小学生編です。
あの子が出てきます。
学校は社会の縮図とはよく言ったものである。そこには様々な人間が存在し、共存している。人気者、日陰者、短気、寛容、真面目、不真面目。様々な人間が一つの空間に放たれる。この教室という空間で他者とコミュニケーションをとり、自らの人格形成へ繋げ、社会へ出るための訓練をしなければならないのだ。
だが考えてほしい。集団の中には当然の如く不出来な者が現れる。本人は頑張っていても上手く他者とコミュニケーションをとることが出来ない。そのような者が認められる、まだ子供の自分には見当もつかないような世界がもしかしたらあるのかも知れない。しかし悲しいことに、こと小学校という世界の中では活発な者や運動のできるもの達がクラス内のヒエラルキーの上階層であり、俺のような根暗な人見知りは自然と最下層の住民となるのだ。
このようなヒエラルキーを形成する上で重要となる事、それは恐らくクラス替え直後であろう。各々自己紹介をする時に自らの立ち位置、相手の品定め、危険分子の特定などを行うのだ。
「終わりよければ全て良し」などという言葉があるが、たしかに間違ってはいないと思う。最後に求められる物は結果である。それまでの過程で困難に遭遇し、挫折しそうになろうとも、それでも立ち止まらず前に進み続け、勝利を手にした者だけがこの言葉を使うことができるのだ。それならば、この言葉は今の自分には相応しくない言葉であろう。進級しまだ一日しか経っていないので始まったばかりなのだ。
だったら今の俺には、「始めが肝心」という言葉が適切であろう。
しかし、この言葉も今の俺には不適切な言葉となっている。何故か?
結論を言おう。
・・・比企谷八幡、小学五年生、小学校に入学し五回目の自己紹介をしたが、五年連続で失敗した瞬間の誕生である。
雪乃「ぷっ…くくっ…」
・・・雪ノ下さん、楽しそうで何よりです。
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〜一時間前〜
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今日から五年生である。周りには昨年クラスが同じなのか、仲良く話している者もちらほら見える。幼稚園入園から妹である小町以外と、歳の近い者達と関わることになりここまできたが・・・
なぜ友達が出来ないんだ・・・。何で!?俺そんなに話しかけにくいの!?あっ、そもそも俺から話しかけたことありませんでした!てへ!うわ、今のは引くな。気持ちが悪い。
とまあそういう訳なのだ。これまで学校生活を過ごしてきて男友達が一人もできないのである。くっ・・・、俺も友達の家で集まってテレビゲームとかしたいのに・・・。
話しかけようと頑張ったのだが、いつも一歩手前で緊張して諦めてしまうんだよな。というか次第に話しかけなくなっちまって今までのクラスの奴らの顔が曖昧で覚えていないまである。
まあそれでも、この四年間は運良くあいつらの内の誰かが同じクラスだったからな。一年生の頃は半端なかったな。まさか全員同じクラスとは思わなかった。おかげであいつらの独壇場だった。例えるならまさに動物園だったな・・・。さすがに二年生以降は全員という訳にはいかなかったが、知ってる顔が一人でもいただけでも良しとしよう。というかかなり恵まれてたな。二人組作れって言われても、俺の特技の一つである「懇願の眼差し」を向ければペアになってもらえたしな。かっこ悪いって?ふん、そんなこと俺が一番分かってるっつーの、言わせんな恥ずかしい。つか俺は誰に向かって話してるんだよ。
雪乃「あら、またあなたと同じクラスなのね。どうしましょう、マスクを忘れてしまったわ」
八幡「誰が比企谷菌だよ…」
今年も雪ノ下と同じクラスか。よく考えるとこいつとは二年のとき以外は全て同じクラスである。最近では雪ノ下の罵倒が日常化しているので、感覚が麻痺してしまっている。また一年間罵倒に耐えなければならないが、内心同じクラスでホッとしてるのは言わないでおこう。
雪乃「なにをジロジロ見ているのかしらこの男は。卑猥な視線を向けられるとPTAに言いつけてやろうかしら」
八幡「おいやめろ。二つ下に妹がいるんだ。小町がお天道様の下を歩けなくなるだろ」
雪乃「はあ…、進級してもシスコンなのね…」
当たり前だ。小町は天使。言わば光の使者である。その兄が罪を犯してみろ。小町は堕天してしまうだろうが。
ん?堕天?悪魔・・・、小悪魔。小悪魔な小町。これはこれでありだ!
雪乃「全く、今年から私達も高学年になるのよ?低学年の生徒は私達を見て学んでいくの。もっと自覚を持って頂戴。私が見てあげていないといつも駄目なんだから。少しはあやすこちらの身にもなって頂戴、赤子谷君」
八幡「その罵倒こそ低学年の奴らには見せたらダメな気が「何か言ったかしら?」………いえ」
奏「うふふ、雪乃、その辺にしといてあげなさいよ、八幡くんが可哀想よ?」
雪乃「は、速水さん、いつの間に…」
八幡「速水も同じクラスなのか?」
速水「ええ。去年は二人とも違うクラスだったから嬉しいわ。よろしくね♪」
速水も同じクラスか。こいつも俺の精神を磨り減らす存在なのは確かだが、同じクラスなのはありがたい。ペア作りのときの不安は更に解消されるな。
っと、先生が来たな。出席番号順に座らないといけないのか。まあ、毎年これは同じだわな。
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「では、今日はとりあえず皆の顔と名前を覚えるために、そして仲良くなるために自己紹介をしましょうか」
やはり来たか、自己紹介。お前はいつも俺の行く手を阻んで来るんだな。
それにしても出席番号順に座ったはいいが、列の真ん中の席かよ。落ち着かないなあ。後ろの奴に見られてる感覚に陥るんだよな・・・。そういえば雪ノ下は出席番号一番最後だったな。いいなあ、代わってくれよ雪ノ下・・・
・・・見なければ良かった。おい雪ノ下、めちゃくちゃムカつくドヤ顔でこっちを見てくるんじゃねえ。優越感に浸るんじゃない。その席覚えたからな!絶対席替えのときその席を勝ち取ってやる!
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奏「あら、次は私の番ね。速水奏よ。好きなことは、映画鑑賞かしら。これから一年間よろしくね♪」
速水の自己紹介が終わる。こいつはこういう事で緊張しなさそうだな。というか男子が既に速水を見てボーッとしている。もう速水のターンになったというのか。速水奏、恐ろしい子・・・!!
「ええっと、じゃあ、次は比企谷八幡くんね。自己紹介よろしくね」
八幡「ひ、ひゃい!」
余計なことを考えていると気付いたら俺の番になっていた。まじか、何も考えてねえ・・・。
八幡「ひ、比企谷八幡、で、す。えっと……好きな……好きな飲み物は、MAXコーヒーです。よろしくお願いしましゅっ」
瞬間、教室内がビッグバンを起こした。クラス中全員に爆笑されてしまった。ふと邪気を感じたので後ろを見る。雪ノ下、うずくまりながら机を叩くな。そんなに面白かったのか、俺の道化ぶりは。
かくして俺の五回目の自己紹介は、例の如く、例年に漏れることなく失敗に終わったのだった。
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はあ・・・。教室に戻りたくない。あの後雪ノ下はずっと笑ってるし、速水はフォローしてくれたものの、その光景を見て男子達が睨んでくるし、散々だったな。この一年間、どうなるんだろ・・・。
「きゃっ」
八幡「うお、あ…す、すみません。大丈夫ですか?」
廊下をボーッと歩いてたら女の子とぶつかってしまった。急いで手を差し伸べる。つか何カッコつけて手を差し伸べてんだよ俺!似合わねーよ!や、やばい、チクられる・・・。ど、どうか通報だけは!!
「はい……。大丈夫で、す……」
女の子はどうやら何とも無いようだ。良かった。
にしてもさっきからずっと見られてる。
八幡「あ、あの、どうかしましたか?」
「あっ、い、いえ、何でもありません……」
そう言い女の子は走っていった。あれえ?初対面で走り去られるほど人外の存在なの俺?言ってて悲しくなってきたな・・・。はあ、授業始まるな。教室戻るか。戻りたくないけど。頑張ってこよ・・・。
「……。……見つけた…」
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あの魔の自己紹介から一週間が経った。俺はというとこれまでの学校生活と同じで、自分の机で寝ている。
しかし、一昨日あたりから教室で寝れなくなっている。何かすごく視線を感じるのだ。普段はあまり気にしないのだが、この視線は何か違う。何だ?雪ノ下は・・・、違うな。後ろの席で本を読んでいる。速水は他の女友達と話している。他に俺を見ている奴はクラス内にはいない。いないのかよ。教室の外か?
・・・? いま何かいたような気がするんだが、気のせいかな・・・。
ん?つかよく見たら北条加蓮と渋谷と神谷が顔半分覗かせてこっちをめちゃくちゃ見てる・・・。な、なんだよ。ん?渋谷、手招きしてる。俺?・・・ああもう、わかったからそんなに何回も激しく頷くな。ヘドバンみたいになってるぞ。
八幡「なんだよ三人揃って」
凛「ちょっと八幡。なんで一週間経ったのに一度もうちのクラスに来ないのさ」
加蓮「全然来なかったから寂しかったよ…」
奈緒「昨日のプリ○ュア見たか?」
神谷、お前は唐突に話すんじゃない。いや、この二人も唐突だけどさ。
八幡「いや、別に来いって言われてないし。そもそも俺だぞ?他所のクラスなんて緊張して行けるわけないだろうが」
凛「はあ。来いって言われなくても来なよ。八幡はやっぱり八幡だね」
加蓮「しょうがないよ凛。八幡くん鈍感だもん」
八幡「え、なんか今馬鹿にされた気がするんだけど」
凛加蓮「「気のせいだよ」」
八幡「そ、そうか。ま、まあ、クラスに行くのはさすがに無理でも、お前らが来たら話すくらいは努力する…」
神谷「おお…これが小町が言ってた捻デレってやつか…」
神谷、なんだその捻デレって。つか小町と面識あったのかよ。小町め、余計なこと話しやがったな。帰ったら説教だな。いや、やっぱりできない。小町かわいいもん。
凛「まあ、それで許してあげようかな、ふふ」
加蓮「しょうがないなあ八幡くん。なら毎日来てあげるよ!」
八幡「それは、さすがに勘弁してくれ……」
少しして三人は笑顔で帰っていった。まだ新しいクラスが始まったばかりだし、あの頃の全員が同じクラスというわけにはいかないけれど、相変わらず男の友達はいないけど、あいつらから歩み寄ってくれるなら、今の生活も悪くないなと思う。こんな俺に関わってくれるんだ。あの子達はずっと笑顔でいてほしいと思う。似合わないのは分かっているけど、そんな事を考え踵を返し、俺は教室に入った。
それにしても疑問が残る。あの三人がこちらを見てはいたが、渋谷たちの視線は俺が感じていた視線とは違った気がした。
おわり
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〜おまけ1〜
八幡「………ん?」
教室に戻るとクラスの男子全員が唖然とした表情をしている。え?俺何かした?入っちゃいけなかったの?
「神谷に北条さん…し、渋谷まで……」
「あいつ実はモテるのか……?」
「さっきの渋谷と北条の聞いたかよ。完全にそういうことだろ……笑いはするけど、あいつらのあんな顔初めて見たぞ…」
「ああ…。神谷は相変わらずだったけど……。くそう…おれ渋谷のこと…うう…」
な、なんだ。うちのクラスの男子達に何があったんだ。
頭の中に疑問が残るが、一先ず自分の席に座るか。
雪乃「…比企谷くん」
八幡「ん?なんだ雪ノ下」
雪乃「随分楽しそうだったじゃない。鼻の下を伸ばして」
八幡「え、雪ノs…鼻の下伸びてたの?つか楽しくねえよ。教室前で話されて、ぼっちは視線に敏感だから苦痛でしか無かったぞ」
雪乃「………」
八幡「痛った!!?す、脛を執拗に蹴るな雪ノ下!すいません!鼻の下を間違えそうになりましたごめんなさい!!」
雪乃「それ!も!あるけれ!ど!それだけじゃ!ない!わよ!このボケナス!」
八幡「ぐあああああ!!!?」
女生徒「す、すごいね。雪ノ下さん。奏ちゃんって、雪ノ下さんと仲良いよね?いつもあんな感じなの?」
奏「ふふ、雪乃も乙女なのよ♪」
女生徒(なに言ってんだろこの子)
おわり
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〜おまけ2〜
「ふふ、あの人を見てて分かったことは、教室内では基本的に一人でいること。うふ、孤高な一匹狼です。かっこいい♪そして学校の帰り道にある自動販売機でMAXコーヒーを買って帰ること。もう、あまり飲みすぎるのは駄目ですよ?あと妹がいます。たしか小町ちゃんですね。ふふ、この前見たけどかわいいです。休日に二人で歩いてる所を見ましたけど、とっても兄妹仲が良かったです。八幡さんは普段はクールですが、小町ちゃんに対してはとても優しくて、また新たに素敵な一面を見れました♪はあ…知れば知るほどに素敵……。学校ではかっこよくて、可愛いところもあって、でも優しくて…。今まで気付かなかったなんて…自分が恥ずかしいです…
…そして……速水さん、雪ノ下さん、同じクラスの渋谷さんたちと仲がいいこと……」
「どうやら、雪ノ下さんと渋谷さんあと北条さんは、八幡さんのことを好きみたいですね…。でも負けません。だって…運命を感じちゃったんだから。最後に八幡さんと結ばれるのは……」
まゆ「まゆですよぉ……♪」
おわり
ようやくクール以外で出せました。
佐久間まゆも勿論好きですが、キュート属性では、乙倉悠貴、兵藤レナ、長富蓮実が特に好きです。レナさんと蓮実ちゃんのSSRがなかなか実装されませんね…