前回長くなると言いましたが、思ったより長くなかったですね……。申し訳ありません。
今回からオリキャラが出てきます。
休日が終わって月曜日、私と雪乃は未央を呼び出した。何処から聞いたのか、はたまた未央が呼んだのか、かおりも一緒にやってきた。
凛「ごめんね呼び出して」
未央「いやいや、全然いいよ。えっと、クラスの事だよね?」
凛「うん。とりあえず少しの間は未央のクラスの状況を見る事にするよ。さすがに授業中は無理だから、授業の間の休み時間だったり昼休みだったりしか無理だけどね」
未央「う、うん。分かった、よろしくね」
雪乃「そして大体の状況が掴めてきたら三人に接触を図るわ。本田さん、その三人の事を大まかでいいので教えてくれるかしら?」
未央「うん。えっとねーー」
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未央の話によると、三人の名前は、
特徴として野中は三人の中での中心らしい。ということはこの野中がクラス内を牛耳る言わば女王ということかな。
上里は常に野中の傍にいるとのこと。垢抜けているという訳ではなく、見た目だけ見るととても大人しそうな印象を受けるらしい。
恵は初めて見た時はお淑やかな印象だったらしい。上里と違って野中といつも一緒という訳ではない。どこへ行くにも野中にべったりの上里と違い、一人で行動することも多いとのこと。読書をよくしていて、口数も多い方ではないらしい。
未央「ーーーって感じかなぁ……」
雪乃「自己顕示の野中、金魚の糞上里、傍観者恵という感じかしら」
凛「本当雪乃ってこういう時遠慮しないよね」
かおり「はっきり言い過ぎだし、ウケる」
未央「あ、あはは……」
雪乃「凛さんも折本さんも何を言っているのかしら。立場を利用し好き勝手振る舞う輩どもに対して何故遠慮しなければならないの?」
かおり「ねえ凛、雪ノ下さんっていい性格してんねぇ。仲良くなれそうだよ」
凛「まあ敵だったら間違い無く関わりたくないよね。まあそういう所が良い所でもあるんだけどね」
雪乃「褒め言葉として受け取っておくわ」
友達だから良い所たくさん知ってるけど、敵だったら本当に関わりたくない。精神やられるまで毒舌吐かれそうだよ。幼稚園の頃に男の子を怒涛の口撃で大泣きさせたって八幡から聞いたけど、普通にやばいよね。ちなみにその時八幡はまだ雪乃の事は名前も知らなかったらしく、その男の子に手を合わせることしか出来なかったらしい。雪乃のノックアウトした相手に対してマウントとるようなこの性格、その口撃力は遺伝なのか何なのか、もし遺伝ならお父さんとお母さんのどっちに似たんだろう。少し気になる。
雪乃「私は母さん似よ」
凛「うわびっくりした、心臓に悪いから心の中読まないでよ」
雪乃「まあ何にせよ、野中さんね。野中さんをどうにかすれば上里さんは一緒に潰れてくれそうね」
凛「上里は確かにそうかもしれないけど、恵は?」
雪乃「二人がそうなると自然にフェードアウトという感じかしら。聞いた所によると別段自分からアクションを起こすということは無いでしょうね。主犯が三人と聞いていたけれど、上里さんと恵さんは野中さんと同じグループなだけであって、その実態は典型的なボスのワンマンね」
未央「何だか雪ノ下さん探偵みたいだね……!」
雪乃「呑気な事を言っている場合ではないわよ本田さん。この件はあなたと情報を常に交換し合う必要があるわ。クラス内の、特に私達が監視不可な授業中など、あなたの出来る限りで構わないから報告して頂戴」
未央「うん……!わかったよ」
呑気な事を、とは言うけど、探偵みたいだと言われて少し得意げになっているのが分かるよ。こういう所は歳相応なんだよね。
雪乃「凛さん、何か?」
凛「おっと……もうだからさあ」
本当に感受性が豊かというか、鋭いというか……。
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昼休み、凛から連絡を受けた私は加蓮と奈緒と、未央のクラスの様子を遠くから監視していた。
未央のクラスは二階に位置する。私達は次の授業が音楽だったこともあり、先に音楽室に入り昼食を摂りつつ監視をする事にした。音楽室は別館の三階、もっと言えば未央のクラスの向かい側に位置しているので、これ以上無いほどの場所と言えた。クラスの近くでは雪乃と凛が二人で話している振りをしつつ教室内の様子を探ることになっている。
奏「覗きみたいで悪趣味な気もするけど、仕方ないわよね」
奈緒「まあまあ、未央のためだって。仕方ねーよ。それにどっちかと言うと覗きじゃなくて張り込みだろ」
窓際に座っている奈緒が肘をつきながら窓の外を眺める。勿論視線の先には未央のクラス。奈緒の指摘通り、張り込みの方が適しているだろう。数日前に夜寝れなくて見た映画を思い出す。あの映画は殺し屋の話だった。作中のワンシーンでこのように対象を探すシーンがあった。なら役的に私達は殺し屋かしら。尤も、私達は殺すなんてことはなくて、ただ対象の動向を探るだけだけれどね。だとしたら探偵や刑事の方がこの場合適しているわね。今度そういう映画も見てみようかしら。
加蓮「でもここは三階で向こうは二階だよ。私達からは窓際付近は見えるけど、教室の入口側にその三人が居られたら私達じゃ確認出来ないんじゃないかな」
奈緒「あ……確かに」
奏「それに関しては大丈夫なはずよ。その三人は昼食は窓際の席で食べるらしいから。入口側だと人の出入りが激しいから煩わしいらしいわ」
らしい、というのは勿論未央に聞いたから。
奏「それで、どれがその子達なの?今更だけど、私その子達の事全くと言っていいほど知らないのよね」
加蓮「私も」
そうなのよ。私はその三人を知らない。同じクラスになった事が無いという事も理由の一つだけれど、それ以上に、言っては悪いかもしれないかもしれないけど、クラスの中心的存在の人間というのは何かしら特徴がある筈。容姿が優れている、リーダーシップがある、ユーモアに溢れている、など、挙げだしたらキリがないけれど、何かしら一つは挙がるはずなのよ。そして他のクラスの人間からもそのクラスの中心はその人物なのだという事は少なからず認知される筈。あの葉山隼人君がそうだった様に。未央からの情報を凛と雪乃を伝って聞いたけど、他の二人はともかく野中という子くらいは知られていていいと思う。それを知らない、聞かないと言うことはそんなに何かに突出したような子達では無いと言うことなのかしら。
奈緒「アタシは何とか顔と名前が一致する程度だな。窓際で食べるのが本当なら、まだ居ないな。購買でも行ってるのかも。……あ、言ってたら丁度来たな。あいつらだよ、あの後ろの窓際に座った三人組。一番背の低い小柄な子が上里、一番髪の長い子が恵、そんで、今携帯いじってるショートカットの子が野中だよ」
奏「……」
遠目だが、上里という子はとても線が細い。偏見かもしれないが、初見のイメージは大人しそう、気が弱そうで争い事は好まないような雰囲気、というものだった。顔つきも優しそうな印象を受ける。
恵という子は雰囲気的には上里とは違った大人しさ、というのは変な表現の仕方かも知れないけれど、そんな感じ。顔は前髪でよく見えない。
そして未央曰くクラスの中心、野中は活発そうな見た目。雰囲気はかおりのような感じ。でもかおりと比べるとツリ目で気が強そうな所が違うところかしら。しかしそれでいて幼さも残る可愛らしい顔立ち。
奏「何か……意外ね。彼女達が未央から聞いたような事をしてるなんて」
加蓮「確かにそうだね……何か少し信じられないかな」
奈緒「アタシも改めて見るとって感じだよ。上里なんて絶対そんなことしなさそうだよな」
奏「まあ何にせよ、暫くはこの三人をマークしなくちゃね。この音楽室での昼食も続くかもね」
奈緒「だな。昼休みもあと半分もないし、この時間で何かするとも思えないしな。初日は何も動き無しって感じかな」
さっきの言葉通り、暫くはこの音楽室からの張り込みが続くかもしれない。私は問題とは裏腹に、まるで映画の主役であるかのような気分に少し胸を踊らせていた。
「……」
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雪乃「さて、それでは今日の報告を始めましょうか」
放課後、私は四人と本田さん、そして私達とは別に行動、もとい協力してもらっている小町さんに集まってもらった。折本さんも何故か来ているけれど、もう本田さんとセットという認識でいいのかしら。
雪乃「っとその前に小町さん、わざわざ来て貰ってごめんなさいね。小町さんは学年も違うし自分の時間があるかもしれないのに……」
小町「いえいえ、問題ありませんよ!皆さんに言われればいつでも駆けつけます!」
雪乃「ふふ、ありがとう」
本当にいい子。あの捻くれ者とはえらい違いね。でも比企谷君がこの子を可愛がる理由が少し分かる気がするわ。
雪乃「それではそのまま、先ずは小町さんから報告してくれるかしら?」
小町「分かりました!えっとですね、小町はまゆさんとうちの兄の相手をしてます。正直あの兄は何かしら動くかと思いましたけど、そんな様子は全く無いですね。その、まゆさんが半端じゃないので……完封状態とでも言いますか……」
小町さんがそう言うと凛さん達が『あぁ……だろうね……』と声を揃えた。まあ、そうでしょうね……。
未央「あはは……。確かにまゆちゃんはすごいらしいね。あ、小町ちゃん、ちゃんとした挨拶がまだだったね。私本田未央。それでこっちが折本かおり。改めてよろしくね」
かおり「よろしくね、こまっちゃん!ていうかまさか比企谷にこんな可愛い妹ちゃんがいたとはね。ウケる」
小町「比企谷小町です。こちらこそよろしくお願いします!いやあ、こうして見るとすごいですね、全員美人さんで。ああそうだ、兄の報告でしたね。さっきも言いましたけどまゆさんが凄くて……。初日にお兄ちゃんの部屋に入るや否や布団の中に入ろうとするし、タンスから服を持って帰ろうとするし、キッチンの食器棚にペアのマグカップ置こうとするし、それはもう凄かったです……あとあれもあったな……」
雪乃「も、もういいわ小町さん、充分よ。兎に角、比企谷君に動きは見られないという事は分かったわ」
これ以上は危なそうだからやめておきましょう……。とにかく小町さんと佐久間さんはこちらの期待以上の成果を挙げてくれているということにしておこう。
奏「次は私達ね。私と奈緒と加蓮は朝に雪乃にメールで言われた通り、昼休みに教室前とは別の角度から監視をしたわ。五限が音楽で移動教室だったから、音楽室で監視を行ったわ。でも特に目立つ行動は無かったわね。音楽室は未央のクラスをよく見ることが出来るから、暫くは音楽室で様子を探ろうかと思っているわ」
雪乃「確かに音楽室は都合が良さそうね。日替わりで交代して監視するのも有りかも知れないわね……。報告ありがとう。続いて私と凛さんから。私達は各休み時間と昼休みに教室内の様子をこっそり眺めていたわ」
凛「さすがにずっと見ていると怪しまれるだろうから教室を通り過ぎる振りをしたり色々したけどね」
雪乃「ええ。結果的に奏さん達と同じで特に動きは無かったわ」
奈緒「だよなあ……」
雪乃「あまり長引かせるべきでない問題だから、早く解決したい所ではあるのだけどね。では最後に本田さん、お願いできるかしら?」
未央「あ、うん。今日は可菜ちゃん達は大人しかったよ。特にこれといった事は無かったかな。私も総務として働くような用事も無かったのもあるかもしれないけどね」
雪乃「そう、ありがとう。……初日はこんな所かしら」
加蓮「三人との接触はどうする?」
雪乃「そうね。頃合いを見定めて図るのが理想だけれど……。短期決戦が理想だから近い内に行きましょう」
奈緒「三人共だよな?」
雪乃「ええ。でも、三人同時ではなく個別に接触した方が都合が良さそうね。野中さんは私と凛さん、上里さんは加蓮さんと奈緒さん、恵さんは奏さんと、そうね……折本さん、頼めるかしら?」
かおり「オッケー。任せてよ」
雪乃「では、その人選で。明日からも動向を探っていくけれど、些細な事でも構わないから、なにか気付いたら報告し合って頂戴。集まってくれてありがとう。今日はこの辺で終わりにしておきましょう」
私がそう締めると、各々が返事をして帰る支度を始めた。
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雪乃「もしもし、佐久間さん?私だけれど」
まゆ『あら、雪乃ちゃん、どうかしましたか?』
雪乃「いえ、別に大したことではないのだけれど、お願いした通り比企谷君を止めてくれてるみたいね、感謝するわ」
まゆ『あぁ、そのことでしたか。ふふ、お礼なんていいですよぉ。まゆにとっては良いことずくめですから。役得っていうものですかねぇ』
雪乃「ええ、そのようね。小町さんから聞いたわ。あまり過度で強引な方法は感心しないけれどね」
まゆ『あら?もしかして嫉妬ですかぁ?』
雪乃「ふん、言ってなさい。とりあえずそのまま小町さんと頼んだわよ。何か起きたら言って頂戴」
まゆ『分かりましたぁ。雪乃ちゃん達も何かあったら言ってくださいね』
雪乃「ええ。それじゃ」
まゆ『はぁい』
---Pi
雪乃「佐久間さんは大丈夫そうね。……まあ比企谷君は大丈夫じゃなさそうだけれど」
「……」
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あれから数日経過したけど、野中さん達に動きは無い。本田さんからの話でもここ最近は総務としての本田さんの言うことを素直に聞いているらしい。
私は例の音楽室で、相も変わらず三人を見つめていた。私が見つめている先の教室の窓は開いているが、他の生徒達の声もあり、三人の声までは拾えない。
奏「これじゃ動くに動けないわね」
加蓮「もしかして改心したとか」
雪乃「……」
加蓮「……な訳ないか。あはは」
改心するとは思えない。ああいった人間はある日急に、突発的に、心情に変化が起きることなど先ず無いだろう。プラスからマイナスになることは容易くとも、マイナスからプラスになることは容易なことではない。私はそう考えている。
あの日私を虐げた彼女達は、今どこで何をしているのだろう。この中学で見かけないという事は、別の地区の学校にでもいるのだろうか。そして対象を私から別の子に変え、今でもあの時と同じようなことをしているのだろうか。
雪乃「……」
こんな事を今考えても仕方ないのに。
そろそろ昼休みが終わる。ふと隣にいる二人を見る。加蓮さんは監視に気を取られて自らのお弁当の中身が減っていない事に気付いたらしく、急いで食べ進めている。奏さんは手鏡で髪を整えていた。二人とも注意力が散漫しているような気がするが、斯く言う私も、毎日同じことの繰り返しで少し油断していた。
監視していなくてはならない三人の内の一人が教室から居なくなっていたことに気付かなかった。
続く
今回もありがとうございました。
中学生編、もう少しお付き合い下さいm(_ _)m