待機して悲しむ
さて、マスターの誘いに乗ったものの闇の世界からもとのフィギュアが置いてあった場所へと戻されただけだった。
おかしなことに、あの空間にいた時には時間が止まっていたようで街路樹の側に立っている時計は1分しか進んでいなかったのだ。
巨大な大男、マスターは去り際にあることを言っていた。
妖精なるものが住む世界、光の園というものがあり、デッドキングダムはその世界がじゃまで仕方がないというのだ。
人々の悲しみで成り立っているデッドキングダムは、幸せな感情が流れ込む妖精の世界は存在を見失いかねない脅威として、滅ぼそうとしたらしい。
だが妖精の世界へと進行したデッドキングダムの軍勢は、その幸せなオーラによって改心させられ消滅してしまったのだ。
悲しみの具現化であるデッドキングダムの住人は、幸せを感じると自己の存在意義を失い、崩壊してしまうのだ。
脅威を危機と改めて認識したマスターは、光の園を敵視しかつ極力彼らと関わらないように、地底の奥底へと隠れ住んだのだという。
そこで出会ったのがドツクゾーンというまた邪なエネルギーによって動く集団だった。
ドツクゾーンは、光の園を攻撃し7つある宝石プリズムストーンを奪うという野望を打ち立てていた。
彼らと出会ったマスターは、ドツクゾーンのボスであるジャークキングと手を結び、彼の下で働くことで、自分の世界を護ろうとしたのだという。
ジャークキングの手の元で、光の園を攻撃するマスター達デッドキングダムの住人だったが、一つの懸念が合ったのだ。
それは光の園の伝説に残る戦士の物語だった。
世界が悪に染められしとき、闇を打ち砕き光をさす道しるべになると言う伝説。
悲しむマスターは、この伝説を聞き怖くなったという。
当然だろう、悲しみの権化がデッドキングダムなら光の園は、幸せの権化。
住人が消されていくほどのエネルギーを内包した世界が生み出した戦士なら、その戦士にどれほどの幸せが宿っているのかと考えるだろう。
その為の保険が俺なのだという、人間という幸せと不幸の両方を併せ持つにも関わらず、人生に失望したデッドキングダムに相応しい存在。
デッドキングダムの住人のエネルギーは、悲しみ。
ならば幸せを知っていた人間の抱える悲しみのエネルギーは膨大なものになるらしいのだ。
俺はそのエネルギーの使い方をジャークキングに入って学び、来るべき伝説の戦士の登場に備えるという役割を与えられてしまったのだ。
就職の依頼かとマージンの交渉を考えていた俺はかなり悲しみに暮れた。
「つーか、来たるべき戦士に備えるとかどこの竜玉漫画だよ…」
ジャークキングにはマスターから話を通してくれるそうで、次の光の園の進行時に連れていってくれるら
しい。
それまで待機、悲しみを貯めておけということだった。
悲しみを貯めると言っても俺としてはどうしていいのかわからないが、取りあえず今日する予定だったアルバイトを断ろうと思う。
俗に言うガラパゴス携帯、通称ガラケーを取り出して店へと電話をかけてみた。
予想以上に店へは1コールで繋がり、体調不良で休むという旨を大根役者さながらの演技で伝えて着信を終える。
光の園への進行は近日中に行われるそうで、異世界へと向かうため人間の身ではゲートと言うものを潜らなければならないらしいのだ。
デッドキングダムやドツクゾーンの住人は、闇のエネルギーだとかで自由に世界を行き来できるらしい。
そんな瞬間移動のようなことが出来るのは、全く羨ましい限りである。
と言うわけでアルバイト中に進行が始まるかもしれないので、今日から2週間休むことにしたのだ。
大学へは2週間ぐらい行かなくても、授業に十分ついていける自信がある。
「あ、あの子の家庭教師も頼まれていたな」
スケジュール表を取り出してここ2週間ほどの予定がないか確認すると、明日だが一人約束をしていたことを思い出した。
家が近所だということでの付き合いという家庭教師なのでお金は貰っていないが、どうにも断りにくい。
現在一人暮らしの身としては、俺1人でご近所付き合いをしなければならないので、大変なのだ。
ご近所付き合いを甘くみるなかれ、近所との関わりを疎かにするといざという時助けてもらえない、グループからはぶられる等の弊害がついて来る。
本当に人間というものは面倒くさい習慣がある、自分達で作ってきた習慣に縛られているのだから笑えない。
仕方がない、一度引き受けた仕事をご近所付き合いにおいて疎かにするわけにはいかないので向かうことにしよう。
光の園への進行はそれまで待って貰うよう祈るしかない。