お久しぶりです。なかなか時間が取れなくて申し訳ありません。前の話覚えてないという方は御手数ですが一つ戻っていただけると幸いです。それでは今回も短いですがよろしくお願いします。
未央と会った翌日の放課後、アタシは日誌を担任に渡し終え職員室を出た直後の上里を捕らえた。今日、上里が日直だということは休み時間に未央のクラスを覗いた時に黒板の日直担当欄にこいつの名前があったから知ることが出来た。
上里が何か言ってるけどアタシは無視し続けた。
人気の無い校舎裏に辿り着くと歩みを止め上里を睨む。しかし、片手は上里を掴んだまま離さない。
かおり「……」
明「……と、突然何?何なの?」
状況を掴めていない目の前の少女に、折本かおりは聞こえるように舌打ちした。
睨み続けるかおり、一方で困惑し続けている明。どちらも言葉を発しない時間がしばらく続いた。その空間を破ったのはほぼ同時に両者の携帯から鳴った着信音だったが、誰かしらから来たであろうその連絡を確認しようとしない、気にする事無く目の前の相手を捉えたままの少女と、着信を指摘することで少しでも目の前の少女から解放されたいが、それを許さない空気であるために黙り込む少女が居た。逃げることの出来ない上里にとって、その音が唯一活路を見出すかもしれない救いであったが、折本の携帯から着信音が鳴り止み、やがて自らの携帯からも音が無くなったため、再び静寂がその場を支配した。
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加蓮「……駄目。出ないや」
雪乃「そう……。全く、何処で油を売っているのかしら」
加蓮がかおりに電話を掛けたけど、かおりは出なかった。未央が今日は欠席らしいから、かおりが来たら報告会を始める予定だった。けど中々現れないため、痺れを切らした雪乃が加蓮に電話を掛けるように頼んだ。
奏「かおりは後で来るでしょうから、先に私達で始めておく?」
凛「このまま待ち続けるってのもあれだしね」
雪乃「……それもそうね」
加蓮「あ、じゃあ私がその辺見てくるよ。今日も特に変わりない一日だったし」
加蓮がそう雪乃に提案する。おいおい加蓮、特に変わりないって……、思ってても口にする物じゃ……、ほら、雪乃が少し苦い顔になっちまったよ。
雪乃「……そうね。では加蓮さん、頼んでいいかしら?」
加蓮「任せてよ」
奈緒「あ、アタシも探すよ。一人より二人の方が効率いいだろうし」
一瞬雪乃が訝しむような視線を送ってきたが何とか了承して貰えた。ああ言ったけど、加蓮に付いていく理由が、中々会議を始めることが出来ないため徐々に表情が険しくなっていく雪乃に気付き、外の空気が吸いたくなったのは内緒だ。
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〜同時刻〜
教室で友人が戻ってくるのを待つ少女。その友人の用が済み戻ってくるまでに掛かる時間は数分程度の筈なのだが、かれこれ三十分は経過している。先に帰ったか。そう考え教室内を見回すとその子の鞄はきちんと机の上に置かれている。流石に痺れを切らしたので電話を掛けても、無機質なコール音が聞こえるだけ。
可菜「……」
疑問に思った野中可菜は、一人静かに教室を出た。
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〜図書室〜
まゆ「八幡さぁん、読みたい本は見つかりましたかぁ?」
八幡「いや、まだ見つからないな。つか最近ずっとお前と居る気がするんだけど」
まゆ「まあ、まゆと一緒にいるのが当たり前になってるだなんて、八幡さんたら直球すぎます♡」
八幡「言ってないからね?俺の行くとこ全部に佐久間が付いてきてるって言ってんの」
まゆ「それはそうですよぉ。八幡さんの居るところにまゆ有り、です♡」
八幡「何だよそれ……」
まゆ「それにしても見つからないですねぇ……。向こうで少女漫画読んでていいですかぁ?」
八幡「だから時間掛かるだろうから帰っていいって図書室来る前から言ってるだろ……」
まゆ「それは駄目ですよぉ」ズイッ
八幡「うっ……。……はぁ、なるべく早く見つける努力はする」
まゆ「はぁい。お目当ての小説見つけたら呼んでくださいね。……間違ってもまゆを置いて帰らないで下さいね?あと、寂しくなっても呼んで大丈夫ですよぉ♡」
八幡「分かった分かった……。早く行きなさい……」
まゆ「んもう、素直じゃないですねぇ。では、また後で」
八幡「……はあ、やっと自由になった……。つかなんでうちの学校は少女漫画は置いてるんだよ。少年漫画も置いてくれてもいいんじゃないですかねぇ」
そう独り言ちる。さっき言った通り佐久間が最近俺に対して干渉し過ぎている。この前なんてクラスが違うのに教室を出た瞬間に佐久間が待ち構えていた。負けじと次の日に自称帰宅部のエースである俺はダッシュを決め下駄箱へ向かったがその時も既に佐久間が回り込んでおり、笑顔でこちらを見ていた。あの時はびっくりしたね。うん、本気で。佐久間お前、タイムリープしてね?あれ?時かけって行けるのって過去だけだったっけ?まあとにかく、恐怖と同時に少し違和感を覚えた。この違和感の正体が何なのかまでは分からないし、佐久間が常に居るため考える時間が無かったが……。
八幡「……おっ、あった……」
そうこうしている内に目当ての小説を見つけた。最近自分の時間が無かったから小説も読めてなかったな。家に帰っても最近急に小町が勉強教えてと言ってきたので付きっきりだし。まだ中一なのにどういう風の吹き回しだと不思議に思ったが、せっかく小町がやる気を出してるんだ。兄として幾らでも協力しようではないか。
でも小町ちゃん、数学ばっかり聞いてくるのやめてね。お兄ちゃん文系はどちらかと言うと出来るけど数学は分からないからね。それを知ってる筈なのに小町は何故か毎回毎回数学を俺に聞き続けている。時間が掛かるったら無い。この前なんて一問解くのに一時間掛かった。答えを見ようと提案しても『お兄ちゃん!何舐めたこと言ってんの!自力で解かないと意味無いでしょ!』と怒られた。時間かけすぎる方が意味無いと思うんだが……。それを言ったら『このゴミは……』と溜息を吐かれた。とうとうごみぃちゃんではなくゴミに成り下がりました、どうも俺です。……なんて、下らない事考えてる場合じゃない。さっさと借りて帰ろ。
そう思い小説を手に取り、受付へ踵を返した瞬間、女生徒とぶつかってしまった。
八幡「あ……す、すみません……」
「……いえ、こちらこそ」
長い髪にスラッとした華奢な体。一瞬雪ノ下かと見間違えた。
八幡「……」
まゆ「……他の子とお話するの、楽しいですかぁ?」
八幡「うお……、急に出てくるなよ……お話って、ぶつかったから謝っただけだろ……」
その生徒の方を見ると、その生徒は既に出口の方へ歩いていた。
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加蓮と並んで校舎内を歩く。放課後になり時間が経っただけあって、残っている生徒はほぼ居ない。昼間の生徒達の喧騒が嘘のようで、聞こえるのは遠くから吹奏楽部の楽器を演奏する音と、グラウンドから微かに聞こえる野球部の打球音くらいだった。
奈緒「かおりのやつ、どこにいるんだ?」
加蓮「ほんとにね。いつもなら私達より先に居るのに」
探し始めて五分程経った。学校の規模はそれほど大きくないからすぐに見つかると思ったけど、中々見つからない。
加蓮「帰っちゃったのかな」
奈緒「毎日顔出してたのに、今日急に帰るもんかな?」
加蓮「だって、今日未央休みなんでしょ?お見舞いにでも行ったんじゃない?」
成程、確かにその可能性もある。確認のため、かおりに再度電話を掛けたがやっぱり出なかったから、あと十分程探して見つからなかったら報告会に戻ろうと加蓮と決めた。
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加蓮「ちょっとトイレ行ってくるね」
奈緒「ああ、その辺で待ってるからな」
とててっ、と加蓮が女子トイレの中に入っていく。手持ち無沙汰になったため、ここから少し先にあるウォータークーラーで水を飲むことにした。
奈緒「んっ……冷たい」
夏休み前ということもあり、まだまだ暑い。ウォータークーラーの水があたしの体温を下げてくれた気がした。
後ろから足音がしたため、加蓮かと思い振り向くと、思いもよらない人物が歩いていた。相手がこちらに気付く。
奈緒「……」
可菜「……」
野中可菜。今回の問題の核であろう人物。まさかこんな所で、しかも一対一で会うことになるとは思わなかったため、あたしはしばらくの間野中を見つめていた。
可菜「……何か?」
おっと……。さすがに野中は不審に思ったらしい。
奈緒「えっ、あー……、えっと……ウォータークーラー、使うかい?」
我ながら下手な返し。野中のあたしに対する訝しむ目は変わらない。
可菜「……大丈夫。喉乾いてないから」
奈緒「そっか」
そう言い野中はその場を立ち去る。野中が少し遠ざかったところで、加蓮が戻ってきた。
加蓮「もう奈緒〜、ここにいた。ちゃんと見える所で待っててよ」
加蓮の声がした瞬間、野中が立ち止まった。こちらをじっと見ている。というより、加蓮を見ている?
奈緒(ん……?)
加蓮「奈緒?」
奈緒「……え?ああ、ごめんごめん」
加蓮「どうしたの?」
奈緒「い、いや、えっと、次から気をつけるよ」
可菜「……」
野中が再び歩く。先程と同じく、見過ぎていたらしい。加蓮が同じ方向を向いた。
加蓮「? どこ見て……あの子って……」
奈緒「……」
彼女と出くわした時点で、何とか少しでもクラスに関して探りを入れるくらいしても良かったかもしれない。そんな後悔よりも、何故加蓮を凝視していたのか、そちらの事であたしの頭はいっぱいだった。
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かおり「……」
明「……あの……」
かおり「……アタシが未央と仲が良いのは知ってるよね?」
明「……」
かおり「知らないとは言わせないよ。小学校も同じ。しかもアタシらと同じクラスになった事のあるあんただからね」
明「……」
上里は静かに頷く。
かおり「昨日、放課後に未央の家の近くで会ったんだ。あんな未央見たこと無かったよ。あの子の、あんなぐしゃぐしゃな作り笑い見たことなかった、見たくなかった。……あんたをここまで拉致った目的は三つ。一つ目はクラスの支配なんて馬鹿馬鹿しいことから手を引くこと。二つ目は未央に謝罪すること。……三つ目は、二度と未央に関わらないことだよ」
自然と口調が荒くなる。
かおり「首を縦に振るまで帰らせないから」
そう言い、上里の胸倉を掴んでいた手に力を入れる。
明「うぐっ……ぅ」
上里の顔が赤くなる。早く首を縦に振って……。出来ればアタシもこんな事したくない。
明「……!」
その時、背後から声がした。
「あんた、明に何してんの?」
不意をつかれたため、少し驚いたが、声のする方を振り向いた。
かおり「……野中」
目の前の、こちらを捉えるその目は、心底不満げにアタシを睨み付けていた。
続く
今回もありがとうございます。中学生編は残り2~3話で終わる予定です。もう少しお付き合い下さい。