ふたりはプリキュア ダークサイド仮   作:スマート

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教えても悲しむ

今日は両親が家にいない日ということで、美墨の部屋の中で勉強を教えることになった。

 

「えっと、どうぞ…」

 

少し恥ずかしそうに勉強の扉を開けてくれた美墨だが、恥ずかしいのは俺の方だと叫びたい。

 

これが女の子の部屋、もう匂いからして違う。

 

変態的な意味ではなく、こう空間の雰囲気的な意味での話しでだ。

 

スポーツ好きだからなのか、俺の勝手な妄想なのか部屋全体がピンクでヒラヒラしていることはなかったので拍子抜けした。

 

壁にかかっているハンガーには、赤いシャツに7という背番号がかかれている。

 

うさぎの顔の柄のベッドはいかにも女子の部屋に来ているという感覚で、柄にもなく咳払いをしてしまった。

 

「それで、どこを教えて欲しいとかあるのかな」

 

緊張した気分を変えるために、本題にさっさと入る。

 

とっさに言った言葉だが、家庭教師と言っても今勉強しているところに合わせて教えていった方がやりやすいし、相手も覚えやすい。

 

「あ、はいっ、この…問題なんですけど」

 

慌ててサブバックから教科書を引っ張り出した美墨を自分の勉強机に座るよう促してから、俺はその背中をのぞき込む形で勉強がスタートした。

 

美墨がやろうとしたのは数学の問題集、今日出された宿題なのだろう。

 

勉強と宿題を一緒くたにするのは本来、あまりお勧めし難いが勉強嫌いの彼女には宿題も辛いことなのか。

 

「ふん、まあ地道に枠にはめていけば良いかな」

 

「え、何か言いました?」

 

「いや、気にせず続けて…その問題はさっきの公式の逆をすれば出てくるから」

 

「あ、そっか…あははっ、あたし勉強苦手だから」

 

頭を掻いて悲しそうに呟く美墨。

 

そう言えば俺も昔この同じ問題で迷っていたなと思い出す。

 

あの頃の俺は、虐められている毎日だったので宿題や勉強をする時間がなかった。

 

その言い方だと語弊がでる、改めて言い直すと、宿題や勉強をする時間がないと思い込んでいたが正しい。

 

二宮金治郎のように虐めから逃げながら、歩きながら勉強や宿題は出来たはずだと昔の俺に言いたい。

 

出来ないと思うから出来ないのだ。

 

「苦手なんて言うのは、ただの逃げでしかない」

 

「内場さん?」

 

「お前…美墨は勉強をしっかりとやっているのか?

 

勉強が苦手だから出来ないと理由を付けて勉強から逃げていないか?

 

努力して努力して、しっかりと何かをした奴は決して苦手なんていう言葉を口にしない…」

 

ようは考え方の問題で、絶対にやってやるという意識と発想さえあれば目的は達成できる。

 

コロンブスの卵しかり、ニュートンの万有引力しかりだ。

 

かの有名なアインシュタインも、天才とは1%の才能と99%の努力であると言っている。

 

「美墨もやれば出来る、才能なんてものは誰にでも眠っているんだ。

 

いわば原石だな、それを掘り起こして磨いて宝石になるかが、美墨、お前が努力するかと言うことだ」

 

開いた数学の問題集の答え合わせを暗算で丸付けして、赤ペンで間違いを抑えながら俺は話しかける。

 

美墨はじっと俺の顔を見ながら、戸惑ったように訪ねてきた。

 

「あたしが…宝石になるか」

 

「スポーツをやれる集中力があるのなら、勉強にもそれは向けられるはず。

あとは自分が努力することだ、なあに心配するな勉強なんてものは必要ラインを超えれば自然と解るようになってくる。

 

勉強が理解出来るようになったなら、楽しいと言わないまでもスポーツ感覚で取り組めるだろうさ」

 

俺もそうやって勉強をしてきた身だ、根暗だなんだと言われもしたが、今まで勉強をしてきてよかったと思っている。

 

第一に虐められなくなった、虐めてくる人間は大抵乱暴者、貶めて言うなら馬鹿だ。

 

自分の強さ、プライドを自身の暴力でしか認めさせられない悲しい人間。

 

そんな人間には、勉強してきた知識から一般教養を少し披露すれば良い。

 

それも皮肉や苦言ではなく、ずる賢くのらりくらりと身をかわせるような教養だ。

 

話術、ディベートともいう技術を駆使して俺は大学生まで生き残ってきた。

 

「本当にそうかな、あたしも勉強得意になるかな…」

 

まだ心配そうに何を言っているんだこのガキは、そうしている間に勉強をすれば一歩ずつ得意に近付くというのに。

 

「これは僕の持論だが、苦手も得意も人間が作った言葉だ。

 

何処までが苦手で、何処までが得意なんていう明確な区分は無い。

 

簡単な話、嫌い好きかが才能を分け、努力が勝敗を分けるんだ。

 

だから、美墨…頑張れ…昨日今日出会った僕が言うのもアレだが、応援するよ」

 

出過ぎたまねをしたか、持論まで口走るとは、相当美墨の勉強嫌いに頭に来ているからか。

 

「…うん、頑張る! あたし頑張るよスポーツと同じくらい勉強も頑張る」

 

まあまあ、美墨が自分の調子に乗ってくれたようで良かった。

 

こういうタイプは火さえ付けてしまえば、エネルギーがなくなるまで目的へと走っていってくれるだろう。

 

「よし、それじゃあ次はこの問題だ、さっきの公式を2つ使う」

 

「あ、あの~内場さん?

あたしちょっと疲れてきたな~って」

 

引きつった笑いを浮かべる美墨の肩を逃がさないように持ってから、俺は彼女にとってとても残酷な言葉を継げた。

 

「何を言っている?まだ1時間しかやっていないじゃないか…

あと1時間、夕ご飯までみっちり勉強を教えてやる」

 

「あ、ありえなああああああい!!」

 

その時の美墨の悲鳴はご近所中に広まったそうで、後日俺は警察に連れて行かれそうになるのだった。

 

悲しすぎる…

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