ふたりはプリキュア ダークサイド仮   作:スマート

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第一章 アイツが変身!? ~有り得ない悲しみ~
第一話 悲しみ、捜索する


目が覚めるとそこは、俺が住んでいるアパートの廊下だった。

 

そこに俺は仰向けに寝ていたらしい、他の住民に見つかっていたら不審者扱いを受けていただろう事を思うと、早く目が覚めて幸いだった。

 

まだ大学生の身で前科がついたら目も当てられない。

 

服もいつも来ていた白いポロシャツと眺めの黒いズボン、俺は光の園から帰ってきたようだった。

 

今日一日で本当に色々なことがあった、護るもののために戦ったり、悲しみが鎧を作ったり。

 

立ち上がって何か体に変わりはないか調べて見るも、今の俺は別に黒い鎧は付いていない、あの大きな出来事は夢だったのかとも思った。

 

しかし、ジャァクキングに攻撃された腹が妙に痛むのだ、捲って見てみると、薄い火傷のようになっていた。

 

「夢じゃ、ないのか」

 

「何が夢じゃないんですか?」

 

「うわぁっ!?」

 

1人で考え事をしていると本当に前後が見えなくなる。

 

突然後ろから声をかけられて、驚いた俺はその人を突き飛ばしてしまった。

 

動揺していたとしても、その動作は余りにも軽率すぎた。

 

「きゃあっ」

 

慌てて倒れそうになった人の手を取って、反対側に引っ張り体制を整えた。

 

「す、すみません…少し考え事をしていて」

 

「い、いえいえ、私こそ後ろから声をかけちゃって…」

 

「うん…美墨?」

 

あわあわと手を振って俺に非がないことを説明する少女の顔には見覚えがあった。

 

それもそのはず、俺が光の園へ行く数時間前まで彼女の家庭教師をしていたのだから。

 

茶髪の髪を短く切って、ボーイッシュな印象の彼女、ベローネ学院女子中等部の美墨なぎさがそこにいた。

 

「あ、はっはい?」

 

「いや、どうして美墨がこんな時間に外を出歩いているんだ?

 

もう夜じゃないか…」

 

言っていて気が付いた、太陽の光が眩しく照りつけていることに。

 

俺の脳は夜か朝かも明るさでわからなない位におかしくなっているようだった。

 

「あはははっ、何言ってるんですか今は朝の6時ですよ?」

 

6時だと、なら昨日のあの時から今まで彼処にいた時間分、此方でも経っていたと言うことか。

 

なまじマスターのいた暗い世界を体験していたので常識が狂っていたらしい。

 

…うん、普通時間というものはそう言うものだ、止まったり自分だけ早く時間が進んだりなんかしないのだ。

 

少しずつ落ちつきを取り戻していく。

 

薄暗く見えたのは早朝だった所為かもしれない、美墨はひとしきり笑ってから急に黙り込んでしまった。

 

「どうした?」

 

「あ、う…手」

 

俯いてしおらしくなった美墨は、顔を赤くして裏がえった声で呟いた。

 

そう言えば美墨を引き戻したときから手を握りっぱなしにしていた。

 

また俺はやってしまったようだ、年頃の女の子の手を握るなど、彼女の影もない俺がやって良いことではない。

 

美墨には不快な気持ちを与えてしまったことだろう。

 

護るなんて光の園でのたまった側から女の子を悲しませてどうするんだという話だ。

 

「っと、すまない」

 

「あっ…い、いえ何でもありませ~ん!」

 

手を離してあげると、美墨は少し俺を仰ぎ見てから、ぎこちない動きで走っていってしまった。

 

階段を勢いよく駆け下りる音が聞こえ、滑らないか心配になる。

 

まあ、運動神経がいい美墨の事だ転んでも大した怪我は負いはしないだろうが…

 

「何だったんだ?」

 

美墨が走っていった階段のあたりを見つめて俺は首を傾げた。

 

女心と秋の空と言うが、本当に美墨が何を考えているのかわからない。

 

考えても答えが出ない問題は放棄するに限るので、すぐに諦めて俺は階段をゆっくり時間をかけて降りていった。

朝の6時なら大学には十分間に合う、だが俺にはクイーンに言われた2人の妖精を護という願いが託されていた。

 

生命力をエネルギーに変えてジャァクキングに特攻した俺が、こうして生きているのはクイーンが力を分けてくれたからだ。

 

悲しいと感じる感情の他に、嬉しいと思う感情が居座っているのは、分けられた力が俺に心を棄てさせない為のストッパーだろう。

 

唯一、俺の事を心配して気にかけてくれたクイーンの願いを聞くために、俺は妖精を探しに出かけることにしたのだ。

 

「さて、出てきたものの、どこから探せば良いんだ?」

 

確か妖精は、ジャァクキングに永遠の命を与えないために残り2つのプリズムストーンを持たせて逃げてきているらしい。

 

7つ揃わないと効力が出ないとすると、ジャァクキング側は死に物狂いで妖精を探していると見ていい。

 

…多分、俺の決死の攻撃ではジャァクキングは消えてはいない。

 

それ相応の負傷は負っただろうが、いずれ回復した奴は再びプリズムストーンを狙い出すだろう。

 

それまでは、その部下が妖精の捜索、その後のプリズムストーンの奪取を行うに違いない。

 

一番の不安は、光の園のように大規模なドツクゾーンによる進行がこの俺のいる世界で起きないかという事だ。

 

冷酷無比で自己の欲望の為なら、他の世界を蹂躙しても構わないと考える奴らにこの世界は渡せない。

 

歩いている内にそこら辺を妖精が歩いていないものかと、色々な道順を辿っていると、開けた場所に一つ屋台を発見した。

 

「たこ焼きか、最近食べてないな」

 

朝ご飯も未だだったので俺は、たこ焼きを2パック購入した。

 

「まいど~」

 

若い活発そうな女の人に見送られながら、公園へと行きベンチの上で出来たてのたこ焼きを頬張る。

 

「ん、これはうまい…この食べた瞬間に口に広がる出汁の味、そして大きめのタコが柔らかく見事に生地と合っている」

 

料理漫画のようなことを意味もなく独りで呟いていると、小さな子供に指を刺され悲しくなった。

 

駄目だ駄目だ、そう簡単に悲しんでばかり居たらクイーンの言うように心を棄ててしまう時が来てしまう。

 

たこ焼きを口いっぱいに頬張って悲しさを紛らわせて、俺はまた妖精を探しを再開した。

 

妖精は意外と小さく、ぬいぐるみのようなフォルムをしていたので、主に下の方に意識を向けていれば大丈夫だろう。

 

間違って踏んでしまうことは絶対に避けなければならない。

 

道路を端から端まで見て、ついでに塀の上や信号機の上、屋根の上に乗っていないかを確認しながら進む。

 

俺が昔絵本で見た妖精は人型で、羽が生えていてそれで自由に飛び回っていたが、あの妖精に限ってそれは無いと思いたい。

 

空にまで意識を配っていたら、妖精を見つけるより先に俺が天へと帰ってしまう。交通事故で。

 

「あの、何か落とされたんですか?」

 

ダメ元で側溝の中を覗いていると、誰かから話しかけられてしまった。

 

俺が何かを落としてしまって困っているように見えたようだ。

 

「いや…まあ、落としたというか、探し人というか」

 

まさか妖精を探しているなど言えるはずがない、言ったが最後、頭の病院に連行されてしまう。

 

この黒い髪を肩まで伸ばした如何にも優等生な雰囲気を漂わせた彼女は、偶然にもベローネ学院の制服を着ていたのだ。

 

いつの間にかあの学校の近くに来ていたらしい、今は大体7時頃なので登校時間も一致して、次から次へ制服を来た生徒が歩いていく。

 

気づかなかったとはいえ、そんな中で側溝を覗くという愚行を起こしていたのだ。

 

穴があったら入りたい、その穴を誰かに埋めて欲しい。

 

「時間もまだ大丈夫ですし…良かったら手伝いましょうか?」

 

「えっ…ああ良いよ探してるのはちょっと普通では見つけにくいと言うか、なんというか」

 

優しいなこの女の子は、だがそんな子の行為を拒絶しなければならないのは、仕方がない。

 

まさか…まさか…彼女も探し物が妖精だと言っても笑って探してはくれないだろう。

 

最悪、通報される。

 

なので俺はやんわりと断ったつもりだったのだが

 

「コンタクトレンズですか?」

 

手伝う気満々のこの女の子は、もう体制を低くして俺がのぞいていた側溝をのぞき込んでしまっていた。

 

「お、おいっ…其処までしなくても、見たらそれとわかるものと言うか、それ以外じゃないというか」

 

「じゃあはっきり言ってくださいっ、言わないと見つけられるものも見つけられないじゃないですかっ」

 

言うしかないのか、もうどうにでもなれ、言った瞬間に逃げ出せば逮捕は免れるかもしれない。

 

怒り気味の黒い髪の女の子に俺は、正直に真実を伝えることにしたのだった。

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