もしもシリーズ   作:ユッケライス

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あと残り二話です。





もしもあの日に戻れたら8

 

 

 

さて、とりあえず例の三人の顔は覚えてる。早速本田のクラスの連中へ聞き込みへ行くとするか。あの三人にバレないように慎重に……。

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とりあえず数人に聞いてみたが……

 

Q.『三人はどんな人物?』

 

A.『えっ、あの、突然何ですか……。あなた誰ですか?』

 

 

Q.『最近クラス内で何かあった?』

 

A.『うーん、特に無いなあ。えっと、ごめん、きみ誰だっけ?』

 

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あぁ緊張した。俺には二人が限界だったわ。しかも苦労した割には全く情報を得れてないし……。あとなんで二人とも最後に俺の影の薄さを指摘するんですかね。

情報の少なさ、自身の存在感の無さに辟易していると、胸ポケットに入れていた携帯電話が振動する。

 

八幡「知らないアドレス……。誰だ?」

 

 

 

 

『昼休み、屋上に来て』

 

 

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昼休み、メールで言われた通り、屋上へと向かう。少しばかり、あのメールは悪戯で、屋上に行っても誰も居ないんじゃないかとかいう考えもよぎったので少し身構えながらドアを開けた。

 

 

八幡「って、折本?あのメールお前が送ったのか?」

 

かおり「あんたが昨日アドレス書いた紙渡してきたんじゃん」

 

あ、そうだった。忘れてた。その後よくよく考えたら自分の行動が自意識過剰な勘違い野郎みたいに思えて家で悶えたんだっけ。記憶から消したかったのかもしれないな。

 

八幡「ごほん。そ、それで、何の用だ?」

 

かおり「露骨に誤魔化してるし……。それと用って、昨日の今日で用件は一つしかないでしょ」

 

そりゃそうか。

かおり「ねえ比企谷、あんたに任せたら、本当に未央は救われるの?あんたはこの件を解決できるの?」

 

八幡「……解決は正直分からない」

 

かおり「……」

 

八幡「だが、解消くらいはしてやれるかも知れん」

 

かおり「解消?」

 

八幡「全部上手くいってハッピーエンド、て言うのは俺には土台無理な話かも知れないが、問題を途中で無理矢理終わらせる。これならまだ可能性がある」

 

かおり「……何か考えがあるの?」

 

八幡「いや、今の所は全くだ。昨日お前に帰られて、仕方ないからさっきまで本田のクラスの連中に聞き込みしてたんだ。何せ情報が少なすぎる。だけど捕まってくれたのが二人だけでな。あとは俺の存在に気付かずスルーされたよ」

 

かおり「……確かに影は薄いね」

 

八幡「いやあの、一応これ自虐だから、自分以外に言われると傷つくんだけど。つか真顔で言うな」

 

かおり「ふふ、そういう所はウケる」

 

八幡「お前、俺の事嫌いだろ」

 

かおり「まあね。昨日の放課後のあの態度見たらそう感じるんじゃない?」

 

八幡「うっ……まあ、そうだな」

 

かおり「……」

 

八幡「折本?」

 

かおり「はあ、まあいいや。……。……何か書く物ある?」

 

八幡「は?」

 

かおり「いいから、何かペンなり何なりメモ出来るもの持ってんのかって聞いてんの。どうせさっきの話からしてクラスの子達から碌な事聞けなかったんでしょ?」

 

八幡「あ、あぁ……。まぁな」

 

かおり「小学校の時は何回かクラスが同じになった事がある程度、中学に上がってからはほぼ接点は無くなったから大した事は教えてあげれないかもしれないけど、まあ比企谷の聞き込みよりはマシだろうからね」

 

八幡「……」

 

かおり「何?」

 

八幡「いや、有難いんだが、何でまた急に?」

 

かおり「別に、何となくだよ。……もう、書く物持ってないなら携帯にでも打ち込みなよ。いい?それじゃ、まずは上里だけど……」

 

 

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かおり「ってとこかな……」

 

八幡「なるほどな。確かに俺の聞き出した事とは雲泥の差だ」

 

かおり「どう?役に立ちそう?」

 

八幡「さあな。でも、何も知らないよりは遥かにマシだ」

 

かおり「はあ。素直にお礼くらい言えないわけ?」

 

八幡「今言おうと思ってたんだよ」

 

かおり「別にいいけどさ。あたしの用はそれだけだから。もう行っていいよ」

 

八幡「おう。それじゃ俺は戻るわ。ありがとな」

 

かおり「……」

 

 

かおり「……比企谷」

 

八幡「ん……?」

 

かおり「……いや、いい」

 

八幡「?そうか。じゃあな」

 

 

 

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比企谷が屋上を後にする。

 

かおり「……」

 

 

 

 

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--昨日--

 

 

かおり『……は?』

 

八幡『だから、本田の件、俺に預けないか?』

 

かおり「いや、聞こえてるから、聞こえた上でだから。あんた、さっきまであんな態度とっといて何言ってんの?」

 

八幡「それは何ていうか、あいつらの手前な……。すまん」

 

かおり「意味わかんないよ。というか何でそもそもあの子達は比企谷に内緒にしてたの?」

 

八幡「それは分からん。いや、思い当たる節はないとも言えないけど……」

 

かおり「?」

 

八幡「とにかく、これはお前らの出来ることじゃそもそも無いんだ。悪いことは言わない。教室での事も気に障ったんなら謝る。もう何もするな。残りは俺が引き継ぐから、三人の情報を何でもいいから教えてくれ」

 

かおり「……」

 

八幡「……折本?」

 

かおり「……未央はアタシの親友なの。わかる?」

 

八幡「? ああ」

 

かおり「凛達はアタシも未央も仲がいいから、だからあの子達にも協力して貰ったの。それに比べて、名前と顔がやっと最近一致したくらいの奴に、あとは任せろって言われて、こっちが素直に納得出来ると思う?」

 

八幡「……」

 

かおり「しかもどう見ても頼りなさそうな奴に。……無理だよ。任せられない。比企谷に未央を助ける事は出来ないよ……」

 

普段は誰に対してもそんなきつい事は言わないけど、この時は少し言いすぎてしまったかもしれない。そのことに対する少しの罪悪感から、早足で帰ろうとするアタシは比企谷に呼び止められる。

 

かおり「……何?」

 

八幡「ああ。ちょっと待ってくれ。えっと……」

 

比企谷は鞄からメモ用紙、ポケットから携帯を取り出して、何かを用紙に書いていた。

 

八幡「……ええと、これ。俺のアドレス……」

 

かおり「……は?」

 

思わず今日二度目の間の抜けた返事をしてしまう。こいつは何を言ってるんだろう。

 

八幡「どうも今日は話を聞けそうにないからな。本田のことや、あの三人の事を教えてくれる気になったら、ここに連絡してくれ」

 

かおり「……」

 

八幡「……えっと、何だ?」

 

……はあ。やっぱり見れば見る程頼りになりそうにない……。仕方なくそれを受け取る。

 

かおり「連絡はしないと思うよ?」

 

そう言ってアタシは再び家へ向けて歩き出す。

 

 

 

 

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--昨日、夜--

 

未央の件について考えようとしても、あの男子が頭から離れてくれない。あいつの事をほぼ何も知らない私は、友人に電話を入れた。

 

 

 

奈緒『もしもし?』

 

かおり「あ、奈緒?かおりだけど。ごめん、いま大丈夫?」

 

奈緒『ああ。大丈夫だよ。どうしたんだ?』

 

かおり「うん。……えっと、突然で悪いんだけど、比企谷ってどんな奴なの?」

 

奈緒『えっ?……えぇ!?』

 

かおり「いや違うよ。奈緒が思ってることでは絶対無いよ」

 

奈緒『そ、そうか。ごめんごめん、比企谷がどんな奴、か。』

 

かおり「うん」

 

奈緒『うーん、先ずあたしら以外にあいつは友達は居ないな』

 

かおり「そ、そう」

 

やっぱそんな感じの奴か。

 

奈緒『あとやたらまゆが懐いてる』

 

それも見たことある。てかまゆは人気あるから男子とか自然と目で追ってるんだよね。比企谷を物凄いスピードで追っていた時は流石に男子みんなの顔が引きつってたけど……。ちなみにアタシも。

 

奈緒『まあまゆだけじゃなくて、あいつら全員比企谷に懐いてるな』

 

かおり「こんな事言うのも変かもしれないけど、それは何で?」

 

そう、そこなんだ。奈緒も含めて、校内でトップレベルに可愛い女の子達。いや、校内だけでなく、誰が見ても可愛いと答えるだろう。そんな子達。言っちゃ悪いかもしれないけど、比企谷は男子生徒の内の一人。平々凡々な普通の男子なんだ。それが何であんなラ、ラノベ?の主人公のような状態になってるんだろう。

 

奈緒『うーん……。多分、あたしにはかおりが言いたいことは分かると思うんだ。確かにあいつは見た目は普通の男子なんだ。それこそどこにでも居るような。しかも性格も素直じゃないし、偶に訳分からないようなこと言うし、雪乃にはよく罵倒されるし』

 

かおり「……」

 

奈緒『でもやっぱり、あいつはすごい優しいんだよ。お人好しとも言えるかもしれないけどな。自分のことなんて二の次にしてでも他人を助けようとしちゃうんだ。本人は否定するだろうけど、あいつら皆、昔比企谷に助けて貰ったことがあるんだ』

 

かおり「比企谷に?」

 

奈緒『ああ。あたしと凛と加蓮、奏は幼稚園の頃。他にも沢山。雪乃は小学校の頃な。雪乃はあたし達が比企谷と知り合った前から既にあいつと居たから、もしかしたら雪乃もあたし達が知らないだけで他にも助けて貰ったことあるのかもな』

 

かおり「そう……」

 

それはとても意外だ。

 

奈緒『あの、もしかして、報告会の時のあいつを見たから電話したって感じ?』

 

かおり「うん、まあ、そんな感じかな」

 

あいつに任せて大丈夫なのか、その確認も有るけど。

 

奈緒『そっか……。悪く思わないであげてくれ。きっとあいつはあたし達の事を心配してくれてるんだ。だから少しきつい物言いになっちゃったと思うんだ。……まあ流石にあれは駄目だろうと思ったけど』

 

かおり「……うん。分かった。ありがとう奈緒。じゃあそろそろ。切るね」

 

奈緒『あー……、えっと、うん』

 

かおり「ん?どしたの?」

 

奈緒『い、いやいいんだ。じゃあまた明日……』

 

かおり「えー?気になるじゃん。教えてよ」

 

奈緒『いや、多分聞いたらかおりはいい気分はしないと思うんだ。……そう言ってる時点で駄目か。……実は、かおりに謝らなくちゃならないんだ……』

 

かおり「アタシに?」

 

奈緒『うん……。かおりは未央のことを本当に大事に思ってるだろ?』

 

かおり「うん。もちろんだよ」

 

奈緒『あたしもそれは一緒だよ?未央のことは本当に大切な友達だ。でも、その、あたしは加蓮も同じくらい大事な友達なんだ』

 

かおり「……」

 

奈緒『加蓮は正直、今回の事に初めからあまり乗り気じゃなかったんだ。優しいから口には出せなかったみたいだから、知ってるのはあたしだけなんだけど……』

 

かおり「……」

 

奈緒『あの子は昔から身体が弱いんだ。だから、もしまたあの三人と接触したらって思うと、心配で仕方ないんだ……』

 

かおり「……うん」

 

奈緒『だから、その、未央と同じくらい、加蓮のことも心配なんだ。あたしは加蓮を守らなくちゃいけないんだ。そう約束したから……。だから……』

 

かおり「分かってたよ」

 

奈緒『え……?』

 

かおり「加蓮があまり乗り気じゃ無いことも、奈緒が加蓮を心配してたことも、何となく分かってたよ」

 

奈緒『……』

 

 

本当に、何となくそうなんじゃないかとは思っていた。普段明るい加蓮は報告会の時は口数も減るし、ソワソワしている。奈緒は加蓮が教室の外に出る度に着いていこうとしていた。過保護な程に。

そんな、言わば中立の立場である二人のどちらに電話をしようか、どちらに比企谷の事を聞こうか迷った。でも、加蓮の方は比企谷の妹ちゃんと、雪ノ下さんと凛と一緒に居た日があったらしいから、万が一、あの二人に言われるかもしれない可能性があったから奈緒にした。どうやら奈緒にして良かったらしい。こうして本音も聞けたわけだし。

 

かおり「でも、それを奈緒が謝る必要はないんだよ?二人が仲良いのは知ってるからね」

 

 

奈緒『……』

 

かおり「アタシにとって未央は大事な友達。だから気持ちは痛いほどよくわかるよ。だから、奈緒がその事で謝ったら駄目だよ?」

 

奈緒『……ぐぅ、うぅ、ごめん……。ごめんねぇ……。こんな気持ぢで……、ひぐ、何の役にも、立でなぐでぇ……』

 

かおり「だから、謝ったらダメだってば、ぷふっ、ウケる」

 

奈緒『わ、笑うなよぉ……かおりが電話掛けてくる前まで、ずっと、なんて言ったらいいか悩んでたんだぞぉ……』

 

かおり「ふふ、そっか。ごめんごめん、アタシがさっき報告会の時にあんな態度とっちゃったからだよね。……でもありがとう。奈緒と電話して、決心ついたよ」

 

奈緒『え……?』

 

かおり「アタシ達、お互い守ろうね。絶対」

 

奈緒『?……うん……』

 

かおり「じゃあ、今度こそ、切るね。言ってくれてありがとう。また明日」

 

 

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かおり「……」

 

 

奈緒は加蓮を、アタシは未央を守る。だから、あの三人は比企谷、あんたに任せるよ。

 

 

 

かおり「頼んだよ、比企谷……」

 

 

 

続く

 

 

 






今回もありがとうございました。



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