今回はあまり進みませんが、次回は長くなると思います。
あの後凛さん達と別れた小町は、寄り道せずに真っ直ぐ家へ帰っている。あんな良い気分には絶対ならないような話を聞いてしまったら寄り道なり適当にして気分を紛らわせたい所ではあるけど、如何せんあの三人にお兄ちゃんを止めておくように言われている。お兄ちゃんの朝のあの感じ。恐らく小町がファミレスにいた時も本田未央さんという先輩が抱えている問題について考えていたに違いない。そして小町がこうして帰っている間も。あの三人に頼まれた以上、小町の出来る事はお兄ちゃんを止める事。でもどう止めるか。
小町「……」
あまり考える事を得意としない小町が思い付く事と言えば、お兄ちゃんに考える時間を与えない事。極論だけど、その事について考える暇が無いほど注意を逸らす。その為にはとにかく何でもいい。あの兄は偶に勘が鋭い時があるからそこはバレないように上手く立ち回らなくちゃね。全く、お兄ちゃんのためにこんなに考えてる小町ってほんとに良く出来た妹だよね。小町的にポイント高い。……今はそんな事言う空気じゃないね。
自分の頰っぺを軽く叩く。
さ、早く帰らなくちゃ。これは小町があの三人から引き受けた依頼のようなもの。「成すためにどうするか」。それが決まった時点でもう作戦は始まってしまっている。
今までそれ程気にならなかったのに、若干の焦りか緊張からか、何回も行き来しているあのファミレスから家までの距離が遠く感じる。急がなくちゃいけないのに。
小町を呼び出した凛さん達に非はないけど、この家までの道のり、そして家までの時間が堪らなくもどかしく感じてしまった。
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小町を呼び、話が終わり別れた頃には時計の針は十一時を指していた。もっと早く終わるつもりだったけど予定より話し込んでしまった。午前中は私と加蓮と雪乃の三人だけだったけど、午後からは奈緒と奏が合流出来るらしい。集合場所はこのままファミレス。二人が来るまでの間、少し早いけど昼食にしようか。そう思ったが雪乃が入口付近で席が空くのを待つ客達がいることに気付いた。よく見ると私達が席に着いた時に居た周りの客も既におらず、新しく別の客達が食事を摂っていた。周りに気付かない程集中していたらしい。
これ以上の長居は迷惑になると思い、会計を済ませ店を出た。雪乃の提案で、私達は二人との集合場所を変えることにした。
凛「集合場所は……雪乃の家に変更……。送信……っと」
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用事を済ませ奏と落ち合い、あたし達は雪乃の家に到着した。いつ見ても大きな家……屋敷……なのかな。お手伝いさん達が家に招き入れてくれる。仕事で忙しいらしい雪乃のお母さんは今日は休みらしく、あたし達が家に入るなり挨拶をしてくれた。
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奈緒「ごめん、お待たせ」
雪乃「二人ともいらっしゃい。急に場所を変更してしまってごめんなさいね」
奏「あら、構わないわよ。私の家からはあのファミレスよりも雪乃の家の方が近いから却って好都合だったわ。雪乃の家は大きいから楽しいってのもあるけれど」
そう言い奏がクスリと笑う。加蓮も話に入ってきた。
加蓮「さっきお昼食べたんだけど、雪乃が作ってくれたんだ。すっごい美味しかったよ」
奏「そう。今度は私も頂きたいわね」
加蓮「うんうん!頰っぺた落ちちゃうレベルだよ」
そんなに美味いのか。あたしもちょっと興味あるかも。って、多分そんな話をしてる場合じゃない。
奈緒「な、なあ。今日集まったのってあの事についてだろ?午前中もはなしてたんじゃないのか?」
凛「そうだね。じゃあそろそろ始めようか」
加蓮「……」
奏「とりあえず午前の間に決まった事を教えてくれるかしら?」
雪乃「ええ」
そう雪乃は返事をすると決まった事を話し始めた。
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雪乃の話によると午前中に決まった事は三つ。
一つは未央のクラスの現状把握。未央の話だけでは、未央とあたし達の認識が大なり小なり違ってくると思うから。未央だけの力じゃ無理かもしれないけど、あたし達が加われば大丈夫な問題かも知れない。まあ、あたし達が加わっても無理な問題では無いことを今は祈っていよう。
二つ目はこの問題の主犯格であるクラスの女子三人との接触。正直あたしはこの三人をあまり知らない。一回も同じクラスになったことはないし、小学校時代の彼女達のことも分からない。っていうのも、あたし達の中学ではあたし達の住んでる地区の小学校の子とは別に隣の地区の小学校の子達も集まるからだ。未央とこの三人は隣の地区の小学校出身。中学に上がると単純に倍の人数になる訳だから、顔は知っているけど友達ではない、なんてのは良くある。あたしもこの四人の他に友達は割と居るほうだけど、顔しか知らない奴らも結構居る。主犯格がどんな奴らか。先ずはこの三人にアプローチをかけてみる。
そして三つ目は比企谷をこの件から除外すること。あたしはこの三つ目があまりピンと来なかった。
奈緒「なあ、確かにこの件はあの相談室を開いてるあたし達五人に来たようなものだけど、どうして比企谷を入れないんだ?あいつが居た方が良さそうな気がするけど。って、そもそも三つの内の一つに入れるほどの事か?」
あたしが疑問を示すと雪乃は口を開いた。
雪乃「……小学校の時、私がクラスの女子達から妬まれていた事を覚えているかしら?それを奈緒さんを含めたここに居る子達が解決してくれたわ」
奈緒「あ、ああ。そりゃまあ覚えてるよ。でもあれはあたし達だけじゃない。あの時は比企谷もだろ?」
雪乃「そう。彼もよ。彼も私の問題解決の為に裏で動いてくれていた。終わりを迎えたあの教室で私達五人が抱き合っていた時、ちらりと彼を見たの。その時の安心した表情。私はその時は私の抱えていた問題が無くなったから安心したのだと思った。でも、かなり後からうちの執事から聞いた話、彼の性格などを含めると、それだけでは無い気がしたのよ、あの表情は」
奈緒「ど、どういう事だよ」
奏「……彼が、彼の持っていた最後の一手、言わば奥の手かしら。それを出さずに済んだ。その時の表情はそう見えた。そういうことかしら?」
奏がそう言うと雪乃は頷く。
雪乃「彼があの教室の場面の少し前、彼は葉山君と一緒に教室を出ていったわ。自己紹介をした以外接点が無かった二人が、しかも比企谷君の方から葉山君に話しかけて一緒に。普段は私達以外に自分から話しかけることはまず無いのに。そして比企谷君が教室に戻ってきて時間が経ってから葉山君が戻ってきた。当時の判断材料はこれだけだけれど、私には違和感を感じずにはいられない。彼が話しかけて一緒に出て行って、別々に戻ってきた事が」
奏「?」
雪乃「まるで用が済んだ後に何処かへ葉山君を誘導したように感じたの。あの場合、葉山君に何かを提案し、断られた。だから自分がする事になった。その為には葉山君は邪魔だった。だから時間稼ぎのため別の所に行かせた。こんな所かしら」
奏「つまり、タイミング的に雪乃に関することかしら。それを提案、もしくは協力してくれるように頼んだけれど断られた。だから自分が動くしかなくなった。その内容を私達にも言ってなかった事から察するに良くない内容よね。自分自身に降り掛かってくるような。要するに……自分を犠牲に?それがあの時起きていたかも知れない、そして今回関わらせたらそうなる可能性がある……ってこと?」
奈緒「は、はあ?アイツがそんなタマかよ。いや、悪く言ってるんじゃなくてさ、比企谷もそんな馬鹿な事は流石にしないんじゃないか?」
雪乃「あくまで可能性の話よ。全部私の頭の中での想像。私も、矛盾しているけれど、馬鹿だけど頭は悪くないと彼のことは思っているわ。でも、どうしてもその可能性を拭い切れない自分自身がいるのよ」
奈緒「……」
あたしが黙ると、雪乃が再び話し始める。
雪乃「とにかく、不安事項は無くすわ。彼を小町さんに止めておくように頼んであるわ。私達も彼の動向を確認しつつ、問題に取り組みましょう」
加蓮「……」
奈緒「それでも、小町でも駄目だったらどうするんだよ?」
凛「その点に関しては大丈夫だと思うよ。一人助っ人を頼んでるから。対八幡ってことなら超強力だと思うよ」
奈緒「?」
凛の言っていることがよく分からなかった。
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- 同時刻 -
まゆ「こんにちはぁ八幡さぁん♡本日はお招き頂きありがとうございます♡」
小町「こんにちはまゆさん!ささっ!玄関に立ってないでどうぞ上がってください!何も無い家ですけど!あっ、兄の部屋行きます?」
まゆ「まあ、是非♡」
八幡「いや呼んでないからね?ってか何で家の住所知ってるんだよ。あ、こら、俺の靴持って何しようとしてんだよ……おい、鞄の中に入れようとするな」
まゆ「もう、わがままですねぇ」
小町「お兄ちゃん!駄目でしょそんなこと言ったら!メッ!」
八幡「何だこれ」
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あれからしばらく話し合っていたが、そろそろ門限が近いということもあり雪乃の家を後にした。凛と奏は帰る方向が逆なので今は加蓮と二人だ。
奈緒「はあー……聞けば聞くほどって感じだよな。こんなのあたし達でなんとか出来るのかなあ」
加蓮「……」
奈緒「まあやるしかないよなぁ。未央も絡んでるし……って加蓮、雪乃の家にいた時からあんまり話してないけど、どうしたんだ?」
加蓮「え?あ……うん、ちょっと……ね」
奈緒「?」
加蓮「……正直ね、アタシ達で本当に解決出来るのかなって……怖いんだ。昨日凛達と会う約束をして、朝には小町ちゃんと会って話したけどさ、本当に上手くいくのかなって。小町ちゃんが居る手前、平静を装ってはみたけど、どう映ってたのか分からないし。それに……少し嫌な予感がしちゃうんだ……」
奈緒「加蓮……」
雪乃の家に居た時から加蓮は普段より口数が少なかった。その理由はこの件に関して正直関わりたくないからだったのか。雪乃の料理の腕が話題に挙がった時は加蓮は元気に話していた。もしかしたらそのまま話題を逸らして、自分を落ち着かせようというせめてもの抵抗だったのかもしれない。
奈緒「大丈夫だよ加蓮」
加蓮「え?」
奈緒「確かにあたしだって怖いよ。正直どうなるか分からない。でも、どうなるか分からなくてもあたしは加蓮だけは絶対に守ってやる。加蓮に悲しい思いはさせない。それに、今まで何とかなってきたじゃんか。だから、さ、頑張ろう?」
加蓮「……」
奈緒「……」
あ、あれ?
加蓮「……ぷっ、なにそれ」
奈緒「あー!笑ったなー!?人が真面目に言ってるのにー!」
加蓮「だって、ふふ、急に奈緒がかっこいいんだもん。あはは」
奈緒「ふ、ふん!何だよ!あたしはもう行くからな!」
慣れない事はするもんじゃないな。あー恥ずかしい。まあ加蓮が少しでもいつもの調子に戻ったんなら良しとしよう。プラマイの結果プラスだ。そういうことにしとこう。
「奈緒……ありがとね」
後ろから先程まで隣を歩いていた友達の小さな声が聞こえたけど、聞こえない振りをした。
…いいよ。
続く
今回もありがとうございました。