ふたりはプリキュア ダークサイド仮   作:スマート

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第七話 ピーサードの脅威

傭兵と言えば傭兵だろう、俺は本来光の園の住人ではない。

 

そして、俺のこの身体は光の園へと行くために扉をくぐった所為で、ただの人間でも無くなっている。

 

クイーンに願いを託されただけの居場所にない人間には、雇われ兵士はふさわしい言葉だ。

 

だが、それでも妖精を護るという立場が存在する限り、俺にはまだ救いがあるのか。

 

「久しぶりだな、ミップル…」

 

「ミポ?」

 

覚えているだろうと話を振ったが、ミップルという、俺があの時助けた妖精はどうやら俺の事を覚えていないようだった。

 

…いや、それもそうか、あの時の俺は鎧を全身に纏っていた。

 

一時、助けられた相手の声だけで鎧と俺が同一人物などと思うはずがない。

 

もう一度鎧を纏っても良かったのだが、ピーサードの気配がまだ消えていないので無駄に精神力を消費するのは避けたい所だ。

 

それに、今なら思うが、あの鎧を出したとき俺の性格が少しだが変わっていたように感じた。

 

表面上の一人称が、僕から俺に変わる程度には精神的に狂わされていた…

 

自分では気づかない範囲で少しずつ何かが変えられていっているのかもしれない。

 

なので、鎧は命の危機やそれに準ずることが起こらない限りは使うことはない。

 

単に心の変化が怖いだけの臆病者とも取れるが、俺にそんな感情はない。

 

有るのはマスターへの期待と、湧き上がって自らを侵食しようと蠢く悲しさだけ。

 

俺が黙っているのを不審に思ったのか、雪城の手のひらに乗っているミップルの目の色が曇る。

 

「ああ、名乗るのが遅れたな。

俺は内場、呼守…お前たちがクイーンと呼ぶ彼女に恩があるものだ」

 

「クイーンを知っているミポ?」

 

「知っている、だからこそ彼女の最後の意志の為に俺は、お前達を護らなければならない」

 

別にクイーンは俺に強制はしなかった、だが死ぬ間際のような必死なお願いを。

 

仲間を護りたいという意志を、俺は断ることができなかったといっても良い。

 

俺の心にまだ、そんな気持ちが残っているのだという希望にすがりたかったのだ。

 

「そうだったのミポ、あなたはクイーンに…」

 

…ミップルの声に言葉を返そうとしたとき、本当にごくわずかだが大気の流れが変わったような気がした。

 

まるで何か小さなものが空から落ちてきたような、地震のような衝撃とは違う振動。

 

ピーサードの気配に変化は無い、増援でも呼ばれたかと勘ぐるが、彼らの仲間の気配も感じ取ることが出来ない。

 

なら…この小さな気配はなんだ、このどこかで感じた事のあるような…

 

「……っ!?」

 

「ミ、ミポ?」

 

まさかと思い手のひらのミップルの気配をじっくりと観察してみる。

 

小さいが暖かい、光の園とも呼ぶべき希望の気配…

 

そうだ、この気配だ。

 

何処かから飛来した小さな気配は、目の前で戸惑うミップルの気配とかなり似ている。

 

と言うことはつまり、そう言うことだ。

 

護る…これで、もう一人も護る事ができる。

 

「……あの、どうしたんですか?」

 

おずおずと戸惑いがちに聞いてきた雪城の手にミップルを手渡し、俺はそのもう一つの気配の発信源へと向き直った。

 

目を閉じてもう一度、今度は意識ごと沈め集中させて気配の正確な場所を探る。

 

ふむ、それほど遠い場所じゃない、見つけ出し俺の家へかくまいピーサードの手からうまく隠れることも出来るかもしれない。

 

「いや、喜べミップル、お前の言うメップルを見つけた」

 

「ミポ!? それは本当ミポ?」

 

「断言は出来ないが、確信はしている…」

 

む…くそっ。

 

内心俺は焦っていた、先程まで何の動きもなかったピーサードが、動き始めているのだ。

 

恐らく、妖精飛来の気配を感じたのだろう。

 

もっとうまく隠密しろよとまだ会ってもいない妖精に悪態をつくが、状況はなにも変わってくれない。

 

ピーサードの気配は妖精の気配の近くを動き回り、まだ正確に妖精の場所を掴めていないのは丸わかりだった。

 

だがそれも時間の問題だろう。

 

奴ほどの実力があれば、妖精を探し出すまでも街を破壊してしまうと言うことが考えられる。

 

そうなる前に妖精を結界か何かでダミーを作り、ここに妖精はいないと思わせるしかない。

 

その為には一刻も早くもう一匹の妖精とコンタクトをとらなければ。

 

しかし、黒い翼を作り出し飛び立とうと考えた所で、もう一つ問題が浮かび上がってきた。

 

俺がこの場所を離れても良いのかという問題だ。

 

雪城はたまたまミップルに出会ったといってももう関係者だ、ピーサードに見つかった場合、最悪拷問された挙げ句殺される。

 

今から片割れの妖精を探していると、この場所がもしピーサードにバレた場合、ミップルと雪城を護れない。

 

だからといって、ミップルのみを護っていたのではクイーンの願いからそれるし、何より俺が気に入らない。

 

…仕方がないな、状況が状況だ。

 

「雪城、ミップル…済まないが俺と来てもらう、少し面倒になりそうだ」

 

「え…?」

 

戸惑う雪城の身体に背中から伸ばした黒いひもを巻き付け、手元に強引に引き寄せて、翼を展開する。

 

「え、えええええええ!?」

 

「み、ミポ~!?」

 

驚く一人と一匹の悲鳴をに見に受け、少し説明してからやるべきだったと後悔する。

 

だがひとまずピーサードだ。

 

 

「詳しい事は飛びながら説明する!」

 

そうして俺は、晴天の空に勢いをつけて大きく舞い上がったのだった。

 

綿菓子のような雲を勢い良く突き抜け、コウモリに似た黒い翼を流れる空気にあわせて微妙に向きを変える。

 

すると無駄に羽ばたくことをしなくとも、風は自分の体を上へと持ち上げてくれるのだ。

 

上昇気流というらしい。

 

いつだろう、ずっと昔にやっていた教育番組の知識だったが、侮れないものでかなり役に立った。

 

渡り鳥などはこういった風の流れを利用することで、長時間の飛行をする事が出来るという。

 

もっとも俺の飛行は肉体的なものではなく、どちらかというと精神的に疲れる代物なのだが。

 

風を掴む掴まないに関わらず、悲しみという感情を強く意識することで、顕現し、現実に現れる翼は、ただ出しているという事実だけで、神経をすり減らされていくようにも感じていた。

 

まあ、気にするような大きなモノではないが、泣きすぎて声が枯れてしまったときのような、心がすっきりとしない空っぽな気持ちになってしまう。

 

それが、俺にとっての悲しみ切れ…エネルギー切れという奴だろう。

 

幸いなことに、まだ俺の悲しさは学校から雪城を、家にまで送ってきたにも関わらず気ほども減ってはいない。

 

いや、確かに擦り切れて、減ってはいるのだが、あくまでも微々たるものだった。

 

最悪の事態(ピーサードとの戦闘)の為には体力…精神力は幾らあっても足りないくらいだ。

 

空中で体制を取り直し、腕に抱えた雪城をふとみると、何故か頭を下げて青い顔をしていた。

 

「む…どうした?」

 

「うう…っ」

 

急な高度変化に気分が悪くなったのだろうか。

 

彼女の腕に抱えられた携帯電話のようなモノから覗くミップルの顔が、渦巻き模様へと変わっていた…

 

乗り物酔いという奴だろうか、そう言えばこの力を使えるようになってから、無茶な動きをしても傷一つつかないようになっていた。

 

その所為で自分以外の人間の弱さを十分に把握できていなかったのだ。

 

なおのこと、雪城はまだ幼い女に過ぎない。

 

少しは加減してやるべきだったと後悔し、俺はあまり息苦しくないように高度を下げつつ…全力で飛んだ。

 

済まない。

 

時間が惜しいんだ、少しでも早くミップルの片割れ、光の園の生き残りに会わなければ。

 

のんびりと雪城が酔いから覚めるのを待っていては、ピーサードが妖精へとたどり着いてしまう確率が跳ね上がる。

 

翼を折り畳み、風の動きを裂くように回転を加え、俺はミサイルのように目的地へと飛んでいったのだった…

 

後日談だが、俺は涙目になった雪城に暫く口を利いてもらえなかった。

これを悲しいと思うのは、俺がマスターの影響を受けているからなのだろうか?

 

 




だいぶお待たせしてしまいすいません、これからも隙を見つけ投稿していくのでよろしくお願いします。
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