推しキャラが、可愛いのとスパダリと危険な香りでヤバい。(更新停滞中)   作:カミカゼ。

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わーにん!わーにん!
タイトル通りだ!気をつけろ!










……………いいんだね?
もう止めはしないよ。本編どぞー。


File 2.5、3.5。 Side. 沖矢(in 赤井) (※かっこいい赤井さんなど居ない。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 FBI所属、〔赤井 秀一〕。

 これが自分の本名。 ちなみに(よわい)32だ。

 

 だが、とある世界規模の犯罪組織に潜入していた関連で命を狙われ、一度は本当に死に掛けた。

 しかし、とあるボウヤの策略で生き長らえる事が出来たのだ。

 そこで、赤井秀一は死んだ事になった。

 

 そして今は、チョーカー型の変声機と変装をし、自称東都大学院生の〔沖矢 昴〕として生活している。 年はサバを読んで27という事に。

 

 まぁ、今は色々あって赤井秀一が生きている事はバレてしまっているのだがな。

 

 たまにボウヤと赤井として組織関連の問題に関わったり、沖矢としてボウヤが巻き込まれた事件に首を突っ込んだりと、日々忙しく(?)生きている。

 

 

 今日も、いつも通りに問題が起きていないか盗聴をしながらコーヒーを飲んでいると。

 

 

「昴さーん!」

 

 

 そう、ボウヤの声が玄関から聞こえてきた。

 

 

 盗聴機の受信機を隠し、玄関へと向かう。

 

 

「いらっしゃい。 …………おや、その方は?」

 

 

 玄関を開けてみれば、ボウヤと一緒に見覚えの無い女性が立っていた。

 

 彼女は柚樹凌雅と名乗り、申し訳なさそうに頭を下げて突然訪問した事を詫びてきた。

 

 ボウヤ……コナン君曰く、ポアロで仲良くなりホームズを読みたいと言った彼女を、その関連の本等が多くあるこの工藤亭に連れてきたそうだ。

 

 しかも、真面目なトーンで「特殊な人」とも言ってきた。

 

 

「………ホォー?」(開眼

 

 

 思わず呟き、変装の為にわざと細くしていた眼を開く。

 

 

「特殊、ですか…………それは是非とも気になりますね。 こちらへどうぞ」

「ハ、ハハ……お邪魔します…………」(遠い目

 

 

 そう言って中に招くと、彼女は乾いた笑いをしながら遠い目で入ってきた。

 

 

 リビングに通して飲み物は何がいいか問えばポアロで飲食してきたから水で十分だと言い、ボウヤはいつもの様に元気良くアイスコーヒーがいいと言ってきた。

 

 

「わかりました。 ちょっと待っててくださいね」

 

 

 彼女はそれに対し頭を下げてきたのだが、別に何ともないという態度を返して、キッチンに向かう。

 

 

 ………………水で良いとは言われたが、流石に客にそれは駄目だろう。

 

 かと言って、コーヒーだと彼女が飲めないという可能性も大いにある。

 

 ………………………紅茶にするか。

 

 

 組織に居た時知り合った〈狼の様な彼女〉が紅茶に凝っていて、よく雑学やコツと共に紅茶を淹れてくれたのだ。

 たまに自分で淹れようとすれば、横でそれを見ながら淹れ方を教えてくれたものだった。

 

 ……………〈彼女〉は今もあの組織に居るのだろうか。

 聞こうと思えば、連絡先を知っているから聞けるのだが………赤井秀一は一応隠れていないといけないからな。 聞くに聞けないか…………。

 

 今思えば、〈彼女〉はどちらかと言えば俺達寄りだった気がする。

 

 NOC(ノック)(ノンオフィシャルカバー)ではない。

 しかし、必要以上には殺さず、本当に自身が手を下さなければいけない相手であるとわからなければ、独自に調査をしてきたり。

 善人を殺る任務は決して受けず。

 かと思えば、法で裁けないゴミの様な奴等を勝手に殺して金を巻き上げて来たり。(しかも証拠が一切出なくて、殆どが失踪事件と扱われる………たまに殺した相手の犯罪の証拠を堂々と残してそいつの関連の犯罪者が逮捕される様にしていたり。)

 他にも自身を狗と侮辱したりした組織の人間の頭をアッサリ躊躇無く撃ち抜いたり、喉笛を()(さば)いて殺したり。

 殺す時は一切の躊躇無く殺っていたな……。

 

 ………………………よくわからない人物だったと改めて思う。

 しかも………あの〔スコッチ〕の時だって、

 

 

 

「………………っと、蒸らし時間が終わったか」

 

 

 思考しながら、アイスコーヒーと並行し紅茶を蒸らしていると、蒸らし時間が終わった事に気付いてカップに注ぐ。

 

 茶葉は、丁度ウバがあったのでそれを淹れた。

 あの〈彼女〉がミルクティーが好きだったのを思い出し、思わずウバの缶を取ってしまったのだ。

 

 砂糖壺とミルクも用意して、ボウヤのアイスコーヒーと共にリビングに持っていく。

 

 

「お待たせしました。 水でいいとは言われましたが、紅茶にしておきました」

「あ、いえ。 お構いなく。」

 

 

 そう言って彼女は紅茶を一口啜った。

 

 

「ん……おいし。 これウバです?」

 

 

 …………………彼女は一瞬眼を瞑り、キラリと眼を光らせる。

 〈彼女〉に紅茶を淹れた際、キチンと上手く淹れられているのを褒める時の眼と、全く同じだった。

 

 

「あ、わかりますか。 ええ、そうですよ」

「へぇ、やっぱり? 良い香り……随分と淹れ方上手なんですね? 茶葉が多いと苦くなって、逆に少ないと生臭くなるから難しいらしいのに………凄い美味しいです」

「ありがとうございます。 紅茶に凝っている知り合いが居たので覚えまして……。 ミルクと砂糖は此処に置いておきますね」

「はい」

 

 

 ……〈彼女〉もよく言っていた。 ウバは茶葉の量に気をつけろと。

 ふむ、この女性も紅茶に凝っているのか? 妙に詳しい。

 

 ……………今度機会があれば聞いてみるか。

 

 

「……………で、ボウヤ。 特殊とはどういう事かな?」

 

 

 思案を一旦やめ、彼女について問い掛ける。

 

 

「本人に聞いた方が早いと思うよー。 な? 柚樹さん」

「あぁ。 そうだな。 ………………単刀直入に言いましょう」

 

 

 彼女はボウヤに頷き………一呼吸置いて、頭を心配したくなる様な事を言ってきた。

 

 

「通り魔に滅多刺しにされて殺されたと思ったら、この世界にトリップしてました」(キリッ

「………冗談は程々にしてくれないか?」

 

 

 思わず、また眼を開けてしまいながら若干素の口調になって言ってしまう。

 

 

「冗談じゃないよ。 物的証拠も有るし、そうとしか考えられないんだ。 オレの事情も知っていたし」

「ホォー? 物的証拠ですか?」

「ええ。 例えばこの免許証。 名前や住所、読み取れますか?」

「…………ノイズで読めないな」

 

 

 差し出された免許証を見れば、何故かノイズが掛かっていて読む事が出来なかった。

 文字が書かれている、というのは認識出来るのだが………どういう事だろうか。

 

 

「でしょう? 次に、私の元の世界での本名。 聞き取ってみてください。 ………私の名前は、◼️◼️ ◼️◼️です。」

「……………………もう一度聞いても?」

「勿論。 私の名前は、◼️◼️ ◼️◼️です」

「………………聞き取れませんね」

 

 

 彼女が名乗ると、ザザザッ……というノイズが入り、何を言ったのか聞こえなくなる。

 口元を注視してみても、ブレてノイズが掛かった様に見え、どんな形になっているのかわからない。

 

 

「そして最後に。 ……これを見てください。」

 

 

 そう言って彼女は取り出したスマホを操作し、画面をこちらに向ける。

 そこには、検索欄に【名探偵コナン 沖矢】と書かれており、少々デフォルメされて描かれた〔沖矢 昴〕に変装した姿の画像(イラスト)が一面に表示されていた。

 コナン、と書かれている通りボウヤが一緒に描かれている画像もある。

 

 

「……………私、ですか?」

「ええ、貴方です。 無論、貴方の正体も知ってますよ。 ……FBIの、赤井秀一さん?」

 

 

 そしてニヤリと笑いながら、彼女は俺の本名の〔赤井 秀一〕で検索された画像を見せてくる。

 

 そこには先程と同様に、黒ニットを被った俺の画像(イラスト)が大量に並んでいた。

 

 ……………ボウヤとだけではなく、安室君と俺が一緒に描かれている画像が多いのは少し気になるが。

 

 

「どうです? これでもまだ冗談だと言いますか?」

 

 

 どこか得意げに問い掛けてくる彼女。

 

 おそらくだが彼女には、俺の正体やこの状況に絶対の自信があるのだろう。

 

 

 ………諦めて認めるしかない、か。

 

 大きく溜息を吐き、首に着けた変声機を操作して本来の声で彼女の問いに答えた。

 

 

「……………降参だ。 此処まで証拠を出されては、信じざるを得ん。」

 

 

 そう答えたのだが…………それに対し、何故か彼女は吹き出して大笑いし始めた。

 

 

「……ブフッww 違和感違和感とよく書かれていたけど、沖矢さんから赤井さんの声がするとマジで違和感しか無いのねwwww まさかここまでとはなwwwwwwww」

 

 

 ……………そこまで違和感があるのだろうか。

 それに、さり気なく俺の台詞を使われた気がする。

 

 

「駄目だwwww 腹痛ェwwwwwww」

「………柚樹さん、笑い過ぎじゃね?」

「だってwwwwwwwwwww」

 

 

 頬の筋肉を引くつかせながら、大袈裟な動きで自身の右太腿をバシバシと叩いて笑っている彼女。 「ハァーッww」等と高めの声を出して大笑いしているのを見ると、少し心が辛い。

 そこまでツボにハマるほど俺はおかしかったのだろうか………。

 

 

「………フゥ。 すみません、取り乱しました」

 

 

 暫くして。 深呼吸をして、漸く落ち着いたらしい彼女はこちらに頭を下げて謝ってきた。

 

 

「すげーツボってたな…………」

「だって、まさかあんなに違和感があるなんて思ってなかったんだよ」

 

 

 少々冷たい視線をボウヤに向けられ、冷や汗をかきながら苦笑している。

 

 

「そんなに違和感があるのなら、こちらの方がよかったか?」

 

 

 変装マスクとカツラを剥ぎ取り、素顔を晒して問い掛けつつ溜息を吐いた。

 

 

「あ、外しちゃって大丈夫なんです?」

「あぁ。 外に出る訳では無いからな。 別に問題は無いさ」

「じゃあ、今暫くはそのままでお願いします」

 

 

 彼女はそんな感じに返してきたので、それに頷きながらソファに深く腰掛け腕と脚を組む。

 

 

 ………………その時。 彼女はいきなりこんな事を言ってきた。

 

 

「………嗚呼。 やはり美しいな、そのJadeの瞳は………。 ゾクゾクするくらい、綺麗だ……。」

 

 

 左手でカップを持って紅茶を飲みつつ、右肘を腿について手の甲に顎を乗せて眼を細め。

 熱の隠し切れない視線でこちらを見つめながら、ホゥッ……と熱い吐息を溢す様に呟いた。

 

 彼女にそんな熱のこもった眼で見つめられ、自分の顔が少し熱を持つのがわかる。

 

 

「……………それは、口説いているのか?」

「……ん?」(キョトン

 

 

 声が震えない様気をつけながら聞くと、彼女は意味を理解していない顔で首を傾げた。

 

 

「…………柚樹さん。 全部口に出てたよ」

「………………え、マジ?」

「マジ。」

 

 

 どうやら無意識だったらしく、頰を引くつかせてボウヤに聞き返している。

 

 

「ど、どこからどこまで?」

「嗚呼、から綺麗だ、まで。」

「…………Oh, my God.  …………………あー……すみません。 思わず考えてた事が口から零れました。 口説いた訳では無いです」

 

 

 妙に良い発音で、なんてこったといった意味で言ったであろう英語を呟く。

 そして視線を大いに泳がせながら、口説いた訳では無いと伝えてきた彼女。

 

 ……………こちらだけこの様に照れるというのは、些か癪に触るな。

 

 

 

 改めて彼女を見てみた。

 

 

 おそらく鎖骨辺りを超える長さの、光の加減で青みがかかって見える艶やかな黒髪。 それを後ろでテキトーにとても細い黒のゴムで括っている。

 スタイルは、殆ど目立たないのだが出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいるといった感じのラインをしており、服の下は意外と鍛えられしっかりとした体付きで。 しなやかな獣の様な印象を受ける。

 肌は、日本人にしては色白な方か。

 顔立ちは……切れ長で少し鋭い目付きの男性的なイケメン、といった所だろうか。 服装と体のラインで漸く女性とわかる程度なので、胸を潰して男性の服装をしてしまえば全く女性とはわからなくなるだろう。

 

 そして、一番特徴的なのはその瞳。

 様々な色が虹彩に散らばり、角度でキラキラと輝く美しい金色をしている。

 蕩ける様な蜂蜜酒の如き瞳にジッと見つめられるだけで、吸い込まれてしまいそうな感覚に陥った。

 

 

「思わず零れた……か。 なら俺も、まるで蜂蜜酒の様なその美しい瞳に酔わされて、君に溺れてしまいそうだ………とでも、返すべきか?」

 

 

 本音を伝えるのは少々気恥ずかしく。

 軽く握った左手を口元に持っていきながら、笑いかけつつ問い掛けた。

 

 

「ン゛ン゛ッ、……それこそガチのデプス・ボムじゃないですか………ラモスジンフィズしか出せませんよ?」

 

 

 最初に呻いたのがちょっと気になるが、カクテル名……という事は、酒言葉か。

 

 デプス・ボムにラモスジンフィズ………口説き文句に感謝くらいしか出せない、という意味か?

 

 

「では、俺はアラスカを出そうか」

「ククッ……w お上手ですね?」

「それ程でも?」

 

 

 それに対して、『本心だよ』という意味で偽りなき心というカクテル言葉のアラスカを告げると、そんな風に返された。

 

 完全に冗談だと思われている。

 

 だが、これ以上押してもしつこいだけだろうし別の話題に変えた方が良いだろう。

 

 

「……そうだ。 成人してる様だったし、呑めるんだろう? 酒は何が好きだ?」

「そうですねー……ジンやスコッチ辺りでしょうか。 あ、人の名前は関係無いですよ? 後は、日本のブレンデッドウィスキー………トリスシリーズやニッカとか好きですね。 赤井さんは確かスコッチとバーボンだったけど、最近はバーボン一筋なんでしたっけ? 漫画の台詞でそう書いてあった気が。」

 

 

 人の名前は関係無いと言ったのは、同じコードネームの人物が居るからそれと勘違いされない様にだろう。

 

 そして、さり気なく俺の好きな酒をピンポイントで当ててきたのには驚き、そんな事まで書いてあるのかと呟く。

 

 

「ホォー……? そこまで書いてあったのか? その通りだ。 ……ちなみに、好きなカクテルは?」

「カクテルですか? 強いて言うならば……カミカゼ、ですかね。 後は、ドラゴンフライとかエンジェルズ・ティップ……日本で言う所のエンジェル・キッスですね。 他にもスコーピオンとかオールド・パルとかも好きですよ」

 

 

 ……………………流れで聞いた好きなカクテル。

 

 そのどれもが、〈彼女〉の好きな物と被っていて……………。

 

 

「………………カミカゼ?」

「ん? えぇ………それが、何か?」

「…………いや。 何でもない」

「そうです……?」

 

 

 思わず口から〈彼女〉が最初に好きだと言ったカクテルの名前が零れた。

 

 不思議がられてしまったが誤魔化し、カクテルについて考える。

 

 どこか〈彼女〉に似た雰囲気だとは思っていたが……この女性は〈彼女〉に関連があるのだろうか?

 今思えば。 俺が〈彼女〉に聞いた時も、この女性とほぼ同じ台詞だった様な……。

 

 

 

 ……………………………………本当に、何者だ?

 

 トリップしたというのは納得したが………。

 

 

 ふと気がつくと、彼女はボウヤに先程の会話で使ったカクテル言葉の説明をして、ボウヤを揶揄(からか)っていた。

 

 そういえば、〈彼女〉と柚樹君が好きだと言ったカクテルの酒言葉。

 

 

「………貴方を救う、貴方に見惚れて、瞳で酔わせて、想いを叶えて…………随分ロマンチックなカクテル言葉ばかりだな。」

「あ、気付いちゃいました? 最初にカクテル言葉を調べてて、惹かれた言葉の奴ばかり飲んでたんです。 リュヌ・ブルーも結構好きですよー」

 

 

 はにかみながらそう返してくる彼女。

 

 それにしても、カクテルのリュヌ・ブルーは……。

 

 

「リュヌ・ブルー………あぁ、ブルームーンの事だったか?」

「えぇ。 アレ、両極端なカクテル言葉だけどかなりロマンチックな奴がつけられてるんですよね」

 

 

 やはりブルームーンだったか。

 あえてリュヌ・ブルーと言うとは……何か思い入れがあるのだろうか?

 

 〈彼女〉もブルームーンをリュヌ・ブルーと言っていた様な気がする。

 

 

「へぇー、両極端ってどんなのがあるんだ?」

「例えば。 よく使われるのは、断りの文言である[出来ない相談]。 ナンパとかされた時にコレを頼んで断りの姿勢を見せるとかだな」

 

 

 ボウヤが興味深そうに質問すると、『よくぞ聞いてくれた!』とでも言いそうな顔で、ブルームーンのカクテル言葉の説明をし始める。

 

 割と長い説明を一度も噛まずに言いきり、ドヤ顔をしている彼女。

 

 

「ホォー、よく知っているな?」

「いっぱい調べましたから!」(ドヤァ

「クックッ……w そうなのか」(クツクツ笑い

 

 

 ドヤ顔のまま可愛らしく胸を張る彼女を見て、思わず笑ってしまう。

 

 そんな俺を見て少し複雑そうな顔をしていた彼女だったが、フッと表情を切り替えてこんな事を呟いてきた。

 

 

「……スコーピオン、ピンク・スクァーレル。」(ポツリ

 

 

 〈彼女〉も好きだと言っていたスコーピオン。

 こちらはさっき説明したのと同じ意味で言ったんだろう。

 

 そして、ピンク・スクァーレル。

 これは確か、[見つめていたい]というカクテル言葉だった筈だから………………。

 

 『貴方の瞳は美しいのでずっと見つめていたい』、といったところだろうか?

 

 膝に両肘をついて顎を両手の甲に乗せながらジッと、先程よりは落ち着いているものの熱い視線でこちらを見つめてくる彼女。

 

 これで口説いたつもりは無いと言うのだから、罪なモノだ。

 

 

「……ビジュー。 フランボワーズソーダ………それと、カシスソーダ。」

 

 

 腕と脚を組んで微苦笑を漏らしながら、意趣返しの為にカクテル言葉を返す。

 

 強いて説明するならば、『魅力的な貴女に見つめられると、まるで誘惑されている様だ』といった感じか。

 

 それを聞いてピシリ、と一瞬固まる彼女。

 

 

「…………口説いては、いないんですよね?」

「………フッ。 どうだと思う?」(ニヤリ

「ん゛ッ」

 

 

 またちょっと呻いたな。

 

 だがそれに気を取られていると、彼女はデカい爆弾を落としてきた。

 

 

「口説かれているとしたら……ちょっと困るな」

「おや、何故?」

「だって…………………………」

 

 

 そこで一旦躊躇い、脚を組みながら右手を軽く握って口元に持って行きながら。

 

 

「……………貴方の様な良い男に口説かれたら、胸がときめき過ぎて心臓が持たないだろう?」

 

 

 頰を染め、照れて恥ずかしそうに笑みつつ。

 キュッと胸を強調する様に腕を組んで。

 

 

 ………………………正直、破壊力が凄かった。

 

 敬語ではなく、少し気取った口調なのも割とポイントが高い。

 

 あまりにも破壊力があったので、思わず口を覆って彼女から顔を逸らす。

 

 

「あの……赤井さん? どうしたんです?」

 

 

 彼女はそんな俺の様子を見て、若干キョトンとした表情で聞いてきた。

 

 

「………………成程、無自覚か」

「え? 何が?」

「気にしなくていい」

 

 

 尚更キョトンとなった彼女。

 わからないなら気にしなくてもいいと返すが、なにやら『やってしまった……』とでもいうかの様な顔で言い募ってきた。

 

 

「え、いやでも…………」

 

 

 彼女は首を軽く傾げながら、心配そうな悲しそうな表情をしている。

 

 おそらくこちらが気を悪くしたとでも思っているのだろう。

 

 

「……………………そんな顔をするな。 君は何も悪くない。」

 

 

 そう言って手を伸ばし、彼女の頭を撫でてやる。

 

 

「そ、そう、ですか?」

 

 

 優しく撫でていると、彼女は少しどもりながら頰を赤らめて俯いた。

 

 嫌ではない様なので、そのまま撫で続けてみる。

 

 

「んん…………ぇへー。」(ふにゃりと笑み

 

 

 …………………………………………………可愛い。

 

 頰を緩めて、ふにゃあーっとした笑みで機嫌良さそうに撫でられている。

 パタパタと振られる尻尾が幻視出来る程だ。

 

 

「……………………………」

「ん、ぅ? あ、赤井さ……ぁうんっ」

 

 

 試しに頭を撫でながら、動物を構うかの様に顎の下をさすってみる。

 

 

「あの、俺、動物じゃなっ……ぁんッ」

 

 

 …………………………………。

 

 

「ふ、んんッ………あ、あかい、さッ………! ちょ、ま、まってぇ………んぁっ」

 

 

 …………これは…………………なんだろう。

 

 なんとも言えない感情が湧いてくる。

 

 喉元から顎先まで指の背で撫ぜると、甘い声を上げて、ピクピクと痙攣しつつ海老反りになりながら俺の手に縋り付いてきた。

 

 

「……………赤井さん、そろそろやめたげて。 あとオレの事忘れないでほしいな」

 

 

 そうボウヤに言われ、我に帰る。

 慌てて解放すると、彼女は荒く息を吐いて蹲った。

 

 

「ん……ふ、ぅ………はぁっ…………」(ひくひく

「柚樹さん大丈夫…………?」

 

 

 息を整える彼女を、ボウヤは心配そうに見ながら背中をさすっている。

 

 ボウヤの質問に彼女は…………。

 

 

「せなか、ぞくぞくしてたのがなかなか治らなくて……むずむずするぅ…………」

「「ん゛ッ」」

 

 

 熱で潤んだ眼、赤く染まった頰、上目遣い。

 そして舌ったらずに、甘い声で言ってきた。

 

 思わず口を押さえながら、バッと勢いよく顔を背ける。

 

 

「…………ん? ふたりとも……………………?」

 

 

 キョトン、としながら首を傾げている彼女。

 

 そんな姿も、男である身としては辛いものがある。

 

 静かに悶えていると、ボウヤがこちらに駆け寄り小声で囁いてきた。

 

 

「ねぇ。 柚樹さんのアレ、無意識かな?」

「あぁ…………おそらくな。」

「だよね……………ヤバくない?」

「そうだな。 色々とまずい」

「勘弁してほしいよね………あーいうのは」

「確かにな……………」

 

 

 コソコソとそんな会話をしながら、柚樹君をチラリと見る。

 

 どうやら、首を擦りながら深呼吸をしている様だ。

 

 それを横目で見ながらボウヤと話し、暫くして話がひと段落すると彼女は話しかけてきた。

 

 

「内緒話は終わったか?」

「う、うん……なんかごめん」

「いや。 俺の所為であーなったんだろ?」

「ゆ、柚樹さんは悪くないよ?」

「…………色々聞きたい事はあるが、聞かないでおいてやる。 顔の赤みもな」

「それ言外に聞きたいって言ってるじゃねーかよ………………」(乾いた笑い

 

 

 ボウヤは乾いた笑い声を上げ、俺はスッと眼を逸らす。

 

 先程の反応から朴念仁かと思っていたのだが、どうやらそこまで鈍感では無いらしい。

 

 

「………そうだ。 俺はホームズを読んだり借りたりする為に此処に来たんだった」

「……あ。 説明ですっかり忘れてたね。 書斎行く?」

「行く行くー」

 

 

 話題を変える為に視線を泳がせていた彼女は、ここに来た理由を思い出したみたいだ。

 

 すっかり冷めているだろう紅茶を飲み干し、ソファから立ち上がる彼女。

 

 

「書斎はこっちだよ」

「おー。 ………ワクワクするな」(wktk

「色んな本があるから読んでくといいよ」

「おぅ! あ、六時くらいまで居座っても良いですか?」

「あぁ、ゆっくりしていくといい。」

 

 

 二人は書斎に籠る様だが、俺は遠慮しておく事にする。

 

 カップ等の片付けや、夕飯の仕込みもしなければだからな……………。

 

 書斎に向かうボウヤ達を見送り、俺は使ったカップ等を流しに運ぶ為に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………む。 六時か」

 

 

 午後六時の時報が流れるのが外から聞こえ、思わず料理の手を止めた。

 

 ちなみに、来客が来ても大丈夫な様に、既に沖矢昴の変装をしてある。

 

 ………いつも通り作り過ぎてしまっているし、二人を食事に誘ってみようか。

 

 

 一旦鍋の火を止め、書斎に呼びに向かう。

 

 

「お二人さん。 こんな時間ですし一緒に食事でも………おや、電話ですか?」

 

 

 扉を開けて覗き込むと、ボウヤはスマホを耳に当てていた。

 

 

「えぇ。 どうやら連絡を忘れていたらしくてですね……さっきまで怒られてたんですよ」

「ホォー。 それはそれは……」

「で、少年。 こちらの会話は聞こえたかー? 沖矢さんは一緒に夕食を食べたいそうだが。」

「うん、聞こえたよ。 どうしよう……え、もう用意してある? わかった、じゃあすぐ帰るね。 ………という訳でボクは帰るよ」

 

 

 誘ってみたが、ボウヤは無理らしい。

 今度は柚樹君の方を向いて聞いてみる。

 

 

「わかりました。 柚樹さんはどうです?」

「そうですねー……………少年を送ってからまたこっちに戻って来て食事となると、帰る時間が遅くなるし……………」

 

 

 うーん……とでも言いそうな感じで頭を悩ませている彼女。

 

 

「駄目、ですか……?」

 

 

 やはり駄目なのだろうか…………………。

 

 何故かはわからないが〈彼女〉とどこか似ているこの女性と、もう少し長く一緒に居たいと感じていた為に残念に思ってしまう。

 

 

「ヴッ……………も、戻って来ますね」

「! そうですか………! では準備して待っています」

「ん゛ん゛ん゛」

 

 

 だが、彼女は戻って来てくれるみたいだ。

 思わず嬉しくなり笑みを溢すと、また彼女は呻いて口元を覆いながら顔を逸らした。

 

 そして一つ深呼吸をして自身を落ち着かせ、何かを誤魔化す様にボウヤと会話をしながら玄関に向かって歩き出す。

 

 後ろでそれを眺めながら見送る為についていくと、玄関を開けた彼女が振り向き。

 

 

「じゃぁ、ちょっと送って来ますね」

 

 

 と、言ってきた。

 

 

「はい、行ってらっしゃい」

「……食事、楽しみにしてます」(微笑

 

 

 そう返すと、彼女は期待の眼差しをしながら、ふっ……と微笑む。

 

 夕陽に照らされたその笑みに見惚れていると、いつの間にか二人は居なくなっていた。

 

 

「……………これは、尚更手が抜けないな」

 

 

 彼女の期待に応えるべく、気をとりなおして煮込み途中のビーフシチューの前に立ち、アクを取る作業に戻り。

 

 彼女は喜んでくれるだろうか、と。

 そんな事を考えながら、俺はクルクルと鍋をかき混ぜ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

 

 

 

 出来上がったサラダとビーフシチューを器に盛ってテーブルに並べていると、インターホンのチャイムの音が聞こえた。

 

 

『《……あ、沖矢さん、柚樹です。 戻りました》』

「鍵は開いてるので、そのまま入って大丈夫ですよ」

『《些か不用心過ぎません?》』

 

 

 インターホンの親機で鍵が開いている事を伝えると、彼女は苦笑している様な声色で不用心じゃないかと言いながら入ってきた。

 

 

「お帰りなさい、柚樹さん」

「はい、ただいまです。」

「食事の用意は出来てますよ」

「あ、本当ですか? 楽しみです!」

 

 

 互いに微笑みながら会話をしていると、ふと思った事が口に出てしまう。

 

 

「………こんな会話をしていると、なんだか夫婦の様ですね?」

「カフッ……ゲホッゲホッ」(噎せる

「おや、大丈夫ですか?」

「え、えぇ………ゲホッ、ゴホッ…………」

 

 

 いきなり噎せた彼女。

 大丈夫だとは言っているが……頻りに咳き込んでいて少し心配だ。

 

 

「ゲホッ……フゥ。 いきなり何です? そんな事を言い出して…………」

 

 

 漸く咳が(おさま)った彼女は若干胡乱(うろん)な視線で問い掛けて来たので、変声機をOffにしながら本心を告げてみた。

 

 

「あぁ。 立ち位置は逆だが君が夫なら楽しい事になりそうだと思ってな」(開眼

「ゴフッ((」

 

 

 柚樹君が再び咳き込む。

 

 

「ゲフッ……あ、あの。 俺が夫だと貴方が妻という事になってしまうんですがそれは?」

「別に吝かでは無いが?」

「オイ、アンタそれで良いのか((」

 

 

 おや、ツッコミを入れられてしまったな。

 ふむ……問題点、か……………。

 

 

「あぁ、妻だと君に抱かれる事になってしまうな。 それでは少し困る、俺も男だからな」

「いや、抱く抱かれるより以前に妻という立ち位置に男として躊躇いを持て」

「そうか?」

「そうに決まってんだろ((」

 

 

 漫才の様なやり取りをしていると、彼女は溜息を吐いて額を押さえた。

 

 

「フー……………とにかく。 料理が冷めちゃいますし、早く行きましょう?」

「あぁ。 そうだな」(赤井ボイスのまま

「…………あの。 違和感しかないのでその顔でその声はやめてください。 沖矢さんなら沖矢さんの声に戻してください」

 

 

 なんとも言えない表情でそう言われる。

 

 

「そうか? (操作して)……これで良いですか?」

「はい。 ……というか沖矢さん、変装して隠れてる自覚あります? 一応組織から隠れてるんですから…………」

「生存している事はバレていますが?」

「だからこそ、沖矢昴が赤井さんだとバレたら不味いんだろうが(( 次は確実に殺られるぞ? 実際ベイビィフェイスの公安にバレかけたでしょうが((」

 

 

 耳の痛い事を言われ、思わず眼を逸らしてしまう。

 あぁ、確かに君の言う通りだな。 うん……。

 ……………………口癖? そんなにバレバレだろうか……………?

 

 

「……………食事、しましょうか」

「そうですね。 これ以上は不毛ですから。」

 

 

 耐えきれずにそう促すと、彼女は仕方が無さそうに頷きながら、冷めかけた食事の前に座った。 それを見て自身も席につく。

 

 

「じゃあ、頂きます。」

「どうぞ、召し上がれ?」

 

 

 まずビーフシチューを食べ始めた彼女。

 一口食べてむぐむぐと口を動かし、とても幸せそうな顔になる。

 

 もう一度口に運び、周りに花が咲いている様なオーラになって感想を述べてきた。

 

 

「……………うん、美味しいです」(微笑

「それは良かった。」

 

 それを聞いて安心し、自分も食事に手をつける。

 

 食べながらチラリと柚樹君を見てみれば、彼女は口一杯に頬張りながら幸せそうなオーラを出しつつ、もきゅもきゅと食べていた。

 

 

「……………ふふっ、本当に美味しそうに食べてくれますね?」

「だって美味しいですもん。」(もっきゅもっきゅ

「クククッ………w」

 

 

 パタパタ動く耳と尻尾が幻視出来る程だ。

 とても可愛らしい。

 

 

「(もっきゅもっきゅ……)………あ、もう無くなっちゃった」(しゅん…

 

 

 ビーフシチューの皿が空になってしまって、しょんぼりする彼女。

 

 

「ビーフシチューはまだありますし、お代わりしますか?」

「いります!」(パアァ

 

 

 沢山あるし、お代わりはいるかと問えば、とても嬉しそうに即答してきた。

 

 本当に可愛らしいと思いつつ、口元が緩んでしまいながらビーフシチューをよそい彼女に器を渡せば、嬉々としてまた食べ始めた。

 

 

「(もきゅもきゅ……)」(パアァー!

「ック…………w」

 

 

 さっきはパタパタ程度だったが、今のはブンブン振っていそうな雰囲気だ。

 

 あまりにも可愛らしいので思わず笑みが溢れた。

 

 

 その後は特に会話も無く、暫く食器の音だけが響き。

 

 

「………んむ♪ ご馳走様でした、美味しかったです」

「はい、お粗末様です」(ニコリ

 

 

 共に食べ終わったので、ご馳走様をした彼女に返事を返す。

 

 満足げに口元をティッシュで拭った彼女が外を見て眼を細めたので、窓に視線を向ける。

 

 

「あぁ、割と早く日が落ちましたね。 泊まる所とか大丈夫ですか?」

「あ、問題無いです。 見たところ此処の付近みたいなので」

「?」

「実はですね……」

 

 

 斯々然々、とポアロでの出来事やトリップの原因を、彼女は溜息半分嬉しさ半分といった感じで説明してくれた。

 

 

「___という訳でして」

「ホォー、自称神ですか…………」

 

 

 事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだが。

 本当にこの女性は不思議だ。

 正直、物的証拠が無ければ俺は信じていなかっただろう。

 

 

「成程、わかりました。 この世界にトリップさせた元凶の居るそこに帰るんですね?」

「元凶って……まぁそうですけど。」(苦笑

「ならもう暗いですし、送って行きますよ」

 

 

 暗い窓の外を見ながら提案してみるも、彼女は大丈夫と言って聞かない。

 

 

「いえ。 どうせすぐ近くみたいなんで大丈夫ですよ」

「ですが夜道を女性一人で帰らせるのは……」

「こっちにトリップしてから強くなってたんで雑魚くらいなら別に余裕ですよwww」

「………………そこまで言うなら。 でも本当に大丈夫ですか?」

「勿論です!」

「……そういう事にしておきます。」(溜息

 

 

 これ以上言っても聞かなそうなので、こちらが折れる事にした。

 心配ではあるが…………仕方が無い。

 

 

「じゃあ、本当に夕食ご馳走様でした。 また本返したりする為に来ますね」

「はい。 いつでもお待ちしてますよ」

「では、おやすみなさい沖矢さん。」

「おやすみなさい。 …………あぁ、少し待ってください」

「? なんでs……………」

 

 

 玄関から帰ろうとする彼女を呼んで、一旦引き止める。

 

 

「__I can’t wait to see you tomorrow. Have a good night, I’ll be thinking of you.」

「 」

 

 

 振り返りかけた彼女に、抱き締めて額にキスを落としながら英語でおやすみを言う。

 

 

「お、おおおおやすみなさいッ!!」(ダッ!

 

 

 彼女は思いきりどもりながら、慌てて逃げて帰っていった。

 

 

「クックックックッ…………ww」

 

 

 嗚呼、見た目は男性的ではあるが本当に可愛らしい女性だ。

 明日はどんな顔を見せてくれるだろうか。

 

 

「あぁ……………………本当に楽しみでなりませんね」

 

 

 玄関の鍵を閉め、細めていた眼を開きつつ、そんな事を呟きながら食器の片付けを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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