穏やかに応じるハッフルパフ生。入るべき寮を間違えたのかな?そう思う中、私は粛々と給仕される飲み物を飲み続け、食べるものを食べ続けた。ときどき、様々な人物の会話に混ざりつつ、私がずっと食べ続けていることにノットが目を丸くしていた。

 

 こうした喧騒が終わった後、私たちは立ち上がりよくわからない意味の校歌をうたい(歌声はめちゃくちゃであった)会はお開きとなった。監督生は立ち上がり私たちを寮へと案内した。階段を下り続けていくと、地下牢のような場所へと出た。これが我々の寮らしい。

 

 合言葉〈オフィウクス〉 と蛇使い座の言葉を発すると寮の入り口が開いた。

 

「諸君。発音を間違うな。入ることができなくなるぞ」

 

 そう言ったのちに監督生は中へと入っていった。豪華な緑と白い大理石の世界が広がっていた。私はその美しさに息をのんだ。誰もが口をつぐみ、ただただ、圧倒されていた。遅れて女子のほうも監督生のウィルヘルミーナ・アドラーに先導されてはいってくる。やがて、一年生全員は直立して談話室に集まった。周りにはグラスを持った四年生などが立っている。

 

 その中において、やや取り澄ました顔で監督生フェルプスは立っていたが、皆の話し合いがやむとおもむろに口を開いた。私に言ったのとほぼ同じ内容の演説を行った。

 

「ここは栄光あるスリザリン寮の広間だ。諸君らはこの場所を入るたびに様々な偉大なる先人たちに感謝をすることを忘れてはならない。我々はここを中心に動く巨大な家族である。結束の乱れは許さん。諸君。我々は6年間にわたって寮杯の、栄冠に輝いてきた。このたいまつを引き継ぎ絶やすことなく伝えるのは諸君らの役目だ。そして、次のたいまつを枯らすことは諸君らには許されない。とするのであれば諸君らはほかの寮に追従を許してはならない。諸君、我が新入生諸君。我々が何故寮杯に7年もの間、輝いてきたと思うかね?」

 

 ここでフェルプスは周りを見回す。誰もが彼の演説に耳を立てていた。

 

「……それは、ひとえにレイブンクローのように頭脳がずば抜けていたのではない。グリフィンドールのように優れた勇敢さを持っていたのではない。ハッフルパフの器量の良さによるものではない。私たちの寮にしかない特性ゆえだ。頭脳はもともと一般の寮と同等だ。では、どうやってか?結束だ。絶対の鉄のごとき結束と協力によって私たちは長年栄冠に輝いてきたのだ。だからこそ!結束は我々の力だ。さらに強力な結束によって高みへ。明日からは諸君らは授業という〈前線〉へと赴くことになる。忘れるな。常に心につなぎとめておくがよい。諸君らはすべてで一つ。すべてで一つ。一人はすべて。何人も及ばぬいと高き存在だ。さあ、今年も栄冠に輝こうではないか。以上だ。荷物は各人の部屋へと運び込んである。諸君!気を抜かず歩もうではないか」

 

 半ば熱狂的な拍手があたりを包み込む。こうして、ある種の熱を帯びた演説が終わると私たちは部屋へと散っていった。部屋割りは事前に各部屋に貼られていた。私の部屋にはベッドと勉強机(フェルプスの説明によればこれが各人にあるのはこの寮だけだという)が置かれていた。

 私のベッドにはラテン語で

 

 In lumine tuo videbimus lumen 〈光の中になかに、私は光を見出すことであろう〉

 と銘打たれている真鍮製のラベルが張られていた。隣のベッドを見ると、

 Ab uno disce omnes 〈一つよりすべてを学べ〉と銘打たれている。ほかのベッドも一緒だった。

 なるほど、これもある種の装飾なのだろう。そして、自分のベッドであることを示す標識でもあるらしい。というのも、同じようにロッカーにもこのベッドに呼応する形でこの格言が張られている。ローブとシャツ、ネクタイをハンガーにかけ、私のロッカーにかけた。そして、ルームメイトが来るのを待っていると、意外な人物がやってきた。なんと、同室のものは汽車で会い、仲良くなった(表面的かもしれないが)ドラコ・マルフォイ、背の高い(それでも私よりは低い)セオドール・ノットとイタリア人のウンベルト・ティッロだった。マルフォイとノットは見知った様子だったが、私は汽車の中であるいは宴会の際に少し仮の時間以外にはマルフォイとは面識がない、ノットは隣に座っていた程度。ティッロは完全にはじめて会おうことになる。一方のティッロはこの同室のメンバーいずれとも面識がない。いずれは仲良くなる仲間だとして、私たちは互いに挨拶をしたが、その日は宴会や旅の疲れもあって明日授業で検討する旨と抱負と簡単な自己紹介を済ませて、会話もおざなりに早々に床についてしまった。私は、ベッドに入るとすぐに目を閉じて眠り込んだ。

 




監督生のフリードリヒ・フェルプスはチェコのドイツ系です。顔立ちはスウェーデンの言語学者ベルンハルト・カールグレンに似ています。

スリザリンのベッドについてですが、ちょっとオリジナルを交えてみました。ベッドを識別するために、それぞれにラテン語のことわざの入ったインテリアになっているという感じです。
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