推しキャラが、可愛いのとスパダリと危険な香りでヤバい。(更新停滞中) 作:カミカゼ。
〔BAR・
直接頭にインプットされた道順の通りに、タクシーを使い到着した店の名前である。
見た目は、こぢんまりとした隠れ家といった感じだな。
最初は読み方をアイリーンと迷ったのだが、力を抑える眼帯を着けているとはいえ半ば暴走している千里眼がイレーヌと読んだので、そちらが正解なんだろう。
…………てかBARなんか入った事無いんだが?
え? 注文とかどうするん?
おずおずと店に入り、店内を見渡してみる。
内装は、シックな感じで如何にも大人の隠れ家的な印象を受けた。
えっと、前にググった時は……取り敢えず入ったら店員に案内されるまで待つのがbetterって書いてあった筈。
……………あ、そういやドレスコードあったら入れないやん。((
今の格好を詳しく説明すると。
黒い膝下まであるロング丈のスーツベストに、切れ込み状のVネックで少し暗い灰色をしたタイトな長袖Tシャツを合わせ、暗い蒼色のピチッとしたタイプのチノパンを履いている。
そして濃い麻色の沢山入るショルダーバッグを右肩に掛けている。 肩紐には取り外し可能な肩当てが付いているタイプ。 肩紐自体も取り外せて、ウエストバックにする事も出来る。
靴は、少し厚い底をした脛の真ん中くらいの長さがあるごっついコンバットブーツで、紐を通す所が燻べ銀で出来た黒革製の物だ。 凄く丈夫なのでこれで蹴るだけでもかなりのダメージになるだろう。
ソワソワしながら店内を見ていると、ちょっとしてから店員が来た。
「いらっしゃいませ。」
「すみません、BARに入るの初めてなんですけど………この店ドレスコードとかってありますか?」
「あぁ、大丈夫ですよ。 ウチは余程おかしい服装でなければそのままで結構です」
「良かった……初めて入るから勝手がわからなくて………………」
「(クスリ) 最初は皆そうですよ? 安心してくださいね。 ………御席は、テーブルとカウンターどちらがよろしいですか?」(微笑
「えっと………………一応カウンターで。 あとなるべく端の方がいいんですけど」
注文する時カウンターの方が気付いてもらいやすいって書いてあったしな。
「かしこまりました。 では、此方へどうぞ」
カウンターは入り口から見て右側にあり、俺は奥の席から三つ目の席に案内された。
バーテンダーの目の前の席から数えて四つ目くらいの席だ。 コミュ障の俺としては、ありがたい距離感である。
「ご注文はお決まりですか?」
「あー……」
バーテンダーさんが、おしぼりを持って来ながら注文を聞いてくる。
「んと…………ハイボールって大丈夫ですかね」
「大丈夫ですよ。 バーボンとスコッチ、どちらになさいますか?」
「スコッチでお願いします」
「かしこまりました。」
グラスに大きめの氷を入れた後、軽くバー・スプーンでクルクル回して馴染ませ、スコッチを適量注いだらまたバー・スプーンでかき混ぜる。 そして静かにソーダ(炭酸水)を注ぎ、バー・スプーンで縦に一回混ぜて、こっちに差し出してきた。
ハイボールは家でも出来る簡単なものだが、やはりプロが作ると違うのだろうか。
礼を言いつつ一口呑んでみる。
「…………ほぅ?」
思わず口の端が釣り上がる。 美味しい。
まず居酒屋や自分で入れた時と香りが違う。 その上ウイスキーの甘みをほのかに感じる事が出来るものだった。
「美味しい。 ……やっぱりプロは違うなー」
「ふふっ……ありがとうございます」
「ほんとにアp…素晴らしいです。」
おっと危ない。 カクテル言葉で言いかけてしまった。
カクテル言葉で言っても、注文と勘違いされかねないからな……………。
そういや、この店は……………あぁ、ショットバーなのか。 こういう時この眼便利だな。
店内にはジャズが流れ、お洒落で落ち着いた居心地の良い雰囲気を醸し出している。
他の客は………テーブルに一人と二人、カウンターには俺と反対の端の席に二人居る。 テーブルの一人は読書をしていて、他の人達は二人で話し合っているのでバーテンダーはそこまで忙しくは無さそうだ。
今の時間は………十九時半過ぎ、か。
まぁ、初めて入るには丁度いい時間か?
ハイボールをチビチビと呑みつつ店内を見回していると、バーテンダーが微笑みながら俺に話しかけてきた。
「ウチの店はわかりづらい所にありますけど、どうやって知りましたか?」
「ん? あぁ、じんさん……知り合いが良いBARが有るから色々飲んで来るといいよ、と言って教えてくれたんです」
「そうでしたか。 そう言ってもらえるのは嬉しいですね」
にこやかにそう語るバーテンダーさん。
例の眼には(『嬉しいな……』)と映っているので、本心なのだろう。
「そうだ。 何か摘みたいんですけど、ドライフルーツってありますか?」
「ございますよ。 此方の中からご注文いただけます」
そう言って差し出されたメニューには、苺やマンゴー、無花果にプルーン等。 様々な種類のドライフルーツが書かれている。
値段もそこまで高くない。 全部を合わせたグラムで幾ら、って感じ。 これは嬉しいな。
「それじゃ……オレンジとアプリコットと林檎とラズベリーを。 あ、桃とパインもある……それもお願いします」
「量はどういたしますか?」
「三番目に少ないので」
「かしこまりました」
バーテンダーは、ドライフルーツを袋から取り出して量り、皿に盛り付けて差し出してきた。
「このドライフルーツは全てオーガニックなんですよ。」
「へぇーそうなんですか? ……あ、美味しい」
試しに一つ摘めば、口に広がる果物感。
ハイボールを呑みながら食べると、少しトロッとして美味しい。 これはハイボールが進むな。
そういえば、BARで一杯飲むのに二十分前後が好ましいって書いてあったな。
呑み過ぎるのを防ぐ為なのかね。
チビチビ呑みながらメニューを見て、次のを選ぶ事にする。
…………この店、別にメニューに無いカクテルでも良いのか。 あくまで主なメニューって事ね。
うーん、まだ二杯目だしロングドリンクの方がいいよな……………………。
…………………………………………これでいいか。
次に飲むのを決めた所で、丁度ハイボールを呑み終える。
「すみません。 ワインクーラーください」
「はい、かしこまりました。」
これならロングだし、そこまではアルコール度数が高くないし。
ちなみにワインクーラーとは。
クラッシュ・ド・アイスを詰めたグラスに、ロゼワインとオレンジジュースとグレナディンシロップとホワイトキュラソーをシェイクして注いだカクテルだ。 スライスしたオレンジを飾る事もある。
シェイクではなく、そのままビルドでするレシピもあったりする。
この店はシェイクの方らしい。
シェイカーに測って入れているからな。
蓋を閉め、シェイクし始めるバーテンダー。
やっぱバーテンダーはシェイクしているのを見るのが一番いいよなー。 かっこいい。
ハイボールを呑み終わった時に、さり気なく差し出された水を飲みながら、バーテンダーを見る。
シェイクし終えたのか、蓋を開けてクラッシュ・ド・アイスを詰めたグラスに注いで、オレンジを縁に飾りストローを刺した。
それを見ていると、誰かが入店した様だ。 ドアベルと革靴の音がする。
「ワインクーラーでございます」
「どうも。」
差し出されたそれを受け取り、一口呑んだ。
うん、これも美味しい。
そーいやー、ワインクーラーのカクテル言葉は……………………。
「[私を射止めて]……だったか。」
これも割とロマンチックなカクテル言葉だ。
じんさんにも頑張って恋愛をしろと言われている身もあって、色々と考えてしまう。
「隣、良いか」
カッ、コッ………と鳴っていた革靴の音がすぐ近くで止まり、低い男の声でそう問われた。
他にも席はあるのになんで俺の隣?と思わずにはいられないが、特には問題無いので返事をしながら来た男に顔を向ける。
「あぁ、別に構わな…い……………………」
…………………………………………………………。
「そうか」
そう言って俺の右隣に座った男は。
「…………………………………
腰まである長いシルバーブロンド。
黒いハットに黒のロングトレンチコート、無地のハイネック。
そして、
……………………明らかに。 黒の組織の幹部、ジンだった。
今度はアンタ、か……うん。
スティンガー(危険な香り)、だな。 そうとしか言いようが無い。
茫然としていると、ジンがこちらを向き問い掛けてきた。
「あ゛? 銀がなんだと?」
どうやら呟いたのが聞こえたらしい。
Silberはドイツ語で銀という意味なのだが、彼はそれを知っていた様だ。
確か、純黒の悪夢のノベライズ版ではリースリングとドイツ語で喋ってて、ドイツ語に堪能なのではってWikiに書いてあったっけか。
「あぁ、いや。 随分と美しい
動揺を押し隠して返答するが、若干慌てたのが発音に出てしまう。 無意識だと完全に発音がネイティブになってしまうみたいだ。
だがジンは発音には特に反応せず、キョトンとした後に鼻で笑ってきた。
「ハッ、なんだ? 口説いてんのか?」
「え? そんなつもりは無かったんだが………?」
うん? 口説いてる様に聞こえたのか?
「口説くつもりなら、もっとこう…………かっこつけてグイグイ行きますよ?」
「フン…………」
ジンはそれを聞いて少し眼を細め、視線を逸らしてバーテンに注文をする。
ダルモアのシガーモルト、と言っていたが……えっと、スコッチウイスキーだっけか。
葉巻(シガー)と相性が良いって口コミだった筈。
ドライフルーツを摘みながらカクテルを呑みつつ思考する。
………あ。 今気付いたが、視界に入っていなくても【見る】事は出来るんだな、この眼。
これはかなりのアドバンテージになる。
何故かって? 視線を向けなくても【見る】事が出来るから、自身が見ている事に気付かれないということだ。
視線に敏感で誰かに見られているというのに気付いたとしても、目を向けていないので俺が見ているという風には考えないって訳だ。
スゲェな千里眼。 ほんと何でもアリだわ。
いやー、それにしてもジンの奴ちょー美人だわー。 イケメンじゃなくて美人。
横から見るとよくわかるんだけどな。 睫毛なっがいのよ。 でも女顔って訳じゃないの。
超美人。
子供の頃や若い頃、襲われたりしなかったのかな。 心配になるくらい美人だわ。
そんな事をつらつらと考えていると、唐突にジンから話しかけられた。
「おい、そういや見ねぇ顔だが」
「ん? あぁ……ちょっと(※数日ではなく数時間だが)前にこっちに来まして。 先に住んでいた知り合い……はとこが、ここのBARはいい店だから行ってくると良いと言って教えてくれたんです」
「フッ……ソイツは良い趣味してやがるな」
「えぇ。 この店は雰囲気が良い上に腕も良いみたいですし。 次からも通うつもりです」(微笑
眼帯をしてるので怪しまれない様、左眼の視界に入るように顔ごと彼に向けて話す。
しかし、やっぱジンに敬語を使うのは違和感があるな……まぁ初対面だし俺はいっぱんじん()だから敬語を使わざるを得ないけども。
「…………その眼帯はどうしたんだ?」
「これですか? ちょっとおかしくなっちゃいまして。 短ければ1日、長くても二週間で治るとは言われましたが」
苦笑しつつ眼帯を右手で撫でながら、詳しい事は暈して伝える。
「そうなのか。 ………勿体ねぇな」
「え?」
「……その、金の眼が隠れるのが勿体ねぇっつったんだ」
…………???
コイツほんとにジンか?
「え、と……………あぁー……………………?」
「チッ……その眼が綺麗だから勿体ねぇってんだよ」
「んと………あ、ありがと、う……………?」
まさかのジンが褒めたという戸惑いと、綺麗と言われた事による照れで思わず眼を逸らす。
若干気まずくて、右手の人差し指で頰を軽く掻いていると、何故かガン見をされているように感じたので彼の方を向いてみる。
「……………………? えっと、何か?」
「ッ…………何でもねぇ」(フイッ
そう戸惑いつつ聞いてみるも、顔を逸らされてしまった。
……………っと、色々考えてたら呑み終わっちまった。
次は何呑むかね……………………。
そういや、カクテル言葉の他にも酒言葉なる物があったな。
それに絡めて注文するか。
「そうだ、
唐突ではあったが、注文の前に雑学を語りたかったのでジンに話しかけてみた。
「………酒言葉? カクテル言葉と違ぇのか?」
「えぇ。 例えば、マルガリータ。 これには[無言の愛]というカクテル言葉がつけられているのだけれど………酒言葉では、[ロマンティックな夜を]といって、カクテル言葉とは少々違った感じの物がつけられているんです。」
今夜の出逢いに結構合ってると思いません?
そんな事を言いながらクスッと笑いかけつつマルガリータを注文する。
あ、でも普通にオーロラの[偶然の出会い]でもよかったかも?
そんな風な事を呟きながら、バーテンダーがシェイカーを振るのを見ていると、ふと隣から何やら呟きが聞こえた。
「口説いてねぇとか言っておきながら、その物言いとは…………」(ボソッ
「ん? なんです?」
「………おいバーテンダー。 コイツにフロストバイトを」
「へ?」
フロストバイト?
確か、甘めのショートカクテルで、カクテル言葉は[甘い誘惑]だった筈。
なんでさ? 誘惑なんてしてないんだが?
「スタンレー……じゃなかった、なんか意外ですね? 貴方みたいな雰囲気の人が自分みたいなのにそんなカクテルを贈ってくるなんて」
「どういう意味だ、それは?」
「そうですねぇ……………」
先に注文したマルガリータを、バーテンダーから受け取って呑みながら、なんて返すか思案する。
「最初に貴方を見て、美しい銀と微かに煌めく深緑を持つ、スティンガーの似合いそうな男性だと思いました。 少し話した今もあまり変わりません」
チビチビと舐める様に呑みながら話し、ジンの方を見た。
「そんな危険な香りのする美しい人が、自分の様なよくわからない奴なんかに、口説き文句に近いカクテル言葉がつけられた物を贈るなんて意外だなー……と。 そう思いまして。」
言い終えると同時にグイッと呑み干し、新たに差し出されたフロストバイトを呑み始める。
「………あー、そうだな。 彼にプレリュード・フィズを」
プレリュード・フィズのカクテル言葉は[真意を知りたい]。 まんま今の心境である。
シェイカーからグラスに注がれたそれを受け取るや一気に呑み干して、此方を向いてニヤリと笑いつつ別のカクテル名を告げるジン。
「アンジェロ、だ。」
「へぇ? 好奇心ねぇ……面白そうだ。 コロネーション。」
「ウィドウズ・キスだな」
「最初にカクテル贈ってきた貴方程じゃ無いさ。 ま、ハーバード・クーラーだよ」
「ピン・ポン。」
「そう言う貴方はブラック・ルシアンだね。」
「ハン……テメェにはフラミンゴ・レディが似合いそうだな」
「そうか? ありがと。 貴方はドライじゃない方のマティーニの様だな」
「フン…………ルシアンか?」
「そんなつもりは無いんだがね…………逆に気を抜けばノックアウトされそうだ。」
「ハッ! 随分上手いデプス・ボムじゃねぇか!」(鼻で笑い
「それ程でも? まぁ貴方がサクラだから仕方無い。」
カクテル名を聞いて作ろうとし始めたバーテンダーに、手を振って作らないで良いとジェスチャーしつつカクテル言葉で会話を続ける。
アンジェロは俺が言った通り[好奇心]。
コロネーションは[あなたを知りたい]。
ウィドウズ・キスは[大胆]。
ハーバード・クーラーは[本心]。
ピン・ポンは[熱烈]。
ブラック・ルシアンは[強敵]。
フラミンゴ・レディは[魅惑]。
普通のマティーニにはいくつかついているが、その中でも[棘のある美しさ]を。
ルシアンは[誘惑]。
ノックアウトは[悩殺]。
サクラは[美形]……とまぁ、そんな感じだ。
「面白ぇ……………ビトウィーン・ザ・シーツ」
「ふぇっ?!」
ま、マジかよ!?
「ず、随分と直接的だな……ト、トワイライト・ゾーンで」
「チッ……………」
ちなみに、ビトウィーン・ザ・シーツには[あなたと夜を過ごしたい]といったカクテル言葉がついており、トワイライト・ゾーンには[遠慮]というカクテル言葉がついている。
よーするに、夜のお誘いをかけてきたけど俺はそれを断ったって形だ。
「……そういや、テメェの名前はなんだ」
突然だったが、ジンが名前を聞いてくる。
でも戸籍登録名名乗ったら色々とマズそうだし……………。
「あー……大丈夫だと判断出来ない相手には本名名乗らない主義でな。 だが此処に通う限り、会うのは必然だろうから……何かハンドルネーム的なものでもつけあうかね?」
「……………チッ。 仕方無ぇからそれでいい」
舌打ちされたけど何とかなってよかった……。
えっと、ジンの綴りはGinで銀とも読めるし、銀髪ロングがトレードマークだから……さっきのドイツ語でいいか。
「んじゃ………ズィルバー。 或いはズィルバとでも呼ばせてもらおうか。 綺麗な銀髪だし」
「じゃあ……………………テメェはミードだ。」
「ミード? 何故?」
赤井さんもその眼は蜂蜜酒云々って言ってたし、やっぱ眼に関する事を言ってくるのかな。
赤井さんには口説かれた感じの台詞だったけど、ジンはなんて言ってくるのかな?
wktkしながら見つめていると、こっちを向いてジンはこう言ってくる。
「……テメェのその眼が、グラスに注がれて金色に輝くミードに似てるからだ。 まるで、甘く酔わせて蕩かして、深く人を溺れさせちまう様な………そんな蜂蜜酒に、な。」
そう言いながらニヤッと笑ったジンは、何処か色っぽく見えた。
…………正直イケメン過ぎて心臓が持たない。((
ほんっと何なのさこの危険な香りのするアウトローなイケメンは。 好き。((
恋愛感情かは知らんがな!((
「あ゛ぁー……もういいや、普通に呑も。 バーテンダーさん、パパ・ドブレ一つください。 あと彼にコザックを」
「かしこまりました。」
「なんだ? やめんのか?」
「いや、だって………………」
カウンターに顎を乗せて、たれぱんだの様になりながらもにょる。
「アンタがカッコよ過ぎて心臓持たないんですもん…………………………」(もにょもにょ
「 」
もにょもにょしていると、何やら隣で震えている気配を感じたので見てみた所。
ジンが、口元押さえて俺と反対の方向を向いて悶えてました。((
え、ジンでも悶える事あるんだ(違う問題はそこじゃない←)。
そんな事を考えていると注文したカクテルが出来て差し出されたので、刺さったストローを抜いて呑み始める。
そうそう、パパ・ドブレとはヘミングウェイが愛飲したフローズン・ダイキリのアレンジの一つで、フローズン・ダイキリには[美に酔いしれる]っていうカクテル言葉がついている。 ジンが美人さんだから、これ呑みたくなったんだわ。
んでもってジンに贈ったコザックは[強敵]ってカクテル言葉だ。 コザック自体は14世紀以降にロシア中央部から南東部へ流亡し、定住した農民集団で、16世紀に入ると自治的な性格をもつ騎馬戦士集団を作り、騎兵としてロシア政府に仕えたとかってどっかのサイトに書いてあった。 このコザックという言葉は[豪胆な者、自由な人]というトルコ語に由来しているらしいから、結構ジンに合ってると思うんだ。
「くっ……………おい、ミード」
「んむ? なんです?」
「テメェ俺ん所来やがれ」
「ふぁっ?」
What's? なんでさ?
いきなりどーいう事なん?
いや、多分組織に入れって事だろうけども俺は初対面で尚且ついっぱんじん()という設定だから知らないふりしないと。
「ズィルバのとこって?」
「いいから終わったらついて来い」
「んんー……………急にそんな事言われても。 無理ですよ」
「テメェに拒否権は無ぇ」
「もぅ……」
随分しつこく来るねェ……ま、チャカ出さないだけマシかね?
でもこんなグイグイ来られても……しゃーねェな。 それっぽく誤魔化すか。
俺の座ってる椅子の背もたれに手を掛けつつ結構顔を近づけていたジンの唇に人差し指を立てて押さえ、その指で少し押しのけながら笑いかけた。
「
「ッ………………!」(ビシリッ
軽く目を見開いて固まるジン。
硬直したジンから離れ、ちまちま食べていたドライフルーツも無くなった為カクテルをそのままで呑みながら明日からどうするか悩む。
あ、そだ。 さっきの台詞だが、No one will go for a pushy guy.でもよかったかな?
でも茶化す感じの台詞の方がよかったから、あれでもいいかね。
どっちも直訳だと意味が違ってくるけど。
………あ、パパ・ドブレも呑み終えちゃった。
「ふむ…………次はキングス・バレイでいいか。 お願いします」
「かしこまりました」
キングス・バレイとは、スコッチとコアントローとライムジュースとブルーキュラソーを、シェイクしてカクテルグラスに注いだもので、アルコール度数は27%と高めだが、呑みやすいショートカクテルだ。
ライムの爽やかさで呑みやすく、後味にスコッチの風味がほのかに残る。
「…………さっきから度数が高いのばかりだが、酒強いのか?」
「ん? えぇ、強い方だと自負してますが。」
「…………………そうか。」
俺が注文した事でハッと気を取り戻して硬直が解けたジンは、コザックを手に取り呑みつつ問いを投げかけてきた。
元々下手な飲み方をしなければ泥酔はしないたちで、この身体になってから更に強くなった気がする。
まぁ、アルコールはある意味毒みたいなモンだし、仕方無いのかも。
それを最後に会話が途切れ、店内に流れる曲やバーテンダーのグラスを磨く音、他の客達の細々とした音に小さな会話の声等が微かに響く中、互いに無言でカクテルを呑み続ける。
それで、どこまで考えていたっけか……………あぁ、明日から何しようだったか。
生活面に関しては問題無さそうだし…………あ、そうだ。 朝昼晩全部ポアロで食事を済ませる訳にはいかないし、自分で飯作らんと。
じゃ、家に食材はどんなのがあるかとかLINEでじんさんに聞かないと。
えっと、『冷蔵庫の中身詳細キボンヌ』……と。
………一分も経たない内に返信来たか。
何々? 『カレーとサラダが作れるよ!』、だと?
……『朝っぱらからカレーなんか作ってられるか。却下。
野菜と肉は何がある?乾麺系は?』。
『ごめんね((
肉類は牛もものブロックと鶏胸肉のブロックと豚バラのスライスとベーコンとスライスハムで、野菜は人参じゃが芋玉葱は勿論、茄子とか白菜、レタスにキャベツにトマトに胡瓜やブロッコリーなんかもあるよ!
乾麺系はインスタント以外なら!』………か。
ふむ……『調味料やクルトンとかは?あと業務用バター』。
『余程珍しい調味料じゃない限りあるよ!
クルトン以外にも、炒り胡麻とか、乾燥ワカメとか、昆布とか、鰹節の削る前のとか、色々ね!バターも大丈夫!』、か。
成程。 それなら殆ど買わなくていいか。
……っと、そうだ。 『ホームベーカリーとかある?』
『Of course!
他にも、たこ焼き機とかワッフル焼くアレとか普通のホットプレートとかもあるよ!』……ならパンは家で焼くか。
……『ちなみに果物系は?』。
『缶詰め系しか無いよ。
有るのは、スライスのパイン、白桃のライトシロップとヘビーシロップ、黄桃も二種類で、赤のチェリー、普通の蜜柑、甘夏……珍しいのだとマスカットとか、巨峰とか、マンゴーとか、ラ・フランスとかだね。こんな所かな。』
「んじゃ、『生のフルーツと、チョコとアイス買って帰る』、と。」(ボソリ
『チョコとアイスなんて何するの?』、だって?
勿論、『アイスは食いたいだけ。((
チョコはお菓子作る為だけど』。
『wwwwwwwwww』
「芝生やしたか。 …………ん、呑み終わっちゃったな。 次はー………ウイスキー・マックください」
ウイスキー・マックは、スコッチとジンジャーワインを、氷を入れたオールド・ファッションド・グラスに注いて軽くステアしたカクテルだ。
ちなみにこのレシピで、ジンジャーワインをドランブイに変えるとラスティ・ネイルになるし、ドランブイじゃなくてアマレットにするとゴッドファーザーになる。
このカクテル呑み終わったらスーパー寄って帰るかね。
結構ハイペースで呑んでたし、これくらいでやめとかないとだよな。
帰れなくなったら困るし。
一気に呑んで倒れたりしない様、チビチビと口に含んで呑みながら思案する。
………………そういえば、根回しとか救済とかするのに素顔じゃマズいよな。
設定考えて変装しないと………魔術さえ使えれば変装マスクとかウィッグとか要らないだろ。 多分。
セーフハウスもいくつか作らないとな……。
名義は架空の人物の戸籍を作ってもらって、そいつの名前で契約すればいい筈だし。
見た目はどうしようかな?
やっぱ髪長いキャラもいいよな。 容姿は、中性的にしたりして……………。
「…………っと、無くなったか。 お会計お願いしまーす」
「かしこまりました…………全部で-----円になります。 領収書の宛名はどうなさいますか?」
「んー………ミードでいいです。 んで……これでピッタリな筈」
「丁度頂きます。 ……此方領収書になります、明細書はご必要でしょうか?」
「あ、一応ください」
「かしこまりました」
領収書を受け取り、その後に渡された明細を見て細かい金額を確認する。
うん。 彼に贈った分は表記されてるし、贈られた方は入っていない。
お、この店チャージもサービス料も無いのか。 それでこれならかなりいい。
…………あー、やっぱりこのカクテルめんどいから高いな……………まぁいいけど。 じんさんのお陰でお金はいっぱいあるし。
「帰るのか」
「ま、結構呑みましたし。 寄りたい所もあるんで」
「そうか……………………」
「運が良ければまた会えるでしょう。 ……ではまた。 あ、ご馳走様でした」
「またの御来店をお待ちしております。」
領収書と明細を鞄に仕舞いながら返答する。
「ミード」
「ん? なんです?」
出入り口に向かおうとした所をジンに引き止められたので、振り返った。
「次会う時までに、敬語をやめろ。 テメェに敬語は似合わねぇ」
「……フハッ! クックックッ………w あぁ、わかった。 そうさせてもらうよ……またな? ズィルバ」
「ああ。」
思わず軽く噴き出し、笑った後にニヤリとしながらヒラヒラ手を振って店を出る。
なんか思っていたより話せる人物だったな。
そこまで性格が悪い訳では無い様だ。
「ふむ…………彼とコネクションを持つのもいいかもな。」
だがこの姿のまま繋がりを持つと面倒な事になりそうだ。 やはりもう一つの顔は必須か。
そうだな。 夜闇に紛れる狼、なんてどうだろう。 狼いいよね。 かっこいいし。
狼と言えば…………やっぱフェンリルかな。
服装は、フェンリルからイメージしたものを纏おうか。
フェンリルと言えば………グレイプニルだし、手枷と首輪とか?
刺青もいいかもな……………………。
たまにそんな事をポツポツと呟きながら設定の詳細を詰めつつ、俺は買い物を済ませて自宅にタクシーで帰ったのだった。