ママのんの名前が分かりませんのでこちらで考えてしまいました。申し訳ございません。
雪ノ下雪乃の母、雫乃は愛娘である雪乃のことを考えていた。
雪ノ下建設が近年急激に業績を伸ばしており、多忙を極める毎日ではあるものの、我が子である陽乃と雪乃には母親として出来る限りの愛情を注いでいる。
陽乃はもちろん、雪乃はとても可愛らしい。それはもう親の贔屓目無しでも可愛い子だと言える。雪ノ下家の人間として、そして一人の女として、娘二人には基本的な礼儀作法はもちろん、最低限必要になるであろうコミュニケーション能力の向上、一般教養など、私に教える事ができる素養は徹底的に教えてきた。
まだ子供の二人には少し酷とも言えるかもしれないが、どうか娘達の将来のための親心、愛情故だと分かってほしい。それを娘達に分かれというのはエゴな気もするので直接言うことは出来ないのだけれど。
陽乃は全ての分野において飲み込みが早く、あまりの能力に親である私ですら驚愕した。
雪乃は陽乃の真似をするように、追い掛けるように一生懸命学習していた。そのひたむきな姿、日々成長していく雪乃に感涙しそうになったが、その度に唇を噛み締めて耐えてきた。耐えすぎて唇が血だらけになり、最近では口紅とグロスが欠かせなくなってしまった。
しかし、一生懸命な雪乃も、他者とコミュニケーションを取ることだけはとても苦手としていた。雪乃は本当に大人しい子であり、人見知りで、読書が大好きな子だ。年が近い子との触れ合いの場を設けても、すぐに部屋の隅で絵本の世界へ入ってしまう。
・・・あまり強要は良くなかったのかも知れないわね。
そう反省し、雪乃にしかない長所を伸ばしていこうと決めた。
・・・が、あの雪乃が、あの大人しい、客人が家に来た時は私の後ろに隠れるか自分の部屋に篭っていたあの雪乃が、まさか公園に行きたいと言ってくれるなんて。
私は喜びのあまり屋外で雪乃が楽しめるであろうありとあらゆる遊び道具を都築に買い占めさせた。
そして迎えた休日。多忙の中運良く休みを取ることが出来、雪乃と手を繋いで公園へ向かった。
少しばかり雪乃が早足で私の前を歩く。ふふ、雪乃、そんなに急がなくても時間はたっぷりあるのよ?
ともあれ娘が外で遊ぶことに意欲的なのは私としても嬉しい。これを機にお友達もたくさん出来て少しでも活発な子になれば、親としても安心ね。雪乃は大人しくてあまり笑わないけれど、やはり笑った顔のほうが素敵なのだから。
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都築「お、奥様・・少し休まれては・・・」
雫乃「う、うぷ・・ま、まだよ・・・おえ・・・」
〜回想〜
あれは3時間前のことでございます。
奥様と雪乃様が徒歩で公園にお越しになる前に、私は車で公園のそばで待機しておりました。トランクの中には奥様に言われ用意した遊び道具の数々。
私は奥様と雪乃様の負担にならぬよう、車での送迎を申し出たのですが、奥様の雪乃様との親子での触れ合いを大事にしたいというお言葉を聞き、猛省致しました。
我が子を愛する奥様の気持ちを私が危うく踏みにじる所だったのです。私もまだまだ未熟。これからも雪ノ下家のため精進して行かねば。
お二人がお見えになったので私は一礼をし、早速トランクを開け、雪乃様を抱えました。まだ五歳の雪乃様には車のトランクは高く、奥まで手が届きませぬ故。
すると雪乃様は何の迷いもなく小さなバケツとスコップ、シャベルを持ち、一目散に砂場へと行きました。
しかし既に砂場には他のお子様の姿が。雪乃様は先客であるその方達を見て驚きの表情をして固まっていました。少々人付き合いを苦手としている雪乃様ですが、その時は少し様子が違いました。
あの少年と少女は雪乃様のご友人でしょうか。お二人とも髪の一部分が跳ねております。恐らく兄妹だと思うのですが。
その後奥様はもちろん、執事である私もお二人に挨拶を致しました。分かったこととして、お二人のお名前は、比企谷八幡様と比企谷小町様。比企谷八幡様の方は雪乃様と同じ幼稚舎に通っているとのことです。
雪乃様は小町様を見た途端に不安げな表情になり、八幡様との関係性を執拗にお聞きになっておりました。八幡様の妹と分かった時は、それまで焦っていた様子が何事も無かったかのように平静を装い、安堵の表情を浮かべておりました。雪乃様、それはそういうことなのですか?八幡様に恋慕を抱いておられるのですか?その年でお付き合いしたいとお思いになっているのですか?・・・少し言葉が過ぎました。
ご友人を多く作ることは奥様はもちろん、この都築も大変嬉しく思います。しかし、その、男女のお付き合いというのは、まだ早いのでは無いでしょうか・・・
我が子を溺愛している奥様が齢五歳の雪乃様が恋愛をするなど許すはずが・・・ああ、案の定奥様が八幡様を睨んでおります、威嚇しております。私の雪乃に色目を使ってるんじゃない、そう聞こえるようです。
業務中の奥様は例えるならまさに鬼。ご自身の能力も然る事乍ら、有無を言わさぬ圧力と存在感で雪ノ下建設を統率して参りました。その時と同じ表情を今まさにしております。ああ胃が痛いです。帰りたいです。
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初めの三十分は雪乃様は八幡様と小町様と砂場で遊んでおりました。
我々が来る前は八幡様達はどちらが泥団子を綺麗に作れるか競っておられたようです。まだ途中だったようなので、雪乃様もお作りになるか八幡様が尋ねたところ、雪乃様は山をつくりそこにトンネルを掘りたいと仰っております。ああ、少し嫌な予感がします。私の横にいる奥様の放つ圧力をビリビリと感じております。
八幡様はまたかよ、と言っておりますが雪乃様の提案を承諾したようです。
そこからは山を作り、トンネル作りの最中でした。小町様は途中で疲れてしまい、今は座りながら八幡様を応援しておられます。何とも微笑ましい光景です。
そしてトンネルが出来ようかというその時。・・・ああ、この世に神はいないのですね。雪乃様と八幡様の手が触れ合ってしまいました。八幡様は雪乃様に対し何か怯えている様子です。何度もしきりに謝罪しております。しかし雪乃様は顔を真っ赤に染め上げながらその触れたご自身の手を見つめ、八幡様に背を向け、雪ノ下家の中では雪乃様が言わないような罵倒を言いながらも、口角が上がるのを堪えきれず思い切り破顔しその手を大事そうに胸に抱えております。
先程から横にいる奥様がすごいです。はっきり言って般若です。青筋が出ております。私脂汗が止まりません。
雪乃様は満足したのか、砂場で遊ぶことをやめました。小町様が缶蹴りをしたいというので、雪乃様たちは缶蹴りをすることになりました。
そこで立ち上がったのが奥様です。奥様は自ら鬼になることを申し出ました。
・・・魂胆が分かってしまいました。奥様は雪乃様にあのような表情をさせる八幡様を懲らしめる気です。どうか、どうか雪乃様と罪の無い小町様には被害が及ばぬようにしてください。
子供相手に何をそんなに、と思う方もいるかもしれませんが、奥様に逆らうことは死を意味するのです。この歳になると再就職など困難なのです。八幡様、どうか何もしてやれぬ無力な都築をお許しください。
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缶蹴りが始まった当初の奥様の動きを分析するに、マークしているのは八幡様ただ一人でした。雪乃様と小町様に関しては、ご自身がわざと負け、缶を蹴られる事も厭わないといったご様子。子供である八幡様にムキになっている時点で大人げのうございますが、その辺の良識を弁えているのはまだマシなのかも知れません。
しかし八幡様と小町様の髪型が似ているからか、飛び出してきた人物が小町様と横目で確認した奥様はわざと気付かない振りをしておりました。
ところが実際のところ蹴ったのは八幡様でした。お二人の特徴的に跳ねている髪が仇となったようです。あの時の奥様の鼻息の荒さは異常でした。はしたのうございます。
そこからは勝ちに拘りにいったのか、小町様であろうが雪乃様であろうが缶に向かってくる者は片っ端から返り討ちにしました。やはり大人げのうございます。
残る八幡様はさほど広くないこの公園内で何故そんなに隠れることが出来るのだろうと疑問に思うほどのステルス能力でした。
茂みから物音がし、それに気付いた奥様はジリジリとそちらに近付いていきます。奥様、そんな手をわしわししながら蟹股で歩かないでください。はしたのうございます。
しかしその物音は八幡様がその茂みに小石を投げた際のフェイクでした。八幡様、もはや五歳がすることではありません。それに完全に騙されている奥様を余所に、八幡様は缶を蹴り、缶は綺麗なアーチを描いておりました。
奥様が顔を真っ赤にしながらぷるぷると震えております。まさか五歳児に騙される日が来るとは。
小町様が八幡様の手を握りながらまた隠れるために逃げていきます。そして雪乃様もどさくさに紛れ八幡様のもう片方の手を握って逃げています。
雪乃様、もう笑顔を隠せておりません。
その後完全に堪忍袋の緒が切れた奥様は約二時間半、八幡様との勝負を致しました。小町様と元々体力の無い雪乃様は、途中で疲れてしまい、私が用意しておいたドリンクを飲みながらベンチでお休みになられています。
二人だけの缶蹴りで二時間半も続ける奥様に、私少々引いております。八幡様も何も言わずに黙々と隠れるあたり、正気の沙汰とは思えません。
結果的に八幡様の完全勝利で幕を閉じました。
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四人とも疲れてしまい、八幡様と小町様は御自宅に帰って行きました。雪乃様もお疲れになっており、既にうとうとしております。髪を乱し、息を切らしている奥様。お二人とも歩ける状態ではないので、帰りは私が雪ノ下家までお送りすることになりました。やっと解放されます。
〜車内〜
しかし驚くべきは八幡様。いくら遊びとはいえ、奥様を完全に打ち負かすとは。これは将来とんでもない大物になるやも知れません。
チラリとバックミラーで後ろを確認すると、先程の鬼の形相とはうって変わり慈愛に満ちた表情の奥様のお姿が。先程の出来事が嘘のようです。その下には雪乃様が奥様のお膝元を枕にし幸せそうに眠っております。
・・・本日は少々奥様の計画していたであろう予定とは違ってしまったようですが、最終的にこのようなお二人の姿を見れたので、こういう日があってもいいのかも知れません。
次は親子水入らずのお時間を。
そう思う都築であった。
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〜おまけ〜
夜中に奥様から呼び出され、急いで着替え、指定の場所を目指します。
言われた場所は件の公園。ど真ん中に奥様が仁王立ちしております。その存在感たるや、例え街灯が無い暗闇の状態でも直ぐに存在を確認することが出来るほどです。
雫乃「都築」
都築「は、はい奥様」
雫乃「私の缶蹴りの特訓に付き合いなさい」
私の缶蹴りの特訓に付き合いなさい。
これまで生きてきた中でかなりの衝撃を受けた瞬間です。本来楽しいはずの缶蹴りが拷問に感じてしまいます。
二児の母とその執事が夜中に缶蹴りをするという地獄絵図をこれから行わなければなりません。
・・・これは再就職を本気で考えましょう。