昨日、雪ノ下と渋谷と砂場で遊び、初めて他の子と遊んだ嬉しさからか俺は家に帰ってからもその事ばかり考えていた。帰ってからは次はどんな山を作ろう、今度は思い切ってテレビで見た安土城でも作ってみようかな。女の子だから外国のお城の方がいいのかな、など考えていた。まあ幼稚園児の俺に作れるわけないんだけどさ。
そんな出来もしないのに見栄を張り失敗でもしてみろ、真っ先に雪ノ下が
雪乃『あら、なにかしらこのイビツなぞうけいぶつは。じゃまだからくずしてちょうだい、いびつがやくん?』
などと言うに決まっている。
まだ五歳であるが、見栄を張らない。格好はつけない。やだ、八幡超クール。決して雪ノ下の罵倒が怖いからだというわけではない。絶対。
現在の時刻は午前十一時半。親父は仕事に当然出掛けている時間である。
そんなもうすぐ昼ご飯を食べれるというゴールデンタイム直前、俺は自分の家で寝ていた。
簡単に言えば風邪を引いたのだ。
昨日の真冬での砂場遊びがいけなかったのか、はたまた夜寝ていた小町に布団を全部取られたのがいけなかったのか。
完全に最後のやつじゃねえか。小町寝相やばすぎだろ。結構序盤で布団は取られたが起こすわけにもいかず、極寒の中耐え忍びなんとか眠りにつき朝目が覚め小町を見ると、布団をグルグル巻いた簀巻き状態だった。
叩き起こそうかと思ったが、幸せそうに寝ている小町の顔を見て俺は妹の頭を撫でることしかできないのであった。
・・・母ちゃんからは今日はマッ缶も飲んじゃダメだって言われてるし、おとなしく寝てなさいって言われてるし、することねえな。どうしよう。
〜幼稚園〜
凛「せんせえ、はちまんは?」
先生「あら、凛ちゃん。八幡くんは今日風邪を引いちゃったからお休みなのよ」
凛「ふーん。はちまんかぜひいたんだ。おみまい行かなきゃ」
先生「あらあら、凛ちゃんは優しいわね。でも八幡くんも喜ぶかもしれないけど、風邪できついだろうから今回はそっとしておいてあげてね?」
凛「そっか。わかった。はちまんがなおったらまたお山つくるの。おままごともかくれんぼもしたいな」
先生「ふふ、凛ちゃんは八幡くんのことが大好きなのね」
凛「うん!はちまんはすごくやさしいんだ!あとすごくかっこいい!」
そう言い他の子に遊びに誘われ駆けていく凛ちゃん。とても優しくていい子なんだけど時折見せる負けず嫌いな性格が玉に瑕。
以前も男の子と言い合いをしてあと少しで凛ちゃんが怪我してしまうところを八幡くんが助けてくれた。
比企谷八幡くん。普段は見立たない子かもしれないけど、正義感が強いとても優しい男の子。その優しさは分かり辛いかもしれないけど、先生はちゃんと見てるよ。あの時も凛ちゃんを助けてくれてありがとね。
目を離していたとはいえ、保護者の方からお預かりしてる子が危うく怪我する所だったなんて、先生失格かしらね。
先生がそう一人苦笑していると、後ろから女の子に声をかけられた。雪乃ちゃんだ。
雪乃「せんせい。きょうはひきがやくんはどうしたんですか?」
そういえばこの子も八幡くんと一緒にいるのを見かけるわね。雪乃ちゃんも凛ちゃんも、そして八幡くんも他の子より大人びてるから波長が合ったのかしら。
先生「おはよう雪乃ちゃん。今日は八幡くんは風邪でお休みなのよ」
雪乃「え、、だいじょうぶなのかな、、」
ぽそりと八幡くんを心配する雪乃ちゃん。この子はたまに強がるけど本当は素直ないい子なのよね。
雪乃「こほん。あの男はけびょうをつかってるのね。いえまでいっておせっきょうしなくちゃ」
おっと、切り替えが早いわね雪乃ちゃん。あとそれは遠回しにお見舞いに行こうとしてるんじゃないかしら。
先生「ふふ、本当に風邪を引いたみたいよ?明日か明後日にはまた元気に来れると思うよ?」
雪乃「そ、そうですか。ふふん、しかたないからまたお砂あそびしてあげようかしら。お砂あそびだけではあきちゃうだろうから、いっしょにおままごとやかくれんぼもしてあげるわ」
ふふ、全く素直じゃないんだから。ん?あら?凛ちゃんとニュアンスが違えど内容がほぼ同じだわ。なにこのかわいい子達は。
目の前の自分の組の女の子が愛おしくなりしばらくの間先生は抱きしめるのであった。
先生「」ギュウウウウウ
雪乃「え???せんせい??」
〜翌日〜
思いのほか早く風邪が治ってしまい、今日は幼稚園にいくことになってしまった。
あと二日は休みたかったな。だらだらしたかった小町を愛でたかった。
夜寝る前の小町の可愛さは異常だったな。
小町『おにーちゃ!おにーちゃがはやくかぜなおるためにこまちがあっためてあげる!あっ、いまのこまちてきにぽいんとたかい!』
ねえ聞いた?可愛すぎない?まあ小町が布団全部取ったせいでお兄ちゃん風邪引いちゃったんだけどね。しかしそんなことは絶対に言わない。かわいい妹を悲しませるようではお兄ちゃん失格なのだ。
結局その後風邪が伝染ったらいけないということで小町が親父にはがされていた。泣き叫ぶ小町にオロオロしてる親父を母ちゃんが見た瞬間、親父の顔にビンタが炸裂してた。母ちゃんまじ怖い。さすがにあの時は親父かわいそうだったわ。
幼稚園に到着。1日ぶりの幼稚園。今日はなにをして過ごそうか。一人しりとりか、一人じゃんけんか、はたまた一人脳内会話か。などとくだらないことを考えていると、グラウンドに雪ノ下と渋谷がいた。あいつら来るの早いな。ていうかまたなんか言い争ってない?ちょっと先生?苦笑してないでとめなさいよ。
雪乃「しかたなくだけれど、わたしがひきがやくんとおままごとしてあげるのよ。そう、しかたなくだけれど」
凛「ふーん。しかたなくなら、むりしてしなくていいんじゃない?はちまんはあたしとたのしくおままごとするからさ」
雪乃「それはちがうわしぶやさん。あのおとこは女の子になにをするかわからないの。だからわたしがつねにかんししてなくちゃだめなの」
・・・なんだこれ。あと雪ノ下さん?俺を勝手に変態にしないでくれる?あ、この前へんたい谷って言われたばっかだった。いやいやそれでもだよ。
あと先生、やっと来てくれたって表情するなよ。サムズアップやめなさいしまいなさい。
凛「あ!はちまん!」
雪乃「!!」
げっ、ばれた。
凛「もうかぜはだいじょうぶ?今日はあたしとたくさんあそぶよ」
雪乃「ひきがやくん。けびょうをつかったのはかんしんしないけれど、ゆるしてあげるわ。今日はしかたないからいつもひとりのあなたとあそんであげるわ」
幼稚園に早速来てみたらこの有様である。全くこの二人は仲がいいんだか悪いんだか。そう考えながら、二人を宥めつつ遊び時間が来るのを少し期待しながら、俺は教室に入った。
〜おまけ〜
昨日は途中から我を忘れて楽しんでしまった。おままごとは慣れない事ばかりで緊張してしまった。そして俺は男なのでお父さん役、雪ノ下と渋谷はどちらがお母さん役かで揉めに揉めた。
かくれんぼになるとずっとおれのターンであった。でも本気出しすぎて俺を探してた渋谷が半泣きになりながら俺の名前を叫んでたので急いで出た。
遊び疲れ家に帰ったあとはほとんど寝ていたので次の日が来るのはあっという間だった。
凛「はちまんおはよう」
八幡「うっす」
凛「せんせいがいってたけど、ゆきのしたさんかぜでお休みだってさ」
・・・次はお前か雪ノ下
おわり