もしもシリーズ   作:ユッケライス

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次回から中学生編です。





もしも彼女が変わったら 後日談

 

 

 

あの日から雪ノ下は変わった。

 

 渋谷達に対しよく笑うようになったし、前よりも活発になったように感じる。相変わらず俺には切れ味鋭い罵倒をしてくるがな。俺に対しては変わってないじゃねえか。

 

ドンッ

八幡「う"っ」

 

 

雪乃「あら、いたの?影が薄くて気付かなかったわ。気を付けて頂戴、影薄谷君」

 

 

八幡「頭が薄いように聞こえるからやめてくれ……。あの、お前……最近俺にぶつかってくるの多くないか?」

 

 

雪乃「な、何よ。私が前を見て歩いていないとでも言いたいのかしら?」

 

 

八幡「い、いや……、そうは言ってないけどよ……」

 

 

雪乃「ま、まあ、私も不注意だったかもしれないから、許してあげるわ」

 

 

 

 そう言って雪ノ下はそそくさとどこかへ行く。最近このやり取りをもう何回もしている。毎回雪ノ下は顔を真っ赤にしながら去っていく。そんなに怒るなら前方気を付けなさいよね。

 

 

八幡「はあ……」

 

 

奈緒「……」

 

 

八幡「……なにニヤニヤしながらこっち見てんだよ」

 

 

奈緒「別にー?へえー?ふーん?」

 

 

八幡「何だってんだ……」

 

 

奈緒「へへ、まあ比企谷は気付かないだろうな」

 

 

八幡「?」

 

 

 神谷の言葉に疑問を浮かべていると、

 

 

 

葉山「比企谷君、ちょっといいかな?」

 

 

 

 葉山に声をかけられた。

 

 

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八幡「何だよ、体育館裏に呼び出して。お礼参りか?それとも告白か?告白なら答えは勿論ノーだ」

 

 

葉山「き、君は結構古い考えを持っているね……」

 

 

 おい、軽く引いてるんじゃねえよ。冗談の通じない奴だな。

 

 

八幡「それで?どうしたんだ?」

 

 

葉山「ああ。実は、この前の雪乃ちゃんの件なんだけど……」

 

 

八幡「……」

 

 

 沈黙することで話を促す姿勢をとる。正直、そうだろうと思っていた。

 

 

葉山「その、雪乃ちゃんの件は、すまなかった。彼女が辛い思いをしていたなんて、気付かなかった。俺がもっと早く気付いて、上手く周りとの関係を取り持つべきだった」

 

 

八幡「……」

 

 

 そう言い葉山は俺に頭を下げる。

 ……何というか、な。こいつは。

 

 

 

八幡「……何で俺に言うんだ?」

 

 

葉山「え?そ、それは、君が俺に証拠品として写真を見せてくれたのに、俺がすぐ信じようとしなかったから……」

 

 

八幡「確かにお前にとっては俺にそういった罪悪感があるのかもしれない。あの件に関して俺も始めはお前の教室内の立場を利用させて貰いたくてお前にアレを見せた。でも……」

 

 

 何でそれを…

 

 

八幡「何でその言葉を俺に言う。何で謝罪の言葉をあの子に言ってやらない。どんなに不格好でも何でも、どうしてあの子に詫びてやれない。悪いけど……さっきお前が言った言葉は言い訳にしか聞こえなかった。お前は結局周りに見られることに慣れて、自分の格好ばっか気にしてるんだよ」

 

 

葉山「……」

 

 

八幡「用が済んだならもう行くからな。それじゃ」

 

 

葉山「……君はすごいな」

 

 

八幡「あ?」

 

 

葉山「いや、何でもないよ。確かに君の言う通りだ。時間を取らせてしまってごめん」

 

 

八幡「へいへい」

 

 

-----

 

 

 

 

 

 

葉山「……あれが彼女達が彼を慕う理由なのかな……。人のためなら自分を顧みない。そんな危なく脆いがとても強い存在」

 

 

 

葉山「……確かに君の言う通りさ。僕は代わりに君に許しを乞うたんだ。言い訳をして、雪乃ちゃんへの罪悪感から本人に話しかけることも出来なくなった腰抜けだ。……隣の芝生は青い、なんて言うけれど、君を見てると羨ましく思えるよ……。なんて言ったら、君は『嫌味かよ』って言うのかもしれないな、ははは……」

 

 

葉山「謝りたいけれど、速水さんや渋谷さんがいるから、話を聞いてもらえないかもしれないな。雪乃ちゃんにも愛想尽かされちゃったかもね、ははは……。はは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

葉山「くっ、うぅ、……雪乃ちゃん……、すまな、い……、ぐっ……本当に……、ごめん……」

 

 

 

 

 

--

 

八幡「……」

 

 

 

 

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〜放課後〜

 

 

 

奏「はあ、もう放課後……。意中の男の子と一緒にいるとあっという間に時間が過ぎちゃうわね。八幡君もそう思わない?♪」

 

 

八幡「おう美味しい美味しい」

 

 

奏「ちょっと、ちゃんと話を聞きなさいよ、このっ」

 

 

八幡「いふぁいいふぁい……」

 

 

奏「ふん、まあいいわ。じゃあ私は帰るわね。凛達を待たせてるから。また明日、八幡君♪」

 

 

 速水さん?ウインクとかやめて?勘違いしちゃうから。つかあいつほんとに同い年かよ。

 

 

八幡「さて、俺も帰るか……」

 

 

 

 今日は親父も母ちゃんも帰ってこないんだっけな。小町と二人か。たしか冷蔵庫の中に材料があるはずだからカレーでも作ろうかな。ていうか作れるのかな。まあいいや。

 

 

 

-----

 

 

 

小町「あ、お兄ちゃんおかえり!」

 

 

八幡「ああ、ただいま。小町もおかえり」

 

 

小町「ふっふー、お兄ちゃん学校で疲れてるのに小町に気を遣えるなんて、小町的にポイント高い!」

 

 

八幡「当たり前だろ?俺は小町を世界一愛しているからな。おっ、今の八幡的にポイント高い」

 

 

小町「うわあそれはちょっと引くよごみぃちゃん」

 

 

八幡「解せぬ」

 

 

 

 その後小町とカレーを作り、完食をした時だった。チャイムが鳴った。誰か来たようだ。こんな夜に誰だ?突然チャイム音がしたので小町が驚き背筋を伸ばした。可愛い。じゃなかった、用心しないとな。

 子供だけで家にいる状況からか、若干の心細さがある中、玄関を開けた。

 

 

八幡「あっ」

 

 

----------

 

 

 

雫乃「こんばんは。雪乃の母の雪ノ下雫乃です。八幡君、夜分遅くにごめんなさいね」

 

 

 玄関を開けると雪ノ下の母ちゃんが立っていた。少し先には都築さんが車の前で待機しており、こちらに一礼をした。

 

 

八幡「あ、はい、お久しぶりです。……え、と。今日はどういったご要件で……?」

 

 

雫乃「ええ。実は八幡君と少しお話がしたくて、ね?」

 

 

八幡「は、はあ……。えっと……、よろしければ上がりますか?あまり綺麗じゃないですけど」

 

 

雫乃「ごめんなさいね……。不躾なのは重々承知なのだけれど、お邪魔させて頂きます」

 

 

 

-----

 

 

 雰囲気から察するに、真面目な話なようだ。なので小町には自分の部屋に行ってもらった。

 

 

 

 

八幡「ど、どうぞ。お茶請けも切らしてるので大した饗もできませんし、普通のお茶ですけど……」

 

 

雫乃「ごめんなさい。気を遣わせてしまって。頂きます。……うん、とても美味しいわ」

 

 

八幡「それで、ご要件は……?」

 

 

 まさか殺されたりしないよね?正直俺この人苦手なんだよな。過去に何度か缶蹴りやら鬼ごっこやらやったことあるけど。つかあれ遊びだと思ってたら勝負だったらしいね。後から知ったわ。

 

 

 

雫乃「ええ、雪乃の事で、ね?」

 

 

八幡「!……はい」

 

 

雫乃「……比企谷八幡君」

 

 

八幡「っ……はい……」

 

 

 

 

 

 

 

雫乃「この度は、私の娘である雪乃を虐めから救って頂いて、本当に有難う御座いました。暗闇の中にいたであろうあの子に光を与えて下さって、本当に有難う御座います」

 

 

 そう言い雫乃さんは深々と頭を下げてきた。

 

 

八幡「……へ?」

 

 

雫乃「え?」

 

 

都築「ふぉ?」

 

 

雫乃「都築黙りなさい」

 

 

八幡「え、あの、知ってたんですか……」

 

 

雫乃「……それは、ね?学校からの報告や加害者の親御さんからの謝罪などもあったから。事を知ったのは終わった後だったけれどね……」

 

 

 そう言い雫乃さんは悔いるように表情を曇らせた。

 

 

八幡「そうでしたか……」

 

 

 そうだよな。普通に考えて親であるこの人の所まで届くよな。

 

 

雫乃「都築は何かしら感じていたらしいけれど。私はあの子のあの時の言葉だけを受け取って、安心しきっていた。本当に、母親失格ね。自分が恥ずかしくなるわ」

 

 

都築「奥様、それは……」

 

 

雫乃「いいのよ都築。分かっているわ。あの子が優しい子だと言う事。私に心配をかけまいと頑張ってたと言う事は。それでも私は、情けないのよ。あの子が、雪乃が一人で戦っていた事に気付いてあげれなかった自分の馬鹿さ加減が……」

 

 

八幡「……」

 

 

雫乃「……あの子がそんな状態だった事を知って、私は雪乃に問いただしたわ。そして事実だった。……正気では居られなかったわ。加害者側の人間を消してやろうかとも思ったわ。そして最悪、その虐めが続くようだったら、雪乃をそんな目に合わせないよう、中学に上がる頃には留学でもさせて守ろうかとも思った……」

 

 

八幡「!?」

 

 

雫乃「でも……、雪乃に虐めについて聞いた時、そして私が加害者側をどうしてやろうか考えていた時、あの子はこう言ったの」

 

 

----------

 

 

 

 

雪乃『ごめんなさい……隠してて、本当にごめんなさい。確かに私は虐められていたわ。辛かった。毎日がとても辛かった。私は一人ぼっちなんだって思っていたわ。

 ……でも、違ったの。私のために戦ってくれる子達がいた。怒ってくれる子がいた。涙を流してくれる子がいた。そして、私のために、見えないところで頑張ってくれていた子がいた事が分かったの。それを知ることが出来て、私はとっても嬉しかった。甘いと思われるかもしれないけれど、お母さんは加害者の子達に何もしないで。虐めてきた子達には特に仕返しをしたいって思っていないわ。だって、あの子達が私のために頑張ってくれた事を胸の中に残しておきたいから。それに、隣に味方で居てくれる子が居るって知れたから。あの大切な子達と今まで以上に仲良くなれた気がしたから。散々虐めてきたあなた達より私の方が幸せなんだって、今は胸を張って言えるから』

 

 

----------

 

 

雫乃「……ってね」

 

 

八幡「雪ノ下……」

 

 

雫乃「だから、八幡君達には感謝しているの。改めて、雪乃を助けてくれてありがとうございました」

 

 

八幡「い、いえ。俺は結果的に何も出来ませんでした。あの女の子達と雪ノし……雪乃さんが頑張ったからです」

 

 

雫乃「ふふ、そんなことないわ。雪乃から聞いたわ。あなたが影で頑張ってくれていたんだ、って。本当に嬉しかったと言ってたわ」

 

 

八幡「うぐ……」

 

 

雫乃「私はあの子に何もして挙げれなかった。でも、あなた達は違う。あなた達なら、どんな事も乗り越えられる。私はそう思うわ。今回は雪乃をあなた達が助けてくれた。だから、八幡君が困難に直面したら、次は雪乃に頼って頂戴。勿論、私と都築も必要ならば力を貸すつもりよ?」

 

 

 そう言い雫乃さんは微笑む。都築さんもこちらに首肯し笑顔を見せる。

 

 

 

八幡「……まあ、それは本当に困った時に……」

 

 

雫乃「……ふふふ、雪乃の言っていた通り、素直じゃないのね。まあ、あの子も似たようなものだけど。……っと、少し長居をしてしまったわね。では私達はこれで失礼します。では八幡君、重ねがさねになりますが、本当にありがとう」

 

 

都築「私からも、この度は本当にありがとうございました」

 

 

八幡「い、いえ。いいですよ別に……。あいつは笑ってた方が似合いますから……」

 

 

雫乃「ふふふ、では失礼します」

 

 

都築「お時間を作って頂きありがとうございました。失礼致します」

 

 

----------

 

 

 

 それから二人は帰っていった。時計を確認すると一時間半程経過していた。結構話したな。

 

 

八幡「はあ。風呂入って寝るか……ん?」

 

 

 物陰からアホ毛がチョロり。そのアホ毛は微かに震えていた。

 

 

八幡「……小町、聞いてたのか」

 

 

小町「うぅ……ぐすっ……お兄ぢゃーーん!!!」

 

 

八幡「うわ!?なんだよどうしたんだ!?」

 

 

小町「お兄ぢゃん偉いよ!!よく頑張ったよ!!自慢のお兄ぢゃんずぎで小町ポイントカンストだよお"ーー!!」

 

 

八幡「はあ……。はは、顔ぐちゃぐちゃになってるぞ」

 

 

 

 

 今回の雪ノ下の件、葉山の協力が得られないと分かった時、本当は俺は一人で終わらせるつもりだった。葉山がいない隙に教室で暴れ回り、嫌悪の対象を雪ノ下でなくなるようにすること。そしてその後も雪ノ下や渋谷達との関係を完全に断ち切るつもりだった。でなければ、そんな人間と関わるあいつらに今度は被害が及ぶと思ったからだ。

 だから、あの時教室に渋谷達がいた事は本当に計算外だった。

 

 

 しかし一番の計算外は、土壇場になるとあんな策しか思い浮かばなかった自分自身だった。

 今目の前で顔をぐちゃぐちゃにしながら泣いている小町や、あの女の子達が問題に直面した時、果たして次の俺はちゃんと良い解決策を出せるのだろうか。自分自身を滅ぼす結果にならないだろうか。そんな不安が頭の片隅に浮かび、暫くの間消えることは無かったので考えを振り払うように、小町の頭を少し強めに撫でた。

 

 

 

おわり

 

 

----------

 

 

 

 

〜おまけ〜

 

 

 

- 車内 -

 

 

 

雫乃「……私は」

 

 

都築「……」

 

 

雫乃「私は八幡君という子を勘違いしていたわ。あの子はとても賢くて、強くて、友達思いの優しい子だったのね……」

 

 

都築「はい。八幡様はとても素晴らしい方です」

 

 

雫乃「……今まで何であんなにムキになっていたのかしら。あのとてもいい子に……初めてあの子と会った時の自分を殴りたいわ……」

 

 

都築「と言いますと?」

 

 

雫乃「もうあの子に下らない対抗心を持つことは止めるわ。八幡君と雪乃に失礼だもの」

 

 

都築「!」

 

 

雫乃「全く……ふふ、雪乃が惚れてるのが今回の件で何となく分かったわ。雪乃は否定するでしょうけど」

 

 

都築「……」

 

 

 

 

 

 

-----

 

 

 

- 都築 自室 -

 

 

ガチャッ バタン

 

 

都築「……」

 

 

 

都築「いよっしゃああああぁぁぁぁあああ!!!!!」

 

 

都築「ようやく……ようやく長年の地獄から解放された……もう奥様の特訓に付き合わなくていい……。長かった……。六年間は本当に長かった……何度執事を辞めてやろうかと思ったか……」

 

 

 

 自室にて静かに歓喜の涙を浮かべる都築さんであった。嬉しさのあまり普段は節制している酒を浴びるほど飲み次の日の業務に支障をきたし、雫乃から折檻を食らうことになるのは別のお話。

 

 

 

おわり

 

 





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