永遠の命を与える7つの宝石プリズムストーン、それを狙っているのがドツクゾーンのジャァクキング。
永遠の命とはそれはつまり、不老不死を指しているのだろう。
生きているものは皆いつかは死んでしまう。
それが寿命と言うもので、運命と呼ばれる法則によって硬く縛り護られている。
だが、誰もが思うように死は生きる者にとって未体験の現象である。
未知は好奇心を生むが、同時に恐怖をも生むのだ。
解らないことは苦手で、理解できないことは怖くなる。
自分の持っている知識で説明が付かない現象ほど、人間は恐れ怖がるものなのだ。
それは幽霊出会ったり、宇宙人であったり、はたまた他人の心だったりもする。
ドツクゾーンの人々、ジャァクキングの永遠を望む光の園への進行は、その恐怖心から出たものではないのか。
闇がドツクゾーン、光が光の園、人間ではなくとも彼らは意識を持っているのだから。
自分で考え、行動することが出来る生物を人間は自分たちを含めた知能生命ヒトと呼ぶのだ。
光も闇もない、同じ意志のある生命が争うことがどれほど悲しいことで、愚かしいことなのか。
いや、そう思うこと事態が俺が人間だという過程の元に成り立っているとそると、善も悪も存在しないのか…
戦いはどこまで突き詰めていっても戦いであり、2人以上の生物が荒そうことでしかない。
荒そうことは、ただ荒そうという事でそこに善悪など生まれる由もないのだ。
草原や木々が生い茂る自然豊かな大地、光の園において闇の住人とも呼べるドツクゾーンの人々が次々と現れては、小さな縫いぐるみにも似た生物を蹂躙していく様にも善悪は生まれない。
そこに意味を付加することは人間のエゴであり、独断に偏った考え方になってしまうからだ。
可哀想などと思っても、実は可哀想だと思われていた側は楽しかったりという誤解が生じるように。
俺個人の考え方で物事を判断してはいけない。
光の園にも、ドツクゾーンにもしっかりと考えがあるのなら、俺はそれを一概に否定してはいけない。
勝手に善悪を決め、行動することはそれこそ強引で悪しき行為なのだから…
「…あなた虹の園の人間ミポ?」
扉を潜り抜け此処の大地を踏み締めたときから、俺はずっとその場に固まって動けなくなっていた。
いくら理性で言い聞かせようが、ドツクゾーンが光の園に対して行っていることは悪としか思えないのだ。
笑いながら住人を蹂躙していくドツクゾーン、それを見ていると胸の奥から悲しみが溢れ出して止まらなくなってくる。
だから、いつの間にか俺の側にやってきていた桃色の小さな生物には、今気が付いた所だった。
「…君は?」
「私はミップル、ミポ…この光の園の妖精ミポ…」
うさぎのような大きな耳を垂れさせ、おでこにハートに似たマークがかかれている妖精…
ドツクゾーンの進行をかいくぐって此処まで逃げてきたのだろうか。
俺が行る場所はほかの場所よりも窪地になっていて注意しないと姿を探すことが難しい所だ。
「僕は、内場呼守だ。このドツクゾーンと同盟関係にある」
「え…ミポ!?」
安心していた所への不意打ちだったのか、妖精は耳を跳ね上げて逃げようとして、石ころに躓いて転んでしまう。
「ミップルと言ったな、安心しろ僕は君を捕まえる気はないし、ドツクゾーンに引き渡すきもない」
痛そうにうずくまっていたメップルをそっと抱きかかえて耳元で囁きかける。
指が触れたときは怯えてふるえていたメップルの身体も、根気よく囁きかけていると幾分か収まってきたようだった。
「悲しいな…」
俺は呟く。
あの日マスターに出会ってから悲しい事をよく意識するようになった。
人生には、現実には悲しいことで溢れている…それを今思い知った。
傷つき震えていた妖精を蹂躙するドツクゾーンは…もう悪で良い。
善悪なんて関係ない、意味がないのなら自分が正義で良いじゃないか。
「そうだよ…俺は君を護ってあげる、ドツクゾーンから恐怖から…悲しみから救ってあげる」
「ひっ…」
そう、俺が守る。善悪なんて俺が決めてしまえばいい、俺さえ間違っていなかったら世界は守れるのだから。
悲しむ人が、妖精がいない世界へ俺が変えてやる。
「悲しむのは俺だけで良い…」キリヤという少年が言っていた、人に戻れないというのはこういう意味なのか。
泉のように湧き出す悲しみの感情に自己が埋め尽くされていく感覚。
悪を滅せなければとたぎる意識が、強い悲しみに当てられておかしな方向へと結論を急ぐ。
傷つけられたら、傷つけた奴を同じだけ痛みを与えてやればいい。
悲しんで、悲しんで、悲しんで悲しんで、俺の感情は爆発した。
「メップル…ここは危ないからもっと遠くに行こう?
僕はちょっとだけやることがあるから」
呆然と俺の顔を見つめる妖精を地面に下ろして、さっそくドツクゾーンが光の園の住人をいたぶっている場所へと向かう。
目のあたりが風に当たって嫌に涼しかったので腕で拭うと、服には真っ赤な血が付いていた。
俺は今、血の涙を流している。
「…マモル」
小さく掠れるように呟いた俺の声は、後からやってくる悲しみという感情の奔流に飲まれて消えた。
人間だった身体が硬く堅牢な鎧に覆われていくのがわかる。
重すぎず軽すぎず、俺の体にあったとても動きやすい形に鎧はできあがっていった。
黒光りする鎧は、最後に頭を覆い隠し中世の甲冑ににた騎手の姿が誕生した。