もしもシリーズ   作:ユッケライス

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短いです。申し訳ありません。
第7回総選挙が始まりましたね。





もしも彼女が変わったら

 

 

 

「……」

 

 

 

 また無くなってる……。

 

 私は下足箱の自身の名前が書かれた箱の中を、ただ見つめたまま立ち尽くしていた。あったはずの上履きは跡形もなく消えている。これで四度目かしら……。また事務室でスリッパを借りなくちゃ……。

 

 

 教室に入ると、既に来ていた女子達が私を冷めた目で見ている。そんなことを知らずに、隼人君と、隼人君と話していた数人の男子が此方に挨拶をしてきた。やめて……。

 

雪乃「お、おはよう……」

 

 

隼人「?どうしたんだい、雪乃ちゃん。体調でも優れないのか……?」

 

 

 やめて……。

 

 

雪乃「い、いえ、大丈夫よ。ありがとう」

 

 

 私は逃げるように、縋るように自分の席に行く。女子に終始見られていたけれど、そちらを決して見はしない。授業が始まるまで、読書をしてやり過ごすしかない……。

 

 

 

 

雪乃「つっ……!?」

 

 

 

 鋭い痛みが座った瞬間襲ってきた。

 椅子に画鋲があることに気付いた。ご丁寧にテープで固定し、そのテープも椅子違和感の内容に色を塗り替えて。

 視線を前に移すと教卓の周りに固まっていた女子達の意地の悪い笑みが見えた。

 

 

雪乃「……なんて事を……」

 

 

 さすがにこれは小学生がする悪戯の範囲を超えている。

 …いえ、悪戯なんて物ではない。ここまでされて、認める他に無かった。私は、クラスの女子から虐めを受けるようになっていた。

 

 

雪乃「……比企谷君……」

 

 

 まだ登校していない男の子の名前を、誰にも聞こえないように呟いた。しかし、この事は言えない。言わない。家族にも、彼女達にも、彼にも。心配を掛けたくないという思い。虐められているという事実を打ち明けることへの屈辱と羞恥心。そして何より、自身のプライドが助けを求めることを許さなかった。……小さい頃は気にしなかったが、どうやら、私は本当に不器用で、人付き合いが苦手らしい。自身と周囲への呆れ、諦め、これからの学校生活への不安に、静かに溜息を漏らした。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

凛「ふふ、それでね、って聞いてるの八幡?」

 

 

八幡「ん?あ、ああ、聞いてる聞いてる」

 

 

凛「なんかあったの?今日変だよ?いつも変だけど」

 

 

八幡「おい、渋谷おい。いつもってなんだ」

 

 

 登校中に渋谷と鉢合わせたため、一緒に学校まで来た。渋谷が話すのを止めないためクラスの前で話を聞いていると、席に着いていた雪ノ下を見かけた。相変わらず読書する姿は小学生とは思えないほど様になっていた。でも、何か違う。以前の雪ノ下とは何かが。いつも堂々としていた。口を開けば俺を罵倒するほど勝気だった。なのに、何でそんなに悲しそうなんだ?

 

 

 

凛「もう、よそ見ばっかして。最近全然私と話してくれないじゃん」

 

 

八幡「そ、そうか?悪かったよ……」

 

 

凛「だめ。休み時間、加蓮と奈緒と奇襲するから」

 

 

八幡「物騒な事を言うんじゃないよ……」

 

 

 

 話して満足したのか、渋谷は自分の教室へ入っていった。俺も行くか。

 

 

 

八幡「よう、雪ノ下」

 

 

雪乃「あ、ひ、比企谷君……。おはよう……」

 

 

 やはりおかしい。雪ノ下が、あの雪ノ下が罵倒をしてこない。言っておくが決して俺はマゾではない。誰に言ってんだ俺は。

 

 

 

奏「あら、二人とも早いのね。おはよう」

 

 

八幡「おう」

 

 

雪乃「お、おはよう」

 

 

奏「ふふ、どうしたの雪乃?笑顔でいなくちゃ、綺麗な顔が台無しよ?」

 

 

雪乃「ごめんなさい……」

 

 

 

奏「……」

 

 

 

 どうやら速水も何かしら感じとったらしい。俺と速水は、誰にも気付かれないように、目を合わせた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 昼休み。今日は晴れということでクラスのほぼ全員がグラウンドに出て遊んでいた。残るインドア派の雪ノ下は最近昼休みになると図書室で読書をしているらしい。俺たちの教室は蛻けの殻となった状態だが、かえって都合が良かった。

 

 

八幡「なあ、どう思う?」

 

 

奏「何がかしら?クラスの子達が仲良く外で遊んでいるのに、自分は教室にいることがかしら?それともこんな美女と二人きりで教室にいるというシチュエーションについてかしら?シチュ谷くん♪」

 

 

八幡「違えよ……。つかそれ、雪ノ下の真似か?精神が磨り減るからやめてくれ……」

 

 

奏「一度やってみたかったのよねこれ。結構罪悪感出てくるわねこれ。……っと、冗談はこれくらいにして」

 

 

 いい笑顔から一転、速水は真面目な表情へと切り替わる。

 

 

奏「雪乃のことでしょ?」

 

 

八幡「……やっぱ気付いてたか」

 

 

奏「まあね。彼女、最近明らかに様子がおかしいもの。私達に何かを必死で隠してる感じ。元気も無いしね。今朝のことで確信したわ」

 

 

八幡「……だよな」

 

 

奏「……気になるの?」

 

 

八幡「まあ気にならないって言ったら嘘になる。付き合いも短くはないし、あいつがあんなになってるのは見たことないからな」

 

 

奏「そう。なら私もいろいろ雪乃に探りを入れてみるわ。あなたも調べるなら周りにバレないようにね。気付かれないとは思うけど♪」

 

 

八幡「うっせ」

 

 

奏「ふふ♪なら私は行くわね。雪乃は多分図書室だろうし。今のあの子は傍にいてあげなきゃいけない気もするから」

 

 

 

 速水が教室を出ていく。からかってはくるが、友達思いの女の子だ。多少のお節介と思いながらも、雪ノ下の傍にいようとする。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 さて、一人になった所で考えろ。雪ノ下がああなった原因は何だ。家の事か?その線は薄いはずだ。雪ノ下は両親からとても大事にされているらしいし、原因が家庭内にあるなら教室内ではあんなに怯えることは無い。放課後など、家に帰る時が近づく程不安が増す筈だ。だからこの可能性は低い。

 

 

 

 

 

 教室内。悲しそう。怯える。俺達に隠す。

 

 

 

 

八幡「……まさかな。あいつに限って……でも……」

 

 

 もしかしたら。そう言いかけた所で口を無理やり閉じた。

 

 いや、これも無い。無いと思いたい。無いに決まってる。あの雪ノ下だぞ。何でも出来て、何でも知っていて、俺なんかの何十倍も優れた雪ノ下だぞ。

 

 もし、そうなら、何故俺では無い。何であの女の子が選ばれたのだ。あまりにも酷いじゃないか。

 

 

 最悪の場合を考えることは必要だが、これ以上考えると気分を害しそうだったので、一旦思考を無理やり停止した。

 

 

八幡「違うに決まってるさ……そうだろ?」

 

 

 自分に言い聞かせるように。そして雪ノ下に願うように、俺は一人呟いた。

 

 

 

 

加蓮「は、八幡くん……」

 

 

八幡「!?ほ、北条か。なんか用か?」

 

 

 北条が教室のドアの前に立っていた。

 

 

加蓮「う、うん。何か考え事してたみたいだから話しかけようか迷ったんだけどね……あの……」

 

 

 北条が言い淀んでいる。何故かは分からないが、その先を言って欲しくない自分がいた。

 

 

 

加蓮「昨日の放課後なんだけどね……」

 

 

 

八幡「……」

 

 

 

 

 

加蓮「八幡くんのクラスの女の子たちが、雪乃ちゃんの上履きを……カッターで……」

 

 

 

 

 

 どうやら神様はどこまでも残酷らしい。

 

 

 

 

続く

 






推しが多いので誰に入れようか迷います。
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