推しキャラが、可愛いのとスパダリと危険な香りでヤバい。(更新停滞中) 作:カミカゼ。
取り敢えず書き上がってる所まで更新しておく。
わーにん!わーにん!
キャラ崩壊が酷すぎる上に口調が掴めてないし一番重要なのはタイトル通りかっこいい安室さんは居ないという事だ!
この小説ではこんな感じで進むので合わない読者様は今すぐブラウザバック!
それでもあなたは読むんだね?
……………知らないよ?
では、本編どぞー。
「安室さーん!」
「いらっしゃ…………おや、コナン君」
その日は、いつも通りではなかった。
俺の名前は〔降谷 零〕。 公安所属の29歳だ。
とある世界規模の犯罪組織を捕まえる為、〔安室 透〕と名乗り、その組織に潜入して〔バーボン〕というコードネームをつけられた。
組織にバレない様バーボンとして任務を遂行し、公安に降谷として定期報告をし、毛利探偵の弟子になり安室として私立探偵の仕事に奔走する。
そんなトリプルフェイスで忙しい俺はその日、いつもの様にポアロでバイトをしていた。
そして、いつもの様にコナン君が俺の偽名を呼びながら入店して来たのだが……彼の背後には見慣れない女性が立っていた。
見慣れない女性は若干男性的な容姿をしており、光の加減で青みがかって見えるミディアムくらいの長さをした艶やかな黒髪を首の後ろで括った髪型で、様々な色が虹彩に散らばり角度でキラキラ輝く切れ長で少し鋭い金色の美しい瞳が、こちらを興味深そうに伺っている。
どことなく、浮世離れした雰囲気をしている美形だ。
彼女はコナン君の名前をその時初めて聞いたらしく、その場で彼に話し掛けた。
「君は、コナン君と言うのか。 ハーフか何かかい?」
男性的な容姿の彼女の声は、少しハスキーなアルトボイスをしていて。
耳触りがよく、ずっと聴いていたいと思う様な声だった。
「あ、まだ自己紹介してなかったや。 ボクの名前は江戸川コナン! ハーフじゃないよ。」
「お。 俺でも知ってる有名な推理小説に関連のある名前なんだね?」
「うん、親が推理小説好きなんだ!」
「ハハッ! それは見事に筋金入りだなぁ!」
朗らかに笑う彼女。
しかし何故だろう……どこか違和感を覚える。
いや。 それよりもまずは、コナン君が此処に連れて来た理由と名前か。
「コナン君、この人はどうしたんですか?」
「このお姉さんはね、ひったくりをアッサリ倒しちゃったんだよ! その後にお話してみたら困ってるみたいだったから、話が長くなるって言ってたしこっちで話そうと思って連れてきたんだ!」
「そうでしたか」
コナン君が笑顔で言う、彼女がひったくりをアッサリと倒してしまったという話にちょっと驚く。
パッと見は華奢に見える彼女をもう一度よく見てみると、重心のブレが全く無く、隙も一切見当たらない様に思えた。
身体も、思ったよりガッシリしている様だ。
彼女と戦えばもしかしたら俺でも負けるかもわからない程、相手の力量が読み取れない。
一体彼女は何者だ?
「あ、ここでバイトをやっています。 安室透です。」
驚きをポーカーフェイスで隠しつつ、強さの測れない彼女に偽名を名乗る。
念の為警戒しておくか……?
組織に関係があるかもしれないからな。
そんな風に考えながらも、いつもの様に営業スマイルを浮かべて怪しまれない様気を配る。
「安室さんは探偵もしてるんだ! ねぇねぇ、お姉さんの名前は?」
「江戸川少年に安室さんだね。 自分は◼️◼️ ◼️◼️…………ん?」
…………今、何が起こった?
彼女が名乗るも、彼女の名前が言われている時、何故かノイズが掛かって聞こえなかった。
本人もそれに驚いた表情をしている。
「え?」
「あの………もう一度伺っても?」
コナン君は驚きの声を上げ、俺は彼女に問い掛ける。
「えっと…………私の名前は◼️◼️ ◼️◼️です……………何だこれ」
彼女は戸惑いながらもう一度名乗るも、やはりノイズで聞こえない。
口元を注視して見ても、名乗っている時の口の動きは何故かよく見えなかった。
「◼️◼️、◼️◼️、です。 ……あの、これ聞こえました? 自分には何故かノイズが掛かって聞こえるんですけど…………何言ってるかもわからなくなるし」
更にもう一度名乗り直す彼女。 しかし名前はやはり聞こえない。
不安そうな表情になり、こちらに問い掛けてきた彼女にコナン君と顔を見合わせながら事実を述べた。
「ボクにもノイズが掛かって聞こえなかったよ。 …………安室さんは?」
「僕も同じです。 口元も、どう動いているかわかりませんし………………」
「……………なんでさ?」
茫然と呟き、立ち尽くす彼女。
十数秒程考え込んだ後、頭をガシガシと荒っぽく掻きながら溜息を吐いて名乗り直す。
「名乗っても聞こえないなら意味が無いし………取り敢えず。 仮の名前として、柚樹とでも呼んでください。」
「柚樹さん、ですね」
「わかったよ、柚樹お姉さん。」
「………流石に立ち話もなんですし、席に御案内致しますね?」
「あ、すみません」
店の一番奥のボックス席に彼女とコナン君を案内し、万が一何かあった時逃げられない様にしておく。
彼女はわかっているのかいないのか、嬉々として壁際の逃げられない奥の席に座った。
………いや、これは余裕の現れか。 座る時に一瞬こちらをチラ見してから口元を緩めるのが見えた。
きっと何があっても逃げ切れる、絶対の自信があるのだろう。
「まず、何から話すべきでしょうねー……………うーん。」
腰を落ち着け、テーブルに両肘をついて話の始め方に悩み始める彼女。
それに対し、コナン君が何に困っていたのかと問い掛け、其処から話そうかと彼女は返す。
だが、次に聞こえたのは、意図がよくわからない言葉だった。
「…………まぁ一言で言うなら、事実は小説よりも奇なり、といった所だ。」
「? どういう事です?」
疑問符を浮かべながら聞き返す。
彼女は直接答えを返さず、逆に問いを投げかけてきた。
「そうだな………じゃ、日本の首都を答えてくれる?」
「ボク知ってるー! 〔東都〕だよ!」
「ええ、そうですね。 それがなにか?」
「…………それは、テレビや地図でもそう書いてあるかい?」
「? 勿論! なんでそんな当たり前の事聞くの?」
小学生でも知っている様な、当たり前の事を聞いてきた彼女の意図が全く読めず。
コッソリと眉を顰めながら答えを待つ。
「………………実はな。 自分が住んでいた日本の首都は…………〔東京都〕。 略称は〔東京〕なんだ。」
「「…………え?」」
…………疑問と驚愕で、思わず声を漏らした。
呆然として軽く思考が停止している俺達に、更に驚く様な事を言ってくる。
「例えば。 日本の首都にある、あの有名な、かつて日本一高かった赤いタワー……なにタワーと言う?」
「……………………東都タワー」
これも、子供だって知っている当たり前の事。
コナン君が呟く様にして答えるが………彼女は少し哀しげな笑みで、違うタワー名を言った。
続けて、最近建てられた新しい日本一の高さの建物の名称を聞いてくる。
「東都ベルツリー…………ですが、貴女の所では違うのですね?」
この流れなら、おそらくこれも彼女の知っている物とは違うんだろう。
「Exactly.」
綺麗な発音で、そう返してきた彼女。
少し哀しげな笑みのまま、自分の居た所では東京スカイツリーという名称だったと呟く。
そして不安に揺れる瞳で俺の方を見、どこか泣きそうな声が彼女の唇から零れた。
「………………自分が言いたい事、わかってくれました?」
「…………つまり。 貴女の居た日本と、今ここに存在している日本は、別物だと?」
普通ではそんな非現実的な事は考えられないのだが、この状況ではそうとしか思えない。
確信を持ちながら、彼女にそう問い掛けた。
それに対する返答は…………………………YES。
それだけでも驚きだというのに、彼女は畳み掛ける様に、更に驚きの情報を口にした。
「ついでに言うと、米花町なんていう地名も、存在しない……いや。 【現実】には、存在しないんだ。」
「【現実】には…………?」
「そう、現実には。」
引っかかる言い方をする彼女。
その言い方じゃ、まるで…………………………。
「………まるで、二次元には存在しているとでも言う様な言い方だね?」
同じ疑問に至ったらしく、半信半疑で…………しかし心のどこかで確信している声で、コナン君が言う。
「ぴんぽーん! 大正解だよ、少年。」
彼女は気の抜ける擬音とともに、コナン君に拍手をする。
「少なくとも、米花町は有名な町だ。 …………なにせ、国民的に人気のある漫画とアニメに出てくる町なんだから」
そして、噛み締める様に……自身に言い聞かせる様に。
決定的な事を、俺達の前で彼女は言ってきたのだった。
……彼女の言い方ではこの世界が、その漫画やアニメの世界であるとでも言っているかの様な口振りだ。
「ちなみに、それはどんな物語なんですか?」
「推理モノだよ。 これ以上はまだ言えないな。」
推理モノ、か。
これ以上は言えない、と答えた時にコナン君を見たので、もしかしたらコナン君が主人公として描かれているのかもしれない。
彼は事件によく巻き込まれるし、子供らしからぬ推理力と行動力を持っている。
その上FBIや警察と協力して、世界規模の犯罪組織と対立するなんて、普通では体験し得ない事をその小さな身に受けているのだから。
「取り敢えず、自分は自分の居た世界とは別の世界線にトリップ………転移してしまったのではないか、と仮定している。 トリップ前は夜だったし、普通ならこんなピンピンしていられない様な目にあったからね。」
肩を竦め、
彼女の口振りでは、トリップというのは短期の旅行や幻覚症状等ではなく、異世界等に転移する事を示す言葉なんだろう。
気になる事も混じって言われたので、それについて聞き返してみる。
すると、唖然とする様な事をサラリと…………まるで明日は晴れるかなー?とでも言うかの様に気軽な感じで返してきたので、数瞬程思考が停止する。
「通り魔にね、滅多刺しにされたんだよ。」
「「……………」」(ポカーン
「だから言っただろう? 事実は小説よりも奇なり、と。」
クスリ、と笑いながら俺達を見る彼女。
………いやちょっと待て。
何で彼女は、そんなに笑って言えるんだ?
「め、滅多刺しって、今大丈夫なの?!」
悲鳴の様な声を上げて、柚樹さんを心配するコナン君。
「大丈夫じゃなかったら、ひったくりにあんな事は出来ないだろうに?」
「あ、それもそうだね…………」
彼女は再び、何でもない事かの様にサラリと返してくる。
通常なら、滅多刺しにされたりなんかしたら怯えたりパニックになったりする筈で。
こんな風に普通にしていられる訳がない。
「……………何故そんなに冷静なんですか?」
怪訝な顔を隠せず、彼女にそう問い掛ける。
それに対し、彼女は「冷静ではなく、現実感が無い所為で受け止めきれていないだけだ」と自嘲しながら言った。
「………本当に大丈夫ですか?」
「ん? だからこんなにピンピン……………」
「いえ。 身体的ではなくて精神的な方です」
身体の動き等は一切違和感も無く、健康体なのは大体わかる。
しかし、滅多刺しにされたなんて経験をしてトラウマにならない方が稀だ。
「んー…………今の所は? ひったくりも通り魔と同じくらいの背格好の男で、同じ様にナイフを持ってましたけど、別段何ともなかったですから」
だが、彼女は何とも無いと返してくる。
瞳孔を見ても特に変わりはなく、本当に何とも無い様だ。
「………トラウマになってないなら、良いんですけど…………」
「心配してくれてありがとうございますね。 でも自分、結構図太いんで大丈夫ですよ? (笑)」
「カッコ笑まで普通言います?」(クスクス
少し重い空気に気を使ったのか、彼女は軽く冗談を飛ばしてきた。
重苦しい空気のままよりはずっと良いので、そのジョークに乗っかり笑う。
その後彼女は持ち物を確認したい、他にも色々と変わっているからと言い、中身の確認をし始めた。
そして長財布から取り出した通帳を見た彼女は、自分の眼がおかしくなったのかと一度眼を擦ってから目頭を押さえて天を仰ぎ、再度通帳を見る。
「…………あれ、おかしいな。 俺こんなに眼ェ悪かったっけ? ………ご、五十六兆円?!!」
「「はぁッ?!!」」
「え、何これ怖い(( …………………………見なかった事にしよう!」
とんでもない額が入った通帳に全員で驚きの声を上げた後、彼女は現実逃避をしてさっさと鞄の中に出した物を片付けた。
次にポケットの中身を取り出して、確認していく。
定期入れから免許証を出して見つめながら、眉を顰めている彼女。
暫くして溜息を吐き、こちらに免許証を差し出してきた。
「あの、これの個人情報読み取れます? 自分にはノイズが掛かって読み取れないですけど」
「んー…………名前は読み取れませんね。 あと住所も。 コナン君は?」
「ボクも同じ所が読めないな。 ………柚樹さんって22歳なの?」
「ん? 確かにそうだけど……そこ読めるの?」
どうやら彼女は俺達よりも読み取れない箇所が多いらしく、西暦の下二桁が聞き取れないと頭を抱えてまた溜息を吐いている。
「………………ちなみに、顔写真って見える?」
「? うん」
「顔、ちゃんと同じ?」
「同じだけど………見えないの?」
「うん。 髪型と髪色はわかるんだけども」
そう言って鏡を取り出して自身の顔を眺めていた彼女だったが、やはりノイズで認識が出来ない様だった。
どんな顔なのか?と聞いてきたので、素直にコナン君と感想を述べる。
「えっとね、全体で見るとキリッとしてかっこいい系かな」
「目付きは切れ長で少し鋭いですね。 あと瞳の虹彩が珍しいです」
「確かに。 なんて言うか、いろんな色が散らばってて、角度によってキラキラ輝く金色の眼をしているよ」
「総合的に言うと、どこか浮世離れしたオーラのあるイケメンな女性ですね。 さらしを巻いて服を変えれば男性に見えるでしょうね」
「………成程。 容姿まで変わったか」(遠い目
遠い目をしながら呟く彼女。
元々の顔とは違うのかと問い掛ければ、YESと返ってくる。
「自分割とぽっちゃりで、顔は中の下くらいでしたから。 こんなオシャレな洋服も持ってませんでしたし」
「へー、そうなんだ」
「益々ファンタジー染みてきたなこりゃ………」
免許を片付け、最後にカバーをつけたスマホを確認し始める。
ブックタイプのカバーを外すと、俺の使っているスマホと同じマークが見えた。
「あ、僕の使ってる所と同じ会社のスマホですね」
「安室さんと同じですか?」
「ええ、ほら」
そう言ってスマホを取り出し、後ろのマークを見せる。
それを見て「ほんとですね。」と呟いた後、彼女は自身のスマホを操作して一瞬固まった。
一旦スリープをさせて指紋認証でロック解除をして、また固まる。
すぐに操作に戻り、何かをし始めて……慌てて何かをしながら早口でコナン君に話しかけた。
「ヤバいぞ少年これオーパーツだ」
「え、どういう事?」
「この世界によく似た物語の名前が検索出来てしまった。 しかも中身向こうで使ってたのと丸々同じ」
「………………マジで?」
「真剣と書いて大マジだ。………ハックされたらこの世界、絶対即終わるな… ____ 」(ボソッ
「ヤベーじゃねぇか?!」
「そうだよヤベェよ」
静かに混乱する彼女は、追い討ちをかける様に通話の来たスマホを見てまた固まった。
「あ? …………誰だ、これ。 カミヤ? …………え、何これ怖っ」
「出ないの?」
「だって知らないヤツだし」
知らない人物からの通話だった様だ。
暫くして切れたのだが、すぐに同じ通知音がし始める。
「出ろという事では?」
「………出るべきかね……怖ェー。 けど、反応しないと始まらない、か。 ………もしもし?」
結局出て、
「ハ? ……何吐かしてんだテメェ。 …………ハァ?」
何言ってんだコイツ……とでも言いたそうな顔をした彼女は、電話の向こうの誰かに低い声で問い掛ける。
……低いトーンのその声は、誰かに似ていた。
「じゃあなんでトリップさせたか三行で言ってみろ。 ……20文字で詳しく言うと? …………ガチで20文字ピッタリ…………。」
どうやら本当に20文字で言ったらしく、最後は呆れた顔をする彼女。
「………今俺の名前言ったのか? ………世界に存在が馴染んでない? …………………ちょっと待って」
一旦スマホから耳を離し、額を押さえて深く溜息を吐く彼女。
コナン君との会話からわかったのは、自称神が彼女をトリップさせて、戸籍や家を用意したりしたとの事。
十数秒程悩んで名前を考えた彼女の戸籍名は、〔柚樹 凌雅〕という物になったらしい。
そして二、三分位会話をして、るんるんとしながら彼女は電話を切った。
聞こえた会話から理解したのは。
神を名乗った電話の相手は、カミヤと書いてジンヤと読む名前で、彼女からは〔じんさん〕と呼ばれる様になった事。 戸籍を余裕で作れる存在である事。 死んだ筈の人間をトリップさせられるという非現実的な事が出来る存在な事、などなど…………。
彼(?)が、非現実的な存在だという情報くらいしかわからなかった。
「お話は終わりましたか?」
「ええ。 取り敢えずこちらの世界で困る事はあまり無さそうです。 用意してもらった家に帰ったら詳しい説明があるらしいですけど」
「そうですか。 つまり問題は解決したという事ですか?」
「ええ! 話を聞いてくださって、ありがとうございました。 少年もね」
「ううん! 解決したならよかったよ!」
「じゃあ、喫茶店に来たんだし注文しようか。 君も何か頼むといい、奢ってあげるよ!」
ウキウキしながら彼女は胸を叩いて言った。
「え、いやでも………」
「いいから! 御礼の気持ちだ。 受け取ってくれ。 それに今自分の財布は、かつて無い程に熱々だからな!」(フンスッ
「えーと………じゃあ、アイスコーヒー」
「それだけでいいのかい?」
遠慮しようとするコナン君だが、彼女はドヤ顔で大丈夫と返し。
根負けしたコナン君はいつものを注文した。
「あ、安室さんも話を聞いてもらったし何か奢りますよ?」
「いえ、僕はまだ仕事中ですから。 遠慮しておきますね」
「そうです? じゃー、何にしよっかな………」
俺の方にも矛先が向いたが、仕事中だからと遠慮して躱す。
女性に奢らせるべきでは無いからな。
メニューを見て悩み始めた彼女は、なんだかとても嬉しそうなオーラを放ちながら「何にしよっかなー?」と軽く歌う様に呟いている。
「えっと……ハムサンドとー、ハンバーグナポリタン、ダブルベリーチーズケーキに、チョコレートパフェで! あと、ホットのダージリンください。」
「ミルクと砂糖はどうします?」
「入れないで、一緒に持ってきてください」
「かしこまりました。 以上で?」
「ええ!」
音符がついてそうな程高くなったテンションで注文をした彼女は、口元を緩め返事をした。
女性にしては多い注文だが、服に隠れて見えないガッシリした身体を思えば納得である。
今にも鼻歌を歌いそうなくらい嬉しそうにしている彼女を見ると、最初の違和感はなんだったんだろうと思えてくる。
大人びた見た目をしているのに、ワクワクと子供の様に、眼をキラキラ輝かせながら待っている彼女はギャップであまりにも可愛い。
彼女につられて俺も思わず嬉しくなり、注文の品を作る為に調理場に行く際に、頰が緩んでいるのを自覚しつつ彼女に向かってウィンクをしてから、カウンターの中の調理場に立った。
今は、他の人が丁度居ない為に一人で全てを作らなくてはいけない。
まずは手早くハムサンドを作り、それと並行してアイスコーヒーとダージリンを淹れる。
彼女達が笑い合い、楽しそうな声をあげているのが横目で見えた。
…………少しコナン君が羨ましいな。
チラッと一瞬そんな事が脳裏をよぎるも、手は止めずにハムサンドと飲み物を作り終えて持って行く。
「お待たせ致しました。 ハムサンドとダージリン、アイスコーヒーです。」
「お、来た♡ このハムサンドめっちゃ美味いって有名なんだよねー♪」(wktk
「あ、そうなんですか?」
やはり、アニメでこの店の事も出ていたんだろうか?
「ええ! 滅茶苦茶有名ですよ。 イケメンが作ってますし! パン屋の人が美味さの秘訣を知る為に尾行してきたくらいなんですよね?」
「おや……よくご存知で」
「ファンの中でも猛者の人がアニメを見て再現してたくらいですからね。 公式でも再現した物をイベント的なとこのレストランで売ってましたし」
「そ、そうでしたか………」(苦笑
「まぁ、実際このハムサンドは美味しいもんね」
「んじゃ、頂きまーす!」
元気いっぱいに頂きますをして、彼女はハムサンドを口にする。
「んまぃ………♡ 幸せ♪」(もきゅもきゅ
「本当に幸せそうに食べるね………」(苦笑
「お気に召したのなら良かったです」(微笑
まるでリスの様に口一杯に頬張り、ウットリと幸せそうにハムサンドを食べる柚樹さん。
先程までのキリッとした顔は見る影も無く、今では可愛らしく緩みきっている。
こんなに良いリアクションをしてくれる人はなかなか居ない。
「ほんとーに美味しいです! このアムサンド!」
「アムサンド?」
「あ、ファンの間ではそう呼ばれるんです。 安室さんの作ったハムサンドなので」
通称は少し不思議なネーミングだが、とても気に入ってくれた様で良かった。
美味しそうに、もきゅもきゅとハムサンドを頬張る彼女を横目に、ハンバーグナポリタンを作っていく。
それが出来上がったので持って行くと、丁度ハムサンドが無くなった所だったらしく。
「無くなっちゃった……(´・ω・)」(しょぼーん
「ックw」
彼女がしょんぼりしているのを見て、思わず吹き出しそうになる。
「お、お待たせ致しました、ハンバーグナポリタンです……www」(笑い堪えつつ
「*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*」(パアァ
「クッ…………wwwww」(顔背けて笑い
「頂きます! (もっきゅもっきゅ)うんまぁー♪(*´꒳`*)」(キラキラキラ
ハンバーグナポリタンを差し出すと、しょんぼり顔から途端に花が咲いた様な表情になる。
とても可愛らしく、流石に耐えきれずに顔を背けて笑ってしまった。
頰は緩みきったまま戻らず、とても美味しそうに食べてくれる。
耳と尻尾がブンブンしているのが幻視出来るくらいに嬉しそうだ。
…………何故だろう。
尻尾と耳で連想したのか、とある人物に似ていると思ってしまった。
「主食ごちそーさまー♪ あ、ダージリンお代わりください」
「はい、デザートと共に持って来ますね」
「お願いしまーす♪」
気付いたら、デザートを用意するのを忘れて彼女に見入っていた様だ。
最初っからこうする予定でしたよという顔でティーカップを回収して調理場に戻る。
…………コナン君から呆れた視線を向けられている気がするが、気にしない。
ケーキ等を出して器に盛り付けながら紅茶を淹れる。
すぐに用意を終わり、トレイに全てを乗せて持って行く。
「ダブルベリーチーズケーキと、チョコレートパフェと、ダージリンのお代わりです」
「来た♡ ベリー♪ベリー♪ チーズケーキ♪ チョーコのっパフェ♪」(るんるん
とても嬉しそうにるんるんと即興で歌う柚樹さん。
さっきよりもテンションが高い。 甘い物が好きなんだろうか?
そう考えながらテーブルにデザートを並べていると、コナン君も同じ事を思ったらしく質問をしていた。
「凄い嬉しそうだね、柚樹さん………甘いの好きなの?」
「That's right! 当たり前じゃないか! 特に、苺以外のベリー系やらチョコ系が好きー♪ 抹茶系とかも好きだよ♪ 後は桃とかパイナップルとかかなー」(うきうき
「ホー、そうなんですか。」
「Ja!」
質問に対して断言をしながらウキウキと好きなデザートの種類を上げていく柚樹さんに相槌をうつと、ヤーと返事が返ってきた。
あの相槌に頷きながらヤーと言った……という事は、「
にしては発音が微妙に違ったから…………ドイツ語で「はい」を意味する「Ja」か? ドイツ語でも習っていたりするのだろうか。
最初はパフェを食べるらしい。
ワクワクとしながら一口食べて、彼女は歓声を上げた。
「あ! これ甘さ控え目で美味しい!」
「甘いのが苦手な人でも手を出せる様に、甘さを控えてあるんです。」
「そうなんですか! 美味しいですー♪」
「それは良かったです!」(ニパー☆
「ん゛ん゛っ、_____ッ…………」(ボソッ
さっきから本当に美味しそうに食べてくれるので思わず、作っていない満面の笑みを浮かべたのだが。
それを見た彼女は口をキュッと結んで呻いて俯き、何かを呟いた。
手で口元を押さえて数秒程そうしていると、深呼吸をして顔を上げる。 特に具合が悪い訳では無さそうだ。
「………………フゥ。 落ち着いた。
……にしても、ほんとこのパフェ美味しいな………少年もどうだい? ほら、あーん」
「え゛っ?! い、いや、オレは………」(わたわた
「? 美味いぞ? そら、食えよ」
「あ、えっと、その……………」
「あーん、だ」(ぐいぐい
「え、えっと………あ、あー……ん」(照れつつ
ずっと苦笑して呆れた眼で俺の事を見ていたコナン君に、柚樹さんがパフェを一口分乗せたスプーンを口元に差し出して、食べさせようとした。
最初は戸惑って遠慮したコナン君だったが、ちょんちょんと唇をスプーンでつつく柚樹さんに結局押し切られる形であーんをして食べる。
「どうだい? 美味いだろ?」(にへー
「う、うん…………」(耳まで真っ赤
羞恥で耳まで赤くしたコナン君と、気にせずそれを見ながら、緩んだ笑みでパフェの感想を聞く柚樹さん。
…………少し羨ましい。
ふと気付くとまたそんな事を考えている自分が居る。
一体何に対して羨ましいのだろう。
それについて考えようとすると、「あ。」と柚樹さんが声を上げた。
「っと……ちょい垂れちゃったな。 少年、動くなよ」
「え?」
「よっ…………うし、これで良いだろ」(ニッ、と笑い
「ッ!!?」(赤面
……………………。
俺の眼がおかしくなった訳で無ければ、彼女が身を乗り出して右手を伸ばし、溶けてコナン君の唇に垂れたパフェを親指で拭い、その拭った親指を舐めた様に見えたんだが。
一瞬だけ見えた、ペロッと親指を舐め上げた赤い舌が艶めかしくて。
チュッ……と、舐めた後に響いた指を吸う音が酷く淫靡に思えてしまった。
あれ、この動作もあの人に似ているな。
「ん? 真っ赤になってるけど、どうかしたか少年?」(キョトン
「ば、バーロー! 何でもねぇよ!」(赤面
「んー? そーかぁ?」(もきゅもきゅ
舐めた指を紙ナプキンで拭き、何も無かったかの様な顔でキョトンとしながら、柚樹さんはパフェを食べ続けている。
そしてもう一度ダージリンのお代わりを注文した彼女は、先程と全く変わらずパフェに頰を緩ませている。
紅茶を淹れてテーブルまで運んでいる際に、思わず口から呟きが零れた。
「……………コナン君ばかりズルいな」(ボソッ
何故かそう思ってしまって。
理由はよくわからないけど。
あの人に似ているからだろうか。
「うん? 安室さん何か言いました?」
「……いえ。 何でもないですよ?」
お代わりのティーカップを差し出しながら、なんでも無いと返して誤魔化す。
そしてコナン君の隣の椅子に座り、テーブルに肘をつきながら、両手を組んで顎を乗せて、まるで何にも無かったかの様に彼女に向かって微笑んだ。
柚樹さんは首を傾げつつも、パフェを食べる作業に戻る。
目の前に座ってジッと彼女の観察をしていると、違和感がよくわかる。
飲んだり食べたりしている時や口にした物に感想を言っている時は、違和感が無く。
俺達と話をしている時は、注意していないとわからない程度ではあるが違和感がある。
まるで、仮面を被って演技をしている様な。
あの人も、慣れていない他人と接している時はこんな感じで若干仮面を被っている様だったな。
パフェが無くなって、ダブルベリーのチーズケーキに手をつけた彼女は、周りに花が舞っているかの様な幸せそうなオーラで、頰を緩ませ歓声を上げつつ食べている。
………さっきもそうだったが、彼女はただ物を食べているだけなのにエロチシズムを感じる。
小さなフォークに乗せられたケーキを頬張る為に開かれた口から、チラリと覗く僅かに突き出された舌。
そのまま吸い込まれ、口に含まれたフォークにヌラリと光る舌が絡んで、それと同時に口が閉じられる。
閉じられた口の中から唾液で濡れたフォークが引き抜かれて、咀嚼の為に僅かに動く顎。 そして飲み込む度に微かに上下する喉。
その動作が幾度か繰り返され。 稀に艶めいてぷっくりとした唇についたケーキのカケラを舐め取る為に、舌先が顔を出す様は扇情的で。
性的な事では無い筈なのに、彼女が食事をしているのを見ているとムラッとして、男の欲が酷く煽られた。
ケーキではなく、己の舌を
………………うん。 見た目は似ていないのに本当によく似て見える。
あの、〈彼の様な彼女〉に………
「……………あのー、安室さん? 自分になんかついてます?」
……あまりにも注視していた所為か。
視線に気付いた彼女が問い掛けてきた。
「あぁ……いえ。 本当に美味しそうに食べてくれるので、店員冥利に尽きるなーと思っていただけですよ?」
「…………そうです?」
下卑た内心をひた隠しつつ、そう返しながら笑いかける。
眼を逸らしてまた食べ始めるも、俺の視線が気になるらしく、少しソワソワとしていて。
ついに視線に我慢が出来なくなったのか。
フォークに一口分を乗せて此方に差し出し、食べるかと聞いてきた。
「おや、良いんですか?」
「ええ。 あげるんでガン見やめてください」
「あぁー…………それはすみませんでしたね。 では……」
テーブルに両手をついて前のめりになり、口を開けてケーキを待つ。
あー、と口を開けたまま眼を閉じ待っていると、甘酸っぱいチーズケーキが口に入れられたのでさり気なく……しかしガッツリフォークごと咥える。
咥えたフォークに、自身の唾液をまぶす様に吸い付きながら、フォークを持った彼女の手に自身の手を添え引き抜き、ケーキを咀嚼する。
そんな変態染みた行為をしながら食べた俺に、彼女は全く気付かず微笑みながらケーキの感想を聞いてきた。
咀嚼していたケーキを飲み込み、満面の笑みを浮かべて質問に答える。
「(ムグムグ…ゴクン)はい、美味しいです!」(ニッパー☆
「 __________ ッッ………」(ボソッ
バッ!と勢いよく俯き、口元を押さえて呻く柚樹さん。
よく見ると、肩が震えていて……耳が赤い気がする。
「柚樹さん? どうかしましたか?」
「い、いえ………何でもないです。 ええ。 何でもないですとも」
「そうですか?」
彼女は自らに言い聞かせているかの様に言葉を繰り返し。
そして、待ってくれとでも言うかの様に手を上げて、俯いたまま深呼吸をしている。
数十秒程してから漸く落ち着いたのか、顔を上げた。
だが、目元と耳はまだ薄っすら赤く染まっている。
「……………………よし。 大丈夫だ問題無い。」
「柚樹さん。 それいわゆるフラグって言うんだよ?」←
「知ってる。」←
柚樹さんは再度大きく深呼吸をして、コナン君と会話をする。
再びケーキを食べ始めた彼女だったが、俺も使ったフォークを平然と使っている。
間接キスを気にしないタイプなのだろうか。 そんな所も彼女と同じだ。
先程俺の口に入り、あんなに俺の唾液がガッツリついたフォークを、彼女が今口にしていると思うと……何だかイケナイ気分になってくる。
俺って、こんなに気持ち悪い奴だっただろうか?((
いや、あの人に対しては内心大体こんなモノだった気もする…………。
そんな風な事を考えながら見つめていると、ケーキを食べ終えた彼女とコナン君はこの後の予定を話し始めた。
………ホー。 探偵左文字、ね。
覚えておこう。
「……って、ウチってもしかして工藤邸の方だったりするか?」
「うん!」
「………………誰か居候なんてしてないよな?」
「居候? 沖矢昴って人が居るけど………どうかした?」
「…………マジで時系列いつなんだよ((」
沖矢………彼奴は赤井に雰囲気が似ているから苦手だ。 薄々赤井だろうとは思っているが。
話は変わって、シャーロック・ホームズの事を話し始めた。
コナン君はかなりのシャーロキアンなので、嬉々としてトリックを言ったりホームズはどこが凄い等と語り、それを彼女は紅茶を啜りつつ微笑みながら見つめ、楽しそうに話している。
「良いねェ……そんなに楽しそうに語れるとか。 本当に好きなんだな?」
「おう! 大好きだ!」(キラキラキラ
「蘭ちゃんも?」
「おう…………って何言わせやがる!?」(赤面
「おーおー、アオハルだねェ」(ニヤニヤ
「う、ウッセェ!」(真っ赤っか
「いやー、ほんと羨ましいわーwww そんなに誰かを好きになれるなんて。」
好きな人が居るらしいコナン君を、ニヤニヤしながら揶揄う柚樹さん。
…………羨ましい、と言っている時の彼女は、違和感を強く感じた。
ニヤニヤしている筈なのに、眼の中は笑っていない様な。 どこか冷たくて、寂寥感が顔を覗かせている様な。
…………………………〈彼女〉が一人の時によく見せていた様な眼を。
「そ、そう言う柚樹さんには誰か居なかったのかよ!」(赤いまま
揶揄われて真っ赤になったコナン君は、彼女に良い人は居なかったのかと叫んで反撃。
コナン君が叫んだ次の瞬間には彼女の違和感は薄くなっていた。
違和感の方も気になったが、良い人が居たかという質問に何故か思わず耳をすませ、彼女の言葉を待つ。
「恋人居ない歴=年齢の喪女でしたが何か? それに恋なんてした事無いから全くわからん」
「えー………本当に居なかったのかよ?」
「おうとも。 二次元にキャーキャー言ってたオタクだからな。 あちらに居た時は見た目もアレだったし…………ん?」
恋人も好きな人も居なかったらしい。 少しホッとする。 ………あれ、なんでだ。
すると、スマホの通知音がした。 メッセが来たらしい………首を傾げて操作をしている。
「え、速ッ…………なになに? …………オゥフ、マジか((」
何か茫然とする様な事が書いてあったみたいだ。
一体何が書いてあったのか気になり、コナン君と一緒に聞いてみる。
「どうしたの?」
「何が書いてあったんですか?」
「あー………要約すると、頑張って恋愛して幸せになってね!だそうです」
「「は、はぁ………」」(ビミョーな顔
…………一体自称神は何を考えているのか((
「………ま、俺なんかを好きになる様な奴なんて居ないだろーがな。」(遠い目
「自身を卑下し過ぎでは?」
「そうだよ! 柚樹さん綺麗だし、きっと沢山アプローチされるよ!」
「有象無象には興味無いがね………」(苦笑
そんな事を言いながら苦笑をする柚樹さん。
あの人もよく、『有象無象に用は無い』って言っていたなぁ…………………。
……にしても、さっきから何回もあの人の事を思い出すな。
見た目も声も違うのに……いや、ある意味同じか? あの人も柚樹さんも男性の様な顔立ちをしているから。
まぁ、あの人の方がずっと男の様だけれど……そう、まるでなかなか人に慣れない狼の様な。 少し冷たく接してくる人物だから。
「でも、どーせならイケメンが良いなぁ………」
「あ。 じゃあ、恋愛対象に立候補しても良いですか?」
「…………………………へ?」
ポツリと呟いた柚樹さんに、そう問い掛けてみる。
あまりにも〈彼女〉を連想させるので、もしかしたら〈彼女〉に関連のある人物なのかも。
仲良くしておけば何か情報を手に出来るかもしれない、そう考えて。
「僕、貴女に興味が湧いたんです」(ニパ☆
「……………なんでさ?((」
興味が湧いたのも事実だ。 〈彼女〉に似ているから。
あの人に関係無くても、この世界を物語として知っているんだ。 口説き落とせれば、情報をぽろっと零してくれたりして利用出来るかもしれない。 特に赤井関連の。
「えー………ちなみに一体どんな所に興味を?」
「だって柚樹さん、ずっと演技してますよね?」
「……………………ぇっ」
「貴女の被っているその仮面を、引き剥がしてみたくなったんです」(ニコニコ
驚きの声を洩らす柚樹さん。
口を小さく開け呆然とした表情をしている。
そして仮面云々というのも本心だ。
……まっさらな偽らない態度になったら、柚樹さんはどんな顔を俺に見せてくれるんだろう。
あの人とほぼ同じ様になるのか?
それとも全く違う感じになるんだろうか?
「か、仮面……? 演技……? そんなの、してないんですけど……………?」
「言わなくてもわかってますよ、僕は」(ニコニコ
声を震わせ、戸惑いながら返してくる。
だが。 その演技を演技と気付かせない振る舞い…………〈彼女〉に本当によく似ている。
あの人も飄々とした態度で煙に巻いたりしたりして、演技だと気付かせない振る舞いが上手かった。
「……………安室さん、柚樹さんに一目惚れでもしたの?」
「ふふっ、どう思います?」(ウィンク
コナン君の問い掛けに、ウィンクをしながら人差し指を立てて唇に当て。
クスリ、と笑ってはぐらかす。
「何をどう勘違いしたのかわかりませんけど……俺なんかよりずっと良い人居るでしょうに?」
「今、僕が気になっているのは貴女ですから」(ニコー☆
「…………………そっすか((」
そう。 今、俺が気になっているのは貴女だ。
例え、切っ掛けはあの人に似ているからとはいえ。 貴女を知りたい……心からそう思った。
「えーっと……この件は保留にしておきますね」
「おや、残念です」(ニコニコ
「あー…………………お会計お願いしまーす!」
「はい、かしこまりました」
あ、逃げたな。
まぁ、いいだろう。 少しずつ距離をつめていけばいい。
レシートとお釣りを渡す際に、さり気なく手を握ってみたんだが。 逃げる事に意識を集中していたのか、全く気付かれていなかった。
「いつでも待ってますからね、凌雅さん!」
「ハ、ハハハ…………また来ます………………」(乾いた笑い
「ありがとうございましたー!」(満面の笑み
苗字呼びから名前呼びに変え、ちょっとでも距離を縮めにかかる。
凌雅さんは乾いた笑いでスタスタと、コナン君の手を引いて(というか引きずって)、俺の前から去って行った。
「……………次に会う時は。 もっと貴女の事を教えてくださいね、凌雅さん。」(ポツリ
トリップなんて摩訶不思議な体験をした貴女は、一体他に何を隠しているのだろう?
そして……あの〈狼の様な男性的な彼女〉に、何故こんなにも似ているのか。
知る事は、出来るだろうか?
「ただいま戻りました! 安室さん、お疲れ様です!」
思考にふけっていると、そう言って裏口から帰って来た梓さん。
凌雅さんの事を考えるのは後回しにしないと。
「はい、お帰りなさい!」
それに対して、笑顔で応える。
ニコニコと。
〔安室 透〕の仮面を被りながら。