もしもシリーズ   作:ユッケライス

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申し訳ありません。
時間稼ぎです。





番外編5:もしも偶然出会ったら 続

 

 

 

雪乃「……」

 

 

 

 さて、今の状況を確認しましょう。

 

 

 

 今日私は、休日ということでずっと家の中に篭るのも健康に悪いかと思って外に散歩に出た。

 家に出る際、都築さんに見られて車での移動を勧められたけれど、断った。健康を思っての折角の散歩だもの。車に頼っては意味が無いわ。

 そして暫く歩いた。たまに散歩をするのも良いものね。歩く際の地面を蹴る音、鳥の鳴き声、車の騒音ですら私には心地良いものに聞こえた。頭の中を空にし、考える事を止め、外に歩みを進めると、普段は見れない、聞こえないものが沢山あった事に気付いた。違うわね。見ないし聞かなかっただけだったのかも知れないわ。

 ……たまには外に出なければ駄目ね。そうだわ。家の中だけでなく、これからは外でも読書してみましょう。きっと気持ちがいいと思うわーーーー

 

 

 

 

雪乃「……そうだわ、本。外で読書する為の本を買おうとしたんだった……」

 

 

 

 でも……

 

 

 

雪乃「……ここはどこかしら……」

 

 

 

 

 見慣れない場所ね……。言っておくけれど、迷ってなんていないわ。そう、これはド忘れしてるだけなのよ。決して迷子ではない。

 

 

 

雪乃「……」

 

 

 

 そう、決して……

 

 

 

雪乃「……ぐすっ…」

 

 

 

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 それから私は携帯のナビ機能の事を思い出し、起動した。あの男が言いそうな言葉で言うと、負けを知りたい、かしら?全く、貴方は変な事ばかり言って……。そんなだから友達が出来ないのよ……ふふ。まあ、可哀想だから、仕方ないから私がそばに居てあげようかしら。そう、これは仕方なくよ。

 

雪乃「ふふふ。……ん?」

 

 

 ふと横を見ると小さな本屋があった。私がいつも行く大型の店舗には程遠いほどの小さな本屋で少し古びた雰囲気だったけれど、逆にそれが味のある、趣のあるものであり、他の真新しい建物とは明らかに異なるものであった。一際異彩を放っているように感じた。一軒だけ雰囲気の違う、異空間のような……。幻想的のような……。そんな思いが込み上げてきたのは、自分がまだまだ中学生にもなっていない子供だからではなく、きっと昨夜読んだSF小説のせいだと信じたい。

 私はそこそこ発展してきた街の中にポツンと存在する、異空間に足を踏み入れた。……何で頭の中で朗読してるのよ……。これもあの男の影響なのかしら。全く、責任とって頂戴、独り言谷君。

 

 

 

 

 「あ……。いらっしゃいませ……」

 

 

 

----------

 

 

 

 

 「何か、お求めの本などありますか……?」

 

 

雪乃「あ、い、いえ。散歩をしていたら、偶々この本屋を見つけまして……」

 

 

 レジの前で本を読んでいた女性が話し掛けてきた。私より少し歳上かしら。もしかしたらもっと歳上かも知れない。それ程、目の前にいる女性は落ち着いており、品行方正、まさに私が理想とする淑女のそれであった。

 

 

 「そうでしたか……。この本屋は小さいですし、見つけにくいですから……」

 

 

雪乃「い、いえ、そんなことは」

 

 

 「ふふ、狭いですが、どうぞゆっくり見ていってください……」

 

 

雪乃「は、はい。ありがとうございます」

 

 

 

 女性は話終えると再びレジの前に座り、本の世界へと戻った。その姿はとても様になっている。

 私は本屋の中を見回した。児童書が多く、私が読んだことのある物もかなりあった。だいぶ前に読んだとても懐かしい本、最近読んだばかりの本、これから読もうとしていた本など、様々な本が並んでいた。

 

 

雪乃「これ……懐かしい。……あっ、これも……。ふふ、あれも面白かったわ……」

 

 

 小さな本屋は、私の目を輝かせるのに事欠かなかった。読んだことのある本が多く、昔に戻った気持ちになり胸が少し温かくなる。もしかして、この本屋は私の頭の中そのものなのではないか。本屋が脳で、書物が記憶。という、何ともベタなファンタジーじみた考えが浮かぶほどであった。

 

 

----------

 

 

 

 

 

 

 「……何か、お好みの本は、見つかりましたか……?」

 

 

雪乃「あ、はい。とても良い本ばかりです。私が読んだことのある本も多いですし、これから読みたいと思っていた本も沢山ありますので」

 

 

 「そうですか。それは良かったです……。あら、お客様が持っている、その本……」

 

 

雪乃「え?あ……、いつの間に……」

 

 

 私は無意識の内に一冊の本を手に取っていた。……これは私が初めて一人で読んだ本。とても面白くて、一人で全部読めたことが嬉しくて、絵と文章を何度も何度も見返した記憶がある。

 

 

 「……」

 

 

雪乃「あ、あの、何か……?」

 

 

 「あ……すみません……。……ふふ。何年も前ですけど、ここでその本を買ってくれた男の子がいたのを、思い出しまして……。妹さんのために、最初は、ここから少し離れた大型の本屋の中を、何周も、何周も探し回っていました……」

 

 

雪乃「へえ……」

 

 

 とても妹思いの優しいお兄さんだ。

 

 

 「とても、優しい男の子でした……。その後も、偶に、本を読みに来てくれて……。本の感想を言い合ったりして……。短い間でしたが、とても楽しかったです……。もう何年も会っていので、また来て頂けると嬉しいのですが……。住所も分からないので、私はここで待つことしか出来なくて……」

 

 

雪乃「……」

 

 

 「お客様は……、本は、好きですか……?」

 

 

雪乃「はい。毎日読んでいます」

 

 

 「そうですか……。ふふ、宜しければ、またお越しください……。あなたにとって……、素敵な一冊が、見つかる筈です……」

 

 

雪乃「はい、是非」

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

 その後私は本を数冊買い、ナビを起動し四苦八苦しながら家路に着いた。

 

 とても素敵な本屋だったわ。必ずまた行こう。そして、あの人と本の感想を言い合いたい自分がいる。男の子の事を語るあの人の目は少し寂しそうだった。あの女性の言う男の子にはなれないけれど、私で良ければ幾らでも通っていい。あの人が寂しがらないように。いくらでも語り合おう。そう思えるほど先程の本屋と女性は魅力的だった。

 

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

 

 「あの本を見ると……思い出しますね……。私が他の本も勧めて読んでくれたのはあの子が初めてでした……」

 

 

 

 「……ふふ、久しぶりに、またお話したいです……」

 

 

 

 

 

 

 

 

文香「またいつでもここで待ってます……比企谷君……」

 

 

 

 

おわり

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

 

〜おまけ1〜

 

 

 

- 後日 -

 

 

 

 

八幡「一体どこ連れてくんだよ。学校終わったから急いで家に帰りたいんですけど」

 

 

雪乃「黙りなさい帰宅谷君。貴方も読書が好きでしょう?特別に私のお勧めの超穴場の本屋さんを教えてあげるわ」

 

 

八幡「あん?この辺にそんな本屋なんてあったか?」

 

 

雪乃「ふふん、とても素敵な場所よ。貴方には勿体無い程にね。着いたわ。ここよ」

 

 

八幡「一々俺を貶さなくていいから……。っと、ん?ここって……」

 

 

雪乃「ふふん。こんにちは。また来ました」

 

 

 

 

 

 

文香「いらっしゃいませ……。あら……この間の……。…………!?」

 

 

八幡「あ……」

 

 

文香「……」

 

 

 

 タッタッタ… ガシッ

 

 

雪乃「!?」

 

 

文香「……」

 

 

八幡「いだだだだ……!頰っぺを鷲掴みしないでください……鷺沢さん……」

 

 

文香「!!……やっぱり……。比企谷君……ですか……?」

 

 

八幡「は、はい……」

 

 

文香「ふふ……ふふふ。久しぶりですね……。本当に……、久しぶりです……」

 

 

八幡「は、はい。お久しぶりです」

 

 

雪乃「え、あの……。もしかして、この前言っていた男の子って……」

 

 

 

文香「はい……。ここに居る比企谷君のことです……」

 

 

雪乃「!?!?」

 

 

八幡「え、何が?」

 

 

 

 

雪乃(な、何てことなの……。まさか、この男が歳上の女性と面識があるなんて……。くっ……。鷺沢さんは私や、あの速水さんですら持ち合わせていない大人っぽさ、色っぽさがある……。どうすればいいのよ……」

 

 

八幡「おい、何ブツブツ言ってんだよ」

 

 

雪乃「!!う、うるさいわよ誑し谷君!!歳上を誑し込んだと渋谷さんたちに言いふらしてあげるわ!!」

 

 

八幡「な!?やめろ!なんか知らんがやめてくれ!多分面倒臭い事になる!!」

 

 

雪乃「ふん!物静かな歳上女子と貴方なんかが面識があるのがいけないのよ!覚えてらっしゃい!チャラ谷君!」

 

 

八幡「あ!おい!待て雪ノ下!おい!」

 

 

 

 

八幡「……くそ、行っちまった……」

 

 

文香「な、何故か、私まで悪く言われたような……」

 

 

 

おわり

 

 

 

----------

 

 

 

 

 

 

〜おまけ2〜

 

 

 

文香「……それにしても」

 

 

 グググッ

 

 

八幡「いでででで……頰っぺ痛いです……」

 

 

文香「ずっとここに来なくて、何をしているのかと思っていたら……、まさかそのような不埒な子になっているとは……」

 

 

八幡「ご、誤解でふ……」

 

 

文香「……まあいいです。許してあげます……。それより、比企谷君が来てくれた時のために、読んで欲しい本を、ずっと用意してました……。裏から持ってきますので、よろしければ、持って帰って読んでください……」

 

 

八幡「あ……それはどうも……」

 

 

-----

 

 

 

文香「……ふう。どうぞ……。こちらです……」

 

 

八幡「……」

 

 

文香「……?どうしました……?」

 

 

八幡「あ、あの……この大量の本の山は……?」

 

 

文香「ですから、比企谷君に、読んで頂きたい本です……。ふふ、遠慮はいりません……」

 

 

八幡「あ、あの……。さすがにこの量を持って帰れないなあ……なんて……」

 

 

文香「……」

 

 

八幡「無言で頰っぺをつねらないで下さい……」

 

 

文香「……はあ。分かりました……。数冊……、二冊程ですかね……。少しずつ借りていって良いので、読んだらこちらに返しに来てください……」

 

 

八幡「は、はい。わかりました」

 

 

 

 

-----

 

 

 

 

 

 

文香「……帰りましたか……」

 

 

 

文香「……大量の本が残りましたね……。でも……一度に全部貸さずに、こっちの方がいいかもしれませんね……」

 

 

 

 

 だって……

 

 

 

 

 

文香「また、あの子が本の話をしに、ここに来てくれる口実が出来ましたから……。ふふ……楽しみです……」

 

 

 

おわり

 

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