ふたりはプリキュア ダークサイド仮   作:スマート

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悲しんで悲しむ

「ハッ!」

 

鼻で笑う声が聞こえた。

 

その声の後、俺が放った炎の球は人影に当たることなく途中で止まってから、かき消された。

 

「この力でも、傷一つ付けられないのか…ならっ、これでどうだ!」

 

人影は俺の姿をもう見つけられていると考えて良い、実力に差があるなら正面から挑むのは馬鹿のすることだ。

 

もう一度紫色の炎を出し、今度はその火で自分を覆い隠す壁を作り出す。

 

相手からの攻撃が飛んでこない事を確認して、翼と足に力を込め思いっ切り人影へと跳躍した。

 

風を掴んだ翼は、俺の感情のオーラに後押しされて見る見る速度を上げていく。

 

足で空気を踏みつけ、舵をとり微妙な方向調整を行う。

 

あっと言う間に、俺は人影の後ろに回り込んだ。

 

相手には俺が瞬間移動をしたように見えただろう。

 

「食らえよ、ホーミング・ファイア!」

 

決死の一撃、頭に浮かんだ技名をそのまま名乗ると、両腕から溢れた黒いオーラが黒い炎に変わり、人影へ襲いかかった。

 

「…何度も同じ技は芸がない、むっ!?」

 

黒い人影はそれをまた消そうと、俺の方へ振り返った。

 

だが炎は黒い人影の背中へと向きを変えてしまったのだ。

 

ホーミングと言うのは追跡という意味だ、狙ったターゲットをぶつかるまで追い続ける自動の炎。

 

「ぐあああっ」

 

黒い炎は人影の背中に直撃し、人影は低いうめき声を上げて仰け反った。

 

「やったか」

 

警戒は解かずに背中から全体へと広がっていく黒炎に集中して、火力を上げていく。

 

ジャァクキングが完全に消滅するまで俺は絶対に油断するつもりはない。

 

だが黒炎は切りを払うように立ち消えてしまった、中から無傷の人影もといジャァクキングが現れる。

 

「ハハハハハッ、お前がデッドキングダムのマスターが言っていたウチバとやらか…

 

我がドツクゾーンを裏切り、この王である我に攻撃を加えた意味を理解しているか?」

 

「……っ」

 

膨れ上がる圧倒的な気配に飛んで距離をおくが、一瞬遅かったようだ。

 

ニヤリと笑みを浮かべたジャァクキングは、右手を振り上げて真っ黒な玉を俺に向けて投げつけてきた。

 

「うあああっ」

 

回避が間に合わず腹に完璧に攻撃を食らってしまう。

 

腹の鎧が衝撃に歪んで蜘蛛の巣状にひびが入り、破片が飛び散って消えた。

 

「ハハハハハッ、滑稽だな我に戦いを挑んできた癖にもう終わりか、さっきまでの威勢はどうした」

 

「ぐ…ぞ…」

 

一撃でここまでの威力を貰うとは考えていなかった。

 

感情によってあそこまで高めたエネルギーの鎧が、まるでガラスを割るように砕けてしまったのは驚いた。

 

胃から胃液が逆流して、喉が焼ける。

 

身体が動かない、精神的にではなく物理的に筋肉や神経をあの攻撃で切り離されてしまった。

 

意志の力で翼は保てているが、もう戦えるほどの機動力は残っていない。

 

「逃げるか…いや、それは出来ない!」

 

ジャァクキングの後ろには、倒れている金髪が綺麗なドレスを着た女性がいる。

 

これが状況敵に見て、プリズムストーンを護っていると言う、クイーンと呼ばれる光の園の女王だ。

 

助けを待つ者が目の前にいる状況で逃げる事は、俺の理念に反する。

 

「うおおおおおおおおっ!」

 

悲しみをもっと、もっと呼び覚ませば…

 

鎧が俺の声に応えてひびがふさがり始めた、よしこの調子でもっと、もっとだ!

 

「ほう、まだやる気があるようだな面白い受けて立ってやろう、食らうが良い全てを飲み込む我の力を」

 

ジャァクキングは真っ赤に裂けた口を開いて、息を吸い込み始めた。

 

それは時間をかける毎に吸い込みを増し、ブラックホールのように周囲の木々や葉を吸収してきたのだ。

 

空気もその例外ではなく、翼をはためかせて抵抗していないと直ぐにジャァクキングへと吸い込まれてしまいそうだ。

 

まだ、まだ足りない、まだ悲しむんだ…悲しんで、悲しんで、悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで悲しんでしんで悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで悲しんで。

 

悲しむなんて考えているから悲しめないんだ。

 

考えるな感じろ、この世のすべてに悲しんで絶望しろ、これ以上ない悲しみを鎧に注ぎ込むんだ。

 

呼吸が乱れて、息が荒くなっていく、精神にも肉体にも負担がかかっているのかもしれない。

 

だがそれでも、それでも諦めてはいけないのだ、俺には諦めるという選択肢は許されていない。

 

歯をかみしめると口が切れて血がでた、目が血の涙で膜が張られ見えなくなった。

 

今にもちぎれてしまいそうな激痛が四肢を襲う、あらゆる部位が悲鳴を上げて壊れていっているのだ。

 

ああ、理性は邪魔だそれも消えてしまえ、必要なのは力だそれさえあれば何もいらない。

 

「フヒッ…クヒヒヒヒヒ」

 

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